真・恋姫無双 魏が滅亡した日 Part28 戦果の代償
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城の防衛担当兼総指揮を任される穏の元に大勝利の報が届いた

翠と蒲公英は負傷しながらも多数の元黄巾党を引き付けることに成功

そのほぼ全てを無力化した

さらに彼らの野営地への焼き討ちも成功

100万の一部とは言え、大きな被害に敵は動揺していることだろう

 

しかし、帰還する蜀軍を城壁から見下ろすと、その光景に穏は絶句してしまった

 

「な・・・・・・・っ!!」

 

蜀軍に連行される降伏兵その数凡そ5万

迎撃に当たった愛紗達蜀軍よりも多いのだ

 

青ざめた穏は急いで城壁を降りると愛紗を探した

 

「ねねさん、愛紗さんはどこに」

 

「愛紗殿なら負傷した蒲公英のところですぞ」

 

穏はねねの返事を聞くと医務室へ向かった

普段からは考えられない運動量を見せる穏

その表情にいつもの余裕はなかった

 

「愛紗さん!」

 

医務室の前の椅子に座る愛紗を見つけると、穏はこれもまた普段からは想像できない声を出していた

 

「穏か」

 

穏は拳を握ると、少し震えた低い声で問いかけた

 

「・・・・どういうことです、私は情け容赦を捨て、全て討ち取ってくださいと伝えたはずですよ」

 

「戦意の失せた者を虐殺しろと言うのか?そんなことは出来ん」

 

「・・・・・・・浅はかでした。こうなることを予見できなかったなんて」

 

踵を返す穏は対策を練るため本陣へ戻った                       

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荊州防衛軍は凡そ8万

その8万で5万の捕虜を管理しなければならない

そして目の前には圧倒的な晋の兵が控えているのだ

 

(今攻勢に出られたら・・・・)

 

穏は頭を抱えていた

 

・捕虜を全て解放する

捕虜は城内に入れてしまった

城を守る兵は8万、5万の敵兵がたやすく開放を受け入れるだろうか

城内に混乱が生まれ、それに乗じた晋からの攻撃を受ければ落城は確実

ここが落ちれば呉と蜀は分断され晋への抵抗が事実上不可能となる

何より、大戦果を挙げた蜀側が納得してくれるはずがない

この作戦で蒲公英が負傷し、多くの涼州騎馬隊が失われているのだ

 

・捕虜を全て処刑する

遺体を処理するすべが無く、5万もの遺体を放置すれば疫病が発生してしまう

もしも遺体を城外に投棄すれば、それを見た晋は怒り狂い死兵となって襲い掛かってくるだろう

なにより、そんな所業を民が許すはずが無い

 

・捕虜を移送する

周囲は大軍に囲まれているのだ

とても成功するとは思えず無駄に兵を損ねるだけだ

 

・捕虜を留める

糧食が足りない

それに彼らの動きを常に監視しなければならない

5万の捕虜を監視するにはかなりの兵を割く必要がある

数で圧倒的不利なのにさらに兵を割くのは自殺行為だ                  

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雪蓮様なら、思春なら、呉なら、指示通り敵を討ち果たしたことだろう

しかし、戦ったのは愛紗ら蜀だ

そのことを見落としていた穏の失策だった

 

「穏様、ただいま戻りました」

 

「亞莎ちゃん・・・・捕虜の様子はどうでした」

 

焼き討ちに成功した亞莎は城に帰還すると大量の捕虜がいることに驚いていた

それでも亞莎は穏を励まし、出来ることをやりましょうと元気付けた

今、穏が信頼できる唯一の将と言っていい

 

「は、昨晩は捕虜も眠りにつき静かだったのですが、先ほど視察したところ食事への不満が多数出ています」

 

「量が少ないとでも言ってますか」

 

「彼らはこちらが手を出せないと分かっていて・・・・このままでは不満が爆発するのも時間の問題かと」

 

「ふぅ、ねねちゃんに予備の糧食の使用許可を出します。ただし、最低限に抑えるよう伝えてください」

 

「はっ!」

 

〜捕虜収容所〜

 

捕虜収容所と言っても仮の収容所である

5万もの捕虜を収容できるスペースはなく、密度が高く、さらに蒸し暑い日が続いている

彼らの不満が今にも爆発しそうになっていた

 

「メシがすくねーぞ!」「これじゃ足伸ばして眠れもしねえよ!」「天和ちゃんに会わせろー!」

 

捕虜を管理する兵士達もどうすればいいのか分からなかった

 

「静かにせんか貴様ら!従わないならその首切り落とすぞ!!」

 

「おう、やれるもんならやってみろ!」「こちとら不満が溜まりまくってんだ」「大暴れしてやってもいいんだぜ?」

 

「ぐぬぬ.....」

 

兵達が困りきっていた時、食糧庫から大きな釜を抱えた女の子がこちらに向かってきていた

恋だ                                       

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「こ、これは呂布殿、お疲れ様です・・・・」

 

湯気が立ち上る大釜を抱える恋に引き気味な兵は、自分達の将に挨拶をする

 

「ん・・・・・・・ゴハン」

 

どーんと大きな音と共に地面に降ろされた大釜

その中には炊きたてのご飯が詰っていた

 

「・・・・・・おなかが空くと幸せになれない。だから皆で食べよう」

 

ねねもロバに乗ってやってきた

そのロバは捕虜達の食器を積んだ荷車を引いていた

恋と呂布部隊の兵士達による食事の配給が行われた

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」

 

恋はご飯を椀に盛ると捕虜達へ手渡しで配っていった

 

「けっ、また白メシだけかよ。しけてやがるぜ」

 

魏、晋と大国で兵士としての待遇を受けてきた者にとって、捕虜として受ける食事は味気が無さすぎた

ましてや自分達の優位性を知っているので言いたい放題だ

 

そんな罵倒を受けても恋は微動だにしなかった

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・これで最後、さ、皆食べるといい」

 

配給が終わり、食事に手をつけようとしたその時だった

 

ぐぐううぅぅぅぅぅぅぅぅぅ

 

大きな音がなった

兵士も捕虜も一斉に恋を見た

恋は頬を染めながら恥ずかしそうに

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・き、気にせず食べる」

 

兵士と捕虜は再び食事に手をつけようとした

しかしまた

 

ぐぐぐぐぐぅううぅうぅぅぅぅぅ

 

一斉に恋に視線が集まる

恋の口元にはよだれまで垂れていた

 

「呂布将軍、陳宮将軍、お二方の食事は・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・気にせず食べる」

 

二人は食事を取っていなかった

その分を兵士に分け与えていたのだ                     

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すると、いたたまれなくなったのか、ある捕虜が自分の食事を恋に差し出した

 

「なぁ、俺の分はいいから、あんた食べな」

 

恋の前に差し出される白いご飯

誘惑に負けそうになりよだれをたらすが、ぐっと我慢する恋

フルフルと顔を横に降ると

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・恋が食べちゃだめ、ごめんなさい」

 

食事を差し出した男の顔が紅潮した

 

「いいんだ、頼むから食べてくれ!!な?な?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いいの?」

 

小首を傾けたずねる恋

 

「いいともー!」

 

恋は最初は躊躇ったものの、差し出されたご飯を一気に口にほおばった

口いっぱいにご飯が入り頬が膨れ、まるでリスのように食べていた

 

「モグモグ・・・ゴクン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おいしい」

 

恋はぺろりと平らげてしまった

しかしまたおなかがぐううううぅぅぅぅぅぅとなった

その瞬間

 

「うおおおおお俺のも食ってくれー!!!」「いや俺のを食ってくれ!!!!」

「呂将軍は俺のご飯を食うんだよ!邪魔すんなwwww」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・??」

 

捕虜を囲む柵から差し出されるご飯の乗った椀の数

さすがの恋もその数に戸惑っていた

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・食べればいいの?」

 

柵の向こうの捕虜が揃ってうんうんと頷いた

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・分かった」          

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翌日、恋はねねと共に捕虜収容所を視察した

 

「呂将軍が来たぞ、お前らいいか?」   「「「「「「おう」」」」」」

 

恋は捕虜の入る柵の前に立つ

 

「いくぞお前ら!!!せーーーーーのーーーーー!!!!!!」

 

「「「「「「「「「「「「「「おはよう呂布ちゃ〜〜〜〜〜〜ん」」」」」」」」」」」」」」」」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・??? おはよう」

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

驚いたのは捕虜を管理している兵士達だ

捕虜はすっかり恋のファンになってしまったようで、やりたい放題だったのが嘘のように従順になっていた

 

そんな恋を誇らしげに見ているのがねねだった

 

(これこそ恋殿の力なのです。恋殿こそ本当の王者になれる方なのです!)

 

「この戦い、恋殿のおかげで光が差してきましたぞ!」

 

「・・・・・・?? そうなの?」                            

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穏は毎日寝ずに対策を練っていた

敵が体制を建て直し、いつ攻めてくるか分からない

その時がタイムリミットだ

 

「何か、何か手は・・・・・」

 

亞莎は穏のそんな姿を毎日見ている

これ以上苦しませたくなかった

 

「穏さん、一つだけ策があります」

 

亞莎の目が一段と鋭くなった

 

「策、策があるの亞莎ちゃん?」

 

「はい、それも呉にとって大きな収穫のある策です」

 

絶望的な現状を脱し、さらに呉に大きな収穫のある策

そう聞くと穏の目は輝いた

そこまで彼女は追い詰められていたのだ

 

「それで、策と言うのは」

 

「は、お耳をお貸しください」

 

亞莎は穏に耳打ちをした

それを聞くと穏の顔色がさらに青くなる

 

「そんな・・・・ではこの戦いは・・・・」

 

「最後の手段として懐で暖めていました。穏様に隠していたこと申し訳ございません」

 

「この策を、本国は承知しているのですね?」

 

「は、書状もここに」

 

亞莎は書状を穏に差し出すと、穏は目を通した

 

「・・・・・なるほど、この状況を脱却するにはこれしかありませんね」

 

「晋が攻勢に出てしまえば手遅れとなります。お早いご決断を」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・やるしかありませんねぇ」

説明
大勝利に終わった奇襲作戦だが
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コメント
mokiti1976-2010 さん 明日続きが書けたらと思ってます。(見習いA)
亞莎の策って? それは蜀の面々が納得するものなのでしょうか?(mokiti1976-2010)
タグ
真・恋姫†無双

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