境界のIS〜第七.五話 消されるなこの想い〜
[全1ページ]

 彼が静かに部屋から出て行った後、シャルルは一人涙を拭った。

 

 嬉しかった。

 

 ホントの自分を見つけてくれた。自分を受け入れてくれた。

 

 自分の居場所になってくれた。

 

 悩んでいい。甘えていい。支えてくれる人が、すぐ近くにいる。

 

 生まれて初めて、自分の存在が肯定されたように感じた。

 

 『向こうで信じることのできる人が見つかったら、隠さず自分のことを話しなさい。大丈夫よ。きっと受け入れてくれるわ』

 

 ――お義母さん

 

 『おねーちゃんなら大丈夫だよ。あ、カレシができたら紹介してね!』

 

 ――ジャンヌ

 

 『……恐れないで。怖がらないで。カナを、信じて』

 

 ――古京さん

 

 ――ボクは、ボクを見てくれる人に出会えたよ

 

 たまらなくなって、シャルルは自身を抱きしめた。

 

 「カナタ……」

 

 彼の名を、口の中で転がす。飴玉みたいに甘く、同時にピリッとした刺激が身体を突き抜けた。

 

 「カナタ……!」

 

 暗闇の中から助け出してくれた、たった一人の王子様。

 想うだけでドキドキする。

 引いては返す潮騒のように。穏やかに、そして激しく心が揺れた。

 

 ――そっか、これが――

 

 唇に、そっと触れてみる。

 

 ――これが、恋――

 

 こんな自分でも、恋ができた。

 近くにいたい。傍にいたい。一緒にいたい。

 自分が自分でいられるのは、彼の隣だけなのだから。

 

 

 

 

 

 トクン――

 

 ――あ、れ?

 

 『……カナはあなたを受け入れて、二人は結ばれた』

 

 ――前にも、同じことがあったような――

 

 『だから思い出して。前のあなたを』

 

 ――前の、ボク?

 

 

 

 

 

 『オレはお前じゃないからな。同情なんてできねぇよ』

 

 

 

 『そんなオレでも話を聞いて、受け入れることはできる』

 

 

 

 『オレがお前の居場所になる。ずっと一緒にいてやるよ。シャル』

 

 

 

 

 

 

 「あ――」

 

 思い出した。

 

 告白して。抱きしめられて――

 

 デートに行って。笑い合って。手をつないで。キスをして――

 

 一つになって――

 

 「あ……あ……っ……」

 

 閃光と共に流れ込んだ、膨大な量の記憶の奔流。

 脳を満たし、瞬く間に溢れ出たソレは強烈な電流となって背筋を走った。

 呼吸が速まる。身体が火照る。下腹の奥がキュンと脈動し、ジュンと何かが湧き出してくる。

 

 耐え切れなくなって、シャルルはがくりと膝を折った。

 

 「カ……ナ……」

 

 甘く切ない痺れが全身を侵す。

 ビリビリが皮膚の下を這いまわり、目の裏に火花が散った。

 

 取り戻した。全てを。

 

 愛しい人の夢に抱かれ、シャルルは温かな暗闇に沈んでいった。

 

 

説明
こんなシャルルで大丈夫か?

ここ数話でこの作品の好き嫌いがハッキリ別れると思います。怖い怖いの反面、してやったりと思ったり思わなかったり…
この場合Rタグはつけた方がいいのだろうか?

タイトルはサンライズ『ゼーガペイン』より。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
1955 1825 4
タグ
IS インフィニット・ストラトス 境界のIS 問題回 賛否両論覚悟の上 

夢追人さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com