十二国記(慶の王と麒麟)短編 |
政務の間。
天窓の外は春のような暖かい陽気だ。桜が咲き乱れ、鶯のような鳥が鳴いている。
陽子は景麒と政務の合間を縫って、漢文の書き取りの練習をしていた。
この世界に来て、1年足らず。
話は出来る、漢文の意味も解るが(ドラえもんのほんにゃくこんにゃくみたいなもの?)
文字は一字一字覚えないと駄目らしい。
そして、こちらの独自の漢文、故事成語のようなもの、諺のようなものなど…
やはり教えて貰わないと解らない(分からない)ことが多い。
そして、国の政務ともなれば解からないことだらけだ。
…しかし、今日は一層に穏やかな春のうららかな陽気だなあ…
「…主上、このとき漢文では…ここをこう…」
景麒の声が心地良く耳に入ってくる。…まるで子守唄のようだなあ…
「…うむ…」
眠たさを必死に払うかのように、目をこする。
「…お疲れのようですので、今日は政務も山のようにありましたし…ここまでにしますか?」
景麒が陽子のあまりの様子に、彼に似つかわしくないような気遣いをみせ、問うてきた。(たんにあきれたのか)
「な…!景麒、だめだ、だめだ!もう少しで解かりそうなのだから…!もう少しっ…」
眠気とは裏腹に本当に解かりそうなのだ。それに…
―私はまだまだ国のこともよく分からない半人前の王なのだから―
…景麒に不真面目に思われては…
―30分後
「…主上、聞いてます?」
「やはり…器用な…」
景麒の呼びかけもむなしく、陽子は、肩肘をついて器用にも居眠りをしてしまっていた。
(…この方は…疲れているならば素直に休まれれば良いのに…
この頃余計に根を詰めておられるような…)
景麒はため息を尽きながらそう思った。
そして、ふと延麒の妙に自信溢れる顔と言葉が浮かんだ。
―お前達って、意固地と超がつくほどの生真面目なとこだけはそっくりだよな…!
…などど…延麒め、何を根拠に…
「主上、お休みに…」
起こそうするのだが、今度は景麒の肩に寄りかかってきて眠る陽子。
「…主上…!」
少し焦り、驚きつつもなおも起こそうとする景麒。
コンコン、とノックの音。
了承もしていないのに、入ってくる足音。
「お邪魔だったかしら?お茶を持ってきたのだけれど…」
祥瓊登場。
景麒に寄りかかって眠る陽子を見て、
「寝かせてやってよ、景麒」
「…しょうけい…」
「陽子この頃遅くまで勉強して、その上月末で政務も山のようなのに…」
陽子を見てしみじみと
「あんた達って、すっごく頑固で超がつくほどの生真面目だからさ」
思わず顔をしかめる景麒。くしくも同じことを言われたので不本意な気持ちだ。
「それに、景麒に認めて貰いたいからだと思うな…」
国の始まりからただ一人。絶対的に信頼出来る存在であり
その国が滅びるまで…死まで一緒くたに契約で結ばれた王と麒麟。
―絶対的な主従関係。
景麒から、自嘲的な笑みがこぼれた。
この方は、昔の私自身だ…
前王の声が鮮やかに脳裏に蘇ってきた。
・・・
「景麒、今日くらいゆっくり休みましょう」
「もう少しで終わりますから」
「…景麒…!」
主上、王の出来ない政務は私がやらなければ…
・・・
陽子が寝言ながら明瞭に言葉を発した。
「…景麒、明日も…たのむぞ…」
「…はい」
「―ゆっくりでいい…あなたらしい国を作っていって下さい」
END
説明 | ||
01年に描いた漫画のネームを発掘したので小説に。途中ネームにも表せなくなって後半部分は文章で書いてあったもの。小説にするにあたってネームの部分の文章を今書き起こしたため…忘れているため捏造箇所が多大にあります、ごめんなさい。。 | ||
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