真・恋姫†無双 ~君思うとき、春の温もりの如し~ 15話 |
【関羽 side】
呂布と話し合いをすることと決まり、我らは出発の準備に取りかかった。
するとそこに朱里が急いだ様子でやって来て、
「た、大変でしゅっ!そ、曹操さんが!」
「どうしたの朱里ちゃん!?」
朱里は大きく呼吸をし息を整え、
「曹操さんがこちらに攻めてきました!」
「何だと!?」
私は急な知らせを聞き、思わず叫んでしまった。
朱里は私の声に縮こまりながらも話を続けた。
「はわわ〜。どうやら呂布さんと戦わない私達にしびれを切らして攻めてきた様です……」
確かに呂布討伐は勅命。
「しかし、たかが一週間動かなかっただけで攻めて来るものなのか!?」
「…多分きっかけが欲しかったのでしょう。
曹操さんは我らの収める徐州を欲していたのでしょう。
だから命令違反を口実に攻めてきたのでしょう……」
そういうと朱里は「私がもっとしっかりしていれば…」と唇を噛み締めつぶやいた。
我が軍のもう一人の軍師、?統こと雛里もかぶっている幅広の帽子のつばで顔を隠し悔しがっている。
「朱里ちゃん!どうしよう!?」
「……伝令の人の情報によると曹操軍の数は10万。
私たちの方はどんなに頑張って集めても3万そこらでしょう」
桃香様の問いに答えた朱里の答えはまさしく絶望的なものであった。
3倍以上の戦力差…
たかが賊であったのならこれぐらいの数の差などどうということはない。
しかし相手は現在袁紹を倒し、河北最大勢力となった曹操である。
その曹操とぶつかれば我らなどひとたまりもない。
「どうすれば……」
私が諦めたようにつぶやくと、
「……曹操さんに会おう。あって話をしよう」
桃香様が皆の顔を見てつぶやいた。
「きちんと話し合えば曹操さんも分かってくれるよ!」
そう言うと桃香様は部屋を飛び出し、曹操に会いに行く準備をはじめた。
私もそれに続こうとすると朱里に呼び止められた。
「どうした、朱里?」
「……もしもの時は桃香様の命令を無視してでも止めてください。
桃香様の理想のためにはここで倒れるわけにはいかないのです」
そう言うと朱里は部屋からそそくさと出て行った。
分かっている。
桃香様の理想は素晴らしいものだ。
しかし、同時に脆い部分もある。
そこを補うのが我ら家臣の勤め。
我が命に変えても桃香様を守る。
そう誓い、私も続いて部屋から退出した。
【関羽 side end】
【曹操 side】
私たちは徐州の国境を守る砦を落とし、劉備たちの構える城へと向かっている。
すると斥候に出していた兵が戻ってきて報告をはじめた。
「報告します。劉備軍は城から出て平野に陣を構えています」
「……どういうことかしら?」
わざわざ城から出ることに不審に思った私は桂花に聞いてみた。
「分かりません。何かの罠でしょうか……」
劉備軍にはどちらかを手に入れることが出来れば天下が手に入ると言われる伏龍・鳳雛こと諸葛亮と?統がいる。
彼女たちの何か策かしら。
「どうような罠がこようとも私が食い破ってくれる!」
自分の得物である大剣を肩に担ぎ夏侯惇こと春蘭はそう言い、豪快に笑った。
「頼もしいわね春蘭。期待してるわよ」
私が労うと、「はい!華琳様!」と笑顔で答えた。
フフ、可愛い娘。
そうしている内に劉備が構える陣に近づいてきた。
私は馬に乗り前に出て叫んだ。
「劉備よ!今回の勅命になぜ背いた!貴様は漢王朝の真の家臣ではないのか!」
すると劉備も前に出てきた。
「違います!聞いてください曹操さん!
私は呂布さんと話し合いをしようと思っていたところなんです!」
「話し合いであの呂布が納得するはずが無い!」
話し合いなどという甘いことを言う劉備に、私は言葉を続けた。
「勅命は『呂布を討て』である!その勅命を無視して話し合いなど!」
「私は!…私は戦わないで済む方法を考えていただけです!」
「フフ……」
もう我慢ならないわ。
「はははははは!何を甘いことを言う劉備よ!
この乱世でそのような考えが通用するはずが無い!」
「いいえ、人は必ず仲良く出来ます!
戦わずに手と手を取り合えば、乱世の世もきっと終わります!」
「……どこまでも甘いのね。いいわ、私も本音を言うわ。
勅命なんてただの口実よ。私はこの徐州が欲しいの!
そしてここを足がかりに大陸を私は治めてみせる!
今本当に必要なのは絶対的な力を持った指導者なのよ。そんな甘い幻想ではないわ!」
私はそう言い終えると自分の得物、絶を振りかざし叫んだ。
「もはや話し合いは不要。あなたはここで散りなさい、劉備。……全軍突撃!!」
「「おおぉぉぉおお!!!」」
絶を振り下ろすと、合図を受けた我が軍は一斉に劉備軍へと突撃を開始した。
すると、劉備軍は一斉に退却をはじめた。
最初から戦わない気なのね。
劉備を英雄と評価したけど、どうやら違ったようね。
やはりいくつか罠をしかけていたらしく、私たちの兵は足止めをされた。
しかし罠をくぐりぬけた兵たちによって、劉備軍の殿は見る見る内に削られていく。
それを眺めていると伝令がこちらにやって来た。
「大変です!冀州で袁家の残党が反乱を起こしたとのことです!」
まだ私に歯向かう者がいたのね。
この遠征はあせりすぎたかしら。
「分かったわ。冀州には秋蘭と季衣、凪、真桜、沙和が向かいなさい。
春蘭と流琉は引き続き劉備を追いなさい。ただし深追いしなくていいわ。
他の者は私と一緒に城に入るわよ」
秋蘭達は冀州に戻る準備を、春蘭達は劉備を追う準備をし終えるとそれぞれ目的地へと向かい、私は他のものを引き連れて城に入ることにした。
【曹操 side end】
【関羽 side】
「やめてーーー!!!」
攻撃を指示する曹操に向かって桃香様は叫ぶが、その声はもう届かない。
「桃香様危険です!」
そう言い私は桃香様の腕をつかみ撤退した。
陣に戻ると朱里達は事前に打合せていた通り逃げる準備を終えていた。
「罠を仕掛けましたが、正直あまり効果は無いでしょう……」
「いや、今は時間が惜しい。早速出発するぞ」
朱里の報告を聞き、私達は徐州脱出を決行した。
「では、改めて作戦を説明します。まずはあの森に逃げ込みます」
走りながら朱里は前に見える森を指さした。
「そこで二手に分かれます。一方は旗を降ろしそのまま森を突き抜けます。
そしてもう一方は旗手に旗を二本持たせ兵が多いように見せます。
そしてできるだけ目立つように逃げてください」
そう言うと朱里は少し顔を歪め続きを語った。
「そして旗を持った方に敵の目が向かっている間に本隊は呉を通り、劉表様の治める荊州に向かいます。
劉表様は同じ劉姓で、反董卓連合の時も何かと桃香様を気にかけてくださいました」
「……ちょっとまって!囮になる方はどうなるの!?」
先程まで黙っていた桃香様がはっと顔を上げ朱里に聞いた。
「それは……」
朱里が言わなくてもみんな分かっている。
囮の方は助からないだろう。
「では、その役、目私が行おう」
朱里の話を聞き、私は囮の役目をかってでた。
「っ!だめだよ愛紗ちゃん!みんなで一緒に逃げようよ!
何か他に策はないの!?朱里ちゃん!雛里ちゃん!」
「これしか無いのです。分かってください桃香様。
それに私は簡単には死にません。ですから安心してください。きっと荊州で再会しましょう。
鈴々、後は任せたぞ!」
桃香様は私の腕をつかみ離さなかったが、私はその手を無理やり解き義妹の張飛、鈴々に桃香様を預けた。
「任せるのだ!だから愛紗も必ず帰ってくるのだ!」
鈴々たちに見送らえ私は準備に取り掛かった。
「…絶対だよ……」
鈴々に抱き抱えられるようにしていた桃香様がそうつぶやいたが、私はこたえることが出来なかった。
「……では、行ってくる」
森の中に入った私達は朱里の策を実行した。
曹操軍でなにかあったのか、一度追撃の手が緩んだのでその隙に策を行うことが出来た。
桃香様たちが逃げた方向と別の方向に旗を多く掲げ走ると、曹操軍は桃香様たちには気が付かずにこちらにやって来た。
「しめた。よし!我等も逃げるぞ!」
自分の兵達にそう言い我等も南を目指し走った。
しかしいくらかあった距離も縮まって、もう駄目だと思ったとき、
「関羽将軍大変です!」
「どうした!?」
「後方から新たな旗が!し、深紅の呂旗です!」
「何だと!?」
深紅の呂旗、つまり呂布が現れたということか?
くそっ、こんな時に!
「それで、呂布の動きは?」
「それが曹操軍に一当した後、戦場を離脱!
どうやら我等のために時間稼ぎをしてくれたようなのです」
「なぜ!?」
なんで呂布は私たちのために時間稼ぎをしたんだ?
……いや、今は呉へと逃げるのが先だ。
曹操軍は呂布の強襲で混乱したのか、距離がまた開いた。
「よし!この隙に一気に逃げるぞ!呉は目の前だ!」
もう少しで呉との国境に差し掛かる。
その時、目の前に風にはためく『孫』の文字が見えた。
【関羽 side end】
【劉備 side】
「その役目、私が行おう」
愛紗ちゃんが私たちのために囮役をかってでた。
私は愛紗ちゃんを引きとめようとしたけど、
「私は簡単には死にません。ですから安心してください」
結局愛紗ちゃんに押し切られる形で引き離されてしまった。
森の中に入ると、曹操さんの兵達は愛紗ちゃんの方に引き付けられ、私達は無事に逃げることが出来た。
「朱里ちゃん…力が欲しいよ…理想を叶えることができる力が…」
「桃香様……」
私は思った。
理想だけでは駄目なのだと。
仲間を守るには、理想を叶えるには力が必要なのだと。
だから願った。
簡単に崩されない強い力を……
呉の国境付近に着くと、先行させて呉に向かわせた使者の人が戻って来て、孫策さんとの謁見を伝えてくれた。
早速、孫策さんの所へ私達は向かうことにした。
「この度は私たちの願いを聞いてくれてありがとうございます」
朱里ちゃんが孫策さんにお礼の姿勢を見せ、私もそれに倣った。
「いいのよ、別に。私達は一応同盟関係なんだしー。
それに私たちの独立の時、手伝ってもらったしね」
そう言うと孫策さんはにっこりと笑った。
呉が独立するときに私達は物資などの提供を行った。
それが少しでも孫策さん達の役に立ったのならうれしいな…
「そういえば関羽はどうしたの?いつもあなたと一緒にいたじゃない」
愛紗ちゃんの事を聞かれ私は囮になった愛紗ちゃんのこととを孫策さんに話した。
「愛紗ちゃんは私たちを逃がすために囮に……
でも、言ってました!必ず帰って来るって!
だからお願いします。愛紗ちゃんを助けて下さい!」
私はいつの間にか涙を流し、孫策さんに頭を下げていた。
孫策さん達はそんな私の様子に困った様子で見ていた。
その時、
「失礼します!孫策様少しよろしいでしょうか?」
呉の兵隊さんが部屋に入ってきて孫策さんに耳打ちを始めた。
「…そう、わかったわ。劉備、国境付近で関羽の隊を発見したわ」
「本当ですか!?」
私は顔を上げ孫策さんの顔を見た。
「ええ、本当よ」
生きてる、愛紗ちゃんが生きてる。
「助けに行かなくちゃ。愛紗ちゃんを助けに行かなくちゃ!」
愛紗ちゃんを助けるために部屋を飛び出そうとすると、
「あなたの兵は皆疲れて戦える状態ではないでしょ?」
「でも!」
「私たちに任せなさい。一刀!思春と亞莎を連れて国境まで行き、関羽を保護してきなさい」
孫策さんは弟の孫権さんに指示を出した。
孫権さんは一緒に呼ばれた甘寧さんと呂蒙さんを引き連れ部屋を出て行った。
「あ、ありがとうございます!」
私は精一杯腰をおり、頭を下げた。
「いいのよ。関羽はあなたの家族なのでしょう?
家族を失う痛みを私達は知っているわ。だから力になりたいを思ったのよ」
そう言うと私の方に手を置き、孫策さんは微笑んだ。
よかった、これで愛紗ちゃんが助かる。
そう思うと急に体の力が抜け、目の前が真っ暗になった。
あれ…?うまく力が入らないや……
「劉…!しっか……!」
最後に孫策さんの叫び声が聞こえたけど、私はそのまま倒れてしまった。
【劉備 side end】
ふ〜つかれた。今回は結構長くなり疲れました。
華琳様と桃香の舌戦が有りましたが、舌戦って難しいですね。
書くのに一苦労しました。変なところもあると思いますが、多めに見てください(汗)
次回は我等の一刀君も登場する予定です。では、またノシ
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第15話です。 華琳と桃香の考えがぶつかります。 そして呉の方もちらりと登場! よろしくお願いします。 |
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