SEASON 6.夢力の季節(5/6)
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いつの日からだろう?

 

昨日を忘れるようになったのは。

 

いつも1人でいるから思い出なんかいらないって思ったからかな。

 

朝起きてご飯を食べて

 

また寝て

 

お昼ご飯を食べて

 

また寝て

 

時々外を見て

 

夜ご飯を食べて

 

また寝る。

 

いつも同じ事を繰り返してるだけだから思い出なんてない。

 

悲しいから思い出なんかいらないって思えた。

 

でも大好きな人達に出会えたから忘れたくない。

 

これに書いていれば忘れない。

 

ずっと書いていきたい。

 

 

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人生初めてのバイト。

 

何かを変えたくてお母さんにお願いして許してもらった。

 

ドキドキしながらバイト先に向かったけど人がいっぱいいてビックリ!

 

誰かに話しかけて仲良くなれないかなって思ったけど

 

何て話変えていいかわからないまま集合がかけられちゃった。

 

集合したら仕事の説明されたけど円の頭じゃ全然わからなかった。

 

みんなと同じ様に働けばいいのかって思ってやってみたけど

 

失敗ばっかりでいっぱい怒られた。

 

初日で辞めたくなったけど

 

これじゃ駄目だって自分に言い聞かせて頑張った。

 

でもいつも怒ってきて嫌味を言ってくる人がいてもう泣きたかった。

 

そんな中いつもより多い人に囲まれて文句を言われた。

 

まだ何もしてないのに…

 

よくわからなかったけど円は謝るしかできなかった。

 

何もしてない!って叫んびたかったけど怖くてできなかった。

 

でも

 

「おい!お前らもうやめろよ」

 

誰かの一声で文句の嵐は止んだ。

 

何が起きたのか円にはわからない。

 

「遅くてイラつくのはわかるけどもう止めてやれよ。可愛そうだろ」

 

まだ円は何もしてないよ。

 

円の目の目の前にいた人が周りの人を連れてどっかに行った。

 

その影から出てきたのは学校で怖いとか不良だって噂されている神林慶斗君だった。

 

そう、慶兄との出会いだった。

 

慶兄は噂とは違って意外といい人に見えた。

 

思い切って一緒に仕事をしていいか聞いてみたらいいって言われた。

 

すっごい嬉しかった。

 

でも手伝わないって言われちゃった。

 

円も手伝ってもらおうって思わなかったから気にならなかったけど

 

慶兄はなんだかんだでいつも円を気にしてくれてた。

 

そして何より一緒にご飯を食べた時に自然に話す事ができた。

 

ただ純粋に嬉しかった。

 

でもやっぱり楽しい時間はあんまり続かなくて

 

すぐに具合悪くなることが多くなってきちゃった。

 

円がうずくまったりすると慶兄はすぐに気づいて大丈夫か?って

 

本当に心配した顔で聞いてくる。

 

円は大丈夫って言いたかったけどごめんねって謝っていた。

 

そしたら慶兄、もっと心配な顔して……

 

 

 

円にはそれが辛かった。

 

 

 

初めて仲良くなれた人にこんな顔してほしくなくてバイトを辞めた。

 

辞める日にちゃんと慶兄には言わないとって思って慶兄の所まで行ったら

 

今度会えたら好きなもの奢ってくれるって言ってくれた。

 

同じ学校だって知らなかったんだね。

 

 

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夏休みが明けて学校が始まった。

 

また円は1人で教室に座っていた。

 

慶兄とはうまく話せたのにクラスの人とは全然話せない。

 

なんでだろう?

 

でもいつものこと。

 

そう思うと悲しくなってきた。

 

ホームルームの時間になって周りは楽しそうな声でいっぱいになった。

 

円はこの体の事があるから最初から修学旅行には行かないって学校にも言ってある。

 

教室を抜け出し廊下をうろうろしても楽しそうな声は聞こえてくる。

 

円だって行きたいのに…

 

俯きながら泣くのを堪えて歩いていたら誰かにぶつかった。

 

慶兄だった。

 

慶兄はやっぱり同じ学校だって知らなかった。

 

そうだよね、クラスも違うし1年生の時も円はあまり学校に来てなかったし。

 

慶兄は班決めであと1人を探してるって言ったから

 

円は1人だって伝えた。

 

また慶兄に迷惑かけちゃうかもしれないけど

 

行かないって言ってあるけど……

 

 

 

円だって行きたいから。

 

 

 

そしたらみんなに聞いてみるからついてこいって一緒にみんなが待つ教室に歩いていった。

 

でもよくよく考えれば慶兄の友達って学校で噂されてる人達とあの人がいるんだって気づいて

 

ちょっと怖くなってきた。

 

いよいよ教室が近づいてきてドキドキが止まらなくなって

 

慶兄の後ろに隠れちゃった。

 

紹介されるのが恥ずかしくなっていつの間にか慶兄にみつからないようにした。

 

結局見つかってみんなの前に摘み出された。

 

それがみんなとの初めての出会い。

 

もうちょっと違う出会い方がよかったな。

 

うわ!どうしよ、どうしよ。

 

って考えていたら金髪の人が1年生じゃない?

 

って言ってきた。

 

何故かはわからないけど無性に頭にきて文句を言い返した。

 

そしたら金髪の人も文句を言い返してきた。

 

負けじと円も言い返していたら口喧嘩になってた。

 

 

 

 

拓坊との初めての口喧嘩。

 

 

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初めて慶兄の家に行った。

 

慶兄の家ではみんなで集まって夜ご飯を食べるのが日常になってる。

 

そんな中に円がいていいのかなって思って座る場所も落ち着かない。

 

唯姉と里優ちゃんが慣れた手つきでお料理を始める。

 

慶兄に手伝ってきたらいいんじゃないかって言われたけど円はできないから迷惑になるだけ。

 

お湯を入れて3分待つぐらいしかできないって答えた。

 

それでも慶兄に呼ばれて台所に行ったけど恥ずかしくて慶兄の後ろに隠れた。

 

そしたら唯姉が円に一緒に苦手なものは潰していこうって優しく言ってくれた。

 

嬉しくて唯姉の胸に飛び込んじゃった。

 

とても暖かくて気持ちよかった。

 

みんなで座って夜ご飯。

 

6人で座るのにはちょっと狭くて腕とかがよくぶつかる。

 

けどこうやって食べるのは初めてでドキドキした。

 

頭の中がふわふわしてぼーっとしちゃうぐらいに。

 

でもよく見たらお皿の上には緑色の悪魔が肉詰めにされていた。

 

どこからどう見てもピーマンだ。

 

手をつけられずにいたら里優ちゃんから箸が伸びてきた。

 

思い切って食べてみたたやっぱり苦い!

 

でもなんでだろう?

 

肉でもないピーマンでもない味がした。

 

今度は唯姉から箸が伸びてきた。

 

不思議な味を確かめるためにもう1度食べたけど

同じだった。

 

その後自分で食べたら苦いだけだった。

 

きっと唯姉と里優ちゃんの優しさが味になってるんだ。

 

でも優しさって味するのかな?

 

その日からはみんなと一緒にいることが多くなった。

 

みんなのことも名前で呼べるようになったし

 

毎日が楽しかった。

 

今まで味わったことのない毎日に終わってしまうのが怖くなるぐらい。

 

 

 

そう、怖い。

 

 

 

終わりはもうそこまできているのが最近よくわかるようになってきた。

 

家に帰ると1人で泣いた。

 

 

 

 

 

誰にも気づかれないように泣くことしか知らないから。

 

 

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慶兄の提案でテーブルを買うことになった。

 

太陽の日差しが強い中ホームセンターを目指す。

 

熱すぎて溶けてしまいそう。

 

ホームセンターに着くとそこはまさに天国。

 

冷房が効いていて歩いてきた疲れが吹っ飛んでいく。

 

テーブルのコーナーを目指していたつもりがおもちゃコーナーに迷い込んでいた。

 

拓坊と一緒に。

 

拓坊と色んなおもちゃを見て激論、激闘の末唯姉に怒られた。

 

慶兄の家に着いてテーブルが変わった。

 

円にはすごく寂しいテーブルに。

 

みんなとの思い出のテーブルがなくなっちゃった。

 

くっついて食べるの好きだったのに。

 

慶兄に無理を言って今までのテーブルをもらった。

 

これで円の部屋にいてもみんなといれる気がする。

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そろそろ円の体はもたなくなってきた。

 

多分修学旅行までは持たないと思う。

 

具合悪くてご飯は食べれなくなってきたし顔色も悪くなってきた。

 

みんなが心配しているの辛くなってきた。

 

でも円はまだみんなといたい。

 

楽しい時間を一緒に過ごしたい。

 

1人はもう嫌だから。

 

でも、慶兄の家で倒れちゃった。

 

家に帰るまでは我慢しようって決めてたのに。

 

気づいたら家のベッドで寝ていた。

 

慶兄が円を家まで運んでくれたみたい。

 

もう嘘はつけないって思って全てを慶兄に話した。

 

やっぱり困った顔をした。

 

良くなるんだろ?って聞かれたけど円には終りへのカウントダウンが聞こえている。

 

慶兄、ごめんね。

 

嘘でも良くなるっていえばよかったかな?

 

円の夢、みんなと修学旅行に行くこと。

 

でも修学旅行の日には円はいない。

 

最近は元気だけど残り少しの命が大きく燃えてるだけ。

 

 

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また無理を言って慶兄に旅行を提案してもらってみんなで旅行に行った。

 

初めてテレビでも本でもない本物の海がそこにはあった。

 

大きくて広くてしょっぱい海が広がっていた。

 

足だけだけど初めて海にも入れた。

 

みんなで食べたご飯はとっても美味しかった。

 

唯姉が外でみんなで食べると美味しく感じるもんなのよって言ってたけど本当に美味しかったよ。

 

初めて1人でお料理をした。

 

円の大好きな人達へ大好きな手作りのハンバーグ。

 

家でも何回も練習して頑張ったけど

 

綺麗な形にできなかったよ。

 

みんななんだこれ?って顔してたけどわからなかったよね?

 

あれね、ハートなんだよ。

 

今まで仲良くしてくれたお礼を込めて作ったんだよ。

 

みんな美味しいって食べてくれて頑張って作ったかいがあったよ。

 

夜はガールズトークで盛り上がって面白かった。

 

唯姉、あの話は文字通り墓の中まで持っていくから安心して。

 

 

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そしてお別れの時。

 

今までで1番辛いお見送り。

 

ちゃんと言わなきゃって決めたから。

 

最初に拓坊。

 

予想はしてたけど辛かった。

 

寂しかった。

 

もう1つの予想通りで拓坊が抱きついてきた。

 

けど最初は慌てたけど最後だって思うと嬉しかった。

 

それから唯姉、里優ちゃん、竜兄。

 

暖かくて優しくて力強かった。

 

そして慶兄。

 

みんなにありがとうって思いながら抱きしめて

 

ちゃんとバイバイをした。

 

円には《また》はないから。

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今日で円は終わり。

 

ちゃんと最後まで書かなきゃ。

 

でも今ちゃんと書けてるかな?前がちゃんと見えないよ。

 

テーブルを見れば元気になるかなって思ったけど涙がとまらない。

 

でも最後まで書かないと。

 

 

 

 

 

 

これが円の生きた証なんだもん。

 

 

 

 

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お父さん、お母さん。

 

今までありがとう。わがままいっぱいだったから大変だったでしょ?

 

円の体のことでいっぱい悩んだよね?

 

何回か聞いたことあるんだよ。お父さんとお母さんが円のことで泣いてるとこを。

 

でももう泣かないで下さい。円はこんなに楽しい時間を過ごせました。

 

たくさんの愛情をもらいました。

 

恨んだこともありません。

 

お父さんとお母さんの子供で本当に良かったです。

 

円は幸せ者です。

 

本当にありがとうございました。

 

 

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拓坊へ。

 

最初に会った時からいつも口喧嘩ばっかりだったね。

 

いらないことまで言う癖は直した方がいいよ。もてないから。

 

でも、円は知ってるよ。

 

拓坊は優しい人だって。

 

いつも円がみんなと歩いててついていけなくなった時に

 

何も言わずに円の隣まで来てくれてること。

 

みんなに円のペースに合わせてくれるようにしてくれてること。

 

円がみんなに溶け込みやすくしてくれたのはきっと拓坊だね。

 

本当にありがとう。

 

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竜兄へ。

 

よくおんぶとかしてくれたね。

 

うでにぶら下がったり振り回されたり。

 

お父さんは体の事を心配しててずっとそういうことしてくれなかったから

 

すごい嬉しかった。

 

竜兄は円達の中のお父さんなのかもしれないね。

 

もっと色んなことしてもらえばよかったな。

 

本当にありがとう。

 

 

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里優ちゃんへ。

 

いつもほわ〜ってしていて円の話を楽しいそうに聞いてくれたね。

 

円が落ち込んでる時は1番に慰めてくれたね。

 

だからかな。

 

里優ちゃんには甘えてばっかりだったよ。

 

もう頭を撫でてもらえないのは寂しいよ。

 

ってまた甘えてるかな。

 

竜兄と幸せになってね。

 

本当にありがとう。

 

 

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唯姉へ。

 

円の憧れの人。どんなに手を伸ばしても届かない存在。

 

いつか唯姉みたいになりたいなってずっと思ってたよ。

 

優しくて色んな事ができて

 

円には完璧な人に思えたよ。

 

いつか唯姉が言ってくれた苦手なもの。

 

一緒に潰せたね。唯姉がいてくれかたから円は強くなれました。

 

本当にありがとう。

 

 

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最後に慶兄。

 

慶兄と出会ってからは初めてづくしの楽しい毎日が送れたよ。

 

覚えてるかな?ヒーローの話。

 

円には近くにずっといたんだよ。

 

神林慶斗っていうヒーローが。

 

バイトで困ってる時も、1人で寂しかった時も、円が倒れた時も

 

いつも救い出してくれたもん。

 

それよりもみんなと一緒にいれるようにしてくれた。

 

円にはテレビの中にいるヒーローよりカッコイイヒーローだったよ。

 

本当にありがとう。

 

 

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もっともっといっぱい書くことがあったんだけど

 

思い出があり過ぎて書ききれないよ。

 

それだけの思い出をみんながくれたからだね。

 

あっ、唯姉。来年も海に行こうねって約束したけどいけなくなっちゃった。

 

ごめんね。

 

もう体がもたないからこれが最後。

 

みんなへ。

 

みんな今まで本当にありがとう。大好きなみんなに会えて本当に良かった。

 

生まれ変わっても仲間にいれてほしいな。

 

 

バイバイ。

 

 

円より。

 

 

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俺達はもう流れる涙を止めることはできなかった。

 

 

ただ静かに静かに悲しみにくれるしかなかった。

こんなに想っていてくれた仲間に何もできなかったのが

悔しくてたまらない。

 

 

泣いて泣いてもうとれぐらい時間がたったのだろう。

みんなは泣き疲れて椅子にもたれかかって寝ている。

 

 

 

「き…息を…はや…」

 

 

 

奥から聞こえる声にも反応せずに。

 

説明
受け入れがたい現実に目を向けるしかない。
手渡された日記・・・ここに円はいる。
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