恋姫†無双〜御使いを支える巨人〜拠点1
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拠点:一刀(兄弟の邂逅)

 

 

 

俺は城壁の上に来ていた。

 

この前の賊達は、お尻ペンペンして故郷に帰した。

 

(まさか本当にやるとは思わなかったな。ま、悪い事したら罰は当然だけども)

 

ちなみに、お尻ペンペンは鈴々のたっての希望だ。

 

……死罪よりはマシだろう。

 

後処理は白蓮に任せ、俺は脱走してきた。

 

朱里や雛里も手伝ってるから、大丈夫だろう。

 

(こんな良い月の夜に外に出ないなんて勿体無い。俺も夕方までは手伝ったんだがな)

 

こっちだって朝から副官3人組の面倒見てたんだ、酒飲むぐらいバチは当たらんだろう。

 

 

持ってきた酒瓶から杯に酒を満たす。

 

この前の活躍を聞いた酒屋のオッチャンがくれた物だ。

 

「中々良い酒じゃないか」

 

注いだ酒で喉を濡らす。クセの少ない良い白酒だ。

 

「仁兄さん、ここに居たの?」

 

声のする方を見ると、一刀が城壁を登って来るところだった。

 

「おう、一刀。お前も月見か」

 

「違うよ、白蓮が泣きながら「仁義〜仁義〜」って呻いてたから探してたんだよ」

 

そいつは悪い事したな、後で白蓮を手伝いに行くか。

 

「そうか、後で手伝いに行くかね。ところで一刀、お前さん酒は大丈夫か?」

 

「お酒?まぁ、こっちに来てから嗜むぐらいにはなったかな」

 

ほほう、嗜むとな。一丁前の男になったもんだ。

 

「じゃあ、一献」そう言って一刀に杯を渡し酒を注ぐ。

 

「俺、一応未成年なんだけど」

 

「この世界に来た以上、関係ないだろう?」

 

一刀の前に杯を挙げる。

 

「さて、何に対して乾杯するか」

 

「……再会で良いんじゃないかな、俺達の」

 

嬉しい事を言ってくれるねぇ。

 

「それじゃ、俺達兄弟の再会に乾杯」

 

「乾杯」

 

杯を軽く当て、2人で傾ける。

 

「良い飲みっぷりだ」

 

「これ、結構強いね。おいしいけど」

 

一刀の杯に酒をまた注ぎ、俺の杯にも酒を注いでもらう。

 

「一刀、お前と2人で酒を飲むのはな、俺の夢だったんだよ。また一つ夢が叶った」

 

「仁兄さん……。俺も一緒に飲めて嬉しいよ」

 

大事な弟と、こうして酒が飲める日がくるなんて思わなかった。

あんな事故に巻き込まれた上、右も左も分からない世界に飛ばされたんだ。

……死ななかっただけでも良しとするか。

 

「そういえば、世界中を巡って何をしてたの?」

 

「その事か……」

 

まぁ、いつかは話さないといけない事だしな。

 

覚悟を決めるか。

 

「行ったのは色々な所さ。五大陸には全部行ったし、紛争地帯にも足を踏み入れた。そういや、南極にも行ったな。

 エベレストにもキリマンジャロにも登った。もっとも、エベレストは清掃登山に着いて行っただけだがな。

 色んな流派の道場で練習に参加させてもらったよ。この事は、じっちゃんの人脈に感謝しないとな。

 蛇の穴というレスリングジムは面白かったな、死ぬほど鍛えられたよ。」

 

「本当に色々な所に行ったんだね」

 

「ああ、高校を卒業してすぐ旅に出たからな。中々一刀達に会えないのは残念だが、自分で選んだ道だ。仕方ない」

 

俺は、また酒を煽った。一刀が酒を注いでくれる。

 

一刀の杯にも酒を注ぎ、話を続ける。

 

「楽しい事も辛い事も嬉しい事も悲しい事も沢山あった。生きる意味を見出せた気がするよ」

 

「旅をして目的を果たせたんだね。……そして3年前に」

 

一刀が俯く。

 

「そうだ、俺は油田火災に巻き込まれて消息不明になった」

 

旅先で知り合った友人の伝で石油コンビナートの現場作業員として働いていた。

旅費も心許なかったし、何より中々経験出来る事じゃなかったので、すぐに快諾し働いた。

普通の渡航者を雇ってもらえないと思っていたが、友人が上手くやってくれたみたいだ。

 

作業員として働いて慣れ始めていた頃、突然火災が起きた。

詰め所に居た俺は他の仲間と逃げようとした。すると、廊下が爆発した。

咄嗟に頭を庇いしゃがみ込んだ。頭を上げると仲間だったモノが飛散していた。

俺の足元に飛び散ったモノがこびり付いていた。

 

……今でも夢に見る。一瞬で人が人でなくなる瞬間を。

 

そこから先はあまり覚えてない。ただ、異常な熱さと誰かの怒号だけは記憶している。

 

 

そこまで、語ると俺は杯を空にした。

 

「……泣くなよ、一刀」

 

「だって、仁兄さん」

 

相変わらず優しい奴だ、この乱世という時代に似合わない優しさだ。

 

その優しさが、きっとあの娘達の支えなんだろう。

 

それを支えるのが俺の天命なのだろう。死地から生き永らえ、ただ死んだ日々を生きていた俺にとっての。

 

「俺はこうして生きている。一刀と再会する事も酒を酌み交わす事も出来た。

 もし、神という者がいれば地面に額を擦り付けて感謝しているよ。」

 

「……仁兄さん、飲もう」

 

また、一刀が酒を注いでくれる。俺も一刀に注いでやる。

 

 

あの事故の後、怪我を治してから色々あって色々やってた。

 

その話は、また今度にしよう。これ以上は俺が持たないだろうからな。

 

 

「ところで、一刀。桃香達の中で誰が好みなんだ?」

 

「ブホッ!?」

 

一刀が酒を吹き出した。

 

あ〜あ、もったいね。

 

「ゲホッゲホッ仁兄さん、突然何を」

 

「やっぱり桃香か? 一番オッパイ大きいもんなぁ〜。あ、でも愛紗も中々のスタイルだな」

 

桃香はアレだが、愛紗はあの華奢な体付きで青龍偃月刀なんつう得物を振り回すんだもんな。

 

鈴々もそうだが、やっぱり果てしないわ、この世界の住人は。

 

「胸の大きさに関係なく、みんな綺麗で可愛いと思うよ。俺が釣り合うかは別だけど……」

 

「そうかそうか。でも、お前さんは十分に釣り合うよ」

 

回復した一刀は自信無さげにそう答えた。

 

まだ出会って日の浅い俺でも気付くぐらい好意を向けられてるっていうのに。

 

「大方、自分に好意を向けてくれるのは、天の御使いだからとか考えてるんだろう?

 確かにきっかけはそうかもしれんが、今は北郷一刀自身を見て好意を向けてると思うがね」

 

「だけど、俺は誇れる武勇も無いし知略も無いよ。あるのは天の知識だけ。……一緒に戦っていけるかな」

 

「そんなもん、当たり前だろうが。ただの学生だった奴に何が出来るよ。

 お前さんには天の知識を生かす知恵がある。それだけで十分だ。共に悩んで戦っていけばいいさ」

 

一刀が時々ため息を吐いていたのは知ってたからな、まぁいきなりこんな世界に来ちまったんだ気持ちは分かるが。

 

(どうも酒を飲むと説教がましくなってイカンな)

 

少しでも一刀の心の重荷が晴れれば良いけど。

 

そう思いながら、酒を飲みつつ夜は更けていく……

 

 

 

翌朝、白蓮に本気で泣かれた。

 

俺の顔を見た瞬間、声も無くさめざめと泣かれた。

 

これはまいったな。フォローはどうしようか。

 

 

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後書き

 

という訳で初☆拠点です。

 

もう少し他の話もいれようかと思ったけど、これぐらいで。

 

他の拠点も書いていきたいですね。

 

ではでは、またいつか。

 

 

説明
初☆拠点です。

楽しんで頂ければ、これ幸い。
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