「あ、得物を取りに行かなくては」

「そうですね・・・」

「むぅ・・・そんなに私と戦うのが御嫌ですかな？」

「いいや、そうゆうわけじゃないんだ」

星と戦うのは嫌いではない

ただ不安なのだ

性別が違ってもあの"趙子龍"なのだ

何に不安がってるのか自分でもわからないがとにかく不安なんだ

[場所　宿の庭]

「準備はよろしいですかな？」

星が槍を構える

「全然です！」

と、言いつつも一応構える

「趙子龍、参る！」

「話を・・・ああ、もう！太史子義！圧（お）して参る！！」

ガギィン！！！

俺と星の武器がぶつかり合い、金属音が響く

「はあああぁ！！」

趙子龍最速であろう突きが放たれる

避けれない・・・！

「・・・アレ？」

身体が勝手に動いた

身体が勝手に横に飛んでいた

「ッチ！」

星が舌打ちをする

「せいっ！やぁ！」

突き、払いと来る

「よっ、ほっ」

槍の刃の腹に軽くパンチをして突きを防ぎ、足元にせまる払いに飛んでかわす

「（なんでだ・・・？）」

攻撃はまったくと言っていいほど見えない

そう、見えないのだ

それなのにどうすればいいか、機械のように自動で動いてくれる身体・・・

「はああ！」

チッ・・・！

「・・・ふぅ」

頬に掠る

抗おうとすれば抗える

だが、動きにまかせれば確実に避けられる

「（まったくわからん・・・）」

俺が動いているわけでもないのに避けれる

変な感覚だ

こう、なんと言えばいいのか

・・・身体が覚えている？

それに近い

「やあああ！」

大ぶりに片手で槍が突かれる

「ッフ！」

地面を割るような勢いで蹴り、星の懐に潜り込む

「！！？」

それに気付いた星は余った腕で俺を殴ろうとする

「遅せぇ！！！」

星の顎に掌テイを打つ

「うぁ！？」

顎が押されたことにより顔が上に向く

「はぁ！」

星の腕に肘を打ち、槍を落とす

「しまっ・・・」

「ぶっ飛べえええ！！」

両手を突き出すように掌テイを放つ

「ぐあああ！？」

攻撃をくらい飛んでいく

「ふぅ・・・」

「いやはや。完敗ですぞ、猛殿」

「完敗じゃないよ。槍なんかまったく見えなかったもん」

場所は移り、食堂で晩御飯を食べている

「あんなにスラスラと避けていたではありませぬか」

「それなんだけどねー。なんか勝手に身体が反応して避けてくれたんだよねー」

「・・・なんですか？それは」

「さぁ？俺にもわかんない」

そう言い唐揚げを頬張る

うめぇ！

「それより猛殿、戦闘中すこし口調変わっておりましたぞ」

星はケラケラと笑いながら言う

「え・・・本当？」

「ふふ、ええ」

「具体的には・・・？」

「荒くなっておりましたぞ」

マジッすか・・・

俺、友達に「お前、仲の良い友達には口キツイよな〜」って言われたの思い出して、この世界じゃ極力普通にしようと心がけてたんだが・・・

え？親父？んー、論外なんで

「俺、いつも戦ってた相手って親父かゴロツキばっかだったんだよね。だからかな、多分」

「ほぉ、猛殿の父君ですか」

「まぁガキっぽい親だったよ」

「ふふふ、いいではありませんぬか」

「良い親ではあったけどね、ははは」

「やはり、父君も御強いので？」

「んー、どうだろ。前までは全然勝てなかったけど、今じゃ俺の方が強いかな」

「さすがですな。私は今でも、父上に一本もとれなんだ」

「へー、星が勝てないのか」

「ええ」

「一度あってみたいなー」

星の父親ってどんなだろう

やっぱ、厳しいのかな？

「ねぇ、星の父親ってどんな人？」

「そうですね、一言でいえば呑んだくれ、ですね」

「・・・へ、へぇそうなんだ」

一気にイメージ像が崩壊しますた・・・

「や、やめて下さい！」

そんな声が店内に響く

「なんだ？」

「なんでしょう？」

声がした方に顔を向ける

「なぁ、いいじゃねぇか。減るもんじゃねぇだろ？」

「い、嫌です！離して下さい！」

男が女性の店員の手をつかんでちょっかいをだしてるようだ

「俺ぁただ酌してほしいって言ってるだけだろぉ」

「痛っ！」

男が強引に引っ張る

「なー、いいじゃねぇか・・・」

「うーるーせーなー、この糞野郎！！！」

「ぐほ！？」

助走をつけて華麗にドロップキックをかます

男は転がりながら店の壁にぶつかる

「いってぇなぁ！こんガキャァあああああああ！！？」

「そーのーくーちーをーとーじーろー」

ドカドカと股間を蹴り続ける

「あああああああ！！すんませんでしたああああ！！！！」

すごい悲鳴をあげながら謝る

「よっしゃ、反省して帰れ」

「し、失礼しまましたあああ！！」

股間を抑えながら退場していく

「・・・やりすぎたかね？」

まぁいいべ

「助かりました！ありがとうございます！」

お礼をいいながら何度も頭を下げてくれる

「気にしないで。俺が好きでやったことだからさ」

「いえ！受けた恩は絶対に返さないといけないと思うんです！」

「恩って、んな大げさな・・・」

「恩は恩です！ぜひかえさせて下さい！」

「そういわれてもなぁ・・・あ、そうだ。俺は太史慈、字は子義って言うんだ。君は？」

「はい！孔融（こうゆう）と申します！」