少女の航跡 短編集01「伝説の前に… Parte2」-1 |
シェルリーナ達は走った。彼女達は馬から落馬させられ、自分達の馬を失っている。もはや
形勢は圧倒的に不利。そして背後からは、剣を携えたあの戦士達が、嵐のように迫って来てい
る。
彼らは、あの異形の兜の中から、一体どんな表情と眼でシェルリーナ達を追っているのか、
一言も声を発さない彼らは正体すらも分からない。
左肩と脇腹が痛む。この痛み方は骨折。シェルリーナは、その痛みを無理矢理押さえ込みな
がら、イアリスとアンジェラと共に走った。今では身に着ている鎧が重く感じられる。
『フェティーネ騎士団』が全滅している。あの戦士達によって、西域大陸一の騎士団が壊滅さ
せられたというのか。
彼らは、騎士達を軽々と空中に放り、甲冑などものともせずに剣で薙ぎ倒していた。
こんな者達と遭遇した事など、未だかつて無い。彼らは人間ではない。では一体何者だという
のか。
「シェルリーナ様! 洞窟です!」
イアリスが叫び、シェルリーナ達は、平原から山へと上がる崖、そこにぽっかりと口を開けた
洞窟を前にしていた。人どころか、馬車も通れそうなほどの大きさの入り口だ。
「一時的にでも身を隠すと言うのか? 奴らだって洞窟の中まで追ってくるだろう。目的は分か
らないが、私達を殺したがっている」
シェルリーナは息を切らせながら言った。
「ですが、馬を失っていては、あいつらからとても逃げられるとは思えません」
アンジェラが言う。
「洞窟の中がどうなっているか分からないが、確かに私達の目的は、この洞窟を調べる事にあ
った」
「今は、逃げるしかないんですよ。シェルリーナ様」
そう言い、アンジェラは真っ先に洞窟の中へと入っていこうとしていた。
「待ちなさいアンジェラ! まだ中に入らないで! この洞窟の中から、強い力を感じるわ」
イアリスが彼女を制止する。
「何言ってるの? あいつらがここまで来ちゃうよ、早くしないと! 早く隠れないと!」
アンジェラが叫ぶ。
「とにかくよ。この洞窟の中から、強い気配を感じているの。凄く、凄く強い。何て言うの? こ
れはまるで…」
「どうなんだイアリス…? この洞窟に何がいるって言うんだ?」
と、シェルリーナが尋ねると、イアリスは真剣な表情で振り向いてくる。
「わたしが今までに感じた事もない、強く、強大な力を感じます。さっきからずっと感じている気
配がここまで続いているかのよう。ここから、あの強い気配が発せられているようです。それに
あの、光から現れた者達…、あの者達と似た気配です…、ただ、あれよりもずっと大きな…」
「この洞窟の中に、入って来るなと言っているのか…?」
「いいえ、その逆。まるでわたし達が誘われているようです」
「それじゃあ余計にまずいじゃあない!」
アンジェラが金切り声に近いものを上げる。
「でも、何か、こう、不思議と、安心感のあるような気がしないでもないんです…。入って行って
も大丈夫な…」
「もう、支離滅裂なんだから…! 強く強大な気配だっていうのに、入って行って平気ですって
…? こんな時に訳が分からない事を言わないでよ!」
アンジェラがいきり立った。背後からは、さっきの戦士達がどんどん迫ってきている。
「よく見ると、この洞窟の入り口の壁面…、何か彫り込まれている…。何だ? この字は…?」
シェルリーナが、洞窟の入り口に彫られている文字を指差した。それは、シェルリーナの知ら
ない文字だ。しかし、どんな刃物を使って掘り込んだのか分からないくらい、正確に掘り込まれ
ているようだ。蔦やら苔が張り付いていて、ほんの一部分しか確認できなかったが。
「シェルリーナ様! 急がないと!」
アンジェラは焦る。
「良く分かりませんが…、『トール』という部分だけが見えます。エルフ語の古語です」
「シェルリーナ様ッ!」
アンジェラが叫んだ。背後からさっきの戦士達が迫って来る。もうその距離は、10メートルほ
どまでに縮まっていた。
「仕方ない。どうせ、やられるのならば、とことん行く所まで行こう。本来の任務を果たすため、
この洞窟の中に入る」
シェルリーナは洞窟の中へと飛び込んだ。
「待って下さい! 洞窟の中は真っ暗ですよ! ここは、夜目の利くドワーフのアンジェラにお
任せください!」
アンジェラは小柄な体をシェルリーナと洞窟の壁面の隙間に滑り込ませ、暗闇の中の先頭に
立った。
そして、洞窟の中を進んでいく。シェルリーナはアンジェラの鎧の音を頼りに進んでいった。
「トール…? トールってもしかして…?」
背後でイアリスが何か呟いている。
「そこのエルフ! 置いていかれたくなかったら付いて来なさい! 洞窟の中ではドワーフが先
頭というのが基本よ!」
アンジェラはイアリスに呼びかける。
「ええ、分かったわ」
今度ばかりは彼女も言い争いをしようとはせず、アンジェラとシェルリーナの後を追う様に付
いて来た。
洞窟は奥が深い。平原に現れた山の地下深くへとずっと伸びているようだ。ごつごつとした壁
面の道が、入り組みながら下向きに伸びている。
「もしかして、さっきの者達が、この洞窟を守っていたとしたら…?」
最も背後を付いて来るイアリスがぼそりと言った。
「この洞窟の中にいる何者かの怒りを私達は買った事になる…。ピュリアーナ女王陛下のお考
えは正しかった。『フェティーネ騎士団』に任せて頂かないと、誰かが犠牲になっていたかもしれ
ない。いや…、私達でも無理なのか…?」
「さっきはあなた、別にこの洞窟に入っても平気だって言ったじゃあない!?」
アンジェラがイアリスに声を上げた。
「平気だとは言っていないわ! ただ、安心させるような気配を感じているだけ! それは誘惑
とも受け取れる!」
イアリスも負けてはいない。シェルリーナを間に挟み、再び言い争いをしようかという勢いだ。
「何ですって!? あなたが安全だって言うから、この洞窟に入って来たんだよ!」
洞窟の中の暗闇で、2人の声が応酬する。
「そんな事より! 背後からさっきの奴らが追って来ていないか、見てくれないか」
シェルリーナが2人を制止する。
「い、いえ…、誰も追って来てはいませんわ。ふっと消えたように現れません。わたし達がこの
洞窟の中に入ってからというもの…」
「不思議だ…。だが、引き返すわけにもいかない…。私達の目的は、もともとこの洞窟の調査
にあったんだからな」
洞窟はずっと奥の方へと伸びているらしい。気流の流れも無く、何の匂いもなく。
ピュリアーナ女王、シェルリーナ達が忠誠を誓う君主は、この洞窟の一体に何を知りたいの
か。地図によればこの洞窟が間違いない。イアリスが強い気配を感じているというならば、ます
ます疑える。
下へと伸びていく洞窟の穴。やがて、シェルリーナ達はその奥の方から光が溢れているのを
見るのだった。
「何だ…? あの光…?」
それは青白い光で、洞窟の奥から漏れ出している。
「あんなの、見たことありません。少なくとも、あたくしの出身地にはあんな風に光る岩なんても
のはありませんでした」
アンジェラが言った。彼女達ドワーフは洞窟の中に住む種族。そんな彼女でも理解できない
もの。
「あの光の方向から、さっきの者達と似たような『力』を感じます」
背後からイアリスが言った。
「もしかしたら、元凶があるのかもしれない…。ピュリアーナ女王は、この事を調べさせようとし
たのかもしれないな。行ってみよう」
「何があるか、分かりませんけれどもね」
シェルリーナとアンジェラが口々に言い、彼女達は洞窟の奥、光が溢れている方へと駆けて
いった。
青白い光は大きくなって行き、やがては洞窟の壁全てを覆う場所まで彼女達はやって来た。
天井は高くなり、人一人が通れるほどの幅も大きく広がる。
大きな空間になっていた。どうして発光しているのかは分からない。洞窟全体が、青白い色に
包まれている。
シェルリーナ達は、開けた空間を見上げた。
「これ…、さらに奥へと穴は続いています。でもこの形、まるで誰かが彫り上げたかのようです
…」
と、アンジェラ。彼女の言う通り、洞窟は、誰かが手を加えたように、地下通路のようになって
いた。
シェルリーナ達のいる場所から先に、また通路が狭くなって伸びている。
彼女達は歩を進めようとした。
しかし、その奥の空間から、光のようなものが溢れ出して来る。青白い光、キナ臭い匂いと、
稲妻のような閃光が響く。
現れたのは、先程、騎士達に襲い掛かった戦士達だった。前方から一人だけ現れる。
彼らは剣を持ち、迫ってくる。兜の覆われたその顔からは何も見る事ができない。
「たった一人だ…。やるのか…?」
シェルリーナが独り言のように呟いた。さっき、あれほどに痛めつけられたあの戦士。目の前
にいる者も同類だろう。だが今、相手は一人。しかもこちらは3人。
だが、目の前の戦士に刃を向けるのよりも前、シェルリーナは背後から迫ってきている気配
を感じた。
前に警戒を払いつつ後ろを確認する。
背後からも戦士が迫って来ていた。しかし、アンジェラは気付いていない。いつの間に近付い
ていたのか? 今まで少しも気配を感じなかった。
「アンジェラッ! 危ないッ! 後ろだッ!」
背後から迫って来た気配に気付いたアンジェラは、思わず振り返ったが、その隙を突かれて
いた。
「ううッ! あ、あ…」
アンジェラの腹部を剣は刺し貫いている。彼女の鎧が砕かれ、背中側から刃が突き出てい
た。
「ア、アンジェラッ!」
彼女は眼を見開いたまま、声にならない声を漏らしていた。
手が震えているが、斧は握り締めていた。息は喘いでいる。
だがそれでも彼女は、自分が貫かれている事を知り、歯を食いしばって、目の前の戦士を睨
むように見る。
腹を剣が刺し貫いているというのに、少女とも取れる彼女の表情は鋭かった。大きな瞳も、
痛みなど忘れ、相手を鋭く刺している。
目の前にいる戦士に向かって斧を振った。
だが、アンジェラの体から剣が引き抜かれ、彼女の斧は空間を切り裂いただけだった。
鎧から溢れる血を手で押さえ、アンジェラはよろめいた。咳き込み、口から血を垂らしながら
も、まだ立っている。
「ア、アンジェラ…」
シェルリーナは駆け寄った。だが、アンジェラは腹を押さえながらもしっかりと自分の脚で立っ
ている。
「だ…、大丈夫です…。このくらいなら…。知っているでしょう…? ドワーフは人間よりも全然
頑丈なんですから、お腹を刺されたくらいじゃあ…」
そうは言うものの、出血は酷い。眼も霞んでいる。シェルリーナは、足元がふらつき、倒れそ
うな彼女を抱えてかばった。
その時、アンジェラの眼が大きく見開かれた。シェルリーナは傷が痛んだのだろうと思った
が、そうではない。
背後から、剣を持った戦士が、アンジェラの背中に刃を突き立てていた。それも深々と。剣の
柄が埋まりそうなくらい。
「ア、アンジェラーッ!」
シェルリーナは叫ぶ。同時に彼女の背中から剣が引き抜かれた。鮮血と共にアンジェラの体
は力なく地面に崩れた。
「ゆ…! 許さんぞ貴様…! お…、おのれ…! よくもアンジェラを卑怯にも背後から…!」
怒りの声と共に、シェルリーナは剣を抜いていた。倒れたアンジェラのすぐ傍に立っている戦
士へと、彼女は鋭い視線を向ける。
騎士団長としての威厳、そして怒りが、その鋭い視線にはこめられていた。普通の人間が見
たならばまず怯んでしまうほどの視線。
だが、戦士の方は、兜の内側からどんな眼を見せているのかも分からない。
「覚悟しろッ!」
すでに向けられていた刃をシェルリーナは一閃し、目の前の戦士に向かってそれを突き出そ
うとする。
相手の戦士も手にした刃を振って来ていた。それが、シェルリーナの頬を掠める。
左頬だった。光を失った眼を覆っている髪をもそれは切り裂く。
傷跡と共に閉じられている左眼。その傷跡に、今度は横へと刃が走っていた。
そうであっても、シェルリーナは落ち着いていた。刃を鋭く突き出し、正確に目の前の戦士を
捉えていた。
相手を完全に捕らえた。そのはずだった。
「シェ…、シェルリーナ様…? 一体…?」
だが、目の前にいたのはイアリスだった。
彼女は眼を見開き、シェルリーナの、今では隠されていた左眼も現れた顔を見つめている。
シェルリーナも驚いたまま、彼女の顔を見つめていた。
イアリスは口から血を流している。
まさかとは思ったが、自分が手にしている剣。それが、イアリスの胸を刺し貫いていた。
ミスリル銀の鎧の隙間を貫き、自分の渾身の一撃は、イアリスを刺していた。
「そ、そんな…。嘘だ…」
シェルリーナは思わず声を漏らす。
間違い無い。目の前にいたのは、光から現れた、あの剣を携えた戦士だったはずだ。イアリ
スなどでは断じてない。
洞窟が薄暗いから? だが、見間違えるだろうか。男のような体格の戦士達と、女であるイア
リスの体格の差を。
洞窟の中は、不思議な青白い光で溢れている。
だが、もしかしたら、この青白い光が自分達にそう見せているのか? 今見えている戦士達
の姿は幻覚なのか…。
訳も分からないままシェルリーナが立ち尽くしていると、壁に背中を押し付けられたイアリス
は、力を失いその場に座り込んだ。
そしてがっくりと首を垂れる。長い髪が彼女の顔の前に垂れた。
「イアリス…、そんなッ! しっかりしてくれッ!」
倒れようとするイアリスの体を抱え、シェルリーナもその場にしゃがみこんだ。なるべくイアリ
スを楽な姿勢にする。
「も…、申し訳ございません…、シェルリーナ様…」
何とか顔を上げて、彼女は言った。元々白い肌の彼女だったが、今では眼にはっきりとれる
ほど蒼白な表情をしている。
人間ならば即死の傷。胸からはとめどなく血が溢れている。
「な、何を言っているんだ…?」
シェルリーナはその血と、イアリスの表情を見比べながら彼女に尋ねていた。
「あのアンジェラを殺したのは、わたしです…。わたしの目にははっきりと、彼女の姿はさっきの
戦士にしか見えませんでした…」
彼女が何を言っているのか分からない。シェルリーナには理解できない。
「そ、そんな、馬鹿な…?」
シェルリーナは、すでにこと切れているアンジェラの方に眼をやった。もはや彼女の体はぴく
りとも動こうとしない。
「シェ、シェルリーナ様…」
苦しそうにイアリスが言った。もう自分の体に力が入らない様子。シェルリーナに抱えられ、
成すがまま。首もがくっと後に倒れてしまう。
「も、もう…、喋るな…」
幾つもの戦いを共に潜り抜けてきた戦友が、自分の手の中で息絶えようとしている。シェルリ
ーナは心臓が苦しくなり、眼が熱くなって来るのを感じた。
「ど、どうか…、ご自分をお責めにならないで…。あなたは、わたしを殺されたのではないので
す…。何者かがあなたに、そうさせるよう、何か…、力を働かせたのです…。これは、エルフの
直感。間違いありません…」
イアリスのその言葉を聞くと、シェルリーナの頬に涙が流れた。
「頼む…。お願いだから…、死なないでくれ…、あんた達を失ったら、私は…、私は…!」
「最後に…、どうか…、わたし達の…、わたしとアンジェラの娘を…、お願いします…」
イアリスが事切れるのを、シェルリーナは看取った。熱い涙が頬を伝っていくのが分かる。普
段、涙するなどという言葉はシェルリーナには無いというのに。少女の頃からそうだった。泣き
そうになっても無理矢理それを堪えてきた。
だが今は…。光を失っている左眼からも涙が溢れてきそうだった。
シェルリーナはたった一人だった。戦友達は次々と打ち倒され、もはや『フェティーネ騎士団』
には彼女達しかいない。
命尽きた、それも自ら手を下してしまったイアリスの体を抱えたシェルリーナ。そんな彼女の
周りに、剣を手にした戦士達がゆっくりと囲んでいく。
すでに3体。全く同じ体躯の戦士がシェルリーナを囲む。たった一人、相手は3人。一人です
ら歯が立たないような戦士が3人。
だが、そんな事は、すでにシェルリーナにとってどうでも良かった。
イアリスの体を静かに横たえ、彼女は立ち上がる。
「…、お前達が何者であろうと、私は知った事じゃあない。言える事はただ一つ! 私はお前達
を倒し、友の無念を晴らす!」
シェルリーナは剣を戦士達に向け、言い放った。すでにその瞳からは涙が流れもしていな
い。透き通った右眼の青い瞳は、むしろ冷酷と言えるほどにまで鋭く輝く。
怒り。罪悪感。がシェルリーナの精神を包んでいた。それが彼女を、より凶暴に、そして残酷
な本能を引き出す。
仲間達が全て倒され、自分だけが残った。しかしそうであっても、恐怖はもうどこにもない。
目の前の戦士達を倒す。それだけ。死のうがどうなろうが、もはや知った事ではない。
シェルリーナは、剣を構え、一直線に戦士達の方へ向かった。何の策もない。ただ剣で斬り
かかろうとするだけだ。
恐れなどももう無い。する事はただ一つ。目の前の戦士達に剣を浴びせる事。防御も何も考
えていない。
それは、この戦士達とて同じ事だろう。彼らは何者かに操られている、ただの傀儡に過ぎな
い。
だがそれが誰だとかそう言った事は、今の彼女にとってはどうでも良い事。
3体の戦士達の中央に飛び込んだシェルリーナは、勢い良く剣を振り下ろした。目の前の戦
士の体が切り裂かれる。そこから白い光が溢れ出す。
彼らは悲鳴を上げることもしない。剣で切り裂かれた事で多少の怯みも見せない。
シェルリーナの方へと剣が振り下ろされてきた。
自分よりも数段大きい体躯の腕から振り下ろされる剣。シェルリーナはそれを見上げる。
飛びのくシェルリーナだが、左肩を切り裂かれた。すでに鎧が砕け、負傷している所への更な
る攻撃。
舞い上がる血と、痛みに思わず声を上げそうになる。だが怯んでもいられない。
自分は、3人の戦士の中へと飛び込んだのだ。
剣を大きく一回転させ、囲んでいる相手を一気になぎ払おうとする。
3体の戦士達に一気に斬り付けた。
シェルリーナが戦場で生き残れるのは、痛みも負傷も乗り越える不屈の精神。それに恐怖を
しない覚悟。
だが、すでにシェルリーナは体中傷だらけであり、戦いの中での集中力も失い始めていた。
鋭いものが背中に走った。鎧が砕ける音が聞こえ、血が飛ぶのが分かる。熱いものが背中
を流れる。
シェルリーナは思わず声を上げた。一瞬で眼が霞み、足元がふら付く。
致命傷なのか。だが、傷の感覚からして、深いというわけではなさそうだ。まだ立っていられ
る。
立っていられるのならば、それは戦えるという事。
もはやがむしゃらだった。しかし、シェルリーナはそうであっても、剣を振るい、一人の戦士を
斬り付けた。
まだ行けるはず。自分はどうなっても構わない。せめて、友の命を奪った者達に一矢報いる
事ができるならば。
剣を握る手の力が弱くなっている。体の姿勢も、傷をかばう形になっている。
目の前の戦士の内一人が剣を突き出してきた。
まだ、避けられる。よろけながらも、何とかその突きを避けたシェルリーナ。しかし、更にもう
一方から戦士が剣を突き出してくる。
突き自体はシェルリーナに届かなかった。だが、青白い、まるで稲妻のようなものがその剣
から放出される。
体を鋭いものが突き刺した。
その一撃で、シェルリーナは全身の力を奪われた。体中に痺れる衝撃が走ると同時に、彼女
の体は背後へと大きく飛ばされ、洞窟の壁に激突すると、そのまま地面へと倒れ込んむ。
うつ伏せに倒れたシェルリーナ。口から血が溢れ出した。
彼女は自分の体が、血の池の中にある事を知る。それは自分自身の血。
自分がどれだけ負傷したのかも分からない。とにかく今では、体を少しも動かせないという
事。
もう、自分は死ぬんだな、とシェルリーナは思った。だが、あっけなく流れ矢にでも当たって死
んだり、不慮の事故や病気で死ぬのよりはましだ。
それを思うと、なぜか笑えてくる。いや、涙さえも溢れた。泣きながら笑うと同時に、彼女は血
を吐いた。
痛みさえも薄れてくる。意識が遠くなっていく。自分が死ぬのは目に見えていた。
頭に白い靄がかかり、それがどんどんと濃さを増していく。
血溜まりの中のシェルリーナを囲んだ戦士達は、剣を振りかざし、最後の留めを刺そうとして
いる。
最期の時が近付いている。
イアリス、アンジェラ…。すぐに跡を追えそうだ。だけれども、私、あんた達の娘を任されたっ
ていうのにな。約束を守れそうに無いよ。
シェルリーナは静かに眼を閉じた。
「お母さん…、お母さん…」
声が、聞えてきた。
頭の中に響いてくる声。シェルリーナはそれを聞いていた。目の前が真っ白になっている。体
中に走っていた痛みも、今ではどこかへと消え失せている。
ぼうっとする意識の中で聞えてくる声に、最初のうちはシェルリーナの頭は働かなかった。何
を言われているのかも分からない。
「お母さん…」
しかしやがて、女の子の声が聞えて来ている事に気付き、シェルリーナははっとした。そし
て、倒れていた体をその場から起こす。
倒れていたのだろうか。いや、そうではない。真っ白な光景からだんだんと見えてくる周囲の
光景。
シェルリーナは、長い椅子の上に横になっていた。
今まで洞窟の中で戦い、そして傷ついて倒れたというのに。今では、椅子の上に横になって
いる。それも、ここは洞窟などではない。
見知らぬ家の中だった。
綺麗に整えられた内装。趣味の悪くない落ち着いた家具が見える。絨毯の敷かれた居間に
置かれた椅子の上に座る自分。
鎧は着ていない。不思議だ。こんな場所にいる自分は、紛れも無く自分なのに、白いドレスの
ようなものを着ている。体中に付けられた傷はすでに無くなっている。光を失った左眼を覆い隠
していた、斬られてしまった髪さえも、元通りに顔の左部分を覆っていた。
普段男物の服ばかりきているシェルリーナとしては、不思議な感覚だ。
これはいよいよ自分は死んだのだな。そうシェルリーナは思った。
だが、何か違う。シェルリーナが子供の時に教わった死後の世界とは違う。そこでは、神々に
よって命ある者が裁かれ、正義の行いをした者には安息が訪れ、悪の行いをした者には地獄
が待ち受け、その裁きを受けると言う。これは違う。
まるで夢でも見ているような感覚だった。靄でもかかっているかのような周囲の空気がそれを
感じさせる。
「お母さん。こっちに来てよ」
シェルリーナは、その声が聞えてくる方向へと眼をやった。空気が白みがかっていて、所々不
鮮明だ。現実の世界とは違う。
だが、どうする事もできない、何なのか全てが分からない。動かなければ始まらなかった。シ
ェルリーナは椅子の上から立ち上がり、声のする方向へと歩いていった。
シェルリーナが横になっていた居間には、奥の部屋へと続く扉があり、彼女はそこから続き
部屋へと入った。
そこには、一人の女の子がいた。
まだ未成熟の体格の、銀髪の女の子。髪を頭の後ろでリボンで2つ留めにしている。身長は
150センチを少し越えた程度だ。シェルリーナが着ていたような鎧を着込んでおり、騎士見習
いの子を思わせる。年は13か14歳くらいだろう。
シェルリーナは、その女の子の傍までやって来た。正面にある等身大の鏡に、彼女の姿が映
っている。それには、もちろんシェルリーナも。
女の子は、女の子らしいと言えばそうだ、身の丈もシェルリーナの肩ほどしかない。しかし、
甲冑を身に着け、その鋭い眼差し、冷たく濡れ、光っているような眼差しは子供とは思えない
ほど鋭い眼光を持っている。まだ、眼や瞳は子供のように大きかったが。
誰かにこの娘は似ている。一体誰に…?
「ねえ、お母さん。どう? わたしに似合っていると思う…?」
女の子は、シェルリーナの方を振り返り、そう尋ねた。
この娘は、自分自身に似ている。
シェルリーナは何も答えられずにいた。なぜ自分がお母さんと呼ばれるのか、全く分からな
い。
目の前にいる、この銀髪で鎧を着た女の子が、自分の娘だとでも言うのか。
確かに自分に似てはいる。だが、そんなもの、夢の中に出てくる虚像だ。
ここ最近、おかしな夢ばかりを自分は見ている。これだってそう、同じ夢。何度も見てきた夢
に違いない。
ただ、死ぬ間際に見る夢としては、あまりにおかしかった。
「シェルリーナ…、シェルリーナよ…」
声が、聞えてきた。男の声。それも低く鳴り響くかのような声で、壮年の男の声だ。
頭の中に響き渡る。強い存在。一度声を聴けば一生忘れないのではないかと思えるほど
の、強い存在の声。それが聞えてきた。
シェルリーナは声がして来る方を振り向いた。
部屋の中に、青白い光が溢れている。それはどんどん部屋の中を包んで行き、やがてはシェ
ルリーナの視界全てを覆ってしまった。
彼女は背後を振り向くが、そこにさっきの女の子はすでにいなかった。ただ青い空間だけが
広がっている。
「シェルリーナよ…」
「誰だ…? そこにいるのは…?」
青白い光の空間に、シェルリーナはただ一人。声だけが呼びかけて来る。再び呼びかけて来
る声に、シェルリーナは再度問いかけた。
「誰なんだ!」
「我が名は…、『トール』…」
「『トール』…?」
イアリスが言っていた。この洞窟の入り口にその名が彫ってある事を。
シェルリーナは思考を巡らせた。聞いた事のある言葉。
それは、神の鉄槌を振り下ろすという、荒ぶる稲妻の神、もしくは大精霊を名指す言葉だっ
た。シェルリーナも知っている。
そんな存在が、自分に呼びかけているというのか。到底信じがたい。
「シェルリーナよ。お前は選ばれし者だ。だからここへと導かれた」
「何を言っているのか分からない」
今では全てを青白い光が包んでいる。さっきまで見えていた部屋は何だったのだろう。青白
い光に幻覚を見せられていたのか。
そこに声だけが響いてきている。
「数多くの人間の中から、お前が選ばれた。我らの代わりとなって、この世界を救う為のな」
「だから…! 何を言っているのか分からないと言っているだろう…!」
シェルリーナは拳に力が入っていた。思わず声も荒ぶる。
「怒るのか…? 愚かな者がそうするように、また怒り、力で訴えるのか? さっきのように
…?」
「お前が、あの戦士達の主なのか…?」
相手の言葉を遮るようにシェルリーナは言った。
「その通りだ。怒りを見せている割には、鋭いな」
当然の事のように、言葉の主は言った。
「お前が、騎士達を、イアリス達の命を奪ったのか…?」
「お前の仲間を葬ったのには理由がある」
「お前が、騎士達を葬ったんだな…?」
「我が、お前の仲間を葬ったというのは事実だ。だが、ここへ導かれるべき者はお前だけだ。
他の者は、この場を知る事は許されない。しかし、仲間がやられでもしなければ、お前は我に
従わないから、始末に悪い」
「そんな事を、私が知っていると思うか…!」
すでに、シェルリーナの声には怒りが篭っていた。
「これから起こる出来事に比べたら、そのような犠牲など微々たるものよ…。だが、お前のよう
に、欲の無い、飢えていない者を引き付けるには、きっかけが必要だ。その怒りの本能を引き
出すようなきっかけがな」
「うるさい!」
光に向かってシェルリーナは拳を叩きつけていた。
「では、お前に一体何ができるというのだ…? 私の一部分にも過ぎない戦士達にすら歯が立
たないお前に何ができる? その人間という枠を超えられない力で。その傷を負った体で」
その声が頭に響いたと思った直後、シェルリーナは眼を見開いた。
だが、瞬間、凄まじい激痛が体を走り、彼女は声を上げた。
やはり、幻覚を見せられていた。虚像の中では傷一つ無かったシェルリーナだが、現実では
自分は死に掛かっている。
洞窟の暗闇、血の中に倒れ、致命傷としか取れないような傷が全身を走っているのが分か
る。
しかし、声の主は現実にも現れシェルリーナに言った。
「今のままではお前は死なない。そうなるようにしておいたのだ。我に従え。そうすればお前の
命は助けよう」
「誰が、貴様などに…!」
こらえられない痛みと共にシェルリーナは言った。
「お前には、未来を見据えるという事ができんようだな、シェルリーナよ」
「そんな事を…、知った事か…! どうせ、私はここで死ぬのさ…」
「未来とは、こういう事だ。これが、お前の未来なのだよ、シェルリーナ」
その声がしたかと思うと、またもシェルリーナは自分の知らない場所に立っていた。
傷の痛みが失せ、虚像のような世界へと立たされる。
またしても傷一つ無い。白いドレスのようなものを纏っている。幻覚だと言う事は直感的に分
かる。
これ以上何を見せようというのだ。
うっすらと靄がかかったような空間。今度は、そこに流れるような光景が写っていた。どこか
の草原。時間帯は昼だろうか。大勢の騎士達が走っていく姿が望める。
シェルリーナを中心として、その光景は川の流れのように流れていった。ここはどこかの戦
場。自分はその場にいるのではなく、その光景を見せられている。
馬を駆け、走っていく騎士達は、『フェティーネ騎士団』の旗を持っていた。
自分はさっきと同じ格好をしている。白いドレスを着たまま、ただ平原に立っている。そのよう
な光景。
駆けて行く騎士団の姿は遠くに望めたが、シェルリーナはその姿、一人ひとりの姿をはっきり
と見て取る事ができていた。
その先陣を切っているのは、自分と同じように、騎士達の先陣を切って馬を駆けているの
は、一人の女。
すぐに分かった。さっき、自分が幻覚を見ていた時、鏡の前に立っていた、あの女の子だと。
そして、その成長した姿なのだと。
銀色に輝く鎧を身に付け、髪も同じように銀髪。子供のようにリボンで2つに止めているので
はなく、肩にかかる長さで短く切っていた。視線は進んでいく方向にしっかりと向けられ、鋭い
眼光を放っている。それは、遠くからでもはっきりと見て取れた。
そして、その手には、大きな剣が握られている。おそらくシェルリーナでも振るえないほどの
大きさと重さのある剣。それ自体が鉄の塊であるかと思わせる剣。彼女は体格からすれば、シ
ェルリーナよりも少し背が低いくらいの女だった。しかしそうであっても、巨大な剣を握る事に不
自然さが無い程の迫力を持っている。
これは幻覚。そう、何者かによって意図的に見せられている幻覚なのだ。
だが、そう自分に言い聞かせても、真実の出来事。正夢よりも、精霊の悪戯よりも現実味を
帯びている光景だった。
「あの剣を見たか…?」
「何の事だ…?」
再び声が聞えてきた。シェルリーナには未だに声の主が何を言いたいのか、良く分かってい
ない。ただ反射するように問うだけだ。
「お前の娘が持っていた、あの剣を見たかと言ったのだ…?」
「あれが、私の娘…? 私の娘が、あの剣を持ち、騎士を率いて戦うとでも言うのか…? これ
が、未来の姿だと言うのか」
「その通りだ…」
シェルリーナは息をついた。あまりに突然、そして唐突な話に、彼女は付いていけない。だ
が、光景としての姿を見せられた事で、現実味を帯び始める。
「あの剣は、我らからお前へと受け継がれ、お前の娘へと受け継がれるもの。今、それをお前
へと譲り渡そう…」
「何を言っているんだ! あまりに唐突過ぎて、私には何が何だか…!」
青白い光の溢れる空間。白いドレスを纏ったシェルリーナだけが叫んでいる。
「いいや、唐突であったとしてもお前は理解できたはずだ。だが、現実を受け入れたくないとい
う恐怖から、それを否定する。
その為に、お前には未来の片鱗を夢として与えていたはずだ。ここへ来ても、現実を受け入
れられるようにな」
はっとするシェルリーナ。ここ最近夢に現れていた、奇妙な光景が頭に浮かぶ。
「私が…、恐れているだと…!」
「ああ、恐れているとも。騎士としての誇りがそうさせるのか、今までの自分の在り方を捻じ曲
げられる事に恐れているのか。お前は娘を持つという事に恐れを抱いている」
その声の言葉は、シェルリーナの怒りを誘った。
「ふざけるな! 私が、そんな事に恐れを抱いているだと! 貴様、一体何様のつもりだ! 例
え、お前が神であったとしても、私はお前を否定してやる! 言っておくが、私は何も恐れな
い! 死さえもな!」
頭の中に響く声に、シェルリーナは怒りをぶつけていた。
「ほう…。そうか。だったら、この剣を手に取る事に、何のためらいもしないだろうな…」
祭壇のような場所。突然、シェルリーナはそこへと立たされていた。
周りは現実でも見てきたさっきの洞窟だ。青白い光が溢れ、壁面を照らし上げている。だが
この場所は、洞窟と言うよりも、壁面を整えられた、大広間だった。
目の前には祭壇があり、シェルリーナはすでにその場所へと繋がる階段に脚をかけていた。
段には彼女には理解できない文字がはっきりと掘り込まれており、古代の文字を思わせた。
周囲の雰囲気、祭壇、そして囲む柱は、古代遺跡の様式を思わせる。どこの文明かは計り知
れない。今までに見たこともないような様式だった。
「これは…、一体、どういうつもりだ…?」
シェルリーナは、祭壇を登りきった所でそう言った。
目の前の祭壇には、一振りの剣が置かれている。鞘も無く、剥き出しのまま、銀色の刃を輝
かせている。
近付いて見ると良く分かる。この剣は大きい。
鉄で出来ているのか、石で出来ているのか。刃の鋭さは、光る表面がシェルリーナの顔を映
し出している事から分かる。柄の部分はというと、石ででもできているかのようにごつごつとして
いた。まるで、翼を広げたかのような形状の柄。
刃の部分にもシェルリーナが理解できない文字が彫り込まれていた。そしておそらく、この剣
はかなりの破壊力を持っている。見た目の重厚さからもそれが伝わってくる。だが、この大きさ
ではシェルリーナはおろか、大の男でもないと振り回せないだろう。
この剣を手に取る事自体、シェルリーナにはためらいはなかった。青白い光を刃が乱反射
し、まるでこの剣自体が、その光を放っているかのようだ。
剣を持ち上げようとした。だが、この剣の古めかしさといい、奇妙な文字が彫られている事。
そして、儀式的なものを思わせる祭壇。剣を手に取るだけで祟りに遭いそうだ。
気付いたら剣の柄を握っていた。それが、シェルリーナにとっては正しい言葉かもしれない。
再び、シェルリーナの頭に声が響いてきた。
「その剣を手に取るのだ、シェルリーナよ。それがお前と、お前の娘の未来の姿なのだよ…」
頭の中に響いてきた声に、思わずシェルリーナは言い返した。
「さっきの光景がこれから本当に起る事だと言うのなら、この剣を、私の娘が手にするだと…!
本気で言っているのか…!?」
「お前に定まっている運命は変えられん」
「私に娘などいない…! 大体、運命だと? 何を言っているんだ。私に娘ができたとして、彼
女が一体何をするというのだ!?」
剣の柄を握ったまま、シェルリーナは叫んでいた。
「お前は女だ。シェルリーナ。それも、まだ若い。これからでも十分に子供を授かる事ができる
だろう…。その娘がこの世界を変える。お前には想像もできない事かもしれないが、そうなるた
めに、その剣は与えておく。それはお前達を試すという事だ。本当に我々が必要としている者
になれるかどうか。その剣の力を悪用するならば、我々が必要な者では無かったという事にな
る」
柄を手にしている剣。だが、相当に重い。本物の鉄か石でできているらしく、簡単には持ち上
がらない。
シェルリーナは思わず唇を噛んで、辺りを見回した。
今のすらも幻覚だったのか、とシェルリーナは思い知らされた。
だが、自分の手に剣の柄が握られている。この感触、この重さは自分の剣ではない。うっす
らと眼を開けると、自分が握っているのは、さっき、幻覚の中で手にした大剣であるというのが
分かった。
こんなもの、手放してしまいたい。衝動にかられるシェルリーナだったが、不思議だった。
この剣を握っているだけで、まだ体が動かせそうな気がする。傷の痛みも抑えられているよう
な気がした。
シェルリーナはゆっくりと体を動かし始めた。
まるで這うようにして体を動かしていく。
痛みが体を貫いた。彼女は声を上げたが、それは洞窟の中に響いていくだけ。虚しいものだ
った。
洞窟の中の青白い光は消え失せている。今では頼る光も何も無い。真っ暗闇の中に彼女は
いて、洞窟のどこにいるのかさえ、何も分からなかった。
自分が死ぬのならばここだ。多分、誰にも看取ってもらえない。体中の傷の痛みに喘ぎなが
ら死んでいくだけだ。
だが、生きる事もできるかもしれない。ここで死ぬ定めである自分が、未来の光景を見せら
れたりするものか。
剣を握っている内に、不思議な感覚がシェルリーナの精神に沸き起こってきていた。
まだ、生きなければならない。ここで死ぬわけにはいかないという精神。
自分は、まだ生きる事ができる気がする。もはや助からないと諦めかけたというのに、友との
約束を守りたいという気持ちが勝った。
だから、まだ生きなければならない。手にした剣を握り締めてそう思う。
だがそれは、自分の仲間達の命を奪った者によって与えられた時間だった。
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主人公の母親である、シェルリーナ達の物語。完全な負け戦となった戦いに、シェルリーナ達は敗走をしていくのですが―。 | ||
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