エンジェルビーツっぽいもの |
神ってのは曖昧だ。本当に、うんざりするくらい、そう思う。なあ、そうだろ。
人類は火を見つけた。その次は、道具だ。そして知恵。やがてそいつらは狩りを覚えた。火を使って狩った物を食らい、知恵で発明もした。どれも火を使って。
動物を飼えることにも気づいた。飼えば増やせるし、食える量も増える。いつしか、数の多さが強さだと悟った。人々は強さを求めた。文字が出来、”神”が生まれた。
そうしてステップを踏んでいく内に、人々は団結の為の戒律を求めた。そしてそこから
それを与えるであろう”神”が求められた。
”神”も求めた。自身の言葉を伝える為の人間を―――預言者を―――求めた。
それが”王”の誕生。
皮肉を言うなら、人が”王”を作った。
どこかの聖典にはこう記されてる。『神は、自身に似せて人間を作った』
似てるのは当然だ。まったく、曖昧だ。ああ、そうだ。神なんて居る訳ねえ。
少なくとも、慈愛に満ちた優しい神なんて、都合の良いモンは無い。
科学で丸裸にされちまった神の方が、よっぽど信じられるね。
俺はそう、断言するね。
用を足し終え、ウサミは廊下を渡り、ある場所へ歩く。
その足取りはそれ程、急いでる様子は無い。それはそうだ、あんな奴らの所へ向かうのに、無駄な体力なんぞ使いたくない。
皮肉を思い浮かべ、ウサミは進む。今こうしてるのだって無駄に思える。ああ、そうだ無駄なことだ。そしてこれから、俺たちはさらに無駄に思えることをするんだ。益体のない事だと分かってる。あの連中だって、分かってる。
ウサミは苦々しくうめく。
それでも、するのは、自分を”見ない”為だろう。実際、ウサミもだった。
曲がり角を曲がる。もうすぐ目的地に着く事が分かると、その渋面をさらに歪ませる。
ウサミはげんなりすると、立ち止り上を見上げる。そこに建て下げられてる札にはこう書いてあった。
《校長室》と、書いてあるプレートが下がってる部屋のドアに近づいて彼はかぶり振って、囁く。
「神も仏も天使もなし」
言い終えると、ドアは開き、そこには数人の生徒が並んでる。
いちばん奥で―――校長室の机に―――座って踏ん反り返ってる彼女を見て、嘆息を漏らす。
死んだ世界戦線。命ある者が存在しない死んだ世界で、居るのか居ないのかも分からない神に戦いを挑む、亡者どもの集まり。神の探索者。
死後の世界で、彼は絶望的な、無意味に等しい戦いに身を投じていた。
ここが死後の世界だという事を知ったのは、皮肉にも人が死んだのを見た事でだった。
それ程ここは、現世と見分けがつかない―――よく出来た―――世界だった。
屋上の策に寄り掛かり、カンナギはそこからの風景を見渡す。
この学園を取り巻くように海が見える。それだけだ。そこから先は見ないし、何も無い。牢獄の孤島とはよく言ったモノだ。
そう、ここは孤島の上に学園がある。全寮制の学園で、寮も食堂も風呂場も完備された場所。
そんな、生前に想像した様な死後の世界とかけ離れた、この場所が――――
(死後の世界……)
校庭には、始めから用意されたモノ。NPCが闊歩している。太陽の上がり具合から察するに、昼時なのだろう。ちょうど、腹も鳴っている。
(これも、使用なんだろうな)
死者も腹が鳴るというのも、可笑しな話だ。いや、しかし、これも必要なのかもしれない。そう、奴らが唱える”成仏”の為には……
この世界は、生前に未練を残した者の為の救済処置らしい。
この世界で普通の学園生活を送り、満足した後成仏する。なんとも、
「なんとも、安っぽい成仏の仕方だよ」
知らずに声を漏らしてた事に気づき、彼は自嘲気味に笑みをこぼし、吐き捨てる。
「くそったれ」
ここは、神の不在の死後の世界。見えない闇に包まれた世界。己を写す映し鏡の世界。
だが、それでも、今此処にいる自分はまやかしで無い。なら神もまやかしで無い。
その思いがただ一つの真実だと信じて。
すべてが、神の定めたものだとしても……
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エンジェルビーツの二次創作です。 ヘタですがどうぞよろしくお願いします。 |
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