天・恋姫†無双 〜御使い再臨〜
[全18ページ]
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本作品の一刀君は、「貴様こそ真の三國無双よ!!」の様な力を持っています。

また、原作と少々性格が変わっています。

他にも外史や管理者の独自解釈・EDの一部改変等が存在します。

その辺、御了承下さい。

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序章 三幕 終わる戦い・始まる戦い【後編】

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???

 

白        

 

他に何と言えばいいのか解らない。

 

真っ白な空間だ。

 

そして、その空間に一人の青年が眠っていた。

 

その青年は、先程の激闘の末に世界を救う為命を引き換えに散った【北郷 一刀】だった。

 

一刀「ーーーーーーっ。」

そして目を覚ました。

 

一刀「・・・・・ここは。」

一刀は目を擦り空間を見渡す。

 

一刀「そうか・・・・戻ってきたのか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「ご主人様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「ん?」

一刀は上を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「久し振りぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ?」

ピンクの布地を履いただけの筋肉ダルマなおっさんが一刀目掛けて降ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、一刀を抱き締めようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スカッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「なっ?!空蝉!?」

しかし、そこに立っていたのは一刀の空蝉だったため筋肉ダルマはそのまま通り過ぎた。

 

一刀「お〜〜、久し振りだな〜〜貂〜〜蝉。」

いつの間にか貂蝉の上に跳躍した一刀が挨拶をしそのまま一回転した。

 

一刀「霞谷體術弐式【天落】!」

そして、その勢いで貂蝉に踵落しをくらわせた。

 

貂蝉「ぶるああああああああああああああああああああああああああ?!!」

巨体はそのまま床に倒れ伏した。

 

貂蝉「ご主人様、再会の挨拶にしては少し激しいわ」

貂蝉は若干ふらつきながら立ち上がった。

 

一刀「お前がいらん事するからだろうが。

ところで、貂蝉。

此処に戻ってきたということは・・・・・。」

 

貂蝉「ご主人様の想像通りよ♪」

 

一刀「そうか・・・・・。

   俺は、やっと辿り着いたのか・・・・・・。」

 

貂蝉「おめでとう、ご主人様。

   貴方が次に向かう外史は彼女達の・・・・・三国志の外史よ♪」

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貂蝉「ところでご主人様。

   また強くなったわねぇ〜。」

 

一刀「あれから、また世界を随分廻ったからな・・・・・・。」

 

貂蝉「ふふっ♪

   今となっては貴方は私達【肯定派】の希望よ♪

   【外史の護り手】様♪」

 

一刀「【外史の護り手】か・・・・・・・。

   貂蝉、あの時から俺は幾つの外史を渡った?」

 

貂蝉「合計で99回。

   年数で言えば214年経ってるわね。」

 

一刀「そうか・・・・俺は92個も世界を滅ぼしたのか・・・・・。」

 

貂蝉「ご主人様・・・・・・。」

 

一刀「【外史の護り手】なんて言われてるけど俺はそんな立派な人間じゃない。

   俺が救えた外史はたったの7個だけだよ・・・・・・。」

 

貂蝉「・・・・・・・。」

 

一刀「だが、起きてしまった事を悔んでる暇はない。

   俺は今まで殺めた人達や護れなかった人達のその業を背負って生き続けるさ。」

 

貂蝉「どぅふふふ♪

   本当に強くなったわね♪

   ご主人様♪」

 

一刀「まぁ、【口だけの糞餓鬼】だった頃よりは成長したさ。」

一刀は懐かしむ様な目で言った。

 

一刀「それにしても99回か・・・。

   もう少し早く辿り着きたかったな。」

 

貂蝉「あら♪ご主人様たら贅沢ねぇ〜?

   幾億、それこそ無限とある外史の中で二桁でたどり着くだけでも激運よ。」

 

一刀「それもそうか。」

 

貂蝉「さて、それじゃあこれを渡すわね。」

そう言うと貂蝉は何もない手から白い玉を出現させた。

 

一刀「それは・・・・。」

 

貂蝉「そう、ご主人様の最後の【記憶の結晶】・・・・【偽白玉】よ。」

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214年前

 

 

一刀「さよなら・・・・・・寂しがり屋の女の子。」

 

 

 

 

 

華琳「一刀・・・・・・!」

 

 

 

 

 

一刀「さよなら・・・・・・愛していたよ、華琳――――――――」

 

 

 

 

 

華琳「・・・・・・・・・・・・一刀?」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――。

 

 

 

 

 

この日【天の御使い】北郷一刀は三国の大陸から姿を消した。

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???

 

一刀「ーーーーっ。」

目を覚ました一刀は周りを見渡した。

 

すると、一面に広がるのは真っ白な何もない空間だった。

 

一刀「ここは何処だ?

   元の世界じゃないってことは・・・・・死後の世界?」

 

?「此処は、正史と外史の狭間の世界よん♪」

 

一刀「ん?」

突然の後ろからの声に一刀は振り向いった。

 

 

 

 

 

目の前にピンクのモッコリが現れた。

 

 

 

 

 

一刀「なんとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ?!!!」

一刀は某質量を持った残像の人の様な台詞を吐きながら全力で後退した。

 

?「あん?

  そんなに驚いちゃって御主人様たらシャイなんだからん?」

そこにはピンクの布地を履いただけの筋肉ダルマなおっさんが立っていた。

 

一刀「あれ・・・・?

   アンタは下着店の・・・・・・貂蝉?」

 

貂蝉「どぅふふふふふ♪

   覚えていてくれて嬉しいわご主人様?」

貂蝉はそう言ってウインクをし一刀は鳥肌が立った。

 

一刀「と、ところで何でこんな所にいるんだ?」

 

貂蝉「それは私が外史の【管理者】だからよん♪」

 

一刀「外史って・・・・・何?」

 

貂蝉「本来、ご主人様が知識として知っていた三国志を正史。

   そして、さっきまでご主人様がいた世界。

   三国志の将達が女の子の似ているようで違う世界。

   いわば平行世界を外史と言うのよ。

   そして私はその【管理者】の一人ってことよん♪」

 

一刀「なるほど・・・・・ん?管理者?

   なぁ、貂蝉!

   管理者って俺のことをさっきいた世界に戻すことって出来るのか?!」

 

貂蝉「出来るわよ。」

 

一刀「だったら、今すぐに戻してくれ!!」

 

貂蝉「【今すぐに】は無理よ。」

 

一刀「何でだ?!」

 

貂蝉「そうね・・・・・。

   ねぇ、ご主人様。

   ご主人様のお友達の・・・・・・及川ちゃんだったかしら?

   彼が日本の最高権力者の世界って在ると思う?」

 

一刀「はぁ?そんな世界在るわけ・・・・・・。」

【在るわけがない】と一刀は言えなかった。

何故なら、彼が先程まで存在し戻ろうとする世界もそんな世界だからだ。

 

貂蝉「つまりは、そういう事。

   そんな些細な正史との誤差で外史は生まれるわ。

   故にその数は無限。

   そんな中から一つの外史を見つけ出して送る事は不可能よ・・・・・・。」

 

一刀「俺は・・・・・・もう彼女達に・・・・逢えないのか?」

 

貂蝉「私に出来る事は二つ。

   一つは、ご主人様を元の世界に還す事。

   もう一つが、ご主人様をランダムに別の外史に送る事。

   さて、ご主人様はどうするかしら?」

 

一刀「・・・・・・・・。」

一刀は暫く無言だった。

 

一刀(俺に出来る事は二つ。

   元の世界に戻り当ても無く彼女達の世界に戻る方法を探す為に迷走するか。

   いつ辿り着くかもわからない途方もない外史の旅に出るか。

   なんだ・・・・・・答えなんて簡単じゃないか・・・・・・・。)

そして、一刀は応えた。

 

 

 

   

 

一刀「貂蝉、俺を別の外史に送ってくれ。」

 

 

 

 

 

一刀は二つ目の方法を選択した。

 

貂蝉「本当にその選択で良いのね?

   彼女達の事を胸に仕舞い元の世界で残りの人生を楽しく過ごした方がずっと楽よ?」

 

一刀「それこそ、論外だ。

   俺は彼女達を心の片隅に追いやる事など出来やしないし俺自身納得出来ない。」

 

貂蝉「いつ、辿り着くかもわからない。

   それこそ一生辿り着けないかもしれないわよ?」

 

一刀「あの世界が存在するなら一生なんてない!

   俺が諦めない限りいつか必ず俺は辿り着く!!」

一刀はそう強く言い放った。

 

貂蝉「ふふっ♪

   流石、ご主人様ね?

   それじゃあ、行く前に何か必要なものはある?」

 

一刀「じゃあ、日本刀と木刀を一本づつ。

   さすがに知らない世界を丸腰で行くのは不安だ。」

 

貂蝉「わかったわ。」

そう言って貂蝉は日本刀と木刀を出現させ一刀は受け取った。

 

貂蝉「それじゃあ、ご主人様♪

   頑張ってねぇ〜〜ん?」

 

一刀「ああ!」

そして一刀は外史に旅立った。

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

貂蝉「ご主人様・・・・・。

   貴方はいずれ知ることになるわ・・・・・。

   自分の選んだ道が茨で修羅の道であることを・・・・・・。」

貂蝉は誰もいない空間で独りポツリと呟いた。

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3回目の外史終了後

 

正史と外史の狭間

 

 

一刀「あれ、ここは・・・・。」

 

貂蝉「は〜〜い、ご主人様。

   久し振りねぇん?」

 

突然の声に前回の経験を活かし一刀は素早く後退し振り返る。

 

貂蝉「残念?

   前よん♪」

 

慌てて振り返る一刀。

 

 

 

 

 

すると、一刀の鼻先が貂蝉の【モッコリ】にかすった。

 

 

 

 

 

貂蝉「あぁん?

   ご主人様ったらいきなりなんだからぁん?」

 

一刀「鼻がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!??」

一刀は絶叫した。

 

数分後

 

一刀「それで、何で俺は此処に戻ってきてるんだ?」

落ち着きを取り戻した一刀は貂蝉に尋ねた。

 

貂蝉「それは、ご主人様が訊きたい事があると思ったからよ。」

 

一刀「そうか・・・・じゃあ訊くな。

   奴が・・・【サタン】が言っていた【否定派】って何だ?」

【サタン】それは先程の外史で一刀が命と引き換えに倒した敵だった。

(※詳しくは〈設定資料〉にて)

 

貂蝉「私達【管理者】には【肯定派】【否定派】の二つの派閥が存在するの。」

 

一刀「貂蝉は?」

 

貂蝉「もち、【肯定派】よん♪」

貂蝉はウインクをして言った。

貂蝉「話を戻すわね。

   私達【肯定派】は外史を【見守り】そして【外史への独立】の手助けをする者よ。」

 

一刀「【外史への独立】?」

 

貂蝉「簡単に言ってしまえば【新たな世界】の誕生。

   つまり、今まで外史だったのがその世界の正史として存在していくの。」

 

一刀「なるほど・・・・・。」

 

貂蝉「そして、御主人様達が倒したサタンちゃんの派閥【否定派】。

   この派閥は外史の【監視】そして【イレギュラーや正史に影響を及ぼす外史の抹消】。」

 

一刀「抹消・・・・。」

 

貂蝉「外史を・・・・その世界を跡形も無く消し去るって事よ。」

 

一刀「!?

   まってくれ?!それじゃあ・・・・・・!!」

 

貂蝉「そうね、御主人様の存在は【イレギュラー】。

   つまり、御主人様が渡った外史は消されたわ・・・・・・。」

 

一刀「そんな・・・・・・・・・。」

【多大なる罪悪感】に一刀は押し潰されそうになった。

【彼女達との再会】その目的の為に何十億という人間が何も知らずに消された。

どこか心に甘い部分がある一刀にはその事実は衝撃的だった。

 

貂蝉「私が確認したい事は二つ!

   これが一つ目!

   ご主人様!貴方はこの事実を前にしてどうする!?

   多くの犠牲を糧に彼女達と再会するか!?元の世界へ戻り平穏に過ごすか!?」

貂蝉は珍しく厳しい眼差しで一刀に問い掛けた。

 

一刀「・・・・・・・・・。」

一刀は黙ったままだった。

考えた犠牲を最小限に抑える方法を。

そして、一つの疑問が浮上した。

 

一刀「なぁ、貂蝉。

   【ヴィントラント】は・・・・あの世界はどうなったんだ?

   消されたのか?」

一刀は先程の外史の現状を訊いた。

 

貂蝉「滅んでないわよ。」

 

一刀「・・・・・・・・なんだて?」

 

貂蝉「ご主人様達がサタンちゃんを倒しちゃったから否定派管理者が不在になっちゃたのよ。

   それで、不在の隙に肯定派の管理者があの世界を独立させたのよ。

   だから、あの外史は今は一つの世界の正史として存在してるわ♪」

 

一刀「つまり、否定派管理者を倒せばその外史は助かるのか・・・・・・?」

 

貂蝉「結論から言えばそうなるわね。」

 

一刀「そうか・・・・・決まったよ。」

 

貂蝉「聞きましょう。」

 

一刀「俺は外史の旅を続けるよ。」

   

貂蝉「数え切れない程の犠牲を出すかもしれないわよ?」

 

一刀「そうだとしても俺が彼女達を諦めるなんて出来やしないし。

   今ここで俺が諦めたら犠牲になった世界の人達に申し訳が立たない!」

一刀はそう力強く応えた。

 

一刀「それに、否定派管理者を倒せば外史を救い独立させられる。」

 

貂蝉は一刀のその発言を予想していたのか余り驚いた様子は無かった。

しかし、より一層険しい顔をして言った。

貂蝉「御主人様、サタンちゃんと戦って理解していると思うけど・・・・・。

   管理者を倒すのは簡単な事じゃないわよ。」

 

一刀「わかってる!

   自分の言ってる事が身勝手で傲慢な事も理解している!

   それでも、犠牲を出さない為にはこれしかない!

   いざとなたら前回みたいに道連れにする!」

 

貂蝉「・・・・・・・わかったわ。

   それじゃあ、二つ目ね。」

 

一刀「ああ。」

 

 

 

 

 

貂蝉「初めて人を殺してどう思った?」

 

 

 

 

 

一刀「・・・・・・。」

 

貂蝉「前回は状況が許さなかったから割り切ることも出来たわ。

   でも、管理者を屈伏させられなければ殺すしかないわ。

   これはどの外史でも変わらない事実。

   ご主人様、貴方にそれを続ける覚悟はある?」

 

一刀「貂蝉、それこそ今更だよ。

   俺が師匠(先生)と一緒にヴィエーラでテンペル騎士団(テンペルリッター)の

   手伝いをしてた時に何十人も殺したよ。

   そりゃあ、初めて人を殺めた時は吐きそうになったし逃げ出しそうにもなったがな・・・・・。」

 

貂蝉「そう・・・・・・・。」

 

一刀「それに師匠に【ハヤウェイ】師匠に言われたんだ。」

 

貂蝉「ハヤウェイちゃんに?」

 

一刀「ああ。」

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回想

 

ヴィエーラ王国内に中規模の盗賊団が現れた。

それから暫くの時が経ちテンペル騎士団は遂に盗賊達の根城を発見する。

殲滅戦だった。

一刀とハヤウェイも其処に依頼で派遣された。

そして、一刀にとってこの世界で初めての人同士の戦場で人生で初めての殺し合いの場だった。

 

一刀「・・・・・・・・。」

一刀は顔を青くして壁に背を預け座り込んでいた。

作戦は2時間程で終了した。

いくら盗賊団が数が多いとはいえ本気になった騎士団に勝てる道理は無かった。

況してや【大英雄】ハヤウェイ【テンペル騎士団副団長】壬生 華鈴【シスター・ヘル】テレサ・ティレット

この三名が戦場に介入すれば尚更の事だ。

 

一刀は返り血で汚れた自分の手を見詰めていた。

一刀(俺・・・・・殺したんだな・・・・・・人を・・・・・・・。)

 

一刀は思い出した首を撥ねた瞬間の相手の顔を。

一刀(ヤバ・・・・・思い出したら・・・また吐気が・・・・・・。)

 

?「大丈夫か?

  酷い顔してるぞ。」

金髪の青年が一刀に声を掛けた。

 

一刀「師匠・・・・・。」

声を掛けたのは一刀の戦闘と魔法の師匠ハヤウェイだった。

 

ハヤウェイ「一刀・・・・お前まさか。」

 

一刀「すいません・・・・黙ってました。

   戦場の経験もあるし死体も見た事はあります。

   でも・・・・自分の手で人を殺したのは初めてです。」

 

ハヤウェイ「そうか・・・・納得したよ。

      お前、戦闘が始まって最初のころ盗賊達を峰打ちで気絶させてたからな。」

 

一刀「気付いてたんですか。」

 

ハヤウェイ「一応、これでもお前の師匠だ。

      弟子の状況ぐらいは気を配るさ。

      ところで、一刀。

      目を覚ました盗賊が不意討ちで仲間の誰かを殺そうとするとは考えなかったのか?」

 

一刀「そ、それは・・・・・。」

 

ハヤウェイ「今回はテレサさんも早めに気付いてくれて騎士達に捕縛の指示を出したから

      そんな事は起きなかった。

      でも、そういう事態が起きる可能性は十分あった事は覚えておけ。」

 

一刀「・・・・・はい。」

一刀は自分の大きな失態を反省しながら小さく返事をした。

 

ハヤウェイ「・・・・なぁ、一刀。

      お前の腕は何本ある?」

 

一刀「はい?

   いきなり何をいいから。・・・・・・2本です。」

 

ハヤウェイ「さて、一刀。

      お前の前に3つの選択という名の箱がある。

      大きさは片手で掴める程だ。

      一つ目【自分の命】二つ目【仲間の命】三つ目【敵の命】。

      お前はどれに手を差し伸べどれを切り捨てる?」

 

一刀「そんなの・・・・・・。」

心に甘さのある一刀にはどの命も簡単には切り捨てられなかった。

 

ハヤウェイ「一刀、お前は俺の弟子になる時に言ったよな。

      『戦ってでも護りたい人達がいる。』って。

      だから、これだけは絶対に忘れるな。

      【戦いの中で何かを護るという事は何かを捨てるという事】だと。」

 

一刀「・・・・・・・。」

一刀は理屈では納得しているが心からは納得出来なかった。

 

 

 

 

 

ハヤウェイ「まぁ、俺の弟子ならこれだけで終わっちゃ困るがな。」

 

 

 

 

 

一刀「えっ・・・・・?」

ハヤウェイは先までの固い声色から一変し優しい声色で言った。

 

ハヤウェイ「一刀、お前が俺の弟子なら捨てた命をそのままにするな。

      背負え。」

 

一刀「背負う・・・・・。」

 

ハヤウェイ「そうだ。

      今さっき俺達が殺した人達の全てが欲に溺れてたわけじゃない。

      仕方なく盗賊に成り下がった人もいた筈だ。

      だから、俺達は殺してしまった人達をしっかり弔いその無念を背負うんだ。」

 

一刀「捨てた命の無念を背負うか・・・・。」

 

ハヤウェイ「出来るか?」

 

一刀「はい!」

一刀は力強く返事をした。

 

回想終了

-9ページ-

一刀「まぁ、こんな感じだ。」

 

貂蝉「そんな事があったの・・・・。」

 

一刀「俺は殺してしまった人達を弔いその無念を背負う覚悟がある!」

 

貂蝉「心配無用だったわね♪

   それじゃあ、これを渡すわね・・・・・・・・。」

すると、貂蝉は緑色に輝く玉を出現させた。

 

一刀「それは?」

 

貂蝉「これは、御主人様の記憶の結晶【翠玉】。」

 

一刀「俺の記憶の結晶?!」

 

貂蝉「ご主人様、どうか取り乱さないで頂戴ね・・・・・。」

そう言って貂蝉は翠玉を一刀の心臓部分に押し当てた。

すると、翠玉は徐々に一刀の中に沈み込んでいく。

 

 

 

 

 

ズキッ!

 

 

 

 

 

一刀「ぐっあああああああああああああああああああ!??」

一刀の頭を激痛が襲った。

 

 

貂蝉「ご主人様、もう少しだから耐えて!!」

 

一刀「頭に・・・何かが・・・・流れ込・・・・・んで来る・・・!?」

 

 

 

 

 

桃香・愛紗・鈴々・星・朱里・雛里・翠・蒲公英・紫苑・桔梗・焔耶・璃々・月・詠・恋・音々音・美以・

シャム・トラ・ミケ・白蓮

 

 

 

 

 

                    桃園の誓い

 

 

 

 

 

一刀「そうだ・・・・・・俺は・・・・・・桃香達と共に・・・・・・。

   いや、そんな筈は・・・・・・

   だって・・・俺は・・・・・華琳達と・・・・・。」

一刀は混乱していた。

思い出した記憶は自分の持っていた記憶と矛盾していたからだ。

 

貂蝉「ご主人様、落ち着いて。」

 

一刀「悪い貂蝉。

   少し、時間をくれ・・・・・。」

 

貂蝉「ええ・・・・・・・。」

 

 

数十分後

 

 

貂蝉「落ち着いたかしら?」

 

一刀「ああ、どうにかな・・・・・・。」

どうにか落ち着きを取り戻した一刀は貂蝉に先程の記憶について尋ねた。

 

一刀「あの蜀での記憶は間違いなく本物だ・・・・・。

   彼女達との日々を匂いを共に飲んだ酒や茶の味を鮮明に思い出した。

   だけど、それだと矛盾が生じる・・・・。

   答えてくれ貂蝉!

   何故、俺には蜀で過ごした記憶がある!?

   何故、俺は今までこの事を忘れていた!?

   そして、何故その記憶の結晶をお前が持っていた!??」

 

また、徐々に冷静さを無くしつつある一刀の問に貂蝉は語りだした。

貂蝉「何で蜀の記憶があるか・・・・。

   それはね、ご主人様があの外史に降りたのが1回だけじゃないからよ。」

貂蝉から返ってきた答えは衝撃的な事実だった。

 

一刀「な、なんだって!?」

 

そして、貂蝉はもう一つの衝撃的事実を話した。

貂蝉「それと、今まで忘れてた事と私が持っていた理由・・・・・。

   ご主人様の記憶を抜き取り管理していたのは私だからよ。」

 

一刀「何で・・・・そんなことを・・・!?」

一刀は殺気を放ちながら質問した。

この時の一刀の実力は翠と互角に渡り合える位までに成長していた。

 

貂蝉「ごめんなさい。

   今は、言えないわ・・・・。」

 

一刀は貂蝉の返答に激怒した。

一刀「ふざけるなっ!!

   大切な記憶を突然思い出させられて!

   その記憶を奪ったのは自分だと告げられて!!

   挙句の果てには奪った理由が言えないだと!?

   テメェは一体何様だ?!!」

 

貂蝉「そうね・・・・・。」

すると貂蝉は正座をし・・・・・・。

 

貂蝉「ごめんなさい・・・・・。」

 

一刀「っ?!」

貂蝉はそのまま一刀に土下座をした。

一刀もこれには驚いた。

あの貂蝉が真剣にそして何処か哀しい声で謝った。

 

貂蝉はそのまま頭を上げずに話し出した。

貂蝉「ご主人様が怒るのはもっともだわ。

   でも、これだけは今は話せないの。

   本当にごめんなさい。」

 

一刀「もう、いいよ。

   『今は』ってことはいつか話してくれるんだろ?」

一刀は殺気を鎮めてそう言った。

 

貂蝉「ありがとう、ご主人様。

   ええ、いつか必ず話すわ。」

 

一刀「さて、そろそろ次の外史に行くかな。

   と、その前に・・・・・・。」

 

貂蝉「どうかしたの?」

 

一刀「悪い貂蝉。

   新しい刀を一本頼む。

   サタンとの戦いで使い物にならなくなってんだ。」

そう言って一刀は刀身がボロボロで今にも折れそうな刀を見せた。

 

貂蝉「あら〜、これは酷いわねん。」

 

一刀「大量の氣を通したらこんなんになっちまった・・・・。」

一刀は氣を使えるようになっていた。

また、一刀の先程いた世界の魔力と氣は性質が似ていて為彼は氣を媒体に魔法を使っている。

ただし、氣の量は凪並だが制御はまだまだ凪の足元にも及んでいなかった。

 

貂蝉「わかったわ〜♪

   ほい☆

   はい氣の伝達性と耐久性能を上げといたわよ♪」

そう言って貂蝉は日本刀を出現させて一刀に渡した。

 

一刀「毎回思うんだが一体何処から出してんだ?」

一刀は毎度どこからともなく出現する道具とかに疑問を抱いていた。

 

貂蝉「どぅふふふふ♪

   ご主人様たら漢女の秘密を知りたいのかしら?」

そう言って貂蝉は体をクネらせ目が光っていた。

 

一刀「知ったら最後、なんか色々と戻れない気がするから遠慮しとく。」

【好奇心は猫をも殺す】この時、一刀の頭にはその言葉が過ぎった。

 

一刀「それじゃあ、送ってくれ。」

 

貂蝉「ええ、頑張ってねん♪」

 

一刀「またな。」

こうして一刀は再び外史に旅立った。

 

 

 

 

 

 

これまでの経験で一刀は【手を汚す覚悟】を手に入れ【心の甘さ】を捨てた。

 

 

 

 

 

 

しかし、この時の彼はまだ現実を知らない【口だけの糞餓鬼】だった・・・・・・。

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61回目の外史終了後

 

正史と外史の狭間

 

 

一刀「此処か・・・・・なんか久し振りだな・・・・・。」

既に目を覚ました一刀はそう呟いた。

 

 

 

 

 

ヒュッ!

 

 

 

 

 

ガッ!

 

 

 

 

 

一刀は後の気配を感じ取り蹴りを放った。

一刀「久し振りだな貂蝉。」

 

そして、その蹴りを蹴りで防いだのは貂蝉だった。

貂蝉「ええ、久し振りねん♪

   ご主人様〜〜〜〜ん?」

 

一刀「で?

   今度は何で呼び出したんだ?」

 

貂蝉「ご主人様もかなり強くなったから次のステップに進もうかと思ったのよん♪」

 

一刀「強くか・・・・・・。」

 

貂蝉「どうかしたのん?」

 

一刀「いや・・・強くはなったよ・・・・・力ばっかりな・・・・・・・。」

この時の一刀は恋と互角に戦えるまでに成長していた。

しかし、一刀は嬉しい顔ひとつせず其れ処か何処か自分に対して呆れている様だった。

 

一刀「あの時、此処で外史を救うなんてデカイ事を言ったよな・・・・・・。」

 

貂蝉「ええ・・・・・・。」

 

一刀「結果は先の外史1つだけ・・・・・・・。

   恐らく、大佐や部隊の皆が居なければあの外史も滅んでただろうな・・・・・・。」

この時の一刀は【韋駄天】も【ルナ・ライト】も習得していなかった。

それ故にテリーの様に外史を道連れに自爆する管理者の対策や外史を破壊する装置の破壊も出来なかった。

それ以前に管理者の力は強大な為に一刀一人で追い込めたのは稀だった。

時に管理者は複数人で襲って来る時もありその時はほぼ瞬殺されていた。

 

一刀「あの時の俺はデカイ事ばっか言う【口だけの糞餓鬼】だったんだ・・・・。

   まったく、あの時の自分を思い出すと反吐がでるよ・・・・・。」

 

貂蝉「・・・・・・・・。」

 

一刀「このことに気付くだけに俺は多くの人達を犠牲にしたんだな・・・・・。」

 

貂蝉「そのわりには、あまり思い詰めてはいないみたいねぇん。」

 

一刀「それは多分、大佐の・・・・【白銀大佐】のお陰かもな。」

 

貂蝉「白銀大佐って確か・・・・・。」

 

一刀「ああ、そうだ【白銀 武】大佐。

   俺と同じで何度も世界を繰り返す【イレギュラー】な存在の人だ。」

 

貂蝉「あれは驚いたわ。

   まさか、ご主人様の様な存在がいたとわね・・・・。」

 

一刀「まぁ、本人の話だと今回のループはいつものループとかなり状況が違ってたそうだけど。」

 

貂蝉「それで、彼と何があったのよん?」

 

一刀「ん?

   ああ、あれは確か【桜花作戦】の一週間程前だったかな・・・・。」

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回想

 

2001年 12月18日

国連太平洋方面第11軍・横浜基地

 

 

一刀「う〜、かなり寒くなってきたな・・・・・。」

夕食を終えて基地の外を散歩していた一刀がポツリと呟いた。

 

一刀「後・・・一週間か・・・・・。」

一刀がこの世界にやってきて2年の月日が経っていた。

そして、この時から一週間後12月25日に人類存亡を賭けた【BETA】への大反抗作戦。

【桜花作戦(オペレーション・チェリーブロッサム)】が開始されようとしていた。

 

一刀「俺・・・生き残れっかな・・・・・・。」

 

?「ハハッ、安心しろよ。

  誰も死なせねぇから。」

 

一刀「!?」

突然の後からの声に一刀は振り返った。

すると、一人の青年がいた。

 

一刀「白銀中佐・・・・・。」

【白銀 武】一刀と同じく世界を繰り返し【因果導体】と呼ばれた男。

そして、【世界最強の衛士】と呼ばれている男である。

階級は中佐。

この時の一刀の階級は大尉、本来なら話しかけられた時は敬礼をするのが礼儀である。

しかし、武自身がそういった軍の規律を苦手としている為彼の率いる部隊は規律をとり払っている。

 

武「よう、どうした柄にも無く緊張してるのか?」

 

一刀「俺だって緊張ぐらいしますよ。

   それより、良いんですか?

   俺は前もって聞かされてたから良いですけど。

   今日、聞かされたアイツらガチガチでしたよ。」

 

武「アイツらのケアはちゃんと後でするさ。

  その前にまずお前だな。

  今日のブリーフィング中なんか考え事してたろ。

  何考えてたんだ?」

 

一刀「今まで救えなかった外史の事を考えてました。」

一刀は武に外史の事を既に話していた。

また、自分が元々武と同じく平和な世界から連れてこられた事も。

 

一刀「中佐、俺は昔さ知り合いに言ったことがあるんだ。

   犠牲を出さない為に道連れにしてでも管理者を倒して外史を救うって・・・・。」

 

武「・・・・・・・。」

 

一刀「けど、結果はどうだ。

   俺はあれから一度も世界を救えちゃいない。

   俺の所為で何十という世界、何千億人の人間が犠牲になっちまった・・・・・。」

 

武「・・・・・・・。」

 

一刀「怖いんですよ・・・・・。

   俺は・・・・また何も救えないんじゃないか・・・・。

   また、何も知らない人達を殺すんじゃないか・・・・・。

   また、世界を滅ぼすんじゃないか・・・・・・。

   そう思うと怖くて震えが止まらないんです・・・・・・。」

そう言って一刀は自分の震える体を抱きしめた。

すると、ずっと黙っていた武が口を開いた。

 

武「一刀、ちょっと着いて来い。」

そう言って武は一刀の肩を叩き基地の正門に向かって歩きだした。

 

横浜基地:正門

 

正門近くにくると見張りの兵が2人立っていた。

すると見張りはこちらに気付いた様で慌てて敬礼をした。

見張りA「し、白銀中佐、北郷大尉外出ですか?」

 

武「まぁ、そんなところかな。

  あと、伍長。

  俺に敬礼とかは必要ないっていつも言ってんじゃん。」

 

伍長B「これは軍人の性といいますか習性みたいなものなんで勘弁して下さい。」

 

武「そういう事なら仕方がないか。」

 

その後、伍長達と軽く談笑し別れて外に出た。

武の後に着いて行くと其処には桜並木が広がっていた。

そして、武は桜の木の下で立ち止まった。

 

武「此処には多くの先達が・・・語られることのない英雄達が眠ってることは話したよな。」

 

一刀「はい。

   此処は戦いの中で散っていった者達が眠る場所だと・・・・。」

 

武「ああ、そして俺の仲間も此処に眠っている・・・・。

  冥夜、委員長、たま、彩峰、美琴、柏木、伊隅大尉、速瀬中尉、涼宮中尉、神宮寺軍曹。    ・・・・・・・・そして純夏。」

 

一刀「!?

   それって・・・・!?」

 

武「そうだ、今のヴァルキリーズ。

  そして、俺の前の世界の【伊隅ヴァルキリーズ】の皆と教官だ・・・・・。」

そう言って背を向けていた武は一刀の方を向いた。

 

武「結論から言うな。

  一刀、お前に世界は救えない。」

 

一刀「ーーーーっ!?」

一刀は息を飲んだ。

武は一刀が目指したものを真っ向から否定したのだ。

 

すると、武はその事に気付いたのか続けて言った。

武「言い方が悪かったな。

  一刀、世界なんて誰にも救えやしないんだ。」

そう言うと武はまた桜の木の方を向いて語りだした。

 

武「前の世界でな『何の為に戦うか』って訊かれてな。

  俺は『人類と世界を救う為』って言ったんだ。

  あの頃の俺は本気で全人類と世界を救う気でいた。」

武は嘗て一刀と同じ理想を持っていた事を明かした。

 

一刀「中佐も世界を救えなかったんですか?」

 

武「いや、俺は【桜花作戦】を成功させ無事に帰還し人類に希望を与えた。

  その後もあの世界に残り戦い続け月攻略で【ハイヴ】を残り一つまで辿り着いた。

  その頃には【白銀の流星】だとか呼ばれてたけな・・・・。」

そう言うと武はその事を誇る様な顔をせず哀しい顔で再び語りだした。

 

武「けど・・・それまでに俺は多くの人に迷惑を掛け犠牲にしてしまった・・・・・。

  ただ未来を知ってるだけで【夕呼先生】を焦らせ追い詰め。

  俺が何時までも立ち直れなかった所為で【神宮寺軍曹】は【兵士級】に殺され。

  現実から逃げた所為で元の世界の【まりもちゃん】と【純夏】は犠牲になった。

  そして、続く戦いの中でヴァルキリーズの皆も・・・・・・。」

そして、武はもう一度一刀を見ていった。

 

武「一刀、世界は人類の命は一人で救えるほど軽くねぇんだ。

  俺がどれだけ戦術機の扱いが上手くても。

  お前がどれだけ強くて凄い力が使えても。

  所詮、俺達は一人の人間だ。

  世界は人一人が救えるほど軽くねぇんだよ。」

 

一刀「それじゃあ、諦めろって言うんですか?!

   俺の所為で消えてしまう世界をそこに存在する命を!?」

一刀は武に声を荒らげて反論した。

それを聞いた武は・・・・・・

 

武「・・・・・・・ハァ。」

苦笑いしながら溜め息をついていた。

 

一刀「な、なんですか?!」

 

武「いや・・・ここまで昔の俺にそっくりだと呆れるというか自分が情けなくなるというか・・・・・。」

などと呟いていた。

 

武「一刀、俺は【一人では救えない】って言ったんだ。

  何で周りを頼ろうと考えないんだ?」

 

一刀「!?」

一刀は再び息を飲んだ。

【誰かと協力して何かを成し遂げる】

それは、彼が嘗て居た外史で心掛けていた事。

そして、今の自分はその事を完全に忘れていた事実に。

 

武「今のお前は昔の俺だよ。

  周りより能力を持ち過ぎた所為で大切な事を忘れている。

  そんなんじゃ、仮に世界が救えてもきっと後悔するぞ。」

 

一刀「・・・・・・・。」

 

武「俺は、あの【桜花作戦】以降【全人類を救う】なんて大層な目的は捨てた。

  あの日から俺の目的は一つ【仲間を誰一人死なせない】ことだ。

  皆と背を護り合って戦い続ければきっと世界だって救える。

  俺はそう信じている・・・・・・。」

 

一刀「背を護り合って戦う・・・・・・。」

 

武「そうだ。

  もっとも、今のお前には無理だがな。」

 

一刀「何故ですか?」

 

すると、武は険しい眼差しで言った。

武「『道連れにしてでも』なんて簡単に言える馬鹿に何かが救えると思ってんのか?」

武は怒気を放ちながら言った。

その怒気は歴戦の猛者の一刀がたじろぐ程の物だった。

 

武「以前、【ネズミ】を処理する時に躊躇していた奴らにお前は言ったよな。

  『どうしても割り切れないなら殺してしまった奴らの無念を背負ってやれ』って。

  お前が背負っている人達の無念はそんなにも軽いのか?」

 

一刀「ーーーー?!」

 

武「死ぬって事はお前の背負った無念も無駄になるってことだ。

  そして、お前は気付いてないが俺達みたいな人間はもう一つ背負わなきゃいけないものがある。」

 

一刀「背負わなきゃいけないもの・・・・・?」

 

武「犠牲になった人達、救えなかった人達の意志だ。

  お前のその行動はその人達の命を犬死にさせるのと変わらない。」

 

一刀「・・・・・・・・。」

 

武「俺がいつまでも立ち直れなかった所為で【兵士級】に頭から喰われた【神宮寺軍曹】も。

  俺が現実から逃げた所為で精肉機で頭を潰されて殺された元の世界の【まりもちゃん】も。

  バスケットボールのゴールの下敷きになり重体になった元の世界の【純夏】も。

  【甲21号作戦】で凄乃皇破壊作業を単機防戦して【要塞級】に溶解された【柏木】も。

  自らの命と引き換えに【凄乃皇弐型】を自爆させBETAの本土上陸を阻止した【伊隅大尉】も。

  【横浜基地防衛戦】で後ろから迫る【闘士級】の恐怖から逃げずに停止コードを打ち込んだ【涼宮中尉】も。

  【反応炉】を破壊する為に命を引き換えにした【速瀬中尉】も。

  【桜花作戦】で死力を尽くした【委員長】も【彩峰】も【美琴】も【たま】も。

  【あ号標的】を道連れに逝った【冥夜】も。

  最期まで力を振り絞り命を燃やした【純夏】も。

  誰一人として犬死にもしなかったしさせなかった。

  誰一人として軽い命など一つもなかった。

  お前の知り合った人達の中に軽い命はあったのか?」

 

一刀「・・・・・・・・・。」 

一刀は黙ったままだった

しかし、その姿は今までの事を後悔し悔やんでいるのは明らかだった。

 

武「北郷一刀大尉!!」

 

一刀「!?

   ハッ!!」

そんな姿の一刀に武はいきなり号令をとばした。

それを聞いた一刀は背筋を伸ばし前を向いた。

 

武「北郷大尉、部隊規を復唱しろ!」

 

一刀「死力を尽くして任務に当たれ!

   生ある限り最善を尽くせ!

   決して、犬死にするな!」

 

武「仲間の為に死力を尽くしたか?」

 

一刀「はい!尽くせてません!」

 

武「仲間の為に生ある限り最善を尽くしたか?」

 

一刀「はい!尽くしていません!」

 

武「貴様は犬死にしたか?

  仲間を犬死にさせたか?」

  

一刀「はい!犬死にしていました!

   仲間達を犬死にさせていました!」

 

武「ならば、貴様は今後どうする?」

 

一刀「この部隊規を胸に刻み死力の限り最善を尽くして戦い続けます!」

 

武「よろしい。」

武は一刀の応えに満足して笑みを浮かべた。

ちなみに男の一刀には効かないが彼の笑顔を基地の女性士官達には【堕としの笑みver.白銀】と言われている。

蛇足だが【堕としの笑みver.北郷】も存在する。

 

武「さて、随分話し込んじまったな。

  そろそろ、基地に戻るか。」

 

一刀「そうですね・・・・・・・あっ。」

 

武「どうした?」

 

一刀「そういえば、中佐って食事後に純夏さんに呼ばれてたんじゃ?」

 

武「・・・・・ヤバ、忘れてた。」

先程まで威厳全開だった彼の姿は何処へやら。

今は忘れていた用事をどう対処するか冷汗を掻きながら悩む情けない青年だった。

 

 

 

 

 

ゾクッ

 

 

 

 

 

一刀・武『?!』

歴戦の猛者である一刀と武でさえ震える殺気に2人は基地の方を向いた。

すると其処には・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅いアホ毛を鬼の角の様に逆立て不機嫌オーラ全開の【鬼】が向かって来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「タ〜〜ケ〜〜ル〜〜ちゃ〜〜ん!!」

 

武「す、純夏・・・・・・。」

武は彼女の名前を絞り出す様に言った。

 

【鑑 純夏】

階級は少尉

武の幼馴染みにして彼女。

そして、白銀武にとって最大の天敵である。

 

純夏「私、ずっ〜〜〜〜〜と寒い中屋上で待ってたんだけど?」

 

武「いや・・・・悪いとは思ってるぞ。

  その・・・・これには大変深い訳が・・・・・・。」

 

純夏「どうせ武ちゃんのことだから一刀君と相談事でもしてたんでしょ?」

 

武「おお、さすが純夏!

  良くわかってんな!!」

 

純夏「けど、相談事の前に私に一言あっても良かったんじゃないかな?

   お陰で一時間ずっ〜〜〜〜と寒い屋上で待ってたんだけど?」

ちなみに純夏との約束の時間から既に1時間と15分経過していた。

 

武「そのだな・・・・・・・。」

最早、武に逃げ道は無かった。

吃っている間にも純夏の不機嫌オーラはドンドン増大していく。

そして、追い詰められた武は・・・・・・

 

武「オーディン01よりオーディン04へ!

  至急、援護射撃を要請する!!」

一刀に助けを求めた。

 

一刀「ええっ?!!」

 

純夏「一刀君?」

その目が語っている。

「邪魔をするなら君も星にしちゃうよ♪」と。

 

一刀「こちらオーディン04。

   勇気という名の弾薬が切れた為援護は不可。

   また、恐怖という名のジャミングを受けた為機器に異常あり。

   速やかに現戦域から離脱します。」

そう言って一刀は武あっさり切り捨て脱兎の如く逃走した。

 

武「オーディン04ーーーーーーーーー?!!」

 

純夏「タケルちゃんの・・・・・・」

遂に不機嫌が限界に達っした純夏は右手を引いた。

 

武「待って?!純・・・・」

 

純夏「バカァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

武「チョバムッッ!!!!」

武は全てを言い終える前に星になった。

 

一刀「白銀中佐・・・・・・。」

一刀は静かに涙を流し星に向かって敬礼をした。

そして、この日武は月面のハイヴを偵察。

その後、生身で大気圏突破をするハメになった。

 

回想終了

-12ページ-

一刀「まぁ、こんな事がな・・・・・・。」

 

貂蝉「そう・・・・・。(最後のが無ければ本当に良い話なのに・・・・・・。)」

 

一刀「大佐は気付いていないって言ってたけど・・・・。

   本当は気付いてない振りをしていたのかもな・・・・。」

 

貂蝉「何にがかしら?」

 

一刀「救えなかった人達の事だ。

   本当は救えなかった人達の意志を背負うことで何の罪もない何千億人を殺した事を認めるのが怖かったんだ

   と思う・・・・・。」

 

貂蝉「・・・・・・・・。」

 

一刀「でも、俺は背負うべきなんだ。

   救えなかった人も殺した人も関係なしに。

   そして、死力を尽くし最善を尽くして戦い続けるべきなんだ。

   その人達の死を犬死にさせない為に・・・・・・。」

 

貂蝉「ご主人様・・・・・。」

 

一刀「ん?」

 

貂蝉「思いっ切り抱きしめて良い?」

真面目な雰囲気が一瞬で砕け散った。

 

一刀「弾くぞ、テメェ・・・・・。」

さすがの一刀もこれにはイラッときた様で懐から横浜基地に所属されてから愛用していた【ベレッタM92】を取り出した。

 

貂蝉「だぁ〜て〜?

   ご主人様たら心身ともに逞しく成りすぎよん?

   私をどれだけ惚れさせるきよん?」

クネクネと貂蝉は大変気持ち悪い動きをした。

 

一刀「・・・・・・。<ガチャ>」

一刀は無言でスライドを引いた。

 

貂蝉「さて、本題に入ろうかしら。」

貂蝉は無理矢理真面目な雰囲気を引き戻した。

一刀もこれ以上の無駄な時間の浪費を避ける為銃を懐に戻した。

 

貂蝉「それじゃあ、ご主人様。

   これを渡すわ・・・・。」

貂蝉は赤く輝く玉を出現させた。

 

一刀「それは・・・・・。」

 

貂蝉「察しの通り。

   これは、ご主人様の記憶の結晶【紅玉】。」

 

一刀「そうか・・・・。」

一刀は貂蝉から【紅玉】を受け取り胸に当てた。

すると、【紅玉】は彼の体内に沈み込んでいく。

 

一刀「ぐっ!!」

頭に激痛がはしった。

しかし、永き戦いを経た一刀は痛みへの耐性はかなり付いた為前回の様に絶叫することは無かった。

そして、彼の頭に記憶が流れ込んだ。

 

 

 

 

 

雪蓮・蓮華・小蓮・冥琳・穏・思春・明命・祭・亞莎

 

 

 

 

 

        死に逝く最愛の二人

 

 

 

 

 

        産まれてくる子供達

 

 

 

 

 

一刀「そうか・・・・・・・。」

一刀は静かに涙を流した。

 

一刀「在ったんだな・・・・・此処にも救えなかったのが・・・・。」

その涙は救えなかった最愛の二人と自らの策で殺した最愛の人に向けたものだった。

 

貂蝉「・・・・・・・。」

貂蝉は暫く黙ったまま一刀を見守った。

 

数分後

 

一刀「すまん・・・・待たせた。」

 

貂蝉「気にしなくて良いわ。

   それじゃあ、本題に入るわね。」

 

一刀「ああ。」

 

貂蝉「内容は前回ご主人様が訊いた事。

   そう、ご主人様の記憶を抜き取り管理していた理由よ。」

 

一刀「!!」

一刀は息を飲んだ。

そして、貂蝉は事の真相をゆっくりと語りだした。

 

貂蝉「まず、ご主人様。

   何かこの事で疑問に思った事がある筈よ。」

 

一刀「ああ、繰り返してる事だ。

   無限にある外史で的確にあの外史を3回も繰り返している。

   幾ら何でも偶然にしては不自然過ぎる。

   そんなに簡単に繰り返せるなら俺はとっくにあの外史に行ってる。」

 

貂蝉「そう、本来ならそんな事態はありえない事。

   ならばどうしたか?

   それは、ご主人様の存在をあの外史に縛ったからよ。」

 

一刀「俺の存在を縛る?」

 

貂蝉「外史が終わりを迎えてもそこに留まり別の外史に飛ばされないようにしたのよ。」

 

一刀「なるほど。

   何でそんな事を?」

 

貂蝉「ご主人様、否定派の仕事は?」

 

一刀「外史の【監視】そして【イレギュラーや正史に影響を及ぼす外史の抹消】・・・・そうか。」

 

貂蝉「そう、否定派は三国を平定させ正史に影響を及ぼすイレギュラーのご主人様を抹消しようとしたの。

   私達はそれを未然に防ぐ為ご主人様を一時的に避難させ外史を正史に影響を及ぼさない所まで

   逆行・再構築したのよ。」

 

一刀「けど、何の為に記憶を?」

 

貂蝉「ご主人様、蜀で学んだ事だけで管理者への対抗策は考えつく?」

 

一刀「無理だな。」

 

貂蝉「そう、だからご主人様には他でも学んで欲しい事があった。

   その為には記憶が邪魔でしょう?」

 

一刀「そうだな。

   記憶があったら間違いなくそこに行きそうだ。」

 

貂蝉「さて、納得してくれた所で話を戻すわねん。

   ご主人様が2回目の外史を終了させ否定派が動き始めた頃に再び外史の再構築を行ったわ。

   でも、再構築の段階で否定派にある細工をされてしまったの。」

 

一刀「細工?」

 

貂蝉「【正史に何らかの影響を及ぼした時存在の縛りを破壊そして外史からの強制退去】の細工をね。

   さらに、細工を無理矢理外すと外史ごと壊れるようにね。」

 

一刀「なるほど。

   それで、それを知った管輅は俺に忠告をしてくれた。

   ところが、俺は忠告を無視してめでたく外史からの強制退去をくらったと。」

 

貂蝉「まぁ、そういうことね。」

 

一刀「そうか・・・・・。

   貂蝉、色々とありがとな。」

そう言って一刀は頭を下げた。

 

貂蝉「私は御礼を言われるような事はしてないわん。

   それどころか、ご主人様の人生を弄んだと言ってもいい。

   恨まれても不思議じゃないのよ?」

 

一刀「けど、それしか手が無かったんだろ?

   だったら、やっぱりお前は俺達の恩人だよ。

   だから、御礼を言うのは間違ってない。」

 

貂蝉「ふふっ、わかったわん♪

   それじゃあ、感謝のついでにご主人様の熱いキスを・・・・」

 

一刀「調子に乗るなよ♪」

一刀は再び懐の銃に手を掛けた。

 

貂蝉「ご主人様のいけず〜。」

 

一刀「黙らっしゃい。

   それより、俺も訊きたい事がある。」

 

貂蝉「何かしらん?」

 

 

 

 

 

一刀「俺の身体は今どうなってんだ?」

 

 

 

 

 

先程の軽い空気が一瞬で飛散した。

貂蝉も真面目な顔つきになった。

そして、一刀は話を続けた。

一刀「俺達が火星のハイヴ攻略の時、【A−00】と【A−01】のメンバーは殆ど50近い年齢だった。

   それ故に、肉体がついていかない退役する奴もいた。

   ところが、俺の肉体は【桜花作戦】の時と大して変わらず老化することがなかった。

   貂蝉、お前はこの理由を知ってるんじゃないのか?」

 

貂蝉「・・・・・・・。」

貂蝉は黙ったままだった。

しかし、暫くすると貂蝉はその重い口を開けた。

貂蝉「ご主人様、いつも別の外史に向かう時肉体ってどうなってた?」

 

一刀「そういえば、鍛えた肉体はそのままで年齢は18位に戻ってたな。」

一刀はある外史で30過ぎまで過ごしてた事があった。

しかし、死亡して別の外史に向かうと一刀の肉体は外史に来た頃に戻っており。

其れ処か、鍛えた肉体は引き継がれた為衰え始めの頃を遥かに凌ぐ力を手に入れていた。

 

貂蝉「それはねん、ご主人様の願望・・・『強くなりたい』という願望が原因なの。」

 

一刀「俺の・・・・願望・・・・。」

 

貂蝉「そう。

   ご主人様のいまの実力ってどれ位かしら?」

 

一刀「そうだな・・・・魔法とかも使って恋と互角。

   武力のみなら春蘭と愛紗を纏めて相手出来るぐらいかな・・・・。」

 

貂蝉「それだけの力と知識。

   ご主人様は通常通りの肉体で習得可能かしら?」

 

一刀「はっきり言って不可能だな。」

肉体は30記憶力は20から本格的に老化が始まる。

記憶力はともかく肉体の老化はどうしようもない。

当時の一刀は17歳。

残り13年で今の実力になるのは不可能。

ハヤウェイ達の様な師に会うのは異例中の異例。

一刀が13年どれだけ頑張っても今の力の習得は不可能なのである。

 

貂蝉「そう、不可能よ。

   そこで、ご主人様の願望は老化という名の留め具を外したのよ。」

 

一刀「老化しなければ肉体も知識も死なない限り鍛えられるって訳か。

   けどそれはループ時のみの事だろ?

   なんで今回は外史最中に外れたんだ?」

 

貂蝉「60回もの老化の初期化。

   更にご主人様が人生で習得出来る量を遥かに上回る経験値。

   これだけあれば老化の留め具なんて簡単に外れるわ。」

 

一刀「なるほど・・・・。」

 

そして、貂蝉は次に衝撃的な事実を言った。

貂蝉「ご主人様。

   今のご主人様の留め具は例えるなら破損状態。

   放っておけば自然に修復されるわ。

   でも、後数回同じ事をすれば確実に消し飛ぶわ。

   そうなれば、修復は不可能。

   ご主人様は不老の肉体になる。

   つまり、何らかの致命的なダメージを受けないと死ねないってことよ。」

 

一刀「そうか・・・・これがお前の言う【次のステップ】か。」

   

貂蝉「そう、仲間が最愛の人が老いて死ぬ中ただ一人老いることなく死ねない。

   そんな孤独を背負う覚悟はある?

   正直・・・こんな業をご主人様に背負って欲しくないわ・・・・・・。」

一刀の覚悟の確認の最後に貂蝉は小さく正直な感想を漏らした、。

 

しかし、一刀は迷うことなく言い放った。

一刀「悪いな貂蝉。

   俺は外史の旅を続ける。

   ここで止めれば今までの犠牲が全て犬死になる。

   それだけは許せないんだ。」

 

貂蝉「ご主人様の覚悟はわかったわん。

   なら、私はそれを精一杯応援するだけよん。」

 

一刀「色々とすまないな。」

 

貂蝉「どっふふふ♪

   私はいつだってご主人様の味方よん♪

   でも、一つ忠告があるわん。」

 

一刀「何だ?」

 

貂蝉「ご主人様、サタンちゃん以降管理者何人倒した?」

 

一刀「4人。

   追い詰めて自爆されたの合わせると13人。」

 

貂蝉「人間が単独で管理者を追い詰めるなんて事は異常よん。

   恐らく、否定派管理者は今まで以上にご主人様を警戒するでしょうね。」

 

一刀「うわっ、めんどくさ?!」

 

貂蝉「それに今一部の否定派管理者にご主人様はこう呼ばれてるわ・・・・【管理者殺し】と。」

 

一刀「【管理者殺し】・・・・・。」

 

貂蝉「とにかく、今後は管理者には一層注意してちょうだい。」

 

一刀「わかった。」

 

貂蝉「次会う時はあの外史に行く前かしらね。」

 

一刀「そうか、早い再会を期待する。」

そう言って一刀は新たな外史に旅立った。

 

 

 

 

 

こうして一刀は【全ての業を背負う覚悟】を手に入れ【人間】を捨てた。

-13ページ-

現在

 

正史と外史の狭間

 

 

一刀「最後の記憶の結晶だと・・・蜀と呉以外にもあったのか。」

 

貂蝉「ええ。

   でも、この記憶を受け取るかはご主人様に任せるわ。」

 

一刀「何でだ?」

 

貂蝉「この記憶はご主人様にとってマイナスにしか働かないからよん。

   それでも受け取る?」

貂蝉はそう言ってどこか渡すのを渋っている様だった。

 

しかし、一刀は迷うことなく【偽白玉】を手に取った。

一刀「悪いな貂蝉。

   俺の記憶である以上俺にはそれを知る【責任】がある。」

そして一刀は【偽白玉】を胸に当てた。

 

 

 

 

 

すると一刀を襲ったのは頭痛ではなく激しい吐き気だった。

 

 

 

 

 

一刀「なんだ・・・・これ・・・・は!?

   憎しみ・・悲しみ・・・・・嘆き・・・・絶望?」

負の感情が一斉に押し寄せてきた。

そして、記憶の流入が始まった。

 

一刀「うぐっ・・・ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!!」

しかし、今までの記憶の流入と違いそれはもう【汚染】に近かった。

映る記憶もどれもこれもぼやけて解らなかった。

ところが、最後の部分だけ鮮明に映った。

-14ページ-

最後の記憶

 

一刀は片膝を着いていた。

一刀の前には道士服を着た男が二人立っている。

そして、一刀の前には共に幾多の戦場を駆けた少女達の亡骸が転がっている。

 

道士B「どうします左慈?

    このまま放っていても彼は元の世界に戻ります。

    それとも、やはり此処で殺しますか?」

 

左慈「当然だ。

   俺はその為に此処にいる。」

左慈と呼ばれた男は一刀を殺すと言った。

しかし、当の一刀は虚ろに少女達の亡骸を眺めているだけだった。

 

一刀(そうか・・・・俺・・・殺されるのか・・・・。

   それでも良いか。

   死ねば彼女達の所に行けるのだろう。)

そして、一刀は生きることを諦め静かに目を瞑った。

しかし、いつまで待っても何も起きない。

不思議に思った一刀は前を見た。

すると、左慈は不機嫌な顔をしていた。

 

左慈「気に入らん!

   散々手間取らせたくせに最後で惨めに足掻きもしない!

   それどころか死を受け入れてやがる!

   全く以て気に入らん!!」

 

道士B「では、このまま還しますか?」

 

左慈「・・・・・・いや。

   良いことを思いついた。」

そう言うと左慈は一刀に近づき。

 

一刀「ぐはっ?!!」

左慈の腕が一刀の胸を貫いた。

 

一刀(ああ・・・・・・死んだな。)

そして一刀は息を・・・・・

 

 

 

 

 

一刀「あれ?」

 

 

 

 

 

引き取る筈だった。

 

一刀「何で生きてるんだ?」

惚ける一刀。

しかし次の瞬間・・・

 

一刀「ーーーっ?!!」

不快な感覚に襲われた。

まるで、体から柱となる物を抜き取られた様だった。

 

一刀「何をした!?」

 

左慈「なに記憶を抜き取ってるだけだ。」

 

一刀「なんだと!?」

 

左慈「お前は此処での事を全て忘れて元の世界に還るんだ。」

 

一刀「?!

   くそっ!!離せ!!!離しやがれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

一刀は暴れようとしたが指一本動かせなかった。

 

一刀「ちくしょう!!やめろ!!やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!

   左慈ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」

激しい怒りと絶望を胸に彼は血の涙を流し絶叫した。

 

左慈「ハハハッ!!

   良いぞ北郷一刀!!

   自分の無力を嘆け!!

   現実に絶望しろ!!

   そして!その理由を全て忘れてしまえ!!!」

 

一刀(いやだ・・・・いやだ・・・・・忘れたくない・・・・・・・・・。

   翠・・・・・・・・・・・紫苑・・・・・・・・・・・・・・・・星

   朱里・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・鈴々・・・・・

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・愛紗

   ・・・・・・・・・・・・・・俺は・・・・・・・・・・・彼女達を

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・彼女達って誰だ?)

そして、一刀は意識を失った。

-15ページ-

一刀「貂蝉・・・・・今の記憶は・・・・・?!」

頭を押さえてフラフラと立ち上がった。

 

貂蝉「あれは初めてご主人様があの外史に降りた記憶。

   ご主人様が繰り返してた外史はあの外史を元に作り直した物なのよん。」

 

一刀「今までと違って思い出したというより見せられた感覚に近い理由は?」

 

貂蝉「本物のご主人様の記憶は奪われたままなの。

   その記憶はご主人様に残っていた記憶の欠片を掻き集めこちらの管理記録と合わせた合成品。

   故に【偽白玉】。」

 

一刀「なるはど、合成品は本物の輝きは放てないって訳か。

   けど貂蝉。

   どうやら・・・・・・この憎しみと絶望は本物みたいだな・・・・・・。」

そう言って一刀は笑った。

しかし、その笑顔は普段の優しさなど微塵もなく負の感情で歪んだ表情だった。

 

貂蝉(やっぱり・・・こうなったわね・・・・。)

本来【偽白玉】は輝きこそしないが光の反射ぐらいはする物だった。

それをあそこまで白く【濁らせた】原因は媒体っとなった一刀の記憶にあった。

   

貂蝉(ご主人様の媒体となった記憶の感情は【憎悪】。

   あの時の憎しみと絶望は一度記憶を抜き取った程度で消える代物ではなかったわ。

   それ程の感情が今蘇った。

   ご主人様が憎しみに囚われなければ良いけど・・・・・・。)

貂蝉はそう思いながら心配そうな顔で一刀を見ていた。

 

すると、その顔に気付いた一刀が貂蝉に言った。

一刀「そんな顔するな貂蝉。

   これでも200年以上修行したんだ。

   感情の制御位は出来るさ。

   俺の目的は【彼女達を否定派から護る】事。

   それだけだよ。」

力強くそして透き通った眼差しで言った。

 

貂蝉「そうね・・・今のご主人様だったら心配なかったわねん♪」

そう言って貂蝉はいつもの調子に戻った。

 

貂蝉「さて、それじゃあそろそろ送るわねん。

   けど、その前に装備はどうする?」

 

一刀「そうだな・・・もう此処に戻って来るかも判らないからフル装備で頼む。」

 

貂蝉「わかったわ〜ん♪

   ぶるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

貂蝉が吼えた。

すると、幾つもの装備が現れた。

 

一刀「久し振りだな。

   お前ら・・・・・。」

そう言って一刀は装備を手に取った。

 

左腕に【プリズム・リング】。

 

右腕に片腕だけの鈍く輝くガントレット。

 

懐に短筒を仕舞い。

 

布に巻かれた二本の長い筒を背負い。

   

【長曽祢虎徹】を左腰に。

 

【陸奥守吉行】を右腰に。

 

そして、白く輝く【聖フランチェスカ学園の制服】を身に纏った。

 

一刀「これを着るのも久し振りだな・・・・・。」

一刀は聖フランチェスカ学園の制服を見ながら呟いた。

 

貂蝉「そ〜ね〜ん。

   三度目の外史以降着てなかったから大体200年振りかしら。」

 

一刀「それにしては妙にしっくりくるな・・・・。」

 

貂蝉「そ☆れ☆は、今のご主人様に合わせてサイズを調整したからよ〜ん♪」

 

一刀「・・・・本当、漢女って何でも有りだな・・・・・。」

もはや、一刀にツッコミを入れる気力は無かった。

 

貂蝉「あ、そうそう一応鞄も渡すわねん。」

一刀は妙にズッシリくる鞄を渡された。

 

一刀「これ何が入ってんだ?」

 

貂蝉「服三着にお金よん。

   むこうの外史で無一文は辛いでしょ?」

 

一刀「そうか、ありが・・・・・おい貂蝉。」

 

貂蝉「何かしらん?」

 

一刀「なんだよ?!この金貨の量は?!!」

 

貂蝉「だって、ご主人様。

   もう、此処には戻って来ないかもしれないんでしょ。

   だ☆か☆ら、ご主人様が救った外史で稼いだお金を全部むこう用に換金したのよん♪」

 

一刀「おいおい、この量は五年は遊んで暮らせるぞ・・・・・・。」

鞄の中には数百枚もの金貨が収められていた。

俗に言う『財力チート乙』な状態である。

 

貂蝉「それじゃあ、送るわねん。」

 

一刀「頼む。

   それと、今まで色々とありがとな貂蝉。」

 

貂蝉「昔にも言ったでしょん♪

   私はいつだってご主人様の味方だと」

 

一刀「そうだったな・・・・。」

一刀は微かに覚えている初めての外史の記憶を思い出し呟いた。

-16ページ-

一刀「今度こそ彼女達を救ってみせる。」

-17ページ-

                  北郷一刀の最後の戦いが始まった。

-18ページ-

〈あとがき〉

どうも_(._.)_

 

お久し振りです。朱槍で御座います。

 

今回も妄想の限り全力で突っ走らせて頂きました。

 

現在、登場人物の元ネタが解らない人用に設定資料を作らせて頂いてます。

(大量のネタバレ成分を含んでおります。)

 

さて、今回で投稿三つ目・・・・あれ?見習い卒業だ・・・・・。

 

正直、こんな妄想全開作品上げただけで卒業して良いのか疑問に思う自分がいます。

 

さて、前回の話で元ネタに反応してくれた方が三人もいるとは嬉しいことです。

 

仰る通り【プリズム】は〈プリズム・アーク〉から。

 

【韋駄天】は〈天ツ風〉から拝借しました。

 

〈プリズム・アーク〉は設定資料の方で詳しく紹介していますのでネタを知りたい方はお読み下さい。

 

さて、いよいよ三国志の外史に向かった一刀君!

 

彼が目を覚ました時に飛び込んだ光景は目を疑うものだった!!

 

続きは次回ということで・・・・・・。

 

それでは、また次回〜〜。

説明
一ヶ月振りの投稿だ〜ww
しかし、改めて自分の作品見直すと・・・・・

カオス度が悪化している・・・・orz

でも、後悔はしてない(キリッ

※2011:11:3 一般解禁しました(・ω・)ヾ
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コメント
氷屋さん>幻の左は解禁拒否ですか残念だorzマブラヴはやっぱり18禁か限定解除が一番良いです(`・ω・´)(朱槍)
ファントム撃ったら本人も宇宙まで飛んでいっちゃいますよwww360でマヴラブでるけど買わないだろうな・・・w(氷屋)
samuraikinnguさん>それは今後のお楽しみ♪ってことで(`・ω・´)b(朱槍)
さて、一体、一刀はどの軍勢でしょうか。それとも自分で国を立ち挙げるのか楽しみです♪(鬱くしき人)
N/Tさん>次回から一刀君の無双伝説が開始されますww(朱槍)
三郎べぇ=昌鹿毛さん>彼が報われる瞬間は・・・・・おっと此処からはR指定だ(`・ω・´)b(朱槍)
はりまえさん>次回からようやく恋姫ぽくなります。 長らくすいませんでしたorz(朱槍)
hedorockさん>ありがとうございます。 そう言って頂けると今後の励みになります!(朱槍)
氷屋さん>自分も書いてる時に暫くダウンしましたwww  はい、ドリルミルキィですwwファントム放ってやっても良かったんですけどねwww(朱槍)
無事に一刀がやってきたことが報われますように(三郎べぇ=昌鹿毛)
いろいろクロスしてきてもとの恋姫からかけ離れていくような・・・・(黄昏☆ハリマエ)
オリ設定だけれども外史云々についてしっかりと説明しており、やりすぎだけど納得できる展開 続き楽しみにしています(bal)
鼻先かすったって事は視界全部にピンクのあれが・・・ウゲwww、白銀ってマヴラブですかい、最後に武がくらってるのはドリルミルキィですねwww(氷屋)
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真・恋姫†無双 北郷一刀 クロスオーバー? 

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