北条家の縁側 |
001 夏の始まりに
【こはく】
「ああ・・・明日から夏休みです、どうしましよう・・・」
勉学から開放されて、ようやく訪れたこの楽園での計画は
昨日珍しくかかってきた母親からの電話で早くも頓挫した。
【母】
「あ〜〜コハクさん?元気にしていますか?私達明日から一月旅行に行ってきますから、
御土産期待しててくださいな〜それではあなたも良い夏を」
【こはく】
「突然すぎますよ、母上・・・」
ああ・・・青空が、入道雲が、なんて美しいんでしょう?
・・・と、現実逃避してみたり。
【コハク】
「・・・参りました。お天と様、コハクはこれからどう過ごせばよいのでしょう?」
夏休みの予定、一月かけてたてた
帰省した後メインの計画は、両親の旅行によりドタキャン
しょうがない
さて、お金も無いことだし、この夏はバイトでもして過ごそうかな〜
と考えていると、前方から何かが落ちる音が聞こえた。
みると道端には財布が落ちていた。
持ち主は気づかず角を曲がったのか、視界には存在せず。
拾ってみると使い古された味のある皮の財布であった。
ああラッキーこれでバイトしなくてもOKジャン?
・・・なんて考えるか〜〜!!
危ない危ない
【こはく】
「・・・っと、いけない。持ち主は角を曲がってしまったのかな?」
急いでT字路に出ると少し離れたところに着物を着た老人が歩いていた。
【こはく】
「すいませ〜ん」
声をかけた
【老人】
「?・・ん〜・」
老人が立ち止まってこちらを向いたので
ダッシュで近づいた。
【こはく】
「あの、もしかしたらこの財布はあなたのですか?」
そう聞くと老人は懐を探った。
着物から手が、老人の手が生えた
・・・どうやら着物に穴が開いていたようだ。
老人は照れたような顔をして頷いた。
【コハク】「はい、どうぞ。」
持ち主に届けられて良かったな〜と
満足して立ち去ろうとすらコハクに老人が言った
【老人】
「待ちなされ!」
【コハク】
「はい?」
【老人】
「おぬし、昼食はもう済ませされたか?」
【コハク】
「?・・・いいえまだです。」
【老人】
「うむ、わしもまだじゃ。ちょうど良い。礼がしたい。昼食を同伴願いたい。」
【コハク】
「いえいえ、そんな、礼には及びませんよ」
【老人】
「若い者が何を遠慮するか!」
結局俺はご老人の好意に甘える事にした。
なんとなく和食のイメージがあったけれど、レストランは以外にも
イタリアンであった。
注文がすむと、老人が口を開いた
【老人】
「そういえばまだ名乗ってなかったな。
わしは北条玄樹
ホウジョウゲンジュ
というものだ。」
【コハク】
「ああ、えと、すいません、お・・私は南部コハク
といいます。」
【玄樹】
「そうか、では、あらためて、南部殿、先ほどはありがとう。」
【コハク】
「はい、どういたしまして。その、なんだか私の方こそ、ご馳走していただき」
恐縮する青年にに笑う老人
世間話に花を咲かせていると注文した食べ物が届いた
【玄樹】
「おお来たか、それではいただこうかの?」
注文したパスタは美味しかった
食後のお茶を一服
【コハク】
「本当に、ご馳走さまでした。」
【玄樹】
「いやなに、わしも楽しく食わしてもらったよ」
【玄樹】
「そういえば南部殿、この休みは予定が無いと言っておりましたな?」
さっき話した話題だ
【コハク】
「はい、恥ずかしながら、実家に帰れなくなりまして、
友人達もひと月は帰省するらしく。これで彼女とか居ればまた違ったのでしょうけど。」
【玄樹】
「そうかそうか・・・」
ふむふむと頷く北条老人
【玄樹】
「もし良かったら夏の間わしのところで働かぬか?」
【コハク】
「・・・はい?え〜と、工房ですか?」
食事中に北条老人は農業兼焼き物工房をやっていると言っていた。
【玄樹】
「それでも良いのだが、わしの地域の夏祭りの手伝いじゃよ。」
【コハク】
「夏祭りですか」
【玄樹】
「いや、無理にとは言わんがな、祭りに必要な若い男手が足りんでな
困ったものであてにしておったな娘婿が今年は来れぬといいおる」
【コハク】
「そうですか、自分でよければお手伝いしますよ」
【玄樹】
「ほんとうか?」
【コハク】
「はい」
【玄樹】
「なんとありがたい!田舎で何も無いところであるが、自然がうつくしいところじゃ」
次の日の朝、北条老人を見送りに駅へ向かった。
【玄樹】
「それでは南部殿、待っておりますぞ」
そう言って北条老人は去っていった。
・・・3日後
あれこれ準備し、3日前に北条老人を見送った駅から今度は自分が出発する。
列車の中でコハクは北条老人からもらった地図を眺めていた。
【コハク】
「『ここからローカル線に乗って!時刻厳守!』・・・朝一に向かっても着くのは昼になるのか・・・」
貰った地図は列車の時刻表と駅の目印などが書かれたものに
可愛らしい文字が書いてあった。
お孫さんが書いたのだろうか?
小説を一冊読み終えるころ、最終駅に到着した。
そこからローカル線でさらに一冊読破。
最後のバスの中は酔いはしないが
早起きしたせいか眠くなり睡眠。
気がつくと、バスは坂道を下っていた。
【コハク】
「おお〜〜これは〜〜」
バスは渓谷を走っていた。沢が気持ちよく流れている。
【コハク】
「良いところだな〜〜」
まもなく、バスは目的の停留所に到着した。
バスが走り去るとコハクはぐいと背伸びをした
【コハク】
「〜〜〜〜着いた〜〜!!」
北条老人に電話しようと思うも運悪く携帯の電源が無い
しょうがないので探す事にした。
太陽が高い。
そういえばもうお昼である。
駄菓子屋があったので、
北条老人の家をきいてみることにした
店に入るとお婆さんではなく女の子が出てきた。
「いらっしゃいませ〜、お婆ちゃんお客さんだよ
えっ・・・あっ!・・・」
なぜか驚かれてしまった。
【コハク】
「こんにちは、私は南部コハクと申します。」
しょうがないのでなんとなく自己紹介をしてしまった。
【女の子】
「あ・・・はい、こんにちわ、わっわたしは、はるな、大谷春菜です」
なぜか手をわたわたさせて赤面する春菜ちゃん
そこへ、駄菓子屋の主人が出てきた。
【コハク】
「え〜と聞きたい事があるのですが、」
【ばあちゃん】
「ああ〜〜あんたが南部さんかい?」
何で知ってるのかな・・・
【コハク】
「・・・はい」
【ばあちゃん】
「あれもうこんな時間じゃね、そうか〜〜もうバスはついとっ
たんな?」
【コハク】
「え・・ええ」
なんで?エスパーでしょうか?
【ばあちゃん】
「ごめんな〜はるなちゃん」
・・・と、なぜかはるなちゃんに謝るエスパーばあちゃん
【はるな】
「ごめんなさい、本当はあたしがバス停で待ってるはずだったんです。」
と、うなだれるはるなちゃん
【コハク】
「そんな、気にしないでください、ね?」
そんな顔しないでほしん、笑顔でいてほしい。
・・・ぐぅ〜〜
あぁ・・・タイミングよく、というかお腹がなってしまった。
【ばあちゃん】
「はっはっは、ほれ、はるなちゃん、南部さんがお腹すいてるよ?
早く家に連れてっておあげな?」
【はるな】
「・・・はい、〜〜あの、南部さん・・・」
心配そうにたづねる女の子は
【コハク】
「はい、お願いします。」
そう答えると満面の笑顔になった
【ばあちゃん】
「また来てちょうだいな〜」
駄菓子屋を出て、北条家へ向かう。
道中、さっきから目にするポスター
よく見てみると・・・
なぜかポスターに自分の名が・・・
・・・なんで
恐る恐るはるなちゃんに聞いてみた。
【コハク】
「あの〜大谷さん?聞いてもいいですか?」
【はるな】
「はい、家までならもうすぐですよ?」
【コハク】
「ああ、そうですか・・・じゃなくて、
・・・どうして私の名前がそこ等じゅうに張ってあるんですか?」
顔写真の無い選挙ですか!?
ポスターには見慣れた名前、『南部コハク』の5文字
ぴた、と止まる、はるなちゃん
【はるな】
「・・・玄ジイが・・・」
玄じい・・・ああ、北条老人、、玄樹さんのことだな?
【はるな】
「・・・玄ジイが・・・
北条家の跡取りを見つけた〜〜!!
今度町に来る〜〜
・・・って町中に言いまわったんです!!」
振り向き、
大きな門を背に叫ぶはるなちゃん
【コハク】
「跡取り・・・・・・
って〜〜、ええ〜〜〜〜〜〜」
門の表札には二つの漢字
・・・『北条』・・・とあった。
そんな漫画のような話が・・・
ひねった頬は痛かった
・・・・・・こうして俺の夏休みは始まった。
説明 | ||
大学生の夏休み、実家に帰省しようとしていた南部コハクに 母親からの突然の連絡。 途方に暮れるコハクは、ある老人と出会い、夏の間老人の家でアルバイトをすることになる・・・ 電車を乗り継い到着した場所で、コハクが目にしたものとは!? |
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