漆黒の守護者〜親愛なる妹へ8
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 毒が体中に回り、意識を手放したのは森林の入口付近で、次に目覚めた時は何もない空間だった。大地も自然も空もない純白の空間に浮かんでいる。上下左右がわからず平衡感覚を完全に失っていた。

 

「ここは……どこだ?」

 

視線を虚空に彷徨わせながら呟いた。

 

「ここは黄泉の間だよ、お兄ちゃん」

 

黒衣を纏った子供が俺の前に突如姿を現した。その手には鎌を握っていて、顔の半分を仮面で覆わせていた。

 

「君は?」

 

「僕は黄泉の案内人をしています死神です」

 

「死神? つまり俺は死んだということか」

 

猛毒が仕込まれた矢がまともに刺さったのだから当然といえば当然の事態。森林の入口付近までたどり着けたことが奇跡だった。

 

「正式には黄泉の門を越えたら死です。それまでは仮死状態です」

 

死神は体を少しずらして後方に控える巨大な門が俺に見えるようにした。見たこともない文字が満面に刻まれ天使と悪魔の彫刻が施されている。その頂点には神様と思われしき女性の彫刻もあった。

 

「夢半ばでの死に後悔の念を持ちながらも、その心にすがすがしいほどの達成感に満たされている。死を受け入れ、そして受け入れられずにいる。まったく難儀な心の持ち主ですね。案内人としては困る決断だ」

 

「君の気持ち次第で生死が決まるのかい?」

 

「代償が必要だけどね」

 

「代償?」

 

「通行料と考えてほしい。仮死状態とはいえ一度は死の概念を迎えたからね」

 

「……どんな代償を払えばいい?」

 

まだ死ぬわけにはいかない。夢を叶えるまではまだ死ねないんだ俺は。

 

「そうだね……。君の代償は――――」

 

俺は代償を払って現世へと連れ戻された。

 

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 森林付近で目覚めた俺は合戦が行われている戦場へと向かった。体からは完全に毒素は払拭されて体は軽い。

 

 合戦場へとつくと雪蓮が華琳の首筋に南海覇王の刃を当てられていた瞬間だった。

 

「貴方の甘さが貴方の大事な兄を死へと至らせた」

 

涙を流しながら雪蓮は訴えかけ、そして華琳は全身を震わせながら涙で顔をくちゃくちゃにして嗚咽していた。

 

「そこまでだよ、雪蓮。あまり俺の妹を苛めないであげてくれ」

 

俺の言葉に戦場にいた者の誰もが驚愕した。魏・呉ともに。

 

「ひ、翡翠!」

 

「に、兄様! ご、ごめんなさい! ごめんなさい!」

 

泣きながら俺にすがりついて華琳は謝りつづけた。俺はそんな華琳の頭を優しく撫でつづけた。戦場にただ悲しく泣き声だけが大陸に響いたのだった。

説明
久々の更新です。
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コメント
問題は死神に良心があれば代償も軽めで済むんですが・・・ そんなに甘くは無いのが世の常w どういった展開に転ぶのやら(村主7)
代償に何を払ったのが気になりますね。(VVV計画の被験者)
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