真・恋姫無双SS 〜この地に生きるものとして〜第一話「張と趙」 |
真・恋姫無双SS 〜この地に生きるものとして〜
第一話「張と趙」
幽州と并州の間にある小さな庵
その庵の前で二人の人物が棍を手に武を競い合っていた。
一人は紫の髪を後頭部でまとめた、羽織袴のような服に身を包んだ少女。
もう一人は水色の髪を短く切りそろえ白い服に身を包んだ少女。
二人とも見目麗しく、またその振るう武は後数年もすればその名を大陸中に轟かせると
思わせるほどに鋭い。
二人はここ数年同じ師の下で共に武を学んでいた。
そんな二人が朝早くから棍をぶつけ合っているには訳があった。
二人と共に武を学んでいた少年が今日この地を去るというのである。
その別れを前に最後の手合わせの相手を自分がするのだと互いに譲らず
一刻近くもやりあっていた。
「相変わらずやるやないか、星」
「そういう霞こそ、隙のない攻めをみせるではないか」
「あたりまえや、今回ばかりは星に譲ってやりわけにはいかんからなあ」
「それはこちらとて同じこと、これを逃せばしばらく北郷と手合わせをすることはできんのだ
いくら霞の頼みとあっても今回ばかりは譲れぬ」
短い会話が終わると、一度激しく棍ぶつけ合い、同時に後方へ跳び距離をとる。
「もう時間もないことやし、これで決めさせてもらうで」
「望むところだ」
次の一撃にすべてをかける
言われずともそれがわかるほどの闘気が二人からあふれだす。
二人が動いたのはほぼ同時
張遼の竜巻のようななぎ払いと趙雲の雷光のような突きがぶつかり合った瞬間
バキッといい音を立てて二人の持っていた棍が砕け散った。
二人の一撃に棍が耐え切れなかったのだ
「くっそ、こうなったら素手で」
張遼が砕けた棍を投げ捨て素手で挑みかかろうとしたところで第三者の声が響き渡る。
「そこまでよ二人とも」
二人が手を止め声の方に振り向くと二人の男女が呆れた表情でこちらを見ていた。
「「師匠、それに北郷も」」
「残念ながら時間切れね、北郷の準備は終わってしまったわよ」
「そ、そんな殺生な・・・」
師匠と呼んだ女性の言葉にがっくりとうなだれる張遼
対して趙雲は明らかに不満だといった表情を北郷と呼ばれた少年に向けた
「そんな怖い顔しないでよ、せっかくの美人が台無しだ」
「そ、そんな言葉で騙されてやったりはせぬぞ北郷」
北郷の言葉に顔を紅めつつも納得はいかぬと不満顔の趙雲
「その辺にしておきなさい星。
今生の別れでもないのだからまた会う事もあるでしょう、
その時までに自己を磨いておきなさい武人としても女としても。
霞もいいわね」
そういってやさしく微笑みながら二人の頭をなでる黄。
そういった師の言葉に二人の少女も渋々ながらも了承する。
「それじゃあ、いつまでもそんな顔してないで最高の笑顔で送り出してあげましょう」
それまで頭を撫でていた手を止め、二人の肩に手を置いて北郷と向き合わせる
「師匠にそこまで言われたらしゃあない。
北郷、次に会うたときは必ず手合わせしてや、ウチも腕磨いとくさかい」
そういって北郷に手を差し出す張遼。
「ああ、約束だ。
俺も張遼に負けないようがんばるよ」
差し出された手をしっかりと握りながら笑顔でかえす北郷。
それを横目で見ていた趙雲がなにやら少し思案した後
「北郷よ、我が真名 星をお主に預ける」
「えっ」
趙雲の言葉に驚愕する北郷。
真名とはその者のの本質を表す大切な名で、
本人の許しなく呼べば、命をとられても文句を言えないほどのものである。
同性どうしであれば、本人同士の意思で許しあうのはよくある事で、
現に趙雲と張遼は真名で呼び合っている。
しかしこれが異性となれば話は違ってくる。
異性が真名を許すのは親兄弟かそれに近しい者、
または将来を誓い合った者同士くらいなのが一般的である。
それを鑑みればまだ幼いとはいえ趙雲の言は十分に驚くべきことである。
「抜け駆けなんてずるいで星。
北郷、ウチの真名は霞や、これからは霞って呼んでや」
「ちょ、ちょっと待ってよ二人とも」
張遼までも真名を許すという暴挙に北郷が慌ててまったをかける。
「なんだ不満でもあるのか北郷」
「いやなんか北郷」
「い、いやとかじゃなくて・・・し、師匠」
待ったをかけられ不満顔の二人に困り助けを求めて師を見やれば、
ニヤニヤとした小悪魔的笑みを浮かべていた。
「いいんじゃないの、受け取ってあげれば。
10歳そこそこで真名を異性に許すってのは確かに珍しいけど、
ダメだってわけじゃないんだし。
それに大人になって宮仕えとかするようになれば
認め合ったもの同士交換することもあるんだから。
ね、カ・ズ・ト♪」
師の紡いだ名に三人は驚きを隠せない。
カズトとは、北郷の真名である。
二人の少女にしてみれば師が北郷に真名を預けられていることを知らなかったし、
カズトにしてみれば預けはしたものの今まで呼ばれたことはなかったからである。
「師匠は北郷の真名を」
「ええ、弟子として受け入れたときに預かったわ」
「なんや、自分は師匠に預けとるくせにウチらの真名は受け取れんちゅうんか」
「い、いやそういうわけじゃ・・・」
「ならええやんか〜」
にじりよってくる張遼に北郷は白旗を揚げた。
「わかった、わかったから」
張遼から体を離し、一度息を整え二人を見る。
「改めて、姓を北、名を郷、真名を一刀。
星、霞、君達が真名を預けたことに後悔しないよう、より一層の努力を惜しまぬ事をここに誓う。
それと今までありがとう、二人がいてくれたおかげで厳しい修行にも耐えられた」
「礼をいうのは我々の方だ。
一刀がいたおかげで充実した日々を過ごすことができた。
手合わせで負け越たのままなのが心残りではあるがな」
「せやで、ウチらはまだ諦めてへんからな、
必ず追いついてみせたるから楽しみにしとってや」
そういって三人は握手を交わし、再会を約束する。
「一刀」
名を呼ばれ師の方に向き直れば、
師が手に持っていた二振の剣を差し出してきた。
「これは」
「銘を龍爪。
卒業の証として持っていきなさい」
真剣な眼差しで師とみつめあう。
その無言のやりとりで何を語り合ったのか、
余人にはわからないが当人同士には確かに通じ合ったものがあったのだろう。
しばらくして、北郷は感謝の言葉と共に剣を受け取った。
「益州まではかなり距離があるから、気をつけるのよ。
賊も増えてきているみたいだしね」
「はい、今まで本当にありがとうございました」
一歩下がり三人に深々と頭を下げた後、益州への道を歩きだす
その背に激励の声を受けて。
時に一刀、11歳であった。
説明 | ||
舞台が大陸へと変わりますが、まだしばらくプロローグ的なものが続きます。幼い一刀が武を磨きながら様々な人と出会いっていきます。 まずはこの二人から 11/06/03 一刀の目的地を徐州→益州に変更しました。 二話のあとげきにて述べさせていただきます。 |
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コメント | ||
この外史では星と霞は同門で知り合いなんですかwwww。 実に面白そうですね続き楽しみにしてます。(劉邦柾棟) 執筆お疲れ様です。、又新たな外史の一刀が一人・・・・しかも霞や星が戦えない事を惜しむレベル。どれ位何だ・・・一刀≧二人?二人≧一刀?一刀=二人?師匠の名前も気になる。wktkしてきた。 次作期待(クォーツ) この先が、すごく気になる〜(トトクロ) 一刀わけぇ。(中原) おぉ!なかなか面白そうだ!!これから楽しみだ。(黄昏☆ハリマエ) |
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