そらのおとしものf 番外編 『強き大雨(セレナーデ)』
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ある大雨の日。

 

「すごい雨だな」

 

智樹は家の中から外の大雨を眺めていた。

 

「これじゃあ、まともに外に出れないぞ」

「お兄ちゃん、外に出れないの?」

 

居候の一人のカオスが声をかけてくる。

 

「ああ、普通の人はこんな大雨じゃ外に出たら危ないからな」

 

外は大雨だけでなく、風も強く吹いている。

エンジェロイドなら問題ないであろうが、普通の人間がまともに出歩く事はまず出来ないほどのものであった。

 

「……あ〜あ、もう!」

 

ニンフは怒りながら、テレビを切る。

 

「どうした? ニンフ」

「どこも気象情報ばっかりで昼ドラやってないのよ! 折角の休みなのに……」

 

ニンフは昼ドラが好きでいつも見ている。しかし、これだけ荒れた天気となるとどこのチャンネルも気象情報ばかりであった。

この大雨は空美町だけでなく、全国的にも展開されているのだ。

 

「まあ、仕方ないさ。こんな大雨でも外に出るのはよほどのバカだけさ」

 

智樹がそんなことを言っていると、玄関を叩くような音が聞こえてくる。

 

「マスター、誰か来たみたいです」

 

イカロスが智樹に声をかける。

 

「どうせ、風が玄関叩いただけだろ」

 

智樹はそう言うが、また玄関が叩かれる音がする。

 

「またか……今日の風は強いな…」

 

しかし、またしても玄関が叩かれる音が聞こえてくる。

 

「……」

「マスター、見てきます」

 

イカロスが玄関の方に向かい、玄関を開けると……。

 

「イカロス先輩〜」

 

何と玄関の方にいたのはずぶ濡れで何故かボロボロになっていたアストレアであった。

 

「デルタ……」

「アストレアお姉様、どうしたの?」

 

ニンフとカオスがアストレアに何があったのかを尋ねようとしたら…。

 

「へっ、へっ、へっくし!」

 

アストレアはくしゃみをする。

 

「アストレア、風邪?」

「とにかく、寒いです〜」

 

体を震わせるアストレア。

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大雨と強い風の中、吹き飛ばされるアストレア。

その様子を家の窓から見え、それに興味を持たない智樹。

すると居間の窓からタイトル文字が飛ばされてくる。

 

 

 

 

「強き大雨(セレナーデ)」

 

 

 

タイトル文字が飛んできて思わず後ろにこける智樹。

居間を歩くイカロスとカオス。

のんきにテレビを見続けているニンフ。

 

 

 

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場面はいきなりお風呂。

お風呂にはアストレアが入っていた。

 

「ふぅ〜、あったか〜い」

 

アストレアは浴槽で体を伸ばしていた。

 

「アストレア、着替え置いておくから」

「ありがとうございます、イカロス先輩」

 

イカロスが扉の前でアストレアに告げるとイカロスはすぐに立ち去る。

イカロスが風呂の扉から立ち去ると怪しげな影が迫ってくる。

その影は智樹であり、智樹は周りに誰かいないか確認する。

 

「(よし……)アストレア、入るわよ」

 

智樹が可能な限りイカロスの声色の真似をする。

 

「イカロス先輩? いいですよ〜」

 

アストレアはまんまと騙され、よしと言ってしまう。

 

「それじゃあ……遠慮なく入るぜ!」

 

智樹は風呂の扉を思いっきり開けて風呂に侵入する。しかも全裸で……。

 

「きゃああああああ!」

「うひょひょひょ! もう遅い!」

 

智樹は風呂の扉を閉める。しかも内側から鍵をかける。

 

「これで邪魔者は入って来れまい……覚悟!」

 

智樹が浴槽に入っているアストレアに向かってダイブする!

 

「いゃあああああああ!!」

 

アストレアの悲鳴が風呂場に響き渡ったその時!

 

「へぶ!」

 

智樹は突然風呂の壁に叩きつけられた。

なぜなら風呂の扉の前にはイカロスとニンフがおり、智樹はニンフのパラダイス=ソングで吹き飛ばされたのだ。

 

「トモキ、あんた何やってるの!?」

「何って……」

「お兄ちゃん、一緒に入ろ♪」

 

いつの間にかどさくさに紛れてカオスまで風呂場にやってきた。しかもカオスも全裸。

 

「マスター…」

「トモキの……バカーーーーーーーー!!」

 

ニンフは先ほどよりも強力なパラダイス=ソングを智樹に向けて、放った。

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場面は変わり、居間。

 

「まったくもう……」

 

居間にはボロボロになって倒れている智樹と怒っているニンフ、智樹を介抱しているイカロスとカオスがいた。

 

「お兄ちゃん」

「マスター、大丈夫ですか?」

「なんとか……」

「ふん!」

 

ニンフはご機嫌斜めであった。

 

「あの〜、イカロス先輩……」

 

風呂場の方からアストレアの声が聞こえてくる。

 

「デルタ、どうしたの?」

 

イカロスの代わりにニンフが受け答えをする。

 

「いやぁ〜、イカロス先輩がくれた着替えの服、きつくて……」

 

アストレアが代わりの服を着て居間にやって来る。

アストレアの言うとおり、服はきつそうであった。

その理由はというと……。

 

「胸の辺りがこう、すんごいきつくて……」

 

そう、アストレアはそはらに匹敵するほどの巨乳。

その大きさはイカロスよりも大きいため、イカロスの服ではアストレアの体にはあまりあわないのだ。

そのため、アストレアはおへそ丸出しの状態であった。

 

「ごめんなさい、女性用の服で大きいのは今それだけしかなくて……」

「まあ、ニンフ先輩の服じゃ小さすぎますしね、ぷすす〜」

 

アストレアがニンフの胸を見ながら笑う。

 

「デルタ、あんたどこ見て笑ってるのよ!」

「どこって……ぷすす〜」

「デルタ!」

 

ニンフはまたパラダイス=ソングを撃つ体勢になる。

 

「ちょっと、ニンフさん! これ以上はやめて!」

 

智樹がかなり焦りながらニンフを止める。

これ以上破壊されたら雨漏り以前の大惨事が起こりかねない。

 

「おいおい、来てみればいきなり何大技出そうとしてんだよ」

 

そこに突然秋山がやってきた。

 

「どぉわっ! 秋山!」

 

秋山の突然の登場に一同が驚く。

 

「どうやってきたんだよ? こんな大雨の中…」

「瞬間移動だ」

 

秋山は瞬間移動できるので、簡単にこの智樹の家にやって来れる。

 

「それはそうと、アストレアきつそうだな。その服…」

「そうなんですよ〜」

「だったら、ほい」

 

秋山がアストレアの体に合う服を召還して、アストレアに投げ渡す。

 

「お前のサイズにピッタリだ。着てみろ」

「分かりました〜」

 

アストレアが着替えるために居間から離れる。

 

「覗きに行かないでよね」

「この状況で行けるか?」

 

ニンフが智樹に警告するが、智樹の周りにはニンフ以外に秋山という強力な妨害者がいる。

いくらイカロスとカオスが協力しても、ニンフはともかく秋山には勝てない。

そしてアストレアが服を着て、再び居間にやって来る。

アストレアの服には「バルサコミ酢」と書かれてあった。

 

「何であんなの書いてあるのよ?」

「何となくだ」

「まあ、いいさ。それよりアストレア、何でここに来た時はボロボロだったんだ?」

「あ、あれはね……」

 

アストレアがことの詳細を教えてくれた。

 

「私、いつも外に居るでしょ」

「ああ」

「流石にこんな酷い雨だからどこかに雨宿りしようと思って…」

「それだけでああなるか?」

「いやぁ〜、飛んで行こうと思ったら何かたらいとか看板とかとにかく色んなものが飛んできて、それがぶつかって地面に落ちてボロボロになっちゃって〜」

 

アストレアは笑いながらその事を話す。

 

「はぁ〜、デルタらしい」

「ですよね〜」

 

バカにされている事に気付かないアストレア。

 

「まあ何はともあれ、この家にたどり着いたんだ」

「そうだな。雨が落ち着くまでいていいぞ」

「本当! わぁ〜い♪ これで食べ物にも困らないぞ!」

 

アストレアがすごく喜ぶ。

 

「で、何して遊ぶ? ポーカーする?」

「ポーカーでも良いけど、こいつでもしないか?」

 

秋山がポケットからサイコロを取り出す。

 

「サイコロ?」

「よく賭けで使われる奴だ」

「チンチロっすか?」

「そうだ」

 

秋山はチンチロを提案する。

 

「なにそれ?」

「要するに3つのサイコロを振って役が出れば勝ち。役が出なかったら目のでかい人の勝ちってゲームだ。

単純だろ。ただし、これはさっきも言ったように賭けでよく使われてる奴だ。やるか?」

 

秋山がサイコロを何度も上げたり下げたりして、どうするかを尋ねる。

 

「面白そう、それでいいわよ」

「じゃあ決まりだな。適当なおわんくれ」

「何で?」

「これはおわんに入れるように転がして遊ぶもんだ。

おわんがダメなら適当におわんみたいなのでいいぜ」

「イカロス、おわん取って来てくれ」

「はい」

 

イカロスは台所からおわんを取ってきた。

 

「始める前に役を決めよう。

なあに役は簡単なもんだ。ゾロ目を役にする。ゾロ目と言っても2の目と6の目じゃ数字の大きい奴のほうが強い役だ。

ただし、1の目の場合はピンゾロとなって一番強い役だ。6の目のゾロ目よりもな……。

役がない場合は3つのサイコロのうち一番大きい目がその人の目だ。

そして一つルールを伝えておく。漫画であったイカサマ防止法の一つだ。

サイコロは投げて転がすんじゃなくてこうやって……」

 

秋山は手からサイコロを下に落とす。

 

「落とすような感じで振れ。振り方によっては自分の出したい目を出すテクニックもあるからな。

これはそのテクニック防止だ。

それじゃあ、早速始め……」

「ちょっと待った!」

 

智樹が待ったをかける。

 

「どうした?」

「ルール追加させてくれ」

「どんなルールだ?」

「一番弱い役を出した奴は……服を一枚脱ぐ」

「「ええええええ!?」」

 

ニンフとアストレアが嫌がるように驚く。

 

「だってこれ、賭け事に使う奴だろ? だったら、それくらいのことはしていいだろ」

「でも……」

「お前の場合はよく全裸でいるだろ」

「う……」

 

智樹は少し痛いところを突かれる。

 

「だったらお前の場合は隠しているエロ本を処分だ」

「それならいいわよ」

「私も!」

「俺の場合は……これでいいか?」

 

秋山はあるものを出す。

それは一つの小さなボールであった。

 

「なにそれ? スーパーボール?」

「スーパーボールのようで、スーパーボールじゃない。

これは今名づけて『ホープボール』だ」

「『ホープボール』?」

「名前の通り希望のボールだ。

これ一つだけでもそれなりに自分の願いがかなうぞ。

ただし叶えられない願いが出てきたらそのボールに『無理』って出てくる。

これでいいか? 俺が最下位だったら、その時の1位の奴にやるぜ」

「願いがかなう……」

 

皆その事を聞いて心が揺らぐ。

 

「どうだ?」

「いいわよ」

「それじゃあ、決まりだ。順番は……」

 

サイコロを振る順番を決める。

振る順番はカオス→イカロス→アストレア→秋山→ニンフ→智樹となった。

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「それじゃあ振るね」

 

カオスがサイコロを振る。

すると……。

 

「わぁ〜い、ピンゾロだ〜」

 

カオスはいきなりピンゾロを出す。

 

「いきなりピンゾロ…」

「次は私……」

 

イカロスがサイコロを振る。出た目は4の目。

 

「次は私ですね。えい」

 

アストレアがサイコロを振る。すると出たのは2の目であった。

 

「げげー!」

「よし、これでアストレアが最下位だ」

「まだ勝負は分からんぞ」

 

秋山が振る。秋山が出したのは3の目であった。

 

「次は私ね」

 

ニンフの番になりサイコロを振る。出た目はアストレアと同じ2の目であった。

 

「私も2の目……」

「言い忘れたけど、最下位が二人以上いる場合は全員の場合を除き、最下位のルールに従ってもらうぞ」

「よ〜し、ここで俺が3の目以上出せば……」

 

智樹は力を込めてサイコロを握り締める。

 

「一応言っておくが振り転がすのは無しだぞ。ちゃんと落として転がすんだ」

「「外れろー。外れろー」」

 

アストレアとニンフが念を送るようにして智樹が1の目を出すよう祈る。

 

「とりゃ」

 

智樹がサイコロを振る。そして出た目は……。

 

「3のゾロ目。俺の勝ちだ!」

 

最下位はアストレアとニンフになり、二人は着ている服を一枚脱ぐ。

 

「それじゃあ続けるぜ」

 

こうして6人のチンチロの続けられる。

最下位になった回数はカオス1回、イカロス2回、アストレア3回、秋山1回、ニンフ2回、智樹3回となっていた。

 

「もうこれ以上脱ぎようがないよ〜」

 

アストレアはもうパンティー一枚で胸は何とか腕で隠している状態であった。

アストレアもそうだが、カオスは一度しか負けていないが、修道服を脱いだだけで既に下着の状態、事実上後がない。

イカロスとニンフはあと1回は耐えられる。智樹は現在持っているエロ本の数的にも限界であった。

 

「それじゃあこれをラストにするか」

 

秋山はそう言ってサイコロを新たに3つ出す。

 

「一人一つ持て。1の目が最高でその次は6の目。ゾロ目の役と同じようにするぜ」

 

秋山に言われて全員がサイコロを一つずつ持つ。

 

「それじゃあ一斉に落とすぞ。どれが誰のなのかは振った後でわかるからな。せーの!」

 

全員がサイコロを一斉に振る。

そして出た目は……。

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「やったー!」

 

全員の出た目、カオスは3の目、イカロスも3の目、アストレアは3の目、秋山は1の目、ニンフも3の目、そして智樹が2の目となった。

 

「それじゃあ最終の罰は智樹一人で決定だ」

「くそーーーーーー!」

 

智樹は現在持っていたエロ本を全て処分された。

智樹はショックでその場で倒れるように落ち込む。

 

「……あ」

 

カオスが窓を眺めてみると窓から太陽の光が入り込んできた。

雨雲はなくなり、完全に雨が止んだのだ。

 

「晴れた〜」

 

カオスが中庭に出ていく。

 

「いい天気だね〜」

「うん」

 

イカロスも頷く。

二人と共にニンフとアストレアも外に出てくる。

 

「お〜い、イカロスさんにニンフさんにアストレアさんにカオスさ〜ん!」

 

そはらが家から出てきてイカロス達に声をかける。

 

「そはらさん」

「イカロスさん達、何して…たの……」

 

そはらが声を詰まらせる。

なぜなら今のイカロス達の格好は先ほどまでの格好、つまりは服を脱いだ状態であった。

 

「智ちゃ〜〜〜〜ん!!」

 

そはらは手をチョップの体勢にして智樹の家に入り込み、智樹にチョップを食らわせたのはやはり言うまでもなかった。

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おまけ

 

 

作者「久しぶりの『そらのおとしもの』での投稿だ」

一刀「どうしたんだ?」

作者「他の人のものを見て投稿したくなったが、ネタがなかなか思いつかなかった。

そこで最近まであった大雨を元にしてみたんだが、後半からあまり関係なくなってたな」

一刀「でもいいんじゃね?」

作者「今回出てきた『ホープボール』なんだけどな…。結局誰が手に入れたのかは俺も決めてない」

一刀「おいおい」

作者「まあ後々の作品で使おうかなとか考えてはいる。誰のものになっているかは俺も分からないお楽しみという事で……。

それと最近のアニメで『DOGDAYS』というアニメがある」

一刀「確か『リリカルなのは』シリーズの原作者の新作だよな」

作者「ああ。最初観たときに『テイルズオブ』シリーズに似てるなっと思ったよ。しかも第6話でシリアス展開になるみたいだったしな」

一刀「『リリカルなのは』第1期の時みたいにほのぼのから一気に展開チェンジしてたからな…」

作者「その例があるから、そうなるとは思っていたぜ。というか第3話で魔物の存在を出した時点が完璧だよ。絶対魔物が襲ってきたり、あの世界の戦争を良く思わない存在が魔物を使って何かするとか予想してたからな。それでますますテイルズシリーズだと思った。

そこで俺は『RPGツクールVX』でDOGDAYSメインでサブでテイルズシリーズと+αのRPGを作ろうとしている」

一刀「どんな感じだ?」

作者「とりあえずはプレイヤーキャラを考えてみたんだが、現時点で52人」

一刀「多すぎだろ!」

作者「いいんだよ。俺個人でやるんだから。まあキャラについてはここで発表してもいいんだけどな。

というかRPG作る前にここでそのRPGを小説にしたものを投稿しようかなとかも思っている」

一刀「本当に色々思いつく奴だな」

作者「その代わり中途半端な奴といわれてるけどな。

それでは!」

説明
この作品はアニメ「そらのおとしものf」の最終回後を二次創作で考えたものです。
そのため映画に出てくるであろう要素は一切入りません。
原作キャラクターの性格や口調が一部変わっていたりするかもしれませんが、その事はご了承下さい。
またこの小説には作者の分身とも言えるオリジナルキャラクター(秋山総司郎)も出てきます。
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コメント
智樹は2000冊ぐらいエロ本持っていそうな気がするのに。渡り鳥になって飛んでいったのだろうなあ(枡久野恭(ますくのきょー))
トモ坊のエロ本が3冊しかないだと…? きっと前日にそはらさんに処分されたんだろうなぁ。(tk)
タグ
そらのおとしものf イカロス ニンフ アストレア カオス 桜井智樹 秋山総司郎 そらのおとしもの 

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