恋姫†無双〜御使いを支える巨人〜2
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「それで、お前が星の連れてきた男か」

 

超雲に連れられて、やっかいになっているという主の元に来た。

一応、道中で名前も性別も聞いていたが、まさか公孫賛も女性だなんて。

 

「ええ、伯珪殿。此方が陸豪殿です」

 

「陸豪仁義だ。俺みたいな怪しい奴に、わざわざ謁見を許して頂き感謝する」

 

頭を下げ公孫賛に礼を言う。

 

「私が公孫賛だ。謁見の件は、気にしなくて良いよ。星からは中々の武を持つ人物だと聞いて興味があったからな」

 

そう言って朗らかに笑う公孫賛。

 

(確かにパッとした印象は無いが、中々の人物だと思う。万能人なのか器用貧乏なのかね。)

 

「さて、じゃあ陸豪の事を教えてもらおうか」

 

「その前に、今の現状を教えてくれないか?

 そうすれば、恐らく説明し易いと思う」

 

少し怪訝な顔をされたが、色々と教えてもらった。

 

時代の動向、漢という国の事、幽州がどうなっているか……

 

全ての話を聞き終え、俺は改めて自身の置かれている状況が芳しくないのを思い知らされた。

 

「これから話す事は荒唐無稽だと思う。でも、一番しっくりくる。

 ……俺が元いた世界は、今から約1800年後の未来だ」

 

「な……!!」「ほぉ……」

 

公孫賛が驚愕した表情で俺を見ている。超雲は初めて会った時の様な思案顔になった。

 

(まぁ、普通に考えりゃこういう表情になるわな。しかし、超雲は驚いてないのか?)

 

「更に言えば、俺が知っている2人は男だ。もう完全に違う世界にいるとしか思えない」

 

パラレルワールドなんて言ったって分かる訳無いしな。

 

しばらく、驚いた顔をしていた公孫賛が口を開いた。

 

「……そこまで同じ事を言うなんてな。お前も天の御使いなのか?」

 

「天の御使い?」

 

(知らん単語が出てきたな。言葉的には救世主的な何かか。)

 

「”黒天を切り裂いて天より飛来する一粒の流星、それは天の御使いを乗せ乱世を鎮静す”

 管輅という占い師が行った予言だ。そして少し前、実際に流星が落ちて落ちた先に、天の御使いらしき御仁がいたんだ」

 

「そいつが俺と同じ事を言っていたと」

 

「うむ」と超雲が頷いた。

 

あれ、って事は超雲達は会った事があるのか。

 

「実はな、ここで私の友人が天の御使いと一緒に賊退治を手伝っているんだ」

 

「そいつは重畳。是非会ってみたいな」

 

公孫賛の元で手伝いか……武の心得があるんかね、天の御使いとやらは。

 

「賊が暴れているとの情報が有ってな、退治に向かっている。そろそろ帰ってくるだろう」

 

「そうだな、星。すぐ近くだったしな」

 

まぁ、すぐに会えるなら待ってみるか。

 

時間潰しに、疑問点でも聞いてみるか。

 

「ところで、さっきから超雲殿を違う名前で呼んでいるが、愛称か?」

 

「真名を知らないのか!?」

 

物凄い驚かれてる。え、もしかして常識?

 

「真名とは、自身の誇りや生き様、命にも等しい名だ。知っていても勝手に呼べば殺されても文句は言えん」

 

「……重要な物なんだな」

 

危ねぇ!!思いっきり呼ぶところだった。

 

 

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俺が真名の説明を受けていると、謁見室の入り口が騒がしくなっていた。

 

「愛紗ちゃん大活躍だったね!!」

 

「愛紗、大活躍だったのだ!!」

 

「桃香様、私は力一杯持てる武を奮っただけです。それに鈴々だって活躍していたじゃないか」

 

なんか愛紗?とかいう人物と鈴々?とかいう人物が活躍したみたいだ。

 

「愛紗も鈴々も頑張ったな!!」

 

男の声もするな、コイツが天の御使いか?

 

……しかし、聞き覚えのある声だな。

 

「ご主人様の策も凄いよ〜。私じゃ思いつかないもん」

 

「そうです、ご主人様も活躍されていたじゃないですか」

 

ご主人様って、男が主って事か?

 

 

そうこう考えていると、扉が開いて声の主達が入ってきた。

 

「白蓮ちゃん、終わったよ〜!!」

 

「と、桃香!! 客人の前でちゃん付けは止めろよなぁ」

 

「客人?」

 

ピンク色の髪をした胸の大きい女性が此方を見てきた。

 

とりあえず、会釈をしておこう。

 

ペコッと頭を下げると、相手は小首を傾げた。

 

(何かホワッとした人だな。世の中が荒れているとはいえ、こういう性格の人もいるんだな)

 

「陸豪、コイツらが私の話した天の御使いと旧友と旧友の家臣達だ」

 

公孫賛の横に立つ人物を順番に眺めた。

 

ピンクの髪の人が旧友か、黒髪の美人さんと元気一杯なちびっ子は家臣だな。という事は……

 

後ろに立つ男に目を向ける。白い服を着た中々聡明そうな奴だ。

 

やっぱり、見覚えが……

 

「……おお!! お前、一刀か?」

 

俺は後ろの人物を指差し、思わず声をかけた。

 

「え?……仁兄さん!! 生きてたの!?」

 

「「兄さん!?」」

 

周りも驚いている。こっちだって驚きだ。なんせ、こんな異世界で義弟に会えたんだからな。

 

「3年前に行方不明になって、じっちゃんも死んだだろうって……でも、遺体は見つからなかったし……生きてたんだ」

 

そう言って、一刀は俺の手を力一杯握った。

 

(そうか、俺は死んだ事になってたのか。まぁ仕方ないか、あんだけの事故だ)

 

「ああ、生きてたよ。随分と逞しくなったじゃないか一刀、見違えたよ」

 

俺は一刀を思いっきり抱きしめた。

 

「痛いって、仁兄さん……本当に良かった」

 

(涙目になってるな、一刀。こういう所は昔から変わらねぇな)

 

俺達が再会を喜んでいると、遠慮がちに声をかけられた。

 

「あの〜貴方は誰ですか?」

 

「ああ、失礼した。俺の名前は陸豪仁義。一刀と同じ世界の住人だ」

 

多分、こういえば伝わるだろう。

 

「え!!じゃあ、陸豪さんも天の国の方なんですか!?」

 

「天の国?」

 

「兄さん」そう言うと一刀が説明してくれた。

 

此方のお嬢さん方は、俺達の元居た世界を天の国と解釈しているらしい。

分からんでもないか、天の御使いがいた国なんだし。

 

「そういう解釈なら、確かに天の国だな」

 

「やっぱりそうなんですか〜。着ている服も私達と違いますし」

 

まぁ、そうだろうな。この時代に防弾チョッキなんか無いだろう。

 

今は着てないが、上着だって防刃仕様の特注品だし。

 

「ところで貴女は?」

 

「この方は我等が主、劉備様だ!!」

 

黒髪の美人さんが突然声を張り上げた。

 

(そんな大声出さんでも聞こえるわい。それにしても、やっぱり女性なんだな)

 

改めて劉備を見る。これが仁徳の王と言われる人物か、器は大きそうだな。胸もデカイし。

 

「この人が劉備さんなら、貴女が関羽さんで其方が張飛さんかな?」

 

「なっ!?」「なんで分かったのだ!!」

 

2人が驚きの声をあげる。まぁ、劉備に付き従う家臣って言ったら、それ以外の選択肢は無いでしょう。

 

「天の国の知識で愛紗ちゃんと鈴々ちゃんの名前を言い当てたんですか?」

 

「そうだな、劉備さん。……しかし」

 

本当にやっかいな世界に来たもんだ。これからどうするかねぇ。

 

 

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「そういえば、ちゃんとした自己紹介してないですね」

 

俺が黙り込むと、劉備がそんな事を言い出した。

 

一応、名前は聞いてるし言ってるから別に困らんのだがな。

 

「まず言いだしっぺの私から。名前は劉備、字は玄徳、真名は桃香です」

 

「なっ!! 桃香様、この者に真名を許されるのですか!?」

 

関羽が非常に驚いた顔をしながら声をあげた。

 

(まぁ、見た目怪しいオッサンだからな俺)

 

あ、何か言ってて悲しくなってきた。

 

「だってご主人様のお兄さんだよ? 大丈夫だよ〜」

 

笑顔満面で関羽に言い放つ劉備。

 

(信頼してくれるのは嬉しいが、少々世間知らずじゃないか)

 

世の中には、笑顔で握手を求めてきながら隠していた手の凶器で相手を殺す輩なんざ五万といる。

 

(もっとも、こういうところが英雄の器なのかね)

 

関羽は唸りながら色々考えていたようだが、やがて結論に達したのか自己紹介を始めた。

 

「桃香様が仰られるなら致し方なし。我が名は関羽、字は雲長、真名は愛紗だ。よろしく頼む、陸豪殿」

 

そう言って一礼し、一歩後ろに下がった。

 

(主君が真名を許したから自分も許したか。その姿勢は悪くないが、危ういな)

 

劉備に何かあった場合、確実に暴走するな。諌める人間も今のところはいなさそうだ。

 

「愛紗が言ったなら鈴々も言うのだ。鈴々は張飛、字は翼徳、真名は鈴々なのだ!! よろしくお兄ちゃん」

 

張飛は相変わらず元気一杯に自己紹介した。

 

(何にも考えてなさそうだが、この娘が一番安心できるな。……俺が只単に元気な人が好きなだけかもな)

 

「3人とも真名を許して頂き感謝する。先ほど言ったが、姓は陸豪、名は仁義だ。

 真名は無いが、真名というものが生き様を表す名なら、俺を仁義と呼んでくれ」

 

3人に向かって一礼する。

 

「分かりました仁義さん」

 

「仁義殿、よろしくお願いします」

 

「分かったのだ、仁義兄ちゃん!!」

 

3人とも了承してくれた。

 

「桃香が真名を許したのなら、私も真名を教えよう。私は公孫賛、字は伯珪、真名は白蓮だ」

 

「ありがとう、白蓮殿。俺の事も仁義と呼んでくれ」

 

「ああ」と笑顔で了承してくれた。

 

しかし、超雲だけが思案顔をしていた。

 

「どうしたんだ、星?」

 

「いえ、どうせ真名を預けるなら実力を試してみようかと」

 

やっぱり、この人は生粋の武人だな。流石は歴史に名を残す勇将だ。

 

「俺は構わんぞ、超雲殿。超子龍の実力を知りたいし」

 

「そうか、では調練場に向かおうか」

 

そう言って超雲は先立って部屋から出て行った。

 

久々の武の競い合いだ、腕が鳴るねぇ。

 

「仁兄さん、大丈夫なの?」

 

「心配すんな、一刀。伊達に世界中を巡ってた訳じゃないぜ」

 

「というか、世界中を巡ってたんだ」

 

一刀は苦笑している。行き先を告げないで旅してたからなぁ、じいさんも心配してたろうな。

 

俺は一刀の頭をクシャクシャと撫でて、調練場に向かって歩き出した。

 

 

さて、伝説の武人との一騎打ちだ。

 

楽しみだ。

 

 

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後書き

 

 

という事で、2話目です。

 

前回コメント頂いた方々、ありがとうございます。

 

次の話の後にでも、仁義のプロフィールでも載せましょうかね。

 

では、次の話で。

 

説明
2話目です。

お楽しみ頂ければ、これ幸い。
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コメント
≫ヒトヤ犬さん 閲覧感謝します。諌める立場なれれば良いなと考えております。(SUU)
≫天覧の傍観者さん 閲覧感謝します。ありがとうございます、今後の展開等を楽しみしていて下さい。(SUU)
≫華狼さん 閲覧感謝します。そうですね、客観的に見ていく立場になります。(SUU)
主人公は仲間を諌める立場なのかな(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
おもしろかったです!新たな展開で『前の世界』での兄弟という設定はあまりなかったのでとても新鮮に感じられました。また仁義の成り行きや生立ちにも興味がわきますがそれは今後の展開を楽しみにしまがらお待ち申し上げます。(天覧の傍観者)
一刀等の行く末を客観的に見続ける視点なのですね。・・・義兄弟か兄弟子、とか?(華狼)
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