真・恋姫無双 花天に響く想奏譚 3話 |
<第3話 Twilight Beast>
・狼火・
夕日の中、数件の家が煙を上げる目下の農村。遠目にも賊の襲撃が見て取れた。
「は、早く助けなきゃ!愛紗ちゃん、鈴々ちゃん、先に行って!」
自分の足の遅さは百も承知、な桃香。だが、
「いえっ、このあたりにも賊の者が居ることも考えられます! 鈴々、二人と一緒に後から」
「いや、皆で行くぞ! 劉備さん、ちょっと失礼!」
一刀が愛紗の言葉の横から入り、桃香の体が浮き上がる。
「ふぇっ?あ、ひゃぁんっ?!」
出来た体勢は、いわゆる一つのお姫様抱っこ。どうやら桃香を抱えたまま走るつもりらしく、
「ぇ、あ、あのご主」
「関羽さん、張飛ちゃんっ、行くぞっ!あと俺の荷物頼む!」
語気鋭く言うと、一刀はそのまま走り出す。
「は、はいっ!」「応っ、なのだ!」
そして愛紗と、一刀のデイパックを持った鈴々も続いた。
・愛紗の考察・
…速い。人一人抱えていると言うのに自分たちと変わらない速度で走っていく。
最初、倒れていた一刀を見たとき。変わった服を着てはいても、愛紗は普通の男、としか感じなかった。顔つきは整っていて、だがどこか精悍さを感じたが、武人特有の気というものが感じられず、事実目を覚まして話をしていた時も、その印象は変わらなかった。
しかし。刃を突きつけた時、一刀は全く動じなかった。
あのときの感覚はそう、一挙手一投足を全て見抜かれていたような感覚、だった。
結果、刃を突きつけられること、そしてそれが威嚇だと分かっていたようだった。
…貴方は一体…?
・鈴々の思ったこと・
愛紗が、おにいちゃんは強いって言ってたのだ。
そして今は鈴々も同意見だった。
見たときは普通の人、としか鈴々は思わなかったが、賊の襲撃を見た瞬間に雰囲気が一気に鋭くなった。そして今の疾走である。
ただその実力は未だ未知数。強いか弱いかは対峙したときに大体分かるものだが、一刀に関しては分からない。漠然と、強いのは分かる。その程度だった。
と、ここまで文にしてきたが、鈴々本人はそんな小難しくまとめていない。色々感じて漠然と有る考えを作者がそれっぽく文にしただけである。 馬鹿、と言ってるのではないぞ。
どれくらい強いのか、戦ってみたいのだ!
要は、この一言に尽きる鈴々だった。
・桃香の拍動・
いきなり体が浮いて、と思えば一刀に抱えられて、今は自分が経験したことのない速さで移動している。
すぐ近くには一刀の横顔。最初に見たときは優しそうな人という第一印象で、話して協力してくれることになった今、その第一印象は間違って無かった。
そして抱えられて移動している現在。すぐ傍にある一刀の横顔は精悍で鋭く、真剣な表情。ただ桃香はそんな単語での評価ではなく、
…かっこいい。
それだけだった。 こんなときなのに、心臓の鼓動が別の理由で速くなる桃香だった。
・取捨選択・
族の襲撃を受けたいま、村は戦場だった。農具を手に応戦する男手もいるが、所詮はただの農民。戦闘にある程度なれている賊が押している。
そんな中、家と家の間の細い隙間。人二人分ほどの隙間に重ねて置かれた籠の後ろに、三人の少女が息を潜めていた。
「ど、どうしよう…っ」
今にも泣き出しそうなのは、というか既に涙目なのは、一番小柄で気弱そうで、薄青紫色の髪をツインテールにした少女。いつも被っている魔女の帽子のような大きな帽子は、今は命にかかわる状況故に先程までいた農家の置いてきている。目立ってしょうがないから。
「と、とにかく早く逃げないと、でも他の人たち」
「は、見捨てましょう。」
次のセリフの主は、先の少女と色違いで同じような意匠の服を着た、黄色でボブ気味な髪型の少女。こっちも表情こそ取り繕ってはいても、焦りと不安でこわばっている。
そして最後の一人は、二人と違って冷静な表情。藤色で長めの髪を耳の後ろ辺りでツーサイドアップにしている少女で、前の二人より少し背が高めで、下に穿いたスパッツの両太腿外側に三本ずつ、計六本の短刀を逆手で抜けるように斜めにベルトで固定してあるのが妙な存在感を印象付ける。 …当然上も着ているので。描写を省いただけですよ。
「「…っ!」」
「野盗は盗るもん盗ったらさっさと逃げるもんですが。彼等は暴力を楽しんでるたちです。下手に出てったらナニされるか分かりません。…だから、逃げましょう。」
平坦な表情と口調だが、そのなかに断腸の思いを感じた二人は反論を止める。
するとそのかごの向こうで、
「おら、その荷物もよこしなァ!」
「こ、これはばぁちゃんの形見なんだよ!」
と、移動に際してまとめてあった荷物に二人の野盗が剣を向ける。その荷物をかばっているのは、三人を泊めてくれるといった家のおばちゃん。
「…っ、」
見ているうちにも賊二人は突き飛ばし、それでも縋る彼女に刃を突きつける。すると、
「…二人とも。さっさと逃げて下さいね?異論反論は無視するんで。それじゃ。」
有言実行、反論を待たずに平坦少女はかごの陰から飛び出した。
少女は太腿の短刀の内、上から二本を逆手で抜いて、剣を振りかぶる賊に向かって身を駆った。そして後ろから、賊の背中の肺辺りに右の短刀を突き立てる。
「ぐっ、あああぁぁ!l」
即座に引き抜いて、今度は呆気に取られた二人目の正面に体当たり。只の体当たりでなく、心臓に刃を突き立てるためのもの。結果成功し、その賊は短刀を引き抜かれた瞬間、胸から血を撒き散らして地に倒れ、最初の男も呼吸困難で痙攣中。
「あ、あんた…」
「いいから逃げましょう。物にこだわって死にたいなら別ですが。」
そんな二人に、
「なぁにしてんだ?」
神様は無情だった。
・牙・
「っ…、酷い…」
桃香たちが着いた村の入り口辺りのは数人の村人が倒れていて、相当の傷を負っていた。遠目に見えた煙の元の家屋は今も燃えていて、その向こうには騒ぐ声が聞こえる。
「おい、おいっ!…っ、駄目、か…」
一刀があたった人は既にこと切れていた。一刀は拳を強く握る。愛紗、鈴々も同じだった。
そんな中、桃香が近寄った人はまだ息があったらしい。
血で汚れることも気にせず、桃香は傍の一人を抱き起こして声をかける。
「大丈夫ですかっ、しっかり! …よかった、まだなんとか」
「桃香様、…私からお願いします。」
「当たり前だよ、…待ってて下さいね、すぐに手当てしますから!」
「…劉備さん、手当てが?」
「はいっ、ご主人様、よく見てて下さいねっ」
そう言うと桃香はなにやら傷に手を当てるが、
そこへ、
「あぁ?旅のモンか。ったく、いいとこにきたもんだぜ。おら、金目のモン出しな。」
下衆臭い声と共に、三人の賊が寄ってきた。火に寄って来る蛾のように。
「っ、きっさまらっ…」「悪いやつ、なのだっ!!」
激昂した愛紗が青竜偃月刀を、鈴々が蛇矛をそれぞれ構え、三人の賊に斬りかかろうとした、
瞬間に二人は何かを感じた。二人の後ろから、なにか気圧されるような感覚。
スッ、と背筋が冷えて、同時に二人の間を誰かが通る。 一刀だった。
ザ、ザ、ザ、と歩く一刀の顔は、最初に見た優しい表情は一切無い。まるでそう、名の如く、
まさしく触れれば切れそうな鋭い一振りの刀のようだった。
…中国に刀は無いから桃香たちには例えられないけど。
「な、なんだぁっ?、やるってのかぁっ?!!」
立ち止まった一刀に気圧されつつも、生意気にも下衆には下衆なりの見栄があるらしく。剣を振り上げて一刀に斬りかかる。
そして、便宜上で賊A、とする男は吹っ飛んだ。後方5mまで。
「…え?」
その場の全員がそう声を上げた。何が起こったのやら、な中、一刀はその場で深く踏み込んで掌打を放った体勢になっていた。かと思えば姿が横にぶれて横の賊Bの顔に一刀の膝が叩き込まれ、気絶した賊Bに組み付いて賊Cにロックオン。賊Bを踏み台にして真っ直ぐ跳躍、賊Cの顔面を飛び蹴りで蹴り飛ばす。
この間、賊Aが剣を振り上げてから2秒。秒単位だが瞬殺、と言える速度だった。
「…っ!」
一刀が何をしたか、理解してしかし混乱が残る桃香達三人に、
「…劉備さん、手当てできるならその人を頼む。関羽さん、張飛ちゃん、劉備さんは任せたよ。」
一刀はそう告げて、爆ぜるように走っていった。 初速から最高速度で。
・守るために・
「おっら、よっとぉ!」
「っぁぐぅっ!!」
賊の男の蹴りを受けて、少女は地面に倒れこむ。倒れた拍子に手に持った短刀が零れ落ちた。
「ったく、一人殺したわりにゃ大したことねぇ。」
「っぁ、はぁっ、…そんな大したことねぇ小娘に殺された人は、さぞかし素晴らしい人生だったのでしょうね。…っ、はぁっ、まぁ、こんな小娘にあっさり殺される、なんて末路でしたが。」
立ち上がって、ペッと血混じりの唾を地面にはく。
すでに体は満身創痍だった。ずっと戦った結果なのだが、そもそも彼女は強くない。確かに短刀を六本も持っているが、それはあくまで自衛の手段。いざと言うときのために護身の方法はある程度身につけてはいるが、積極的な戦闘においては一般男性をも下回る程度の膂力しかない。
家屋を背に、数十人の賊に囲まれたこの状況。と、言うことは、
「…村の人はどうしました?」
「生きてんじゃねぇか?はっきりたぁ知らねーけどよ。」
下卑た笑い声が渡る。 あぁ耳障りこの上無ぇですね畜生共が。
そこへ、
「ね、寧さんっ!」「寧ちゃんっ!」
二人分の声と足音が、「寧(ねい)」と呼ばれた少女に近付く。二人とももう涙で顔が水浸し状態だった。
「…朱里ちゃん、雛里ちゃん、…さっさと逃げてって言ったのですよ?」
「む、無理でしゅ、ぅう、やっぱりだめですぅっ!」
「ぅっ、ひぐっ、ひっく、ぇうう…」
後者の雛里、と呼ばれた少女はもう呂律うんぬんのレベルでなかった。二人揃って、すがり付いて嗚咽をこらえる。ぜんぜん抑えられてないけど。
「へぇ、友達逃がすために犠牲に、ってか。いい度胸してんじゃねぇの。」
「…ワタシは二人を守るためにくっついてるみたいなものでしてね。…まぁ、結局逃げてくれませんでしたけどね。」
「っ、ひゃはははっ!なぁるほど、無駄骨、ってやつか。…しっかし、」
そこで賊の男は言葉を切って三人を見回す。なんというかそう、酷くいやな目で。
「まだガキだが全員いい顔してんじゃ」
「おっと、それ以上言わないでほしいですね?汚い音は吐きたくなるんで。」
「…身の振り方、ってのを考えろよ。なぁ?」
「提案感謝しますが。くさいだけの畜生に降ってなにか得があるんです?」
この状況でも目の光が失せない少女にプツンときたのか。
「ほんっと、いい度胸してんじゃねぇか。」
男は剣を抜いて三人に対峙する。
「おいお頭、もったいないですぜ?」
「もういい。気にくわねぇんだよこういうやつはよぉ。」
そして剣は高く構えられて、
刃が、音を立てて突き刺さった。
・推参・
刃が、音を立てて突き刺さった。
そう、地面に。
次いで横のほうで何かがズザザと倒れる音。
「…ん?」「ひぐっ、ぇぐっ、…えぅ?」「…?」
恐る恐る顔を上げると、そこには賊の男は居なかった。代わりに別の人が居た。
足を高く、顔面を蹴り飛ばしたような位置に上げていて、そしてその足を下ろした。
丁度夕日の逆行で姿がぼんやり黒くなっていたが、上は袖の短い黒い薄手の服を着ていて、下は白く光沢を放つものを穿いていた。腕には鉄とは違う光沢を持つ素材の甲の付いた手甲を着けている。
その男は、賊の輩が呆けている中、三人に声をかけた。
「…下がってて。その家のかげ。」
涙もそのままでポカンとする朱里、雛里。そんな二人を、寧が引っ張って気付けをした。
「…言うとおりにしましょう。早く。」
そうして家のかげに隠れる三人を、呆け状態から戻った賊の一人が追おうとする。
「っ、ま、待ちやが」
れ、を彼が言うことは無かった。急に現れて「お頭」の顔を蹴り飛ばして気絶させた存在が、それこそ目にも留まらない、反応できない速度で肉薄、賊Dの頭を掴むと同時に足を払って、頭から地面に叩き付けた。即昏倒、だった。
賊の間に緊張が奔る。 そう、それはいわゆるひとつの、
恐怖、というやつだった。
「…行くぞ。」
一刀が言った途端、賊は一斉にかかっていった。
・黄昏の狼・
半身で足を前に出し腰を落として、両手の五指を緩く曲げた形にする。左手は内に軽く絞り前に、右手は手の平を前に向けて口の前に。
「死」「ねぇっ!!」
二人同時の斬り付け。それが始まる直前に、一刀は急激な速度で前に走る。初速から一歩目で最高速度に到る、強靭な足腰をベースに足運び、体捌き、重心移動を織り交ぜた、あいてからすれば爆発したように迫り来る、 「爆足(はざし)」という移動法。それで二人の懐に入り、引き絞った両双掌を二人の鳩尾に叩き込む。
「ごぉっ…」「ぁ、ぁ…」
二人が倒れて開いた道をまたもや爆足で突進、その先の進行方向にいる男の顔を、その速度をのせた飛び膝蹴りで打ち抜いた。しかも倒れるその身を足場にして、再び飛んで別の賊の顔を今度は足の甲で蹴り飛ばす。この一連、名を「虚空脱兎(こくうだっと)」。
着地して動きが止まったと見るや、後ろから一人が突き殺そうと剣を構えて突進。だが一刀はチラとわずかに見ただけで動きを把握、深く身を屈めて刺突を避けると同時に馬の後ろ足蹴りのような「馬蹄脚(ばていきゃく)」を相手の前進に合わせて顔面に穿つ。
一刀の動きは全て繋がって、連なっている。しかも動体視力が完全に対象の動きを捉えて、追えているから相手の動きに合わせて攻撃を加えられる。
屈んだ状態から、今度は全身のばねを使った爆足で賊の塊に突っ込んで一度に五人を戦闘不能に。速度の乗った肘打ちから始まって、最後は掌底で吹っ飛ばす。そもそも一刀の攻撃は全て爆足で根本的な速度を加えていて、尚且つ踏み込みが規格外。その踏み込み一発で人間の骨が砕ける「龍歩(りゅうほ)」というもので、それがカウンターウエイトになり衝撃が全て任意の向きに向かうという仕組みになっている。
吹っ飛んだ先には他の賊。体勢を崩して倒れたところに一刀、2m飛び上がっての上空からの踏みつけ、 「雷釘脚(らいていきゃく)」で腹にとどめをさす。口から胃酸が漏れ出たが死んではいない。白目むいて痙攣してるが死んではいない。ここ重要。
ある程度線状になった塊には、爆足で対象の人間、攻撃をかわしながら同時に攻撃を加えて突進する「蛮迅颯(ばんじんさつ)」で一掃する。進路に残るのは倒れた人、人、人。
「くっそ、矢だ!射殺しちまえっ!」
今更の如くに数人が矢をつがえるが、それを見た瞬間に爆足で射手との距離をゼロにする。反射的に放たれた矢は誰もいない空間を素通り、射手は全員叩き伏せられた。
「バカが、こっちにも居んだよぉ!!」
逆の方向からそう言う声。目を向ける二人ほど弓を構えていて、矢が二本放たれる。
だが、当たらない。手甲で弾いて流したからだった。
二人が再びつがえることはなかった。
残った賊は思った。 勝てない、勝てるわけが無い、と。矢の速度を見切って、自分達よりも高く跳躍できて、掌打で人が吹き飛んで、一瞬で数丈(一丈三メートルとする)の距離を詰めて、
尚且つ素手で武器を持った数十人を相手に傷一つ負わずに半数以上を倒せる存在に勝てる筈が無い。
「ぅ、うわあぁぁぁぁっ!」
逃げ出そうとしたその男は、
「…どこに行くんだ?」
一瞬前まで十メートルほど離れた場所で仲間を地面に叩き付けていた一刀から腹に、捻りを加えた、衝撃をねじ込む「徹掌(てっしょう)」を叩き込まれて気絶した。気を絶つそのとき、口の中に胃酸の味を感じながら。
ちなみにこの男、ザコ三人組のアニキ、でした。
・凶矢・
桃香達三人は、手当てが終わって、且つ賊の声がしなくなったので、怪我した人を置いて村の奥へと走った。するとそこには、
「…あの人は、大丈夫?」
武器が散乱して、数十人が倒れて動かない中、一刀が一人だけ、夕日の中に立っていた。
愛紗は信じられなかった。武器も持たず、防具も薄い手甲だけで、見たところ傷一つ負わずに何十人もの賊を一人で殲滅した。
いまやっと目の当たりにした。主とした者の、強さ。
「は、はいっ、大丈夫、です。…あのそれで、ご主人様に見てほしいことがあるん、です。」
場と一刀の雰囲気に気圧されながらも、桃香は一歩出て一刀に向き合う。
「?いや、それよりもまずは村の、…生きてる、人を探さないと。手当てが出来るなら」
「はい、それと関係があるんです。…ですから、そのときに見てください。」
そこに、一刀だ助けた形の三人の少女が近付いてきた。
「ぁ、あの、さっきはほんとに、あ、ありがとございましゅっ、…ぅう、」
必死に言って噛んだらしく。一刀と目が合った途端に顔を赤くする黄色のボブの子。それをフォローするように、
「朱里ちゃんは緊張してるのでワタシが。 本当にありがとうございました。」
「いやいいよ。女の子助けるのは当然だよ。」
次いで柔らかく笑うと、黄色いボブの子と薄青紫のツインテールの子がなにやら更に赤くなってうつむく。 まぁ当然か。怖かったろうな、けっこう派手にやったし…、と、実は的外れなことを一刀は思う。
「?、ご主人様、この三人は?」
「あぁ、さっき賊に襲われてて、って今はそれよりも人を探さないと。君達も、手伝ってくれるかっ?」
そんな一刀の言葉に、一切迷わず三人とも、
「は、はいっ!」「よろこんで、ですよ。」「て、手伝いますっ」
と快諾。
「よしっ、それじゃあ手分けして」
そのとき、
「あぶないっ!!」
一本の矢が、一人を襲った。
・おれは医者だ!!!・
狙われたのは寧、しかし矢が刺さったのは彼女ではなかった。
三人を泊めてくれる、といったあのおばちゃんだった。
「ぶ、無事、みたい、だね…」
「な、んで…」
家の中から飛び出した彼女に、矢は右わき腹、肝臓の辺りに刺さり、彼女は地面に倒れ込んだ。
「…っ!!!」
一刀はすぐに矢の出所を発見した。離れた小屋のかげに動く影。三十mの距離を一気に詰めて、無傷の、どうやらずっと隠れていたらしい一人と目が合った。卑しいそいつの目を、殺意すら宿した一刀の眼光が射抜く。
「ひっ!」
引きつったその声が最後だった。足を払って地面に叩きつけて、空いた腹を龍歩で踏み潰した。
声すら上げずに昏倒したそいつを放置して、一刀は皆のもとに戻った。
「なんでっ、何でこんなまねしたんですっ?隠れてて下さいって言ったのに!」
「あ、あんたが、あたしを助けたのと、…同じことだよ。」
そういうと彼女は次第に目を閉じていく。
精神的にも疲弊した状況下で肝臓を損傷したせいで失血の賞状が顕著にでたらしく、まずい状態だった。
「っく、っそぉっ!!俺が全員の手足折っとけばっ…!!」
恐ろしいことを悔やむが、いまさらどうしようもないことだった。
矢が刺さったところからは血が断続的に流れ、もう打つ手なし、だった。
が、
「どいてくださいっ!」
そこへ桃香が割って入った。
「っ、劉備さん?!」
「ご主人様、私が合図したらこの矢を抜いてくださいっ!」
「?!、そんなことしたら」
「いえご主人様、桃香様の言うとおりに!」
言ううちにも桃香は膝を折って屈み、患部に両手を当ててスタンバイ。何をするのかは分からないが、入り口に倒れていた男性を手当てしたらしいことが思い起こされて、
「、分かった!任せる!!」
矢の根元付近を握って準備完了。傍では自分と桃香以外の全員が固唾を飲んで見守る中、
「いきますっ、ふんっ!」
気合一声、両手に力を込める桃香。すると、
かざした手の平がぼんやりと光る。同時に患部から肉が焼けるような音がし、
「今です、抜いてくださいっ!」
血に濡れた鏃が現れると同時に予測していた大量出血、が、無く。桃香の手の光の下、傷口がみるみる内に塞がって消えてしまった。
桃香、愛紗、鈴々の三人以外は、夢物語のような今の現象に呆然としていた。
「…ご主人様、これが見てほしかったこと、です。」
「あ、あぁ、…待てよ、これならっ」
「いえ、被害者全員を治すのは無理ですっ。以前桃香様が大きな切り傷にこの力を使ったらそれ一回だけで寝込んでしまって…」
見れば桃香の息が荒い。
「っ、…じゃあ、どうしたらっ…!」
そもそも生存者を探しても手当ての道具も何も無い。
八方手詰まり、だった。
そんななか、、
「そこの君達どうしたっ?!怪我人か、賊に襲われたのかっ?!!」
…なんだか熱血、悪く言えば暑苦しい声が轟いた。
「っ?!誰だ!賊の仲間か?!」
青竜偃月刀を構えた愛紗。
「む、おれかっ?」
黒いノースリーブの上に白を基調としたコートのようなものを着て、背景の夕日のように赤い髪をした人物は、鋭い気を放つ愛紗と、その後ろの一刀を始めとした全員に向かって言い放った。
「おれは医者だっっっ!!!」
一泊置いて、
「華陀〜、患者に響くからうるさいのはダメ、って言ってますわよね〜?」
ちょっと、辛辣な突込みが加わった。
あとがき
花天に響く想奏譚 <第3話 Twilight Beast>、…って、
かっこよくないかなっ!!!!
と、どうも名前だけはいっちょまえな華狼です。
さて今回ようやく戦闘描写を書きましたが面白いですねやっぱり。難しいという方も多いですが私はあまり悩みませんでしたがどうでしょう私のは。
色々と技の名前出したりもしましたがどうでしょう私のセンス。…間違ってます?変です?
そのあたりの感想が欲しかったり。
あとついに華陀が登場しましたしかもなにやら誰かが一緒。誰かは次で分かります。
それと朱里・雛里の他もう一人のことも次で分かります。
最後は駆け足になりましたがなんとかまとめられた、筈。多分。
では、長くなりましたがこの辺で。
PS,一刀の手甲に関しては、
・素材はカーボンナノチューブ(CNT)を基本素材とする
(鋼鉄の20倍の強度、のくせに重さはアルミニウムの半分、というもの)
とだけ言っておきます。
PSのPS 実在しますよ?
説明 | ||
第3話です。 大暴れ、します。 そしてついに彼が登場。 |
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2515 | 2006 | 24 |
コメント | ||
胡蝶さん 他の方の強化設定もこんな感じでは。まぁ私のは気での強化なんてのは一切してませんが。あとちょっと待って死んでませんよ。(華狼) 一刀君、圧倒的すぎる…どんだけ強いんだ…そしてザコ三人の内の一人アニキがせめて安らかに眠りますように…(胡蝶) 断罪者以下略さん …気が動転していた、ということでお願いします。 今度からセリフもう少し考えますね。(華狼) 賊がご丁寧に「賊に襲われたのか!」なんて言うかW関羽考えようぜ(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ) 劉邦柾棟さん やりすぎ、ましたかね…。 因みにある要素が絡んでいますが、純粋な体術です。(華狼) トトクロさん アリ、と言ってもらえて歓喜してます。 華陀の件に関してはプロローグを参照。(華狼) すげえwwwwwww!? 一刀カッコイイwwwwwww!?(劉邦柾棟) んー自分的にはアリかな?w あと、コノ時点で医者王の前世での医療知識戻ってるのか気になりますね〜^^(トトクロ) readmanさん そう言ってもらって嬉しいです。やりすぎたかなって思ってましたが。(華狼) カッコいいです!(readman ) |
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