真・恋姫†無双 ~君思うとき、春の温もりの如し~ 14話
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【曹操 side】

私は今遠征を終え、一度許昌の街に戻ってきた。

袁紹、麗羽との戦いで手に入れた広大な土地の平定に出ていたが、

ある程度目処が立ったので、他のところは部下の将達に任せ一度戻ることにした。

許昌に着くと、留守を任せていた夏侯淵こと秋蘭が私たちを出迎えた。

そして王座の間で私が留守中の報告を聞くこととなった。

城の文官の者たちがそれぞれ報告し終え、最後に秋蘭の報告となった。

「秋蘭、なにか報告することはある?」

「はい、董卓との戦いで行方不明になったいた呂布なのですが、ようやく足取りがつかめました」

呂布、彼女の武はまさに最強と言っても良い。

虎狼関の戦いでも彼女の圧倒的な力の前に、麗羽の軍は蹂躙されていた。

あの時、こちらに呂布がこなくて良かったと思ったわ。

 

「それで、その呂布は今どこにいるの?」

「劉備の収める徐州です。

 その山の中にある砦に元董卓軍の者達とこもっている様です」

「そう、徐州に……」

徐州は河北を平定したら手に入れようと考えていた所だ。

「それ厄介ね」

劉備は兵の数は少ないが優秀な将がたくさんいる。

劉備自身は武力も知能も凡人だが、すべてを包み込む人徳がある。

あの優しさはこの乱世で民達にとっては希望の光。

それが単なる甘言とも知らずに民はついて来る。

そこに最強の呂布が加われば、勢力で上回る私達でも劉備を打ち破れないだろう。

「呂布が劉備と手を組んだら面倒だわ」

「それでは私に考えがあります」

そう言ったのは、我が軍の軍師である荀ケこと桂花である。

「では、その考えとやらを聞かせてちょうだい」

「はっ。まずは……」

桂花は劉備と呂布を引き離す策を語りはじめた。

【曹操 side end】

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【関羽 side】

諸葛亮こと朱里の急の召集で、私たちは謁見の間に集まった。

どうやら曹操のところから使者が来たとのことだ。

曹操と言えば先の袁紹との戦いで、兵数の不利を跳ね除け勝利した。

その力を持って曹操は大陸を手に入れようと考えているのだろう。

そして、今後我らの理想の前に立ちはだかってくるであろう。

使者としてやって来た男は挨拶を終えると封書を取り出しこちらに渡した。

王座に座った劉備こと桃香様は封を切り、中の書状を読むと、

「こ、これは詔勅!?」

周りの者たちがその言葉にどよめきを起こす。

「はい。劉協陛下より、徐州の砦にこもる呂布を討てとの命でございます」

そう言い終えると使者の男はこれでと一言いい部屋から退室した。

 

「朱里!徐州に呂布がいるというのは本当なのか!?」

「…はい、報告はあがってきいました。

 桃香様にも言ったのですが、呂布さんは山の中の砦にこもったきり特に何をするでもないので、

 刺激しないようにそのままにしておいたのです」

私が呂布のことを聞くと朱里はそう答えた。

「……どうするのだ?朱里よ。

 虎狼関で奴と戦ったが、私と鈴々、星の3人でようやく攻撃を防げたのだぞ。

 正直奴とはもう二度と対峙したくないな……」

あの力は正しく天下一。

私も鍛錬に励み、あの頃より力をつけたつもりだが、それでも勝てるか……

 

「…一度、呂布さんと会ってみようと思う!」

何やら考えていた桃香様がおもむろに立ち上がると叫んだ。

「危険です!もしものことがあったらどうするのですか!」

「でも、月ちゃんや詠ちゃんが、呂布さんはとてもいい子だって言ってたよ」

月と詠というのは董卓と賈駆のことである。

董卓は洛陽で悪政を働いていると言う事で連合が組まれ、討伐に向かったのだが、実際は十常侍の生き残り張譲が悪政を行っており、董卓は隠れ蓑であった。

洛陽に突入した私たちのところに来た董卓と賈駆は本当のことを話し、保護を求めてきた。

心優しい桃香様は当然2人を受け入れた。

しかし、世間では董卓は悪者だと言う事で、2人には名前を捨ててもらい真名を名乗ってもらうことと成り、

今は桃香様付きの侍女をしてもらっている。

「しかしですね……」

それから私達はあれこれと話し合い、一週間が経過した。

結局、桃香様は意見を曲げず、呂布と話し合いをすることとなった。

「大丈夫だよ。もし危ない目に会っても愛紗ちゃん達が守ってくれるでしょ!」

そう言われてしまったは反論も出来ない。

しかし今思えばこの一週間という時間が命取りだったのかもしれない……

【関羽 side end】

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【曹操 side】

「では、その考えとやらを聞かせてちょうだい」

劉備と呂布とを引き離す考えを皆に聞くと、桂花がそれに答えた。

「はっ。まずは劉協陛下に劉備宛の詔勅を書いてもらいます。内容は『呂布を討て』と。

 勅命となれば王朝への忠誠心も篤く、自身を中山靖王の末裔と名乗っている劉備は動くことでしょう。

 あれほどの武を持つ呂布とぶつかれば劉備とてただではすみません。

 そうすれば我等は簡単に徐州を手に入れることができるでしょう。

 ……もし劉備が動かないのであれば、それを理由に徐州へと攻めることが出来ます。

 これぞ正しく『二虎競食の計』でございます」

一気に考えを話し終え桂花はふうと小さく息を吐きこちらを見た。

「二虎…劉備と呂布という二匹の虎を互いに競わせるのね。

 面白い。その策、採用するわ」

「ありがとうごさいます!」

緊張していた顔をしていた桂花は、私の答えを聞くと花が咲いたように笑った。

「でわ、早速準備にとりかかるわ」

そう言うと王座の間を出、私は城の一番奥の部屋に向かった。

「陛下、お願いが御座います」

扉の部屋を開けると、中は昼だというのに薄暗く静かであった。

部屋の隅に人影を見つけ声を掛ける。

「陛下、徐州の劉備に書状を書いてもらいたいのです。内容は……」

劉協陛下に先程の桂花の考えにのっとった内容の書状を書くように伝えると、陛下はのそのそと机に向かい硯に墨を磨り始めた。

陛下の目はまだ子供だというのに、希望を無くした瞳をしていた。

私は書き始めたのを見ると、逃げ出すように部屋からそそくさと出て行った。

洛陽で保護し、許昌に来てから陛下は部屋にああやって明かりもともさず閉じこもっている。

しかしそれも仕方が無いだろう。

王宮内の覇権争いに巻き込まれ、家族をなくし十常侍の傀儡とされていたのだ。

まだ幼い陛下にとってその傷は大きいだろう。

何とかしてやりたいが、

「……何を考えているのよ、曹孟徳。私も結局同じではないか……」

乱世の奸雄と言われる私が何を甘い考えを。

劉備に影響されたのかしら。

それとも、同じ女であるところから来る同情かしら……

少しの考えた後、その雑念を振り切るように私は自分の政務室に向かった。

【曹操 side end】

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ということで14話でした。

今回は華琳と愛紗の視点で話を進めました。いかがだったでしょうか?

最初は愛紗ではなく桃香の視点にしようかなと思ったのですが、桃香はみんなのことを「ちゃん」付けで呼ぶので、いちいち書くのめんどうだなと思い、劉備陣営の中で桃香に最も近い愛紗をかわりとしました。

 

話のなかで出てきた「二虎競食の計」ですが、あれは演義で実際に荀ケが進言した策です。

その時はまだ官渡の戦いも起こっておらず、袁紹も袁術も健在でした。

その後この策は失敗に終わり、続いて荀ケは袁術も巻き込んだ「駆虎呑狼の計」を考えますが、それも失敗に終わります。

なので時期的に「二虎競食の計」が出てくるのはおかしいのですが、面白い策なので出してみました。

 

続いて劉協の話。

劉協は女の子です。

まだまだ子供という歳ですが、王宮の事で心に深い傷を負い、生きる気力を失っています。

そんな彼女に希望が戻る日は来るのでしょうか。

 

最後に、気がつけばお気に入りの登録数が150人を突破しました!

これもいつも読んでくださる皆様のおかげです。

本当にありがとうございます。

特に何も有りませんが……200人を越したらまた偽演義を書こうかなと思います。

越すかな?200人……

説明
拠点から切り替わり14話です。
今回は曹操陣営と劉備陣営の話となっております。
なので、呉の方々は出てきません。
主人公なのに一刀も出てきません…
でも本編です。
ではどうぞ!
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タグ
真・恋姫†無双 曹操 華琳 荀ケ 桂花 劉備 桃香 関羽 愛紗 

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