真・恋姫†無双?群雄割拠〜 |
―――時は、群雄割拠。
弱い者は強い者に喰われ、強者こそが生き残る時代だった。
そんな時代の中、特に強い力を持った英雄がいた。
袁紹、袁術、曹操。
この英雄達は次々と弱い諸侯を食い殺し、領土を広げていた。
特に、曹操という女性はとても戦略的な人間だったために、残りの二人にも恐れられる英雄だった。
その一人、袁術はさらに警戒を強める。
彼女は徐州の陶謙を動かし、曹操の背後を狙わせた。
だが、危機を察知した曹操は先手を打ち、軍勢を徐州へと動く……が。
曹操は、ある最大の敵を生み出してしまう。
その名は―――。
第一話
『群雄割拠時代』
がしゃりと重い音を立てて、地面に一本の剣が転がる。
「いや、やっぱ、こいつは重すぎるよ」
この世界にはあまりも場違いな、白服を着た北郷が、腰のベルトの位置を直しながら、頭をかいている。
「駄目だよ。ただでさえこんな危ない世の中だもん。ご主人様も武器を持っていないと」
栗色の髪の女の子、劉備が困った顔つきで、北郷の顔を上目づかいにのぞきこんだ。
「ま、今までどおりの格好でいいじゃない?」
「駄目っ! ちゃんと私の言うこと聞いてご主人様!」
「だって、こいつ、かなり重いんだぜ?」
「だったら、体を鍛えるつもりで持っていて。……そうじゃないと心配で困るもん!」
「そうかな?」
劉備は、こくんとうなずいた。
「俺のそばには、いつも桃香がいる。だから、俺は何も心配してないよ」
北郷は劉備の『真名』を呼ぶと、栗色の髪にそっと触れる。
「あ……」
劉備は頬を淡く赤らめた。
「……ということで、俺はちょっと」
劉備は北郷をぐいと引き寄せると、腰に手を回した。
「そんなことしても、逃がさないもん」
「え、っと……桃香さん……あの……」
劉備は笑った。
「ちょっと、いいか二人共?」
天幕の入り口が、がばっと開き、二人とさほど変わらない年頃の女の子が現れた。
彼女は名は、公孫賛。真名は白蓮。劉備の友人である。
「あ―――お邪魔だったか?」
場の空気を読んだのか、公孫賛はが半ばあきれながら尋ねた。
「じゃ、邪魔じゃない。むしろ感謝してますっ」
北郷は大慌てで劉備から離れる。
「………」
劉備はそれを無言で返し、北郷は空気を変えるように公孫賛に話しかけた。
「ど、どうしたの白蓮? 何かあったの?」
「ああ……徐州の太守陶謙から救援要請が来たんだ」
救援という言葉に反応したのか、劉備も公孫賛に尋ねる。
「救援……って。誰かが徐州に攻め込もうとしている!?」
「曹操だ」
「曹操……さん」
劉備は唇を噛みしめ、手を震わせた。
それは、また戦いが始まり沢山の人が殺しあう悔しさ。
「助けに行きたいのは山々なんだが、最近は隣国の袁紹の動きが怪しくてな。……私は動けないんだ」
「っ! そんな……」
またなの、と劉備の感情が動く。前回の董卓討伐を失敗が脳裏に浮かんだ。
「白蓮は動けないか……。でも、客将の俺達だったら行けるね」
「ご主人様っ!?」
「本気か北郷!? お前たちの軍勢はわずか二千弱。曹操は三万だぞ」
北郷は震える劉備の手をそっと重ねる。
「関係ないよ。目の前で困っている人を見捨てることなんてできないし。それに……仮にそれで死んだとしても本望だよ」
「ご主人様……」
「北郷……おまえ」
北郷は、へへっと笑う。
「……でも、ある武将がほしいだ。俺の勘がその人と一緒なら曹操に勝てるって言ってる」
「誰だ?」
「趙雲という女性」
曹操はため息をついた。
「まだ……落せないの?」
「申し訳ありません曹操様。陶謙がこれほど抵抗するとは思わず……」
兵士が申し訳なさそうな顔で、曹操と話す。
「報告! 後方から敵を確認。旗は『劉』ですっ!」
別の兵士が天幕から現れ、敵増援報告が曹操に伝わった。しかし、曹操は眉一つ動かさず、すぐさま指示を飛ばす。
「夏侯惇、夏侯淵、曹仁と五千の兵を向かわせなさい。相手の脅威は関羽、張飛だけ。どちらか一人でもいなくなれば勝利は得られるわ」
「御意っ!」
曹操は、すっと細い足を組んだ。
「……あのお人よしがここに来るのはわかっていた。しかし、劉備の兵はわずか。何も気にとどめる必要はない」
「お言葉ですが。華琳様」
荀ケが曹操の真名を呼びながら口を挟んだ。
「劉備など相手に春蘭程度でいいかと思うのですが……。なぜ秋蘭までもが?」
春蘭とは夏侯惇、秋蘭は夏侯淵の真名である。
「貴方は知らないかも知れないけど桂花。関羽と張飛は反董卓連合で一番活躍した武将なのよ。しかもあの呂布と互角に渡り合えた二人。春蘭だけでは苦戦は目に見えてるいる」
「ですが、まだ入ったばかりの真桜達では……」
「何事も経験が必要よ。まして陶謙相手なら十分だわ。ここで勝ち残れないようではこの先を生きてはいけない」
曹操はこの戦いの先を見すえたような目で荀ケを見つめる。荀ケは『さすが、華琳様』と褒め称えそれ以上、口を挟むことはしなかった。
「さて……どうする劉備? 貴方はここで終わる人間かしら」
曹操は微笑んだ。
呂布は戦場を見ていた。
「恋殿。どうやら曹操軍は陶謙とは他に劉備軍とも戦いを始めたそうですぞ」
軍師陳宮がすっと呂布に近づいた。
ここに呂布がいる理由は二つある。
一つめは、前回呂布は曹操と戦い敗北したために、路頭に迷っていたため。
二つめは、陶謙という人間はとても優しい人柄と噂されていたため、保護してもらおうと思ってここに来ていたから。
しかし、すべては曹操や劉備に先を越されてしまった。
「どうなさいますか恋殿?」
陳宮の質問に呂布は、方天画戟を右肩に乗せた。
「……曹操をここで、斬る」
呂布の馬が戦場へ走った。
「了解や恋っ!」
呂布の片腕である張遼も呂布に続いた。
――そして、戦場の形は曹操対陶謙・劉備・呂布連合軍となる。
―――揚州。
「・・・・・・なんか馬鹿笑いが聞こえるわね」
玉座の間、外で孫策が不機嫌そうにつぶやく。
「・・・内容までは聞き取れないが、何を話しているかは大体予想が付く」
周瑜が半ばあきれながら、孫策を見た。
「あの男、北郷って言ったけ……。今回の戦い、袁術と張勲を自分の女にするために頑張ったみたい」
「欲望の塊だな」
周瑜がさらにあきれるが、孫策は厳しい顔つきだった。
「でも、その欲望であの戦果。……敵にまわすとやっかいね」
「………そうだな」
「ただいま戻りました」
男は家臣たちの手前もあるのか、主君袁術への礼をとる。
「うむ、ご苦労。堅苦しいのは抜きでよい」
「北郷さん此度の戦果、大手柄ですね♪」
二人はご機嫌の様子。
「では北郷、早速詳細を報告するのじゃ♪」
満面の笑みで言われ、北郷は報告をした。すると北郷の主君はますますご機嫌がよくなった。
「うはは――♪ もう、最高なのじゃ――! 褒美を取らすぞ。どんな褒美がほしいのじゃ!」
「………それはどんな褒美でもですか?」
「勿論ですよ――♪ 今回の戦いはそれだけの価値があるんですから」
「……しかし」
どうも、北郷の歯切れが悪い。どうやらその褒美とやらは主君を困らせるものだろう。だが、今の主君袁術は気にしなかった。
「なんじゃ? どんな願いも聞いてやるぞ」
「……結婚してください」
「なぬ?」
袁術は耳を疑った。
「……俺は袁術様と張勲様がほしいです。俺の女になってくださいっ!」
―――誰もが唖然となった。
第二話へ続く……
説明 | ||
ストーリー 群雄割拠。 弱い者は強い者に喰われ、強者こそが生き残る時代。 これは曹操、劉備、孫策、呂布、袁術を視点として、この時代をどう生き抜いていったかの物語。 |
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