SEASON 6.夢力の季節(2/6)
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次の休みの日

まず俺の家に集まり近くにあるホームセンターに向かった。

 

 

それにしても暑い。

 

 

この中重い荷物を持って帰るのは嫌だと思ったがみんな来てしまった手前店に運んでもらうのは気が引ける。

どうするべきか悩んだが結論は出ないまま涼しい店の中に入っていた。

 

 

俺は真っすぐにテーブルの売り場に向かった。

みんなで言い合うとなかなか決まることがないから先に行って

「これだ!」

と指差し反論さえ弾けばすぐに決まる。

 

 

俺は後ろを振り向かずに売り場に向かい

大きさ、高さは丁度いいテーブルを発見。

 

 

だがものすごく木目をアピールしているテーブルだった。

しかしここで引いたら負けだと思い揺るがない気持ちを持って

「これだ!」

と指差した。

 

 

 

 

 

 

そこには唯しかいなかった。

 

 

「慶はそれがいいの?」

 

「……はい……」

 

「ふふっ、みんなどっかいっちゃったからゆっくり見ましょ」

唯には俺の思惑はお見通しだったらしい。

 

 

それからこれがいい、あれもいいといいながら物色していると

「あらあら、若い夫婦ね。私も若い頃に戻りたいわ」

と後ろからおばちゃんの声が聞こえてきた。

 

 

「俺達が夫婦だってさ」

 

「なんか照れるわね」

 

「照れることないだろ?」

 

「なんとなくよ」

唯の頬が少し赤くなっている。

 

 

それを見てから俺も少し恥ずかしくなってきた。

2人の照れが妙な空気を生み出していた。

 

 

長い沈黙を破るように

「こ、これなんかいいんじゃない?」

「あ、あぁ、これにするか」

ちゃんと見ないでテーブルをレジへ運ぶ。

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会計を済ませみんなを探す。

 

 

店内をうろうろするとペットコーナーから

「おっ、こいつ可愛いな」

 

「本当ですね〜。こっちの子も可愛いですよ〜」

ある意味俺達の中の若夫婦がおおはしゃぎしていた。

 

 

「テーブル買ったからそろそろ帰るぞ」

その声にはっとした2人はこっちを見た。

 

 

「あはは〜、すみません〜。すっかり見とれてました〜」

 

「なんだよ、俺達に相談無しで買ったのかよ」

 

「どうせ一目散にこっちにきたんだろ?」

 

「あはは〜、すっかりばれてましたか〜」

 

「おかげであっさりと決めれてよかったかも知れないけどな」

 

「拓郎と円はどこに行ったのかしら?」

 

「ずっと見てないな。しょうがない、迷子のアナウンスでも流してもらうか?」

 

 

竜祈は笑いながら店の人にお願いしようとしていたが

「竜祈さん、それはこっちも恥ずかしいです〜」

里優の一言で却下となってしまった。

俺的にもアナウンスされた方が面白かったのだが…

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店内をうろうろすると戦隊ものの変身の声やら

悪役がやられた時の声が聞こえてくる。

 

 

暫くするとどちらとも正義役の決め台詞が聞こえだし

正義同士が戦っているような声が聞こえてきた。

 

 

まさかと思いおもちゃコーナーに向かった。

そこには2人の戦士が戦うショーが始まっていた。

 

 

こんな狭いところでヒーローショーとは大変だなと思い通り過ぎようとしたが

「ぬ〜!これでもくらえー!」

という声が聞こえてきた。

 

 

「最近のヒーローはぬ〜!っていうんだな」

 

「しょっぱいヒーローなんじゃないか?」

 

「桃色担当なんて背が小さそうじゃない?」

 

「円ちゃんぐらいですか〜?」

 

 

笑いながら奥へと向かったがすぐにそこに戻り

1人のヒーローは円でもう1人が拓郎だということを確認した。

 

 

「円、拓郎なにやってるの!」

唯は2人が持っていた剣を取り上げた。

 

 

「ぬっ、唯姉。拓坊とおもちゃコーナーに来て色々見てたら…」

 

「こっちの方が強いとかもめちゃってね」

 

「それで?」

 

「気がついたら戦ってたよ」

あはっと笑いながら2人は同じポーズでおどけて見せた。

 

 

「もう2人共、壊したらどうするの?」

 

 

「だって拓坊が…」

「だって円が…」

 

 

同じ言い訳を始める前に

「テーブル買ったからもう帰ろうっか」

唯にシャットダウンされた。

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外に出ると容赦なく太陽が照りつけ再び店内に戻りたくなる。

 

 

ここで挫けたら駄目だと思いなんとか歩き始めた。

 

 

さんさんと照りつける太陽のもと歩き続ける俺達には会話がなくっていた。

所々で聞こえる暑いという言葉のの輪唱。

特に拓郎と円の2人組はぐったり具合が一緒だ。

 

 

ふらふらと同じ方向に揺れ同じような所で立ち止まる。

最終的には拓郎の荷物は俺が持ち円は竜祈におぶわれていた。

 

 

「慶斗、いい事教えてやろうか?」

 

「なんだ?」

 

「俺の背中に円がいるだろ。それがよ、こいつ意外と…」

 

「まさか円のくせに…」

 

「そう、意外と背中が暑いな。もう汗だくだ。早く慶斗ん家で涼みたい」

 

「何が意外なんだよ。当たり前だろ、夏の昼に人をおぶったら暑いわ!」

この暑い中怒らせないでくれ。

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「ふぅ、やっと着いたな」

荷物を玄関に置いた瞬間に拓郎は全速力でクーラーと扇風機をつけに走った。

 

 

「うっっっっひょ〜〜〜!気持ちいい!」

拓郎は扇風機の前で声が変わるのを楽しんでいる。

 

 

「はいはい、どけ。お前だけ涼んでるんじゃねぇよ」

竜祈が円を降ろす。

 

 

「ぬ〜、ここどこ?天国?」

 

「俺の家だ。勝手に死ぬな」

 

「そうだよね、簡単には死ねないね」

円は少し悲しそうな笑顔をみせ拓郎と一緒に扇風機の前で声を変えて遊び始めた。

 

 

「は〜い、冷たい麦茶ですよ〜」

里優がテーブルに麦茶を置いていく。

まだ新しいテーブルは出していないから密着していて

少し暑いがクーラーのおかげで気になることはあまりなかった。

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「それでね、慶兄。この赤いのがリーダーなんだよ」

ゲームを始めた4人をしり目に円は俺に戦隊ものの説明を始めた。

 

 

「ヒーローはねいつも弱い人を助けにくるんだよ。それでね、悪い怪人を倒していくの」

そんな俺でも知っていることをずらずらと話していく。

 

 

「それでね、それでね…」

 

「円は本当にヒーローが好きなんだな。なんでそんなに好きなんだ?」

 

「ぬ〜?なんでだろう?でも、もしいたら円は嬉しいよ。円は弱いから」

 

 

「そんなに弱くないだろ。こうやってみんなと話せるようになったのも自分の力だろ?」

 

「そうだった!円は強い人かも知れないね」

 

「桃色担当かもな」

 

「ぬっ?何?慶兄」

 

「なんでもないよ」

 

 

俺には円が少し眩しくみえる。

 

 

 

夕方になり女3人組が夕飯の支度をし始めた。

俺達は買ってきたテーブルを箱から出し組み上げる。

 

 

「慶ちん、そこにつけるのこれじゃない?」

 

「これでいいんじゃないか?」

 

「いやこれじゃねぇのか?」

俺達3人の頭ではこの説明書は参考書並みに難しい。

 

 

「あっ!僕閃いた。まず全部並べて番号を紙に書いて順番通りにやろうよ」

 

「おお〜っ!」

 

 

俺と竜祈には思いつかない案だった。

さっそく全部並べて番号を紙に書き順番通りに進めた。

するとさっきまであんなに時間がかかっていたのにあっさりと組みあがってしまった。

 

 

「ふっ、僕達の頭ってどうなってるんだろうね」

 

「それを言うなよ拓郎」

 

「慶斗、真実はいつも過酷だな」

はははっと笑いながら涙を流す3人。

 

 

「慶兄、こっちのテーブルはどうするの?」

 

「そうだな、今度の廃品回収にでも出すかな」

 

「捨てちゃうの?もったいないよ!」

 

「でも邪魔になるだろ?」

 

「そう…だね…」

円は悲しい顔をしながら台所に戻って行った。

すると同時に夕飯が出来上がった。

 

 

 

「あら、改めて見ると結構大きいわね」

 

「そうですね〜。これならあまりぶつからないで食べれますね〜」

 

「そうでしょ、僕達の知恵の結晶だよ!」

 

「それにしちゃ時間がかかってたわね」

 

「ばれてた?慶ちんと竜祈の段取りが悪いから」

 

「あっ、お前人のせいにするなよ」

 

「俺のせいじゃねぇよ。拓郎も全然違うとこに付けてたじゃねぇかよ」

顔を近づけ睨みあう3人。

 

 

「ほら、料理運んじゃって。冷めちゃうでしょ」

唯に咎められる俺達。

睨みあいながら素直に料理を運ぶ3人。

 

 

結局腹が減っては戦はできない俺達だった。

 

 

全員が料理を運び終わり席につき

「いっただきま〜す」

の一言で食事が開始されるがどこか円は浮かない顔している。

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食事が終わりお茶を飲む。

 

 

「どうしたんだ円?」

 

「ぬっ?慶兄何?」

 

「ずっと浮かない顔しているから気になってな」

 

「そんなことないよ。いつも通りの円だよ」

 

「料理中まで元気だったけど今は静かよね」

 

「唯姉まで。本当に円はいつも通りだよ」

俺と唯は納得できなかったがこれ以上は何も言えなかった。

 

 

「慶兄、前に使っていたテーブル捨てるなら貰っていい?」

 

「あぁ、別にいいけど」

 

「本当に?やった〜!」

 

「それなら今から運ばないか?」

竜祈が突如として発案してきた。

 

 

「やることもないし暇だろ?それに円の家ってどんなのか見てみたいだろ?」

俺達は全員一致で行ってみたいという意見になり早速円の家に行く準備を始める。

 

 

「ぬっ!?今から?そんなの悪いよ。円がちょっとずつ運ぶから大丈夫だよ」

 

「いいから円、僕達に任せといて!」

 

「ぬ〜〜〜〜、それなら任せるよ」

 

「ま〜かさ〜れよ〜!」

テーブルを分解して家を出発する。

 

 

「よし、全部持ったか?」

玄関を閉め全員の持ち物を確認する。

 

 

「ってお前らその恰好はなんなんだ?」

5人共戦隊もののマスクを装着し街灯に照らされている。

 

 

「慶兄もこれ被って」

赤いマスクから七色に光るマスクが手渡される。

 

 

「何で俺だけこんな派手なんだ?」

 

「だって5人組なんだもん。でも慶兄仲間外れにするわけにはいかないからこれを買ったんだよ」

 

「それしても派手過ぎるだろ、これじゃ」

 

「ってことは被る気はあるみたいね」

黄色いマスクが口に手を当て笑いかけてくる。

 

 

「その仕草は唯か。俺は被る気ないぞ」

 

「ぬ〜」

 

「マスクで分からないけどうるうるした目で見てきても被らない」

 

「これはリーダー命令だよ」

 

「被らない。それにそこの2人、気に入ってポーズとるな」

青マスクと黒マスクが俺を見る。

 

 

「いや、意外といいもんだな」

 

「でしょ?竜祈もはまるでしょ?」

 

「2人共お似合いですよ〜」

桃色マスクが歓声をあげる。

 

 

「それで円の家まで行くのか?もう行くから外せよ」

何故か渋々外す5人を心の中で羨ましく思った。

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「ここだよ〜円の家〜」

円は小走りに家に向かい指差していた。

 

 

「へ〜、結構いい家に住んでるんだな」

 

「円のサイズには合わないけどな」

 

「ぬっ!?そんなことないよ!中に入ればわかるよ」

 

「僕わかった!あれはハリボテなんだ」

テーブルの脚が拓郎の腹にめり込む。

 

 

「ぬっ!入ればわかるもん!」

 

円は玄関を開けると

「ただいま〜!」

大きく帰りを告げた。

 

 

奥からパタパタと音をたて円の母親が出てきた。

その姿を見て一同は驚いた。

 

 

「……普通の身長だ」

 

「あらら、円お友達?」

 

「そうだよ!円の友達だよ」

 

「もしかして、慶斗さんに竜祈さんに唯さんに里優さん」

 

「うぅ、ここでもスルーされてる」

 

「冗談ですよ。えっと拓坊さんですよね?」

 

「もう…なんでもいいです」

初めて来た家の玄関で拓郎はいじけはじめた。

 

 

「いいからそんな所でいじけるなよ」

 

「そうだよ、拓坊。早く円の部屋に運ぼうよ」

 

「後でジュース持って行きますのでゆっくりしていって下さいね」

 

 

円に続き階段を上り部屋に向かう。

 

 

「いらっしゃ〜い」

禁断の扉が今開かれた。

 

 

「って普通の女の子の部屋だな」

 

「ぬ〜、ごめんね。普通の部屋で」

 

「いい部屋ですよ〜、リラックスできるのが1番ですから〜」

 

「そうね。男共は何を期待してるんだか」

 

「いや、てっきりね、慶ちん」

 

「あぁ、なあ竜祈?」

 

「機動戦士のプラモとか超合金とかがあると思ってたからな」

俺達は顔を見合わせ頷いた。

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一通り部屋を見渡した後テーブルの設置に取り掛かった。

 

 

「拓郎そっちの足取ってくれ」

 

「いいけどこれ違うんじゃない?」

 

「このテーブルはどこにつけてもいいんだよ。よしできた。円これどこに置く?」

 

「それじゃ真ん中に置いて」

部屋の真ん中に置く。

 

 

「お部屋にぴったりですね〜」

ノックする音と共に円の母親がジュースを持ってきた。

 

 

「これどうしたの?」

 

「慶兄がくれたんだよ」

 

「新しいのを買ったんでいらなくなったのを円が欲しがってたんで、迷惑でしたか?」

 

「いえ、すみません。ありがとうございます。ゆっくりしていって下さいね」

嬉しそうに1つ1つコップを置いていく姿がやけに印象に残る。

 

 

「みんな立ってないで座ってよ」

 

「あぁ、そうだな」

それぞれが座り始めたが結局いつも通りの席に座っていた。

 

 

「では、ここで恒例になりました〜、はい竜祈!」

拓郎が竜祈に何かをリクエスト。

てか恒例ってなんだ。

 

 

「タンッ!ダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカダカ…」

ドラムロールか。

 

 

「はい!慶ちん!」

「えっ?あっ、あっ、ポン!」

 

 

 

 

………………

 

 

 

なんだこの静けさ、何をミスった?

 

 

「まあ慶ちんはほっといて恒例の卒アル拝見コーナー!」

わぁっと盛り上がる4人。

 

 

「ほら円、卒業アルバムはどこにあるの?」

 

「中学生の時の円ちゃん見たいですね〜」

 

「大して変わってないんじゃねぇの?」

 

「もしかしたら今よりでっかいかもよ」

 

「それでどこにあるの?」

 

「ごめんね、卒業アルバムないんだ、ははは」

頭を掻いてとぼけだす。

 

 

「そんなわけないじゃん。ほら早く持ってきてよ」

 

「本当にないんだよ。間違って捨てちゃったみたいなんだよ」

その後ずっとない、捨てたの一点張りで一向に話は進まなかった。

 

 

「まあいいじゃない。もし見つかったら見せてね」

 

「わかったよ。今度みんな来る時までに見つけとくよ」

それから円の部屋で話した後帰る事にした。

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円の部屋を出て階段を降りる途中に玄関が開いた。

「ただいま」

渋めの背の高い男性が入ってきた。

 

 

「お帰り、お父さん」

 

 

円が抱きついている男性はお父さん。

 

 

俺達はよくわからなくなっていた。

その男性の隣に竜祈を立たせどちらが背が高いが比べる。

俺達は男性が竜祈より背の高いのを確認。

 

 

奥から出てきた母親の身長を唯を並べて確かめる。

 

 

「どうしてだろ、慶ちん」

 

「あぁ、切ない話だな」

 

「だから言ったろ、現実はいつも過酷なんだよ」

 

 

次々と頭の上に手を置いて玄関を出ていく。

それにつられて唯と里優が手を置いていく。

 

 

円はよくわからない顔をしていたが

「みんな、またね〜」

外まで出てきて俺達に手を振った。

俺達はそれに答え手を振りながらそれぞれの家に帰った。

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家に着くと新しく買ったテーブルが俺を出迎える。

いつもなら何も感じないとこだが今日はやけに目につく。

 

 

ただ見慣れていないだけだとは思うがその風景が悲しく見える。

何故だろうと思いながらも風呂に入り冷蔵庫から麦茶を出し座ってみる。

いつも見る風景なのに居心地が悪い。

 

 

考えてみる。

延々と考えているつもりが数分後に眠っていたことに朝になって気づいた。

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円と俺達は馴染んでからというもの

休み時間も昼飯も晩飯も一緒に過ごしていた。

 

 

相変わらずに拓郎とは仲が悪いのか口喧嘩ばかりをし

仲がいいのか会話が盛り上がり変な踊りを踊ったり

ポーズをとったりして笑い合っている。

 

 

竜祈には腕にぶら下がったり両手を掴まれてグルグルと回されて目を回していた。

 

 

唯とは料理を教えてもらったり、時にはバレバレのいたずらをして怒られていた。

 

 

里優には甘えてばかりでよく頭を撫でられたり慰めてもらっている。

俺に関しては…関しては…あれ、何もない。

みんなに馴染んでからは出番が少なく寂しい限りだった。

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「円、どうしたの?今日もお腹いっぱいなの?」

ここ1週間円は昼飯も晩飯を残すようになった。

量的にはいつも食べている分しか出していない。

 

 

「ぬ〜?なんでだろう?すぐにお腹いっぱいになっちゃうよ」

そして残す量が日に日に増えてきている。

 

 

「円ちゃん、顔色わるいですよ〜。具合悪いんですか〜?」

 

「最近あんまり顔色良くないのは気になってたけど、大丈夫?」

 

「そうかな?円は元気いっぱいだよ。そんなに顔色悪い?」

 

「悪いわよ。本当に大丈夫?」

 

「うん、どこも悪いとこないし今日も拓坊と元気に戦ったよ」

 

「今日の戦闘は僕の歴史の中でもトップレベルに入るぐらいだから元気じゃないとむりだと思うよ」

 

「あれだけの口喧嘩はそうそうないもんな」

 

「円は大丈夫だから心配しないで」

円はそういうが無理やり元気に振舞っているようにしか見えない。

 

 

「いつも残しちゃってごめんね、唯姉」

 

「いいわよ。ここには残飯処理機があるんだから」

 

「ぬっ?残飯処理機?」

 

「そうよ、はい竜祈」

 

「ま〜かさ〜れよ〜」

 

 

円が残した料理をまさに一瞬で飲み込んでしまった

 

 

「ごふっ!」

 

 

「竜祈さん〜、大丈夫ですか〜。はい、お水です〜」

渡された水も一瞬で飲み込む。

 

 

「やべぇ、まじ焦ったぜ」

円から小さく笑い声が聞こえる。

つられて食卓から笑いが湧き出てくる。

 

 

「笑いごとじゃねぇって」

その一言にさらに笑い声は大きく部屋に響いた。

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「それじゃ、またね」

 

「あぁ、またな」

 

「みんな、またね」

 

 

俺と円は玄関に並んで立ちみんなを見送った。

玄関が閉じられ部屋へと戻る。

 

 

 

「そういや円、プリン2個残ってるんだ。一緒に食わないか。あいつらに知られたら争奪戦になるから黙ってたんだ。…円?」

一緒に部屋に戻ったはずの円がそこにはいなかった。

 

 

「円?」

 

 

次の瞬間玄関から何かが倒れる音がし急いで駆け付けた。

そこには荒い息を吐いて倒れている円がいた。

 

 

「おい!円どうした!おい!」

声をかけてもなかなか返事が返ってこない。

 

 

「円!円!」

 

「…慶…兄…はは…大…丈夫…だよ…」

 

「大丈夫なわけあるかよ!ベッドまで運んでやるから横になってろ!」

 

「……ううん…ごめん…なさい…慶…兄…家まで…送って…くれないかな?へへっ…」

今にも消えそうな声がなんとか耳まで届いてくる。

 

 

「いいから俺のベッドで横になってろ。具合良くなったら送ってやるから」

 

「……お願い……家まで…」

次の瞬間にも意識が飛んでしまいそうな真っ青になった顔でお願いお願いと頼んでくる。

 

 

そんなことしたらこいつは余計に苦しむだけじゃないのか。

かと言ってこのまま俺の家にいても何かが変わるわけでもない。

 

 

「くそっ、辛くなるけど気合い入れろよ!」

「…うん…」

 

急いで円の荷物を取り荒い息遣いの円に肩を貸し家を出た。

円も家まで頑張ろうとしていたが所々意識がとんだり

息遣いがどんどん荒くなっていく。

 

 

「円!しっかりつかまってろよ!」

 

「…ちょっと…慶……兄…」

 

円を背負って家に向かった

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途中不審がる通行人がいたが気にしている場合じゃない。

一目散に家まで走り

心拍数は限界まで達し足も言うことも聞かなくなっていたが

それでも俺は走り続けた。

 

 

円の家に着き俺はインターホンを鳴らさずに玄関を開け

「すみません!円が…円が…」

叫んだ。

 

 

何事かと思い円の両親が急いで玄関まで駆けつけてくれ

背中に背負われた円を見るなりわかっていたかのように父親は円を担ぎあげ円の部屋まで運んだ。

 

 

それを見た俺は壁にもたれかかった。

 

 

「これで汗を拭いて」

 

 

円の母親がタオルを持ってきてくれ

その言葉に俺は大量の汗と乱れ切った呼吸に気づいた。

 

そしてタオルで汗を拭こうとした瞬間

俺は気を失った。

 

説明
円もみんなと仲良くなれた。これで修学旅行は問題ないな。
でも俺はしならなかったんだ。

他に問題が残っていた事に……
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