SEASON 6.夢力の季節(6/6) |
目を閉じたらふわふわする感覚がしてきた
ゆっくりとゆっくりと宙に浮いていく
恐る恐る目を開けると円はベッドに寝ていた
でもそうなると今ここにいる円は誰なんだろう
みんなが泣いてる
お父さん達も暗い顔をしてる
そうか、円は死んじゃったんだ
体はどんどん宙を上がってく
次第に世界は白くなっていく
見渡す限り白一色に覆われて何もなくなってしまった
ここにはもう何もない
わかっていたけど寂しい
「円はまた1人なんだね」
小さく、できる限り体を小さく丸めて宙を漂う
「あら?こんなところに久しぶりのお客さんだ」
聞こえるはずのない声が聞こえてきた
「うわ〜すっごいちっちゃくなってる。うりうり」
幽霊になってるはずの円の体を突っつき始めてきた。
誰だろ、怖くて顔をあげられな。
「あらら、ごめんごめん。怖くないよ〜、そんなに怯えないで」
次は頭を撫でられた
つい最近まで感じていたけど今になっては懐かしい感覚がした
恐る恐る顔を上げると1人の女の子が円を見て笑っていた
「どうしたの?こんなとこで1人で。って普通1人か」
「円死んじゃったみたいなの」
「円ちゃんって言うんだ。可愛い名前だね。死んじゃったんだ〜。私も死んでるんだけどね」
やっぱりここはあの世なんだ
「ねえねえ、円ちゃんはいくつなの?どこから来たの?生きてる時どうだった?」
どんどんと円に質問を飛ばしてくる
きっとこの子もこの世界にずっと1人でいたんだと思った
でも円が来たからもう1人じゃない
そして円も1人じゃない
そう思うととても嬉しかった
次々に来る質問になんとか答え続ける
円も聞きたいことがあるのに聞けずに質問に答えるので精一杯
そんな中
「どんな友達がいたの?」
胸を刺す質問が飛んできた
みんなの事を思い出すとうまく声が出なくなってしまう
「円ちゃん?」
目からこぼれ始めたものを腕で拭いとる
それでも溢れるものは止めることはできない
「泣きたい時は泣けばいいさ。私が側にいてあげるから」
その言葉にリミッターは切れてしまった
円が泣きやむまでその人は頭を撫でて待っていてくれた
「ごめんね、もう大丈夫だよ。円には友達は5人いたよ」
そう、大好きな友達が5人もいた
「まずは拓坊、あっ本当は拓郎って言うんだけど…」
「いいよ、あだ名で。そっちの方が自然でいいと思うから」
それから円はみんなのことを話した
円の覚えている思い出を全て話した
その人はずっとうんうんと頷きながら楽しそうに聞いてくれた
「とても楽しい友達を持ったんだね」
「うん、でも円死んじゃったからもうみんなと遊べないよ。よく慶兄に奇跡が起きたらって言われたけど
奇跡は起こらないから奇跡なんだよ」
「ふっふ〜ん、果たしてそうかな?」
不敵な笑みを浮かべながら立ち上がった
「私は2回も奇跡って言われてるものを起こしたことがあるよ。
幽霊になってから会いたい人に会って話してきたもん」
「すごいね。でもそれって決まってたことだったんだよ」
「おっ!円ちゃん鋭いね。そう決まっていたことだよ」
「ぬっ?どういうこと」
「私は思うの。奇跡って決められた事なんだって。
でもね、それはそれはすっごい細くて見えずらい、もしかしたら見えない道なんだと思うよ」
「ぬっ?わからないよ」
「えっと、なんて言えばいいのかな?もしこの先に崖があるとして看板にここは歩けるぜ!って書いてあったら円ちゃんはどうする?」
「崖なんでしょ?円は進まないよ」
「そうだよね、行かないよね。でもねそれが奇跡の在り方なんだよ。
小さな小さな道。足元には全然見えない道。進んでもゴールが見えない道。
ずっと信じていけることが奇跡を叶える方法なんだと思うよ。
私はずっと会いたいって願っていたからその道を渡りきれたんだよ」
円は信じたり信じれなかったりフラフラしていたから
その道から外れてしまったんだ
「だから円は死んじゃったんだね」
「そうかもね、でももしかしたら今からでも遅くないんじゃない?」
不思議なことを言われた
「でも円は…」
「それがダメなんだよ!みんなと一緒にいれなくていいの?」
「嫌だ!みんなとまだ一緒にいたいよ!」
ひたすらに願った
またみんなといれるように
するとどこからかいつも一緒にいた気配が円を呼んでる
またその中に円は混ざりたい
そんなこと叶うはずがないっていう気持ちも
みんなと一緒にいたい気持ちで打ち消して願い続けた
周りの景色がどんどん変わっていく
どんどん円の体は元の世界に引き込まれていく
「またね、円ちゃん」
手を振って円を見送ってくれている
「ありがとう、でもこれじゃまた1人になっちゃうよ」
「大丈夫だよ。もう慣れてるから。それに長い年月が経てばまた会えるから。その時はまた色々話してね。みんなによろしく」
その人は見たことがある笑顔で手を振り続けてくれた
遠くなり姿が見えなくなってきた
ずっと
またね、ありがとう
そう叫び続けて手を振った
「奇跡だ、息を吹き返した。早く先生を!」
「秋原の班は全員乗ったか?」
点呼をとる丸ちゃんの声が響く。
「丸ちゃん、大丈夫よ」
今は修学旅行の車中。
何班にわけての移動だった。
「頼むから竜祈、こっちによりかからないで寝てくれよ」
「なんだよ、慶斗。遠慮するなよ」
「お前、重いんだよ。そういえば拓郎がやけに静かだな」
「お菓子渡したら一緒になって食べてるわよ」
「仲のいい事で。って竜祈重いって」
次乗り込む時は里優に代わってもらおう
バスが止まり目的地に降りる。
「ここからは自由行動だけど…頼むからお前ら…問題は起こさないでくれよ」
俺達の肩を掴み胃が痛そうな顔で丸ちゃんは切実に頼んできた。
俺達はそんなに信用がないのか?
しばらく歩くとどこにでもありそうな撮った写真がシールになって出てくる機械があった。
とことことそこに向かうと
「慶兄、これやろうよ!」
円が大きく手を振って俺達を呼んだ。
「いいわね。私達撮ったことなかったわね」
「もちろん慶兄の奢りだからね」
「なんでだよ。みんなで割ればいいだろ?」
「やっぱり慶兄は嘘つきだよ。円と指きりしたよ」
そういえばあの約束は果たしてなかったな。
「わかったよ。ちゃんと守るよ。みんな入れよ」
さすがに6人も入るときつい。
「ぬっ!拓坊、押さないでよ」
「押してきたのは円だろ」
「狭いんだから喧嘩するなよ」
「そうだよ。それに円に文句言われて嬉しいでしょ?」
「嬉しいわけ…あっ!誰か喋ったでしょ!」
一同が俺を見る
「やっぱり慶ちんは嘘つきだ。うぅ、末代までの恥だよ」
せまいんだからここで落ち込むな。
そんな落ち込んでいる拓郎に円は肩を叩いて
「拓坊で末代だから大丈夫!」
とどめを刺した。
「もういいから撮るわよ」
出てきたシールには大きく手を広げてピースをする円
その円を両方から抱きしめ親指を立てている唯と里優
その後ろで腕組みしている竜祈
その脇に拳を突き出している俺と拓郎
そして真ん中には
[ありがとう 美優]
と書かれていた。
説明 | ||
白い世界・・・きっとここは死んでしまった人のための世界なんだ・・・ もう円はみんなには会えないんだ。 |
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