真・恋姫無双 〜中華に鳴り響く咆哮〜 第六話「銀龍出現」
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――――――薄暗い部屋の中、一人のスーツを着た男が電球に照らされた紙束を捲っていた。

 

やがて男はそれをデスクに放り出すと、音も無く立ち上がって窓を見た。

 

「・・・・・・やれやれ、結局逃がした魚、いや化け物は大きかったということか。」

 

男は呟きながら口を歪めた。

 

「しかし、保障は出来なかったのもまた事実。そのために幾つか体の一部を犠牲にさせて機能の大半を抑え込んだが・・・さて、どうなることやら。」

 

男はクククッと笑いながら部屋から出て行った。

 

後に残されたのは、電球に照らされた『実験体コード0134』と書いてある紙束だけだった――――――

 

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「それじゃあ今日はここまでにしましょうか。」

 

劉協がそういうと、フゥっと溜息をつきながら一刀は背伸びをした。

 

既に日は傾き、夕食時も近い頃で、先程から一刀の腹から音が鳴りっぱなしだった。

 

「明日は続きからだ。一刀、今回みたいに居眠りするなよ?」

 

一刀の髪をワシャワシャと掻きながら劉弁が言う。

 

呻く一刀は、されるがままになっていた。

 

その様子をクスクスと笑っていた劉弁だったが、一刀の手首と足首にある鉄を見て、ハッとした。

 

「そういえば弁姉さま、一刀のその枷ですが・・・」

 

「ん?あぁ、これか。」

 

ジャラリと手にした枷から伸びる鎖を持つ劉弁。

 

今は端を持っているため『あまり重くはない』が、一刀にすればこれが四肢についているため、さぞかし動きづらいだろうと劉弁は思った。

 

「言いたい事は判るが、流石に今日は無理だろう。明日、鍛冶屋に見てもらうとしよう。」

 

「そう、ですね。判りました。」

 

「?」

 

頷き合う二人だったが、一刀は何の話か判らず首を傾げることとなった。

 

そして三人は立ち上がるといつもの様に、食堂へと向かって部屋を出て行った。

 

――――――そして食事を終え、二人と別れ再び部屋へと戻ってきた一刀だったが、間髪入れずに一人の侍女が扉を開けてきた。

 

「一刀様、至急玉座へとお集まりください。」

 

「・・・?」

 

眉をひそめ訝しむ一刀だったが、侍女が次に言った言葉でその表情を真剣にした。

 

「陛下が緊急招集をかけられました。」

 

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一刀が走って行くと、一番速く到着したらしく、霊帝と劉弁、劉協しかまだ居なかった。

 

一刀に気づいた三人は、一瞬早く着いたことに驚いたが、直ぐに表情を険しくさせた。

 

「・・・・・・何?」

 

目が合うなりすぐに言葉を投げかけた一刀だったが、少し遅れて武将たちが来た為、まとめて話すから待っていなさいと、劉協に言われた。

 

・・・数分後、一刀と三人以外は鎧を着た状態で集結していた。

 

霊帝は周りを見渡し、これ以上誰も来ないと判断すると話し始めた。

 

「皆に集まってもらったのは他でもありません。最近よく耳にする黄色の手拭を巻いた賊たちが、先程この洛陽から近い町を夜襲したとの情報が入りました。伝令によれば数は二千弱とのこと。皆は兵六千を率いて之を撃退、追撃し殲滅しなさい。」

 

「「「「「応ッ!!」」」」」

 

武将たちは急いで自分たちの隊へと向かって行ったが、一刀はその様子を見て何か考える風に唸った後、スタスタと出口のほうへ歩き出した。

 

その様子を見た劉協は、一刀に近寄り言う。

 

「一刀?貴方は賊退治に行かずとも良いのですよ。私達の護衛なのですから。」

 

「・・・・・・?」

 

しかし一刀は厠の方へと指を指すと、劉協は顔を真っ赤にした。

 

「か、厠だったのですか・・・てっきり賊退治に行くものかと・・・」

 

そのアタフタした姿に劉弁はフッと笑う。

 

だが一刀は劉弁に近寄ると、小声で口を開いた。

 

「・・・賊・・・倒す・・・皆・・・喜ぶ・・・?」

 

突然質問されたので一瞬言っている事が飲み込めなかったが、劉弁はそれに答えた。

 

「あ、あぁ。まぁ賊は民を脅かす存在だからな。・・・追い払えば確かに皆は喜ぶな。」

 

「・・・弁も・・・協も・・・霊も・・・?」

 

「まぁ・・・そうだな。だがそれを聞いてどうするんだ?」

 

「・・・・・・(フルフル)」

 

プイッとそっぽを向いて再び出口に向かう一刀を、劉弁は訳がわからないという風な顔で見送った。

 

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外に出た一刀は、宮中を抜け出し、人気がない山へと走ってきた。

 

幸いにも既に部隊は出立していたため、見張りも薄く、音を出しても見つかることはなかった。

 

「・・・皆・・・喜ぶ・・・!!」

 

先程劉弁が言った言葉が、何度も頭を過っていく。

 

その度に、一刀の胸の奥では激しく何かが燃え上がるように熱くなっていった。

 

そして、四つん這いになると、激しく唸りながら体を振るわせ始めた。

 

「・・・ウゥ・・・アァ・・・ァァァガゥァァァァァッ!!!!」

 

見ればあの枷がどんどん一刀の体内へズズズ・・・と入り込んでゆくのが目に見えた。

 

一つ、また一つと手首と足首に完全に入りきるたびに、体をビクンと震わせる一刀。

 

最後の枷が入り込むと、次の瞬間一刀の頭の中で何かが切れたような音がした。

 

その途端、一刀は姿を変え始めた。

 

メキ、ボキ、ゴキャっという音と共に、背からは翼が生え始め。

 

腰からは長大な尻尾がシュッと伸び。

 

体は次第に大きく、そして硬い鱗の様なものに覆われ。

 

頭部からは漆黒の鬣と白銀の角が生え。

 

顔は前に伸び、目は黄金に染まり、口は端まで裂くように開いていった。

 

――――――数分が経過しただろうか。

 

そこには月明かりに照らされ、体長十メートルをゆうに越す光り輝く美しい銀龍が威風堂々と居た。

 

龍――――――一刀は、翼を何度か羽ばたかせた後、勢い良く空へと舞い上がった。

 

「グギャォォォオオオオオオオオオンッ!!!!!!」

 

咆哮しながら目指す先には、炎が燃え上がる町の姿が。

 

眼下には小さな松明を片手に町へと急ぐ兵士たちの姿が見えた。

 

「将軍!?頭上を!!」

 

兵士の一人が天空を指差すと、そこには巨大な空飛ぶモノが。それも自分たちと同じ方角へと飛んでいく。

 

「なんだ・・・あれは・・・?」

 

思わず絶句する将達。だが己を叱咤すると、兵士たちに向け激励を飛ばす。

 

「者共!!今は町へと向かうことが先決だ!!ほかの事に構うなッ!!」

 

「「「「「応ッ!!」」」」」

 

そんなやり取りが行われているとも知らず、一刀は眼下で燃え上がる町を見ていた。

 

・・・・・・その光景はあまりにも酷かった。

 

家々は次々と大火に飲まれ、道端には何人もの人が殺されていた。

 

賊は居なかったが、それでも尚逃げ惑う人々に、一刀は心の中でどす黒いものが渦巻き始めていた。

 

――――――あの人たちのことは判らないけど、だけどこんなことをするのはいけないって、弁と協が前に言ってた。

 

いつしかおぼろげにしかないあの研究所の記憶が一刀の頭の中で甦っていく。

 

そう思うと、激しい怒りが湧き起こるのを一刀は感じた。

 

――――――こんなことをする奴は、死んじゃえばいいんだ。

 

ギョロリと目を動かせば、町から離れた山奥が僅かに明るくなっているのが目に入った。

 

一刀はその場で勢い良く羽ばたき、その場所へと猛スピードで向かう。

 

そして、その空中へと赴けば、先程手に入れた戦利品を片手に、騒ぎ立てる一団があった。

 

一刀は大きく息を吸い込むと、そこへ目掛けて特大の火球口からを吐き出した。

 

一拍おいてから着弾したそれは、凄まじい爆炎と爆音を撒き散らした。

 

先程までの喧騒とは違い、今何が起こったのか判らず混乱する賊達そこにはいた。

 

生き残った賊の一人が、空中で此方を見下ろす巨大な化け物を見つけるなり、悲鳴を上げた。

 

一人が向けば次の奴が向き、連鎖的に悲鳴が上がっていく中、一刀は再び息を大きく吸い込み、そして――――――

 

聞くもの全てを恐怖させる龍の咆哮を夜空へと響かせたのだった――――――

 

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                 『実験体コード0134』

 

・基本スペック

 

身長:182cm

 

体重:58kg

 

血液型:BとOの混合型

 

能力面:遺伝子組み換えの結果、数種の別生物に切り替わることが可能。確認した中で『狼』『龍』『鳥』の三種だが、未だ調査中。

 

※能力面の調査不良には、身体にあるDHプロジェクトの副産物を押さえ込む為の制限が原因と思われるが、今のところ不明。

 

性格:此方には従順で大人しい模様。だが見慣れぬものには強い警戒心を抱くようだ。

 

尚、詳しい能力面については次ページにて記させていただくが――――――(後は暗くてよく見えない)

 

説明
第六話。

ページ最後に簡単なプロフィールを載せておきました。 気になる方はご覧ください。
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コメント
ちょっ・・・えっ・・・ちょっ・・・えぇっ?! いやこういう展開好きだけどさ(ゆきな)
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