学園祭ぱにっく! その3(聖霊機ライブレード)
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      ★学園祭ぱにっく その3(完結編)★

 

 

 

 

狭い視聴覚室はすでにたくさんの人でごった返していた。暗幕を引いて締め切ってあるせいか、妙な熱気と息苦しさを覚える。

 

「男の人が多いわね」

 

 カスミが小声でアイに囁いた。

 

「つーか女子ってウチらだけじゃん;」

 

 アイも呆れた声を出す。

 

 部長の晃一郎が簡単な挨拶をして、上映会が始まった。

 

 大型のプロジェクターに写し出されたのは、画面狭しと暴れまくるロボットたちだった。晃一郎のシュミ丸出しの上映会であった。

 しかし、集まった客たちは皆同好の士なので、教室内は異様な熱気に包まれていた。いちいち沸き起こる拍手と妙な雄叫び(?)に、トウヤたちは呆気にとられた。

 

(なんかオレらだけ浮いてるかも;)

 

 トウヤがそう思ったとき、隣でフェインが咆哮を上げた。

 

「トライダーB7はイカすのだーーーーーーーーーっ!!」

 

 トウヤたち一行の中でフェインだけは、それはそれはこの場によく馴染んでいた。

 

(そーか、コイツもこーゆーノリが好きだったよな)

 

 終始叫び続けるフェインを横目で見つつ、トウヤは耳を塞ぐのだった。

 

上映会が終わり視聴覚室を出ると、さっそくアイがぶーたれた。

 

「なによー、あの異様なノリはー?」

 

「色気のカケラもない映画だな」

 

 ローディスもため息をつく。

 が、フェインだけは瞳をキラキラと輝かせ、いまだ興奮冷めやらぬといった様子であった。

 

「どーだった? 結構リキ入れて作ったんだけど」

 

 そう言って近づいて来た晃一郎に、フェインが駆け寄った。

 

「サイコーだったのだ」

 

「ホント?」

 

「ああ。とくに、ダンクーマとマジンギャーX、それにガンドムの三つ巴のバトルが燃えたのだっっ!!」

 

「やっぱりそう思う?」

 

「ああ!」

 

 堅い握手を交わし、妙なテンションで盛り上がる晃一郎とフェインを、トウヤたちは遠巻きに眺めた。

 

「ロボットおたく同士気が合いそうだな」

 

 ボソリと呟くトウヤであった。

 

「さて、次はどこへ行く?」

 

 トウヤが一同を見回すと、アイがハイッと手を上げた。

 

「学園祭の定番、お化け屋敷っしょ」

 

「お化け屋敷?」

 

 セリカがキョトンとした顔で小首をかしげた。

 

「そっvv 度胸だめしみたいなモンよ」

 

「面白そうね。行きましょう」

 

「ええ」

 

 セリカとユミールが興味津々というふうに頷いた。

 

「よし、行くか」

 

 そして、一行はお化け屋敷へと向かうのだった。

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薄暗く足元さえも覚束ない闇の中をトウヤたちは歩いていた。

 

「ヤダ・・・なんにも見えない」

 

 カスミがか細い声を出した。

 

「カ、カスミ、て、手を出すのだ。オレが手をつないでやるのだ」

 

「フェインくん・・・ありがと」

 

「なんのこれしき。ん? カスミの手は、意外とガッシリしているのだな」

 

「てめー・・・放せよ、気色わりィ;」

 

「はぅっ!?」

 

 カスミの手だと思ってしっかり握っていたのは、トウヤの手だった。

 

(な、なんたる不覚・・・フェイン=ジン=バリオンともあろうものがよりにもよってヤローの手を握ってしまうとは・・・・・・)

 

 照れ隠しのために走り出したフェインの顔に、ペチャリ、と生暖かいものが触れた。

 

「ひぇーーーーーーーーーーーーっ!!」

 

 

 仕掛けのコンニャクだった。

 さらにパニックになって駆け出すと、前方から青白く光る人魂が飛んで来た。

 

「ギョエエーーーーーーーーッ!!」

 

 フェインは口から泡を噴き、なりふり構わず絶叫した。いったいどこをどう走って来たのか覚えていないが、漸く出口に辿り着いた。僅かに漏れる外の明かりに、夢中でお化け屋敷から転がり出た。

 半べそをかいて壁に寄りかかったフェインをアイが呆れ顔で見つめる。

 

「ちょっと、あんた。アガルティア騎士団が聞いて呆れるわよ」

 

「う、うるさいのだ。怖いものは怖いのだっ!」

 

「フェインくん、大丈夫?」

 

よせばいいのに、カスミが寄って来てそう声をかけたものだからたまらない。フェインのなけなしのプライドは、今度こそズタズタになった。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 いきなり雄叫びを上げると、ものすごい勢いで走って行ってしまった。

 

「あ・・・!」

 

「カスミ・・・こーゆーときはね、そっとしといてあげなきゃ」

 

 セリカが深〜いため息をついた。

 

「どうしよう、トウヤ。フェイン、行っちゃったよ?」

 

 セリカの言葉にトウヤもため息をついた。

 

「放っとけって。ハラが減ったらそのうち帰ってくるさ」(←犬かい;)

 

 

 

(うおおおおおおおっ、カスミの前でなんたる失態。おのれー、自分っっ)

 

廊下を走り抜けながらフェインは自分自身に猛烈に腹を立てていた。ただでさえ分が悪い片想いだというのに、これではさらにライバルに水をあけられてしまうではないか。

 

(日々のトレーニングは欠かさず行っているというのに・・・・・・なぜなのだ?)

 

 そういう問題ではないのだが、フェインには合点がいかなかった。このままでは終われない。いつまでもヘタレているワケにはいかなかった。

 驚異的な速さで立ち直ったフェインは、急ブレーキをかけるとくるりと踵を返した。

 

(一刻も早くアガルティアに帰って特訓なのだ)

 

 そう決心すると、グッと拳を握りしめるのだった。

 

 

 

「私、フェインくん捜してくる」

 

 罪悪感に苛まれて捜しに行こうとするカスミをアイが止めた。

 

「大丈夫だよ。そのうちひょっこり帰ってくるって」

 

「でも・・・・・・」

 

「あ、フェインだわ」

 

 セリカの声に一同が振り返る。

 見ると、フェインがゆっくりとこちらに歩いて来るところだった。暢気に口笛など吹いている。

 

「よかった」

 

 カスミがホッと胸を撫で下ろす。

 

「ったく、人騒がせなヤツだな」

 

 トウヤが言うのにフェインはフンと鼻を鳴らした。

 

「トウヤ、来年も学園祭に呼ぶのだ。来年こそはお化け屋敷を克服してやるぜ」

 

「ら、来年って・・・おまえ、オレに留年しろってゆーのかよ?」

 

 呆れ果てたトウヤにはお構いなしに、フェインは後ろを向き、誰にともなく指を差して宣言した。

 

「見ているがいい、お化けども! 今回は敗北したが次は貴様らが苦汁をなめる番だ。騎士には一度見た技は通用せんのだっっ!! ガーッハハハハハ」

 

(ワケわかんねー;)

 

 一同はげんなりして、高笑いをするフェインの背中を見つめるのだった。

 

 

 

 小一時間後、時間ですとフォルゼンがセリカたちを迎えに来た。

 

「今日はホントにありがとう。すっごい楽しかった♪」

 

 セリカはアイとカスミに礼を言うと、名残惜しげに抱き合った。

 

「今度はアガルティアのお祭りにみんなを招待したいわ」

 

「うわー、楽しみにしてる!」

 

 セリカの言葉に、アイもカスミも瞳を輝かせる。

 

 

 

 

 

 アガルティアと地上世界------------

 

 この二つの世界はとてつもなく遠くて、けれど案外近いのかもしれなかった。そう、みんなの心が繋がるくらいには・・・・・・

 

 

 

 

                      〜終わり〜

説明
『学園祭ぱにっく 全3回』も今回で完結ですvv
その1から読んで下さった方がいらっしゃったら本当にありがとうございましたm(__)m
 その昔、同人誌で出したものですが、マイナージャンルなため、あまり世に出ていません。少しでも、陽の目を見せてやろうとこちらに投稿させて頂きました☆彡
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コメント
>akie coさん  そうですね〜^_^; そっちのほうがリアルで怖いかもですね。(いず魅)
次は遊園地のお化け屋敷で我慢してもらうしか(akieco)
タグ
聖霊機ライブレード 学園パラレル フェイン 

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