虚々・恋姫無双 虚廿肆(続) |
「愚か者めが……お主が今何をしたのかわかっておるのか?」
――……今まで私たちがやってきたことと何も違わないことです。何も怒る必要はありません
ドン!
「お主がやったことは外史云々以前に人の生死に関わることじゃ!自分が神にでもなったつもりか!」
――神なら……自分が守りたい人を救うためにこんな姿にならなくても良いでしょう……
「………」
――もう一度言います。僕がやったことは、今まであなたたちやったことと何の違いもありません。もう少し勇敢で…そして自分の安全を考えなかったことが違うまでです……
「……十年…いや百年がかかるやもしれん」
――……
「もう二度とあの子に会えないようになるぞ」
――…構いません。どうせもう会う気なんてありませんし……なにより、もうあの子が僕を許してくれるはずもありませんから
「……左慈よ………」
――……後は、これを完成させるだけです。さすれば、この贖罪も……
「‥……」
・・・
・・
・
蜀の地にて
「はわわ、今です!馬騰さん、翠さん、お願いします!」
「よーし…お前ら!西涼の馬騰を覚えているなら怯えるが良い!参る!」
「西涼の錦馬超、ここにあり!この地を穢そうとしたこと、後悔させてやる!」
「蒲公英もいくよー!」
「あわわ、愛紗さんの部隊、引込み過ぎてます。星さん、愛紗さんを助けてくだしゃい」
「やれやれ、鈴々でもあるまいというのに…仕方ない奴だ」
「私が援護しよう。流琉は趙雲殿と一緒に動いてくれ」
「はい」
「頼もう、夏侯淵殿」
「趙雲殿こそ、流琉を頼む」
「任せろ。悪来典韋の武勇、見せてもらうぞ」
「はいっ、頑張ります!」
「…あれが魏の曹操の片腕の夏侯淵か……なかなかやるの」
「本当にね……弓の使い方もなかなかだし、一度戦場で戦ってみたかったわ」
「なんじゃ、紫苑。ここに来て武士の血が滾るのか?」
「あんなものを見せてもらってはね。私たちの軍なのにも関わらず、まるで自分の国の兵卒を扱うように的確に部隊の動きを見て指揮をしているわ」
「確かにの……」
「桔梗さま!詠から出陣せよとの報告が来ました。馬騰どのたちが一度敵部隊を通り抜けた後私の部隊が突撃します!」
「うむ、援護は任せろ」
「ふふふっ、さて、私たちもいい仕事をしなければね」
「………行く」
「飛将軍呂布さま、ここにありですぞー!」
「ちょっ!恋なに勝手に動いてるのよ!」
「恋もきっと何か考えがあるのだろう。私が行って話そうか」
「いや、普通が行ったところで「普通っていうな!」聞かないわ…ねねの奴…後で覚えてなさいよ……ちょっと伝令!焔耶のところに行って恋と連携して動きなさいって伝えなさい!」
「皆、南蛮の力を見せてやるじょー!」
「にゃー!」
「にゃー!」
「にゃー!」
蜀の全軍全将と(一部を除く)魏の将たちが総激戦をかけている中、蜀王、劉備は戦線から少し離れた場所で戦いを見守っていた。
「皆……頑張って……」
「……桃香さま」
「!結以さん」
結以は後方にて負傷兵たちの手当を励んでいた。
「月さんに少しまかせて来てみとですが……顔が優れてないですね」
「……すみません」
「結構です。苦しんでいるということは人たちの死を悲しんでいるということ。その苦しさがあなた様を王として成長させるでしょう」
「………」
自分が言った言葉に更に悲しい顔になる劉備を見て結以は苦笑しながら持ってきたお茶を劉備に出した。
「疲れが溜まっていらっしゃるようですね。疲れが取るお薬茶を持ってきました」
「ありがとうございます。でも、皆が戦っているのに、私だけのんびりお茶なんてしていられません」
「…その気持は十分わかりますが、桃香さまがそんな心配ばかりしていて倒れたりでもしては、後でわたくしが愛紗さんに怒られかねません。ですから……」
「……はい、……(ススッ)…美味しいです。薬茶のはずなのに全然嫌味もしませんし…」
「毎日薬茶が苦いって苦いって言う子が居ましたので、少し研究をしてみました。もうちょっと飲みやすくなるように……」
「美似ちゃんに飲ませてるんですか?」
「あの娘たちは薬と聞いただけでも嫌がるから飲ませません……一刀様のことです」
「え?」
「………<<にこり>>」
笑みながら結以は戦況を見ていた。
軍師として働くかも考えていたものの、蜀に軍師は十分に足りていた。
今はできるだけ負傷兵の手当に専念していた。
何にせよ、結以にはこの「次」も見なければいけなかった。
「………この蜀での戦いはまだまだ前哨戦に過ぎません。早くここを片付けなければ……もっと大きい波が来ます」
「……戦況がなかなか動きません。敵はどうやら、私たちと長期戦をしようとしているようです」
「これ以上来るなんて……そんな…今でも皆が一生懸命やってくれてやっと戦線を保つぐらいなのに」
「この蜀の地だからこそそれぐらいにでもなります。優秀が将、地の利を最大に利用した朱里ちゃんや雛里ちゃんの策。それがあってやっとこれです。他のところはもっと苦戦しているに違いありません。特に西涼で戦っている魏は……」
「……曹操さんならきっと私たちが来るまで耐えてくれます」
「…そうですね。信じましょう」
「はい」
一方、孫呉の地は
あまりいい戦況ではなかった。
「桂花さま、このままでは戦線が持ちません!」
「わかってるわ!あぁ、もう、予想はしていたけど、これほどだろうとは思わなかったわ……」
「不味いな……このままでは戦線が持たない」
「この人たち、なかなか手強いですね。見たことない布陣なのに、まったく隙が見えませんねー」
「関心している場合ではないでしょ?!」
冷静な周瑜と特有の暢気な言葉使いをする陸遜を見て桂花は呆れていた。
「そう焦るな、荀ケ。少し前後方から連絡が来ている。どうやら蜀から張飛が援軍に来ているそうだ」
「張飛ってあの関羽の義妹のチビッ子?役に立てるの?」
「この戦況なら一人でも優秀な将が必要だからな。……それにしてもこのままだとおされる一方だ」
数では倍以上の差があり、地の利を利用した戦い、甘寧や周泰たちが越族と組んであっちこっちで奇襲をかけて敵陣を乱してはいたが、それも数の暴力では力を失っていた。
「一度引くか」
「これ以上後退したら呉郡まで後退し続けるわよ」
「一度呉郡まで引いて、越族と両側で討つのだ」
「なるほどこの数を?下手すれば各個撃破されておしまいよ」
「我ら孫呉の兵たちを侮ってもらっては困る。以前三倍を越えるお前たちも追い払ったのだ」
「……っ」
嫌な過去に苦笑する桂花だったが、今は戦況を見なければいけない。
心配していた魏の将への反発感は予想以上のものだった。
だが、国を守らなければならない、そのためには例え仇の力を使ってでもこの地を守ってみせると、孫権は皆を奮い立たせた。
でも、それを持ってしても自分たちの存在が負になることが分かっている。
だからこそ、もっといい智謀を武勇を持ってこの孫呉の人たちに認めてもらわなければならなかった。
魏の将たちは同じくそう思っていた。
「凪、季衣に後退を伝えなさい。隣の呂蒙にも伝令を出して」
「はいっ!」
・・・
・・
・
「兵たちがこっちの言うことをうまく聞いてくれませんね…この調子だとこっちはもう保てそうにありません」
「もう…駄目なのでしょうか」
弱音をいう呂蒙に向かって孫権は覇気を発する。
「弱音を吐くな亞莎!私たちは負けるわけにはいかない。姉さまが命を賭けて守ったこの地をあんな獣どもに怪我されるわけにはいかない!」
「は、はいっ!」
「そうですよ、呂蒙ちゃん。軍師は最後の最後まで戦況を読み、覆す方法を考えなければなりません。負けを認めている軍師なんて君主にとっても兵士たちにとっても何のためにもならないのです。誰もが諦めても軍師だけは最後まで諦めてはいけないのです」
「わ、わかりました」
風の言葉に、呂蒙はもう一度戦線を見た。
戦線は圧されつつあった。
倍の数。将も足りない上に、数々の奇襲と突破にも五胡の軍勢は乱れというものを知らなかった。
まるで人形のように、それも凄く精錬された人形たちのように、戦うことしか頭にないとまで覚えた。
「とは言え、これ以上この戦線を保つことはやや厳しいですね。桂花ちゃんと周瑜さんのところからそろそろ後退するという伝令が来ると思いますが」
「何?」
「今蜀の張飛ちゃんが黄蓋さんと一緒に呉郡で待機しているようです。そこまで一度引いて、山越軍と両側で五胡を打てば流石に相手も乱れるでしょう」
風の考えを聞いて間もなく、周瑜からの伝令が孫権たちに後退の進言の言葉を伝えてきた。
「すごい いる場合ではありませんよ。呂蒙ちゃんはこれからその周瑜さんたちを越える凄い軍師になってもらわなければなりませんからね」
「ええっ!?」
「何を驚いている。程cの言う通り、亞莎はこれからももっともっと強くなれる」
「人の話ではありませんよ、孫権さん」
「えっ?」
「孫権さまにもこれからもっともっと立派な王さまになっていただけなければなりません。まぁ、そのあたりは風の仕事じゃありませんが……風が孫権さんが先王孫策さまよりも立派な王さまになれると思いますよ」
「…そうだな………」
「……さて、そろそろ私たちも動きましょうか」
呉郡城
守将となった黄蓋と、建業から援軍として来た蜀の張飛が周瑜たちの報告を受けていた。
「うむ……やはり厳しいか」
「何なのだ?」
「権殿たちがここまで後退するそうだ。五胡という連中はなかなか手強いようじゃのぉ」
「すっごく強いのだ。前に鈴々たちが戦った時でもちょっと戦って負けそうになったら直ぐに引き上げただ」
「戦況を読むに優れている者が居るのか…それとも一人一人が戦況を読むんじゃろうか…とにかく、儂らもそろそろ向かい行くとしよう」
「やっと出るのだ?鈴々は戦いたくて先から身体がうずうずするのだ」
「それは儂も同じよ。まったく公瑾め。儂に後任せなどしおって……老将じゃとナメてはいけないというのを教えてやらんとの」
「祭も相変わらずね。あまり無理すると腰がいくわよ」
「儂はまだそこまで老いてはおらぬ!まったく策殿も公瑾もあまり儂をいじめるで………」
「…にゃ?」
黄蓋と張飛が同時に後を向くと、
孫策がそこに居た。
「何よ、その目は、まるで幽霊でもみているように」
「…………策殿?」
「…違うのだ?」
「まぁ、違わないけどね」
「んなあああああー!!?」
「ちょっ、うるさいわよ、祭……」
「うるさくせんでいられるか!何じゃ、ついにか?ついに儂までも連れて逝く気で来たのかえ?」
「まだそのつもりはないけど……こっちに来る。あっちの酒もなかなか美味しいわよ?」
「このお姉ちゃんなかなか面白いのだ」
張飛ちゃんもなかなか反応がおもしろかった
「まぁ、ちょっと助けに来ただけよ。あの世で誰かこっちを助けて欲しいって暫くこっちに居られるようにしてくれてね」
「誰って…誰じゃ」
「さあ?私は知らないわよ。それよりも、状況はどうなの?」
「……あまり良くはないようじゃな」
「そうね……あの子の口からしてもあまり言いようには思えなかったし…こっちに来て正解だったかしら」
「あの子?」
「一刀のことよ」
「あの小僧が…?」
「一刀ちゃんに会ったのだ?」
「ええ」
「魏だけじゃない?」
――はい、今三国にて同じく、五胡の軍勢が攻めてきています。その合わせて百万以上
――ちょっ、五胡といったら西側の連中でしょ?どうして私たちのところにもいるのよ。
――詳しいことは良くわかりませんが、どうやらこの世界を滅ぼすための仕掛けというらしいです…少女も詳しい話は聞いておりません……
「……孫策お姉ちゃん」
――何?
「孫権お姉ちゃんのこと心配?」
――……でないと言えば嘘でしょうね。
――行ってみてはいかがですか。西涼のところは少女だけでも十分でしょう。
「孫策お姉ちゃんが行ったら、呉のお姉ちゃんたちもきっともった頑張れる。だから、行ってあげて」
――……そうね。
「で、一刀にここまで連れだされて……」
「ここに居るのか?」
「ついさっき帰ったわよ。西涼のこともあるしね。あそこはここよりも厳しいらしいから」
「にゃー、会えなくて残念なのだ」
とは言うが、
孫策が来たところで戦況にどれだけ意味があるだろうか。
孫策の存在は確かに孫呉にとって大きいなものになるだろうけど、それでもこの戦況を覆すには、人を奮い立たせるよりもっと根本的な方法が必要だった。
「ここに来る時ね。私を連れてきた奴に、面白いことを聞いたの?」
「面白いこと……?」
「ええ」
孫策は黄蓋が立っていた城壁の端に立ってその地を見た。
孫呉の地。
孫呉の武士たちの血と骨が埋まっている、彼らの意志が染み込んでいる大地。
「言ったわね、一刀。散った英霊たちが……この孫呉の地を守ってくれるって……」
「策殿?」
「見せてあげるわ。私たちの力を……孫呉の散っていった英雄たちの魂の塊を」
「この地に眠っている我らが孫呉の勇者たちよ!今こそ我らの地を穢す獣どもに、私たちの力を見せる時!
立ち上がれ!この魂が、この意志が!血となり骨となって、我が子孫たちの矛と盾にならん!
今こそ、私たちの意志を再び見せる時よ!江東の、孫呉の大願のために!今ここでもう一度奮い立て!!」
くぐぐぐぐぅーーー!
「なんっ!」
「にゃにゃー!」
「できたわ……本当に……自分でやったけど、こんなのあり?」
孫策は震える城壁に手を乗せて震える大地を見つめていた。
「一体何をしたんじゃ、策殿!」
「見れば分かるわ!孫呉の英霊というものが、口だけじゃないってことを見せてあげるわよ!」
くぐぐぐぐーーーー!!
一方五丈原
スッ
「……連れてきてくださってありがとうございます」
「……<<ふるふる>>」
「大丈夫ですか?」
五丈原に着いた途端、一刀が頭を激しく振るのを見て紗江は心配そうに言った。
「大丈夫…ちょっと頭がくらくらするだけ…」
「ごめんなさい、少女たちのせいでまた丈夫でもない身体に無理をさせてしまいました」
「……平気、それよりも早く行こう」
そう言いながら先を進もうとする一刀だったが、その姿には焦りが見えていた。
「……思い出しちゃったのですか?」
「……何を?」
「左慈さまとの記憶……連合軍の後とまたこの世界に来る前に記憶…」
「……思い出したよ。だから何だって言うんだ」
一刀は足を止めて紗江の方を振り向いた。
「記憶と一緒に声も戻ってきたよ。おかげで紗江お姉ちゃんが苦労せずともこうして話ができる。いいことでしょ?」
「……一刀君」
「……もうボロボロだよ。身も心も……これ以上傷ついたところで何も変わらないよ」
「……っ」
今までなかった暗い顔をする一刀を向かって、紗江は唇を噛みちぎった。
「……<<にこっ>>冗談、冗談だよ。ボクはいつも笑ってる。ボクが笑わないと皆の幸せがなくなっちゃうの。それよりも、早くいこっ?」
「……はい」
一刀に手を引っ張られて、紗江は一刀と一緒にある場所に向かった。
それは、紗江が亡くなった墓地の前。
「……前にここに来て華を飾ってたのに……紗江お姉ちゃんったらまたさっちゃんに呼び出されちゃったね」
「もう慣れてますから…それに、出来ることならば何度でも、華琳さまをお守りしたいと、そう思っています。……少女が邪魔にならないのなら」
「きっと喜ぶと思うよ。でも……どうしてここに来たの?西涼に直ぐに行った方がいいんじゃない?」
「…少女が単身で華琳さまの助けに向かうとしても役に立てることには限りがあります。今西涼は三国の防衛線でも一番将が足りない場所ではありますが、その故に兵の数も少ないです」
「華琳お姉ちゃんが……また連れて行ったのに?」
「それでも、相手の数は少なくとも30万。戦の準備をしていたわけでもありませんから、こんな短期間に準備できる兵と言っても、せいぜい20万と言ったところでしょう。それに……」
「…それに?」
紗江は少し震えながら言った。
「左慈さまから聞いた話ですが、相手は完全にこっちを潰す気で居ます。故に数をなんとかするだけでは話にならず、敵の巣を完全たるまで潰さなければ、今後もずっとこんな数が湧いてくるそうです」
「…なにそれ……」
まるでゲームでモンスターが倒しても倒してもその終わりを見せないように、ただ押し返したところではまたその数でぶつかってくるまでということだった。
普通の戦いなら、自軍が最後の一兵が倒れるまで戦うなど、そんなこと口でしか使わない馬鹿な仕業だけど、彼らにはそれが出来る。
まるで死兵になっているように死ぬことを恐れず、それも数が減る様子もなくぶつかってくる。
こちらが絶望に陥って、全てを諦めるまで。
「ですから…ここにて五胡を殲滅しなければ、大陸に平和の二文字が訪れることはないでしょう。だからこそ、ここは何よりも相手を圧倒できなくても、その同等な数を持って相手にぶつかり、それに勝った上で敵の本拠地まで潰す必要があります。そのためにも、五胡の本拠地に一番近いこの西涼で負けるわけにはいきません。呉の孫策、孫権さんや、蜀の劉備さんたちが各個部隊を撃破させこちらに援軍に来てくれるまで、私たちは無限なるまで増殖する敵からこの地を守らなければなりません」
「………つまり、今華琳お姉ちゃんたちが連れている兵じゃ…」
「少女の計算では…あと……三日も持たないかと」
「………」
一刀の顔から血色が消え去る。
三日。
それだと呉、蜀で援軍が来てくれるどころか、半分もきてくれる前に終わってしまう。
「そんな顔をしないでください、一刀君。そのために、左慈さんは少女をここに連れてこられたのです」
「…でも、一体どうやって…」
「ここです。この場所に居る人たちの力を……貸してもらいます」
「ここ……?」
周りを見回ったところで、何も見当たらない荒野。
以前は密林のように木が生えていたけど、その森を燃やした張本人が今自分の前に立っていた。
「……一刀君は、少し離れていてください」
「……うん」
一刀が紗江から数歩離れると、紗江は自分の墓の前に立った。
「………皆さん
皆さんが荒らされています。
この大地が、私たちが大事に大事に守ってきたこの地が、五胡の足によって、彼ら剣によって穢されていきます
今大陸の全ての国が心の一つにして敵を追い払おうとしていますが、その力とても敵に及ばずといます。
皆さんが助けてくださらねば、この地は必ずや葬るでしょう。
ですから、お願いです。少女がこんなお願いをするなど恐縮なことを十分承知しています。
ですが、
残った人たちのためです。
皆さんの子供のため、妻のためです。
私の欲望や、誰かの利のためでなく、
この地でこれから末永く生き続ける私たちの子孫のためです。
ですから……
助けてください」
くぐぐぐぐぅーー!!
「!」
「…皆さん…」
くぐぐぐぐぐーー!」
地面が揺れる。
まるでこの世界の全てが揺れているように大きく、地面が揺れている。
「紗江お姉ちゃん!」
「一刀君」
紗江のところに来た一刀は、紗江と一緒に紗江の墓石を掴んで地震を耐えた。
「どうなってるの?!」
「皆さんが少女のお願いを聞いてくれました」
「皆さんって……もしかして!」
「はいっ!西涼の騎馬軍です!西涼の地にて戦いを続けてきた方々の霊たちが、今もう一度この地に現れます」
「そんなのアリなのー!?」
「よくわかりませんけど、相手がヤケだったのでこっちもズルしてみた、と仰ってました!」
「さっちゃん何したのよー!」
一刀と紗江の対話は地震の音に呑まされてそれ以上聞こえなかった。
地面が鳴る音はどんどん大きくなって、地面の下から、どんどん地上へと近づいてきていた。
くぐぐぐぐぐぅうーーー!
西涼
「ちっ!こいつら、殺しても殺してもキリがない!」
「しゅんらーーん!」
「霞!」
「稟から連絡や、一度引くで」
「っ……仕方がないか」
「あぁ…このままやとどうしても持たへん」
「しかし、引き上げたところで、何が変わるというのだ。季衣たちさえいてくれれば……」
「仕方あらへん。今は皆を信じてウチらができることをすればええ」
「……ああ、殿は私がやる。霞は華琳さまのところに行ってくれ」
「わかった」
霞が去ると、春蘭が前を見る。
まるで人形のように、敵が歩いて来る。
無言のまま攻めて来る。斬られても声一つあげないその様子に、自分たちの精兵たちも士気を落としつつあった。
このままでは……
「っ!いかん!」
春蘭は激しく頭を振るった。
秋蘭が居ない間、自分が華琳さまをうまく支えなければならなかった。
「皆の者!これよりもう一度敵にぶつかってから引き上げる!深く攻めないで、戦列を乱さないで徐々に後退せよ!」
・・・
・・
・
「華琳さまー!西涼の人たちの避難が終わったの。もう西涼に残ってるのは私たちだけなの」
「ご苦労だったわ、沙和………」
「華琳さま」
「一週間も…持たなかったわ」
華琳は拳を握った。
そのあまりの力に、握った手の爪が手に食い込んで血玉が落ちていく。
「申し訳ありません、私の考えが浅はかでした。まさか連中がここまでの化けた連中とは…」
「私も知らなかったわ」
まるで獣のように攻めて来る。
恐れることも、戦列を乱すこともなく、ただ敵を殺すことしか考えない。
だから強い。その強さに、兵たちも圧倒されてしまっていた。
そしてその恐さは華琳たちにも伝わってきた。
「馬騰、ごめんなさい。あなたの地を守ることができなかったわ……」
「孟ちゃーん!春蘭が殿を勤めとる!動くなら今やでー!」
戻ってきた霞の部隊が前線の報告を告げると、華琳は悲しそうなかおから王の顔に戻ってきた。
「分かったわ。全軍民たちの安全を確保しながら徐々に後退する!」
「はっ!」
「わかったのー」
「了解やで」
スッ
その瞬間、華琳は凍ったように目の前を見ていた。
「………<<パチッパチッ>>」
「かず……と?どうしてここに…」
「一刀ちゃん!
「かずっち!」
「一刀殿!何故ここに…」
「………<<にっこり>>
黙々と華琳を見ていた一刀はいつもの微笑みを華琳に見せながら、筆と竹簡を出して何かを書いた。
『助けを呼んできたよ』
「助け……?」
「………」
一刀は静かに後を指した。
華琳とそこにいた皆が後を見たら、
丘を染める騎馬隊がそこにあった。
「皆さん、お願いしたします!大陸の平和のために!」
そして、その前に居るのは、軍師の扇を持った司馬懿仲達、紗江の姿。
「さえ…………紗江ぇ!」
「馬鹿な……紗江殿は死んだはずでは……」
『皆助けてくれるって言ってくれた。西涼の人たちの幸せのために』
「西涼の平和のため!!」
「奮い立て!西涼の勇者たちよ!今こそもう一度この地を駆けるときよ!
「「「「「おおおぅ!!!」」」」」
西涼の駆けたきた、西涼の馬、西涼の兵士たち。
いつかの戦いで散っていった勇者たちが、再びこの地に戻ってきた。
西涼の戦いはまだ終わらない。
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シュールだと思いますか? ありえないと思いますか? 今更です。 あと、もっと今更の話ですけど、 この外史,シリアスじゃありませんからね。 |
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コメント | ||
え、それってボケに入るんですか!?(TAPEt) 山県阿波守景勝さん>>一刀ちゃんがボソッと疲れたと本音出してますけどね……まぁ、疲れているというのも実はさっちゃんのせいかもしれません。その気遣いが寧ろきになるという感じでしょうね。(TAPEt) まさに反則ですね。でもこれで少しでも一刀君が幸せになってくれるなら……そしてさっちゃんにも幸せを……(山県阿波守景勝) namenekoさん>>さっちゃん「あっちが反則したのでこっちもズルしてみた。議論は認めます。後悔はしません」(TAPEt) いくら五胡の力が強いからって英霊たちを甦らすとかチートもいいところだぞ(VVV計画の被験者) |
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