真・恋姫無双SS 〜この地に生きるものとして〜 第4話「力のあり方」 |
真・恋姫無双SS 〜この地に生きるものとして〜
第4話「力のあり方」
一刀がここを出て行って半年、
それを追う用にして、趙雲、張遼が半月前にここを旅立っていた。
「ここも随分と寂しくなったものね・・・」
旅立っていった弟子達の事を師であった女性は思い返していた。
3人共、武に関してはもはや教えるべきことはなかった。
後は精神面をどうやしなっていくか、
3人ともまだまだ成人といわれる年齢には程遠い。
精神面はこれから世を知っていくなかで育まれて行く、
世を知り、人を知り、そのうえで自身が立つ理由を考えてほしかった。
自身が弟子と認めた者達だ、我欲だけに武を奮うような事はないと信じている。
世の乱れを憂い庶人為に武を奮ってほしいそんな願望があったが、
それを強要することはしたくなかった。
そんな事をぼんやり考えていると外から人の呼ぶ声が聞こえてきた。
「師匠〜、おられませんか〜・・・」
「この声は一刀?あの子は半年も前に益州に帰ったはずだけど?」
そういって戸を開けると、
そこにはすこしやつれた感のある一刀が見知らぬ黒髪の少女を連れて立っていた。
「そう、ここを出てからそんなそんな事が・・・・」
話を聞き終え、師は関羽の方に視線を向けた。
「それで貴方が私に弟子入りしたいという・・・」
「はい、姓を関、名を羽、真名を愛紗と申します。
なにとぞ、私に武のご教授を・・・」
そういって深々と頭を下げる関羽。
その様子を見つめながら師が問う。
「ここで武を得て何を成そうというの?」
「賊に怯える庶人の為、私の様な者を出さぬぬ様にする為に力を奮いたく」
「一度でもその手を血で染めれば、元の暮らしには戻れない。
その覚悟が貴方にある?」
師の言葉に横で聞いていた一刀が顔を俯かせるが、
その様子に関羽は気づくこともなく答える。
「それで、涙に暮れる者が一人でも減るのならば」
関羽の瞳には確固たる意志が感じられる。
しかし、その意思はあまりにも頑なで、危うい。
そう感じた師は、試験をすることにした。
「・・・・それじゃあ、貴方の決意を確かめさせてもらいましょうか。
一刀、龍爪を貸してもらえる?」
言われるままに、脇に置いていた双剣を差し出す一刀。
師はそれを受け取ると立ち上がり、二人に付いて来るようにと言って外に出て行った。
二人もそれに続き外へ出る。
庵から少し離れたところで、師が振り返り関羽に龍爪の片方を手渡した。
「関羽、その剣で一刀を斬りなさい」
「・・・・・・・!?」
関羽は言われた言葉が理解できなかった。
今、目の前の女性はなんと言った?
「聞こえなかった?
一刀を、隣にいる男を斬れといったんだけど・・・」
「で、できません!
大恩ある義兄上に刃を向ける事など」
「できないと言うなら弟子入りは認められないわ」
感情的に叫ぶ関羽に師は冷淡にそう言い放った。
「簡単な事じゃない。
人を一人を斬るだけで、貴方は望みは叶うのよ?
私の教えを受ければ貴方は幽州一の・・・
いえ、大陸一の武を手にすることができる。
その対価としては破格の条件じゃないかしら・・・」
剣を持ったまま震える関羽に師は甘く囁く様に言葉を続ける。
「貴方は私に言われて仕方なく一刀を斬るの。
貴方に責任はないわ、斬られる一刀も貴方を恨むことは当然ない。
力を得たいんしょう?庶人を救いたんでしょう?
・・・さあ、剣を抜きなさい!」
師の言葉に関羽は剣を抜いてしまう。
しかしながら、剣を持つその手は震えたままで、
構えも定まっておらず、目もどこか虚ろ。
「そう、それでいいの。
すべては庶人の為、仕方のない事なの」
「庶人の為・・・仕方ない事・・・・」
うわ言の様に囁かれた言葉を繰り返す。
まるで幻術にでも惑わされたかの様に虚ろな関羽。
その目には先ほどまであった意思の光はなく、
ただ呆然とその手に持った剣を見つめている。
「さあ、眼の前の男を斬りなさい」
言われるがままに剣を振りかぶる関羽。
そんな状況の中、一刀は逃げようともせず関羽の瞳を見つめたまま立ち尽くしている。
振り下ろされる剣、それが一刀の体にあたろうかという寸前・・・
「だ・・・だめ!!!」
関羽の叫び声が辺りに響き渡り、振り下ろされた剣も止まっていた。
先ほどまで虚ろだった関羽の目には光が戻っている。
「たとえ何の為であっても・・・無抵抗な人に・・・剣は振るえない・・・
そんなの賊とかわらない・・・」
息も絶え絶えにそう言った関羽が膝から崩れ落ちそうになったところを
一刀が抱きとめる。
「関羽、貴方の願い、そして術にも屈せぬ強い心、
認めましょう、武を持つに相応しき者よ」
薄れ行く意識の中で関羽は自身が認められた事を確かに聞いたのだった。
「一刀、星達が使っていた部屋が空いてるから、彼女をつれてってあげて」
一刀は無言で頷くと意識を失っている関羽を抱き上げ、
関羽の落とした剣をそのままに走り去る。
その剣を拾い上げた師は走り去る一刀の後姿を見ながら小さなため息をこぼすのだった。
関羽を寝かせた後、師と別室で向き合っている一刀。
関羽が師に認められた後だというのにその表情は浮かない。
それに対する師の表情もどこか硬さが感じられる。
しばらくの間無言で向かい合っていた二人だが、
その沈黙を師の方から破った。
「関羽に斬りかかられた時、あなた硬気功を使ってなかったわね」
攻めるような師の確認に一刀は視線をそらす。
「関羽が刃を止めると信じていた・・・
ちがうわね、迷っていたといったところかしら」
再度問いかけるも一刀は一向に視線を合わせようとしない。
その態度に師は深々とため息をつく。
「初めて人を殺した事に嫌悪感を抱いている、
それに自分がもっと早く村に着いていれば多くの人を救えたはずと後悔している・・・
以前にも教えたわよね、人は万能じゃないって」
愚図る幼子をあやす様な表情で語る師に、一刀が視線を上げて叫ぶ。
「しかし、あと一刻でも早くついていれば、
俺に養母の様な医術がつかえていれば多くの人が救えたんです。
それに盗賊達にしたってあんな無残に首を斬り落とさなくたって、他にもやりようが・・・・」
そう言って悔しそうに唇をかみ締める。
「多くの人を救えなかった、多くの人を無残に殺した自分なんかに生きる価値があるのか?と
それで関羽に斬られてしまってもいいと?まったく・・・・・・・あまったれるな!!!!!!」
師の怒号が響き渡る。
「一刀が弟子入りした時に教えたわよね?
力を持つという事がどういう事か、そして自身の力が起した事から逃げてはいけないって。
思い悩む事はかまわない、考えない者に進歩などないのだから。
でも、結果が自身の望むものでなかったからといって
安易に死を選択肢に入れる事は許さない!
助けられなかった事を、殺した事を悔やむなら、それを背負い生き続けなさい!
死んでいった者達の分まで・・・それが力を持つ者の義務よ」
そう言ってから一刀を抱き寄せると頭をやさしく撫でた。
「それに救えた命もあったでしょう?
一刀がいなければ関羽もきっと死んでいた・・・
失われた命を嘆くのもわかるけど、それ以上に救えた命を誇りなさい。
貴方は他人に褒められる事をしたのよ」
そういって優しく諭す師の腕の中で、一刀は静に涙を流した。
【補足】
一刀達の師匠について少し補足説明を
すでにわかっている方もおられると思いますが、
恋姫無双シリーズには出ていない武将、呂布、張遼が使えたあの方が元です。
オリジナル設定として、
朝廷に武官として仕えていた時に
一刀の養母や荊州で私塾を開いているあの方と知り合っています。
戦傷を理由に職を辞して田舎に引きこもりましたが、
戦傷の影響はたいしたことはなく、それよりも王朝の腐敗に嫌気がさしたというのが
官職を辞した主の理由です。
その為、世を憂いており、
才と志ある若者を弟子にとり育てています。
その実力についてですが、師≧呂布(恋)と言った感じです。
また気の扱いにも秀でており、気弾や硬気功といった武術要素の他に
今回、関羽(愛紗)に使った人の心を惑わす幻術も使えます。
しかし、この幻術は戦闘時など気が高ぶっていると使用できず、
また相手が気についてある程度使いこなせていれば容易に防がれてしまうものです。
(この術については弟子の誰も教えてもらってません)
つづいて一刀について少し
卒業の証として双剣”龍爪”をもらった事からわかるように
師の元で剣術、その他に体術や気の扱いを学びました。
しかしながら一刀は気を体外に放出することが苦手で、楽進(凪)の様に気弾を飛ばす
ことはできません。医術が使えないのもこのせいです。
以上、簡単ではありますが補足説明でした。
今後についてですが、もうしばらく幼少編が続くかもしれません。
いきあたりばったりな展開ですが、今後ともよろしくお願いします。
それではまた。
説明 | ||
第4話になります。 最後に補足を少し書かせていただいています。 ※H23.10.26 誤字修正しました。 |
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コメント | ||
kyon様 誤字指摘ありがとうございました。即刻修正いたします。(SYUU) 誤字報告>3pの「それで、涙に暮れる者が一人でも経るのならば」→「それで、涙に暮れる者が一人でも減るのならば」じゃないですか?(kyon) 執筆お疲れ様です。やっと師匠が解りました。これから、愛紗がどこまで成長するのか楽しみです。 次作期待(クォーツ) |
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真・恋姫無双 北郷一刀 愛紗 | ||
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