真・恋姫†無双〜赤龍伝〜第52話「ドキドキ? 水泳特訓」 |
真・恋姫†無双〜赤龍伝〜第52話「ドキドキ? 水泳特訓」
明命「朝です! 今日も一日頑張りましょう!!」
城壁で見張りをしていた明命が、朝日が昇ると同時に大きな声を上げた。
明命「ん、あれは赤斗様! ……と思春殿?」
城壁の上から赤斗と思春を見つける。
明命「二人だけで、どこに行くのでしょうか?」
そう思いながら、明命は二人を見送った。
赤斗「………………」
河原に赤斗がいる。そして、赤斗の目の前には、思春がいる。
思春「………………」
赤斗「……あのー、思春?」
思春「なんだ?」
不機嫌な顔で思春が、赤斗を睨みつける。
赤斗「お嫌でしたら、僕は一向に構わないので……」
思春「そうはいかない。……蓮華様の頼みなのだからな」
赤斗「そうですか。はあー」
今日、二人が河に来た理由は、ただ一つ。
赤斗の水泳の特訓のためだった。
以前、蓮華に海が苦手である事を教えたのが間違いだった。
親切?にも、赤斗に泳ぎを教えるように、蓮華は思春に頼んでくれたのである。
赤斗「やっぱり、やるんだよね」
思春「当然だ。やる以上は、手は抜かん」
赤斗「………………はぁー」
赤斗と違い、蓮華に頼まれた思春はやる気満々だ。
思春「早く脱げ」
赤斗「……分かったよ」
思春に促され、赤斗は服を脱いでトランクス一枚になる。
思春も服を脱いで、さらしとふんどしのみの姿になる。
赤斗「あっ……」
思春「今度はなんだ?」
赤斗「な、何でもないです」
赤斗(思春に見惚れてたなんて言ったら……殺されるな)
思春「変な奴だ。まあいい、始めるぞ」
赤斗「うっ」
赤斗は思わず後ずさる。
思春「何をしている」
赤斗「心の準備が……まだ……」
思春「心の準備だと」
思春が一歩近づく。同時に赤斗も一歩後退する。
思春「貴様……」
赤斗「ははは……」
再び思春が一歩近づいたが、やはり赤斗も一歩後退する。
暫くの間、そんなやり取りを二人は続けるのであった。
思春「貴様、いい加減にしろっ!」
思春は、逃げる赤斗の首に腕をからめて、赤斗を捕まえた。
赤斗「思春。やっぱり心の準備が……」
思春「問答無用だ。来いっ!」
思春は赤斗の頭を脇に抱えて、河のほとりまで連れていく。
赤斗「ちょっと待って! 思春、まさか!?」
思春「ふんっ」
思春は赤斗を河に放り投げた。
バッシャーーーンという音とともに、大きな水飛沫が上がった。
ブクブクブクブク…………
赤斗はそのまま川底に沈んでいく。
赤斗(……海じゃなくても、水の中は駄目だな)
水への恐怖心で身体が動かせない赤斗は、沈みながらそう思った。
バッシャーーーン
そこに思春が河に飛び込んできた。
赤斗(あれ、思春?)
思春(何をしている? 死ぬ気か?)
思春は赤斗の背後に回り、そのまま赤斗を水面まで連れていき助けた。
赤斗「ごほ、ごほ……」
思春に助けられた赤斗は、飲んでしまった水を吐き出す。
思春「…………」
赤斗「ごほ……ごほ……。あーー、酷い目にあった。ごほ……」
思春「何故、泳ごうとしない?」
赤斗「……水の中に入ると、怖くて動けなくなるんだよね」
思春「昔、溺れたからか?」
赤斗「まあね。子供の頃に溺れてから、泳いだ事がないんだ。……泳ぎ方なんて忘れたね」
思春「これは思っていた以上に、手こずりそうだな」
赤斗「……続ける?」
思春「貴様には、ここは少し深かったようだ。もう少し浅い所に移動しよう」
赤斗「続けるんだ……」
二人は浅い所まで移動した。
そして、思春は泳ぎの基礎から、赤斗に教える事にした。
その日の夕方。
明命「あっ、赤斗様! おかえりなさいなのです!」
赤斗「ぁ、……明命……ただ、いま……」
城に帰ってきた赤斗を出迎えた明命だったが、赤斗は今にも倒れそうだった。
明命「どうかされたのですか?」
赤斗「……ごめん。…………疲れているから」
そう言うと赤斗は、それ以上何も言わずに部屋へと戻っていった。
明命「赤斗様?」
赤斗が心配になった明命は、赤斗の後を追った。
明命「赤斗様。入ってもよろしいですか?」
赤斗の部屋の外から、明命は呼びかけるが返事はなかった。
明命「赤斗様。失礼します」
明命は恐る恐る部屋へと入る。
部屋に入った明命が見たのは、床に倒れている赤斗の姿だった。
明命「赤斗様!」
明命が赤斗に駆けよる。
赤斗「………………………………………………すぅー」
明命「え………眠っている?」
赤斗は死んだように眠っていた。
思春「そこで力つきたか」
明命「し、思春殿!」
いつの間にか思春は、部屋の入り口に立っていた。
明命「いったい何があったのですか?」
思春「一緒に特訓をしただけだ」
明命「特訓ですか? それで朝早くから、出掛けられていたのですね」
思春「そうだ」
明命「それより、思春殿。赤斗様を寝台に寝かせたいので、手伝ってくださいませんか?」
思春「なに」
明命「お願いします。このままだと、風邪をひいてしまいます」
思春「……分かった」
明命の真剣な顔でお願いされた思春は、明命と協力して、一緒に赤斗を寝台の上に寝かせた。
思春「私は蓮華様に報告に行く。あとは好きにしろ」
明命「はい! ありがとうございます。思春殿」
思春は部屋を出て行った。
藍里「蓮華様。赤斗様がどちらに行かれたか、ご存知ですか?」
蓮華「赤斗なら、思春と一緒に河原に出掛けたわよ」
藍里「思春ちゃんとですか?」
蓮華「そうだ。河原で泳ぎの特訓をしているのよ」
藍里「そうでしたか。思春ちゃんと泳ぎの特訓ですか」
蓮華「もうそろそろ帰ってくるんじゃないかしら」
思春「もう帰ってきております」
思春が蓮華と藍里の後ろから声をかけた。
蓮華・藍里「!!」
急に声をかけられた蓮華と藍里は驚く。
藍里「し、思春ちゃん?」
蓮華「ちょっと思春、急に声をかけないでちょうだい」
思春「はっ。申し訳ありません」
蓮華「で、思春よ。どうだったのだ?」
思春「はあ……それが……」
蓮華「? ……思春?」
藍里「どうかしたんですか?」
思春「申し訳ありません」
蓮華「え?」
思春「私の力不足でした」
蓮華「それは、つまり……駄目だったのか?」
思春「…………はい」
蓮華「そうか……」
藍里「それで、思春ちゃん。赤斗様は?」
思春「死んでいます」
蓮華・藍里「えっ!!」
思春「部屋に戻って、死んだように寝ています」
蓮華「思春っ!」
藍里「思春ちゃん! 脅かさないでくださいっ!」
思春「はっ。申し訳ありません。つい……」
蓮華「まったく。……赤斗はそんなに疲れているのか?」
思春「はい。もう、帰り道ではフラフラでした」
蓮華「赤斗に無理をさせたのか?」
思春「いえ。私が教えたのは、基本的な事だけで特別な事はしておりません。明日、また特訓をする事になっていますが」
蓮華「そうか。頼んだぞ思春」
思春「はっ。では、失礼します」
そう言うと思春は、蓮華と藍里から去っていった。
藍里「思春ちゃん。何だかはりきっていますね。赤斗様、明日も大変そうですね」
蓮華「藍里。明日は暇か?」
藍里「はい?」
―――赤斗の部屋―――
明命「赤斗様……思春殿とどのような特訓をされたのでしょう」
赤斗と二人きりになった明命は、赤斗の寝顔を見ながら独り言を呟く。
明命「思春殿と、二人きり………」
朝、赤斗と思春の二人が出かけていった時の姿を思い出す。
明命「何でしょうか……この気持ち……?」
明命の心の中に、今まで感じた事がなかった感情が芽生えていた。
藍里「……赤斗様?」
その時、赤斗の部屋に藍里が入ってきた。
明命「あ、藍里様」
藍里「明命ちゃんも来ていたんですね。赤斗様はどうですか?」
明命「ぐっすりとお休みになっています」
藍里「相当、お疲れになったのですね」
明命「藍里様。赤斗様は思春殿と、どんな特訓をされたのですか?」
藍里「私も蓮華様から聞いたのですが、どうやら、泳ぎの特訓だそうですよ」
明命「泳ぎの……ですか?」
藍里「ええ。けど詳しい事は、赤斗様から直接聞いた方が良いでしょう。きっと、赤斗様なら教えてくれますよ」
明命「そうでしょうか?」
藍里「そうですよ」
明命「はい! 分かりました。赤斗様が起きたら聞いてみます」
翌朝。
赤斗「うぅ、身体中が痛い」
目を覚ました赤斗は、全身筋肉痛になっていた。
明命「おはようございます。赤斗様!」
そこに元気良く明命が部屋に入ってきた。
赤斗「おはよう。明命。朝早くからどうしたの?」
明命「えっと、その……ですね」
赤斗「うん?」
明命「今日も赤斗様は、………思春殿と……特訓ですか?」
赤斗「誰からその事を?」
明命「藍里様からお聞きしました!」
赤斗「……何故、藍里が知っているんだろ?」
明命「はい。藍里様は蓮華様から聞いたと言っていました」
赤斗「そうなんだ……」
明命「それで、赤斗様。今日も思春殿と特訓なんですか?」
赤斗「まあね。今日も河で特訓なんだよね」
明命「赤斗様は泳げないのですか?」
赤斗「うう、まあね。……泳げないかな」
少し恥ずかしく思いながら赤斗は話した。
明命「なるほど。それで思春殿と泳ぎの特訓を」
明命は、なんだか納得した様子だった。
明命「わかりました。私も協力させてください!」
赤斗「はい?」
明命「これから街の警邏があるので、今日はご一緒できませんが、今度の特訓の時には、私も協力させていただきます」
赤斗「あ、ありがとう。明命。……そうだね。また、特訓する事が……あれば、協力してもらおうかな?」
明命「はい♪ では、赤斗様! 街の警邏があるので、これにて失礼いたします!」
赤斗「ははは……気をつけてね」
元気な明命を見送った赤斗は心の中で溜息をついた。
今日も赤斗と思春は、河原にやってきた。
赤斗「はあーーーーー」
河原に着くや否や、赤斗は大きな溜息をつく。
思春「始めるぞ。服を脱げ」
赤斗「ううぅ……」
思春「何をしている。早くしろ」
赤斗「…………はーーい」
ようやく赤斗は、服を脱いでトランクス一枚になった。
思春「往生際が悪い奴だ」
そして、思春もさらしとふんどしのみの姿になる。
思春「さあ、始めるぞ……河に入れ」
赤斗「……仕方がないか」
赤斗はしぶしぶと河の中に入った。
思春「よし、ここまで泳いでこい」
思春も河に入り、赤斗に自分の所まで泳いでくるように言った。
赤斗「いきなりだね」
思春「足がつくのだ。問題ないだろ」
赤斗「そうかも、しれないけど………」
赤斗から思春までの距離は五メートル弱。河の深さは約一メートル。
昨日の猛特訓で、何とか水の中に入れるようになった赤斗だが、泳ぐ事はまだ出来ない。
思春「早く来い」
赤斗「うう、分かったよ」
赤斗は覚悟を決めて、思春に向かって泳ぎ始めた。
しかし、赤斗の泳ぎは、お世辞にも泳いでいるようには見えなかった。
赤斗「ぶくぶくぶく……ぷはっ、ぶくぶく、ぷはっ……」
今にも沈んでいきそうな赤斗は、必死で思春に向かっていく。
そして、やっとの思いで思春のもとにたどり着いた。
赤斗「ぷはっ……はぁ、はぁ、はぁ……着いた。……はぁ、はぁ」
思春「貴様……」
思春の声に少しだけ怒気が含まれている。
赤斗「え?……あっ!」
気が付けば赤斗は、思春の腰に抱きつく格好になっていた。
赤斗「あ、その……」
思春「……離れろ」
赤斗「嫌だ!」
思春「いいから離れろ」
赤斗「絶対、嫌だ!」
溺れる者は藁を掴むという感じで、赤斗は思春から離れようとしない。
思春「離せ」
思春は力ずくで、そんな赤斗を離そうとする。
赤斗「今は無理! あっ!」
思春「なっ!」
暴れていた二人は、バランスを崩してしまった。
赤斗は混乱して、足がつく場所である事すら忘れていた。
赤斗「ごぼごぼごぼ……ん?」
近くにあった柔らかいものに、赤斗はしがみついた。
そして、赤斗は水面から顔を出す事ができた。
赤斗「はぁはぁ……あっ!」
思春「…………」
赤斗は後ろから思春にしがみついて、思春の胸を思いっきり鷲掴みにしていた。
思春「…………足はついているな」
思春は静かに赤斗に言う。
赤斗「あ、うん」
赤斗は足がつく事を確認する。
思春「ならば、離せ」
赤斗「……分かった」
ようやく、赤斗は思春から離れた。
思春「まったく……」
蓮華「……何をしているのだ」
赤斗・思春「!!」
思いもよらぬ人物の声を聞き、二人は後ろを振り返る。
赤斗「蓮華、藍里!」
思春「蓮華様!」
振り返った二人が見たのは、蓮華と藍里だった。
赤斗「二人とも……何でここに?」
蓮華「少し様子を見にきたのだが……」
藍里「…………」
蓮華も藍里も機嫌が悪そうだった。
蓮華「どうやら、私たちは邪魔のようだな」
藍里「そのようですね」
赤斗「そ、そんな事ないよ。ねえ思春」
思春「風見の言う通り、そのような事はありませんので、お二人はお気になさらないで下さい」
蓮華「……そうなのか?」
赤斗「ああ」
思春「はい」
二人同時に力強く肯定した。
その後、蓮華と藍里の二人は特訓を見学する事になった。
昼過ぎ。
藍里「蓮華様。……そろそろ」
蓮華「うむ。そうだな。赤斗、思春。少し休憩にしないか?」
赤斗「そうだね。休憩にしよう!」
そう言うと赤斗は、素早く逃げるように河から上がった。
思春「……仕方がない奴だ」
小さな声で呟き、思春も河から上がった。
蓮華「こ、これはだな。今朝、藍里と二人で作ったんだが」
蓮華は大きな弁当箱を赤斗の前に出した。
赤斗「お弁当?」
蓮華「う、うむ。ほとんど藍里が作ってくれたから、味は大丈夫だ。安心してくれ」
赤斗「ありがとう。蓮華、藍里」
藍里「はい♪」
蓮華「思春もこっちに来て一緒に食べましょう」
思春「はい」
四人は河原でお弁当を食べる事になった。
藍里「赤斗様。特訓は順調ですか?」
赤斗「…………ははは」
赤斗は笑って誤魔化す。
思春「この者には、泳ぎの才能は皆無です」
蓮華「ちょっと思春っ」
思春「事実です」
赤斗「……やっぱり」
藍里「でも、昨日よりは泳げるようになったのでは?」
赤斗「まあ、ほんのちょっとだけ……」
藍里「すごいじゃないですか」
思春「本当に少しだけだがな」
蓮華「思春っ」
思春「失礼しました」
こんな風なやりとりをしながら、四人はお弁当を食べ終えた。
そして、暫く食休めした後、赤斗と思春は水泳の特訓を再開した。
引き続き、蓮華と藍里もそれを見学する事にしたが、それ以上赤斗は上達する事なく、特訓は終わった。
つづく
説明 | ||
蓮華に水が苦手である事がばれた赤斗は、思春と泳ぎの特訓をする事に。 この作品は、基本的に呉√にそっては行きますが、他√に 脱線することもあります。また、主人公は一刀ではなくオリジナルキャラクターです。 未熟なため文章におかしな部分が多々あるとは思いますが、長い目で見てくださると助かります。 |
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