真・恋姫無双 花天に響く想奏譚 4話(中)
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 第4話 <The Saver of ゴットヴェイドォォ!!(中) >

 

 ・成した証・

 

 「お医者さん方っ、うちのひとが…!」

 「む、効果が切れたか。 慈霊!」

 「えぇ。…行ってきます。北郷さん、でしたね。劉備さん達を頼みます。」

 「…はい。」

 

 そして華陀と慈霊が負傷者を集めた民家の中に入った後。火の前に一同は座して話をすることに。

 「改めて、俺は北郷 一刀。…三人は諸葛亮 孔明に鳳統 士元と徐庶 元直、だったね。」

 改めて三人を見ると。雛里は一刀が場から離れた時には身に着けていなかった、魔女が被るようなつば広の大きな三角帽子を被っていて、また寧は白地に所々薄緑の柳模様の入った長い羽織を羽織っていた。 

 これらは賊の襲撃から逃げる際、邪魔になるからという理由で民家において来たものである。

 

 「は、ひゃい。…ぅぅ、噛んじゃいました…」

 泣いて少し赤くなった目で朱里は答えた。

 「…大変だったみたいだな。…一番つらいところを任せて、…悪かった。」

 「いえ、北郷さんは賊の人達を縛ってくれました。それも…必要な、こと… ぐすっ、」

 再び出そうな涙を、朱里はこらえた。

 「…ところで、えっと孔明、鳳統、元直、でいいか?」

 「は、い。」

 「確認なんだけど、三人は…司馬 徽、って人が先生だったり?」

 そこで三人は顔をあげて一刀を見た。

 

 「な、なんで水鏡先生の」

 「ってことは孔明は臥龍、鳳統は鳳雛、…元直は元々徐福、っていうとか?」

 

 三人、言葉を失う。 ただ寧に関しては、変わらず平坦な印象の様子だったが。

 やっぱりあの名軍師だったのか、と一刀は内心で思った。まぁ劉備や関羽が少女になってるこの世界、もう絶世の美女という貂蝉が男になっててもおかしくはないな、という心境だった。なっててほしくは無いけど。

 

 「…アナタ、どういう人なんです?朱里ちゃんと雛里ちゃんの号に、ワタシの前の名を知ってるのは水鏡先生だけですよ?」

 失った言葉を最初に取り戻したのは寧だった。

 

 「…天の御使い、って知ってるかな?」

 「えぇ、まぁ。この村で一泊させてもらおうと来てた途中で、予言に出てくる白い流星ってのが落ちるのを見たのですが。なるほどアナタが御使いさん、なのです?」

 さらりと核心を突いたので、

 

 「…、はわっ!?」「あわっ!?」

 一拍遅れて朱里、雛里。

 「二人とも遅いですよ。 それで、どうなんです?まぁ、 えっと北郷さん、でしたね。アナタの訊き方でそうかなとは思いましたが。」

 「…自覚は無いけど、ね。その流星ってのを見てたのはこっちの三人だよ。」

 話を振られたので愛紗が応じた。

 「確かにこの方は流星が落ちた所に居た。 少なくとも話を聞く限りは特異な存在であり、私達も天の御使いであると確信している。」

 「それに、見たこと無い変わった服着てるのだ。」

 「…穿きもの、きらきらしてる…」

 鈴々が続いて言ったことに雛里が反応、一刀の制服のズボンを見た。 因みに、未だ上は黒い半そでのスポーツインナー、下は白い征服のズボンに腕には手甲のままである。

 「あぁ、この世界には無い、ポリエステルっていう素材だよ。」

 ポツリとした雛里の言葉に答えたが。雛里は聞かれているとは思ってなかったのか、大きな帽子のつばを目深に両手で引き下げて、赤くなった顔を隠した。

 「?」

 「すいませんね。雛里ちゃんはちょっと恥ずかしがりなもんで。 …しかしてっきりそちらの劉備さんが御使いさんかと思ってましたが。傷を治した不思議な力然り。」

 「…私、そんなすごい人じゃないです。」

 平坦な声音の寧に対して、桃香はうつむいて沈んだ口調で応える。

 

 「小さな傷は治せても大きなケガを治したらすぐに使えなくなって、…今日も、…なにも、出来なくて…」

 再び目が潤む。そんな桃香に愛紗が何かを言おうとしたが、言いよどんで言えずに口をつぐむ。

 そこへ、また別の声が入った。

 

 「…本当にそう思う? なにもできなかった、って。」

 今度の声の主は一刀だった。

 

 「…?」

 「後ろ。 見てごらん。」

 言われるままに桃香が後ろを見ると、

 「お嬢ちゃん達っ、ここに居たんだね。」

 桃香が矢傷を治したおばちゃんを始めとする、十人程が歩いてきていた。

 「! あ、あのっ、ケガは!?」

 「あぁ。もう平気だ、ってお医者の二人がね。」

 言いつつ、矢傷を受けたところに当てられた布を包帯で固定した部分を軽く叩く。 

 「あんたが上手いこと手当てしてくれたおかげだって赤い髪のお兄ちゃんが言ってたよ。」

 失血で気絶したせいで桃香の力のことは知らないらしく、また華陀も話を合わせてくれたらしい。

 「あんたたちのおかげでうちのも死なずに済んだ。」

 「ほんとにありがとうよ。」

 続いて口々に感謝の言葉がかけられる。 しかし、それは桃香の心の棘になる。

 

 「で、でも…亡くなった人もいて、…私は、何も出来なくて、」

 「それはあんたが気に病むことは無いよ。…あんたたちがあたしら助けるために頑張ってくれたのは皆から聞いてる。 上手く言えないけど、気にしないでおくれよ。」

 「…でも…」

 

 少し間が出来た。周囲の闇に似た、暗い間。 いや、漢字の形が似てる、とかじゃ無くてね?

 

 その間を破ったのは一刀だった。

 

 「…命ってさ、空気と同じなんだよ。」

 その声に一同が注目した。

 

 「息を止めると苦しくなるみたいにね。 当たり前に在るけど、いざ無くなって初めて存在の大きさが分かるんだよ。 命も同じで、どうしても無くなる時、…死ぬ時、に重きが置かれるんだよ。   …もう戻ってこないって、知ったときにね。」

 

 言いながら思い出す。初めて身近な人の死を見た時。幼いころからの馴染みだった、祖父の古い友人でもあった某財閥の頭役を引退した老人が病で亡くなった時。臨終の床に居合わせて、目の前で息を引き取った時。

 

 二日の後、やっとその死を理解して、受け入れた時、泣いたことを思い出した。 一刀、十歳のころだった。

 

 「…桃香。確かに桃香は死にそうな人を生かせなかった。それは事実だし、俺もそれは否定しないし、出来ない。」

 でもね、と一刀は続ける。

 「それでも、桃香が人を助けたこと、救ったことも事実なんだよ。 桃香が人を助けるために頑張ったことは、村の人達も、一緒にやってた慈霊さん達も、愛紗や鈴々も知ってるし、」

 

 そして一刀は桃香の前に向き合って、

 「…俺も分かってるよ。」

 桃香をスッと抱き寄せた。

 「…だから、何も出来なかったなんて言ったらだめだ。 桃香は確かに、人を救ったんだよ。」

 

 桃香は、一刀が戻ってきた時と同じ状態で、もう一度泣いた。

 

 

 でも今は、

 

 

 別の理由で、だった。

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 ・鞘・

 

 「ありがとうございました。」

 愛紗と鈴々が一刀に近付いて声をかけた。 桃香は一刀の言葉が心を軽くしたのか、現在炊き出しの手伝いをしている。

 「ん、何が?」

 「桃香様を元気付けてくれたことです。…私は無骨者故、先程の御主人様のように説くことは出来ませんから…」

 そんな自身が情けない、というような口調の愛紗だった。

 「いいんだよ。 俺も女の子が悲しそうにしてるのを見るのは嫌だから。 …それに、愛紗は愛紗なりに桃香を慰めようとしたんだろ?出来なかったとしても、それを悔やめるなら次のときにはちゃんと言ってあげればいい。な?」

 一刀の言葉に、愛紗は少し赤くなる。 見られていたのか… と、改めて言われると気恥ずかしいものである。

 「…はい。」

 「あと、愛紗には無骨、って言葉は似合わないな。可愛いから。」

 

 で。 今度は別の理由で赤くなる。

 「…っ!な、なにをいえぁのその、 …じょ、冗談は止めて下さい。」

 「? いや、冗談じゃないんだけど…」

 一刀の素の反応になんとか表面上は平静に応じた愛紗だったが、心の中では未だ赤面状態、だった。

 「んにゃ?愛紗、なんか顔赤いのだ?」

 「っ、 ひ、火の所為だろう。」

 そ そうだぞ火の所為だそもそも御主人様私などをか可愛いなどと仰られても武人としては誉れにはなっていなくて第一

 と、若干内の動揺が表にも出ていたが。

 「ん〜、そういえばお兄ちゃん、なんで強いの隠してたのだ。 愛紗もそう思うのだ?…愛紗?」

 「ぅえっ?な、なんだ鈴々?」

 独白の途中からようやく戻ってきた愛紗は、鈴々から説明を聞くと、

 「ぉほん。 それは私も思っていました。先程まではそれこそ強い武人の気を感じていましたが、今は最初にお会いした時と同じように、…全くの普通、としか感じません。」 

 咳払い一つで気を取り直した。 …火の所為とする顔の赤みはまだ少し残っていたが。

 「なぜ、そこまで隠匿するのですか? 御主人様は、…私達よりも強い、とお目見受けします。」

 そんな愛紗の言葉に応じるべく、一刀は会話の間を取って考えをまとめた。

 「…例えば、愛紗や鈴々の持ってた長物だったら鞘をつけると不便になるとして、桃香が持ってた剣ぐらいの武器の場合、鞘も無しに肩に担いでたらどうなる?」

 「ん? 肩ケガするのだ!」

 「いや、そうじゃなくて…」

 「首、なのだ?」

 「同じだって。」

 確かに刃を下にして担いだら肩を怪我するし、刃を寝かせても首を切る可能性が出てくるがそうじゃない。

 「えっと、街中で抜き身の刃物をちらつかせてたらどうなる?」

 「…いらぬ諍いを招いたり、見咎められます。」

 「そう。 それと同じだよ。」

 言葉を切って、一刀は自分の右手を見て軽く握る。

 「力ってのも同じでさ、使うところを間違えたら他人を傷つけるし、力が大きくなると時には余計ないざこざを呼んだり。不遜な言い方になるけど、…俺は強いからな。」

 

 篝火から、パキッと木の鳴る音がした。

 

 「だから隠すんだよ。剣を鞘に収めるみたいに、つい出る立ち居振る舞いを意識的にしないようにしていてね。今じゃその意識的にしない、っていうのを無意識に出来るようになってる。 武人の気が感じられないのはそのせいだろうな。」

 「…そのようなことが出来るとは…」

 「力は制御出来てこそ、だよ。制御っていうのは今俺がやってる身鞘(みさや)に限ったことじゃなくて、武器を扱うなら相応の単純な力、それを生かす体捌き、それと制御する心。そういう鞘の無い、未熟なやつが振る剣 なんてのはただの暴力だよ。 …そう、」

 

 ひときわ大きく篝火の木が鳴った途端、全体がグズリと崩れた。

 

 「…ただの、暴力なんだよ。」

 

 火が照らす一刀の顔は、どこか憂いを帯びていた。

 

 「…御主人様?」

 愛紗が気になって声をかけると、

 「まぁとにかく。今は村の人を手助けしないとな。愛紗、鈴々。何か出来ること探して手伝おう。 あぁ、俺はその前に元直って娘に用があるから。ちょっと行って来る。」

 パッと切り上げて、一刀はその場を立ち去った。

 「…御主人様…」

 「ん、愛紗?どーしたのだ?」

 「…いや、なんでもない。」

 一刀の憂い顔が気になったが、今は確かに何か手伝ったほうがいい。ひとまず忘れることにした。

 

 「ふむ、なにはともあれ手伝わなければな。…よし。」

 「なにするのだ?」

 

 「炊き出しの料理の手伝いだ。」

 

 「…そういえば愛紗、料理できるのだ?」

 「やったことは無いが。なにか出来ることをするべきだろう。」

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 ・Exchange・

 

 「ん。おや御使いさん。どうしました?」

 「御使いってのはやめてくれよ。 北郷でいいから。」

 ムシロの上で道具の片付けをしていた朱里、雛里、寧の三人に一刀が近付く。

 「怪我はもう平気?」

 「えぇ、なんとか。 北郷さんがばらしてくれたおかげで二人に怒られましたが。」

 「そ、そんなの言ったら…ダメ。」

 雛里、寧に反論。その言葉終わりにチラと一刀を見た時、

 「…ん?」

 

 ふと気づいた一刀と目が合った。

 

 途端に雛里の顔に朱が差して、大きな魔女帽子のつばを両手で引き下げて顔を隠してしまう。

 「いや冗談ですよ?どの道慈霊さん達には気付かれてたみたいですし。…雛里ちゃん?」

 「…///」

無言のまま雛里は一刀から隠れるように、寧の後ろに移動した。

 「雛里ちゃん? すいません北郷さん。雛里ちゃんちょっと恥ずかしがりで、 ぁ、あとその、…ぁ、ありがとうございましたっ、改めてっ」

 朱里は朱里で平静を装ってはいるが、いざ一刀の前に出ると噛みこそしなかったものの文法が若干おかしい。改めて、を倒置的表現にしてどうする。

 「いや、そんなに改まらなくていいよ。それに三人は怪我した人を手当てしてくれたんだし。 …ありがとう。」

 言いつつ、一刀はムシロでなく地面に片膝を付いて頭を下げる。

 「はわっ!?あ、あのそのダメでしゅそんにゃみちゅかい様が頭下げたら」

 今度は慌ててかみかみな朱里を、寧は手で制止した。

 「朱里ちゃん落ち着いて。 それで、ワタシ達になにか御用です?あと座って下さい。立たせたまま、なんてのは失礼なんで。」

 「ん、じゃあ失礼。 それで用は…これだよ。」

 言葉を途中で切って一刀は腰の背中側に手を伸ばす。そして腰に差してあったそれを、刃を持って座りながら寧に渡した。

 「これワタシの短刀…なんで分かったんです?」

 「今は羽織で隠れてるけど、会った時に見た他の短刀と柄が同じだったの覚えてたんだよ。で、賊のやつら縛ってたときに拾った。」

 確かに寧の六本一組の短刀「六葉」の内一本は、一刀が助けに入る前に一本落としていた。

 

 羽織の裾をめくって、寧は太腿外側の空席の鞘に刃を戻した。

 「ん。やっぱり全部揃ってると落ち着きますね。…でも、よく覚えてくれてましたね?」

 「…友達守ってボロボロになってたのが印象付いてね。…強くないのにな。」

 「まぁワタシは弱っちいですね。…でも、」

 そこで寧、今一度一刀に目を合わせて、

 

 「弱いからってのは守らなくていい理由にはならないのですよ。 ワタシは二人が大好きですから。」

 相も変わらず平坦な表情と調子だったが、一本筋の通ったような声音だった。

 

 「…寧さん。」

 雛里はなにも言わず、後ろからギュッと寧に抱きついた。

 「…撤回するよ。 元直は強いな。…心が。」

 「事を成さんとする心無くして事は成せず、ですよ。 …まぁ、ワタシが勝手に作った言葉なんですが。」

 「言いえて妙、だと思うよ?」

 一刀は少し微笑んだ。内側がにじみ出たような、優しい笑みだった。

 

 「ん?」

 そして今度は朱里と目が合った。視線に気付いて目線を動かすと朱里と目が合って、「はわっ…」とわたわたしてうつむいた。この反応の理由がさっぱり、な一刀は、

 「? まぁとにかく、短刀のことと怪我のこと聞きたかっただけだよ。…あぁ、何か手伝うことがあったらやるよ?」

 「いえ、もう終わるので。」

 「なら俺は向こう行っとく。何かあったらすぐ呼んでくれ。それじゃ。」

 用が無いなら長居は無用、ということで、一刀は立ち上がって戻ろうとした。

 「あ、ちょっと待って下さい。」

 そんな一刀を寧が引き止めた。

 「なに?」

 「気になってたのですが。北が姓で名が郷、字が…たしか一刀、でしたね?天の国も名前は同じ形なのです?」

 寧がそう訊くので、

 「や、俺の居た所は字とか真名とかってのは無いんだよ。姓…家系の名前が北郷で、俺自身の名前…こっちの 真名に当たるのが一刀、ってところかな。」

 一刀なりの解釈を言ってみたが、

 「…!ね、寧さんっ!」「…真名、言っちゃった…」

 これが、おおごとらしかった。

 「す、しゅみません真名!あぅあのえっとしょにょ許して下さいごめんなしゃぅぅっ…」

 朱里は噛みまくり、雛里は必死で寧の盾になるべく両腕を広げて立ちふさがって、双方共に涙目になって混乱状態に突入。

 真名が相応に重いものとは聞いていたが、且つ自分が少し怖がられているのは察していたが、ここまでの反応って俺はどんな怪物に見えてんだろ、と少しブルーになる。

 と、朱里と雛里が目が合って赤くなる理由を勘違いで曲解していたが。

 

 

 「えと、すみません、でした…」「…ごめんなさい。」

 

 少しして、ようやく二人は落ち着いた。

 

 「しかし真名が普通に使われてるのは、この国では信じられないですね。」

 「…元直は冷静だな?」

 「いえ、さっきは肝が冷えましたよ?」

 

 そうは見えない寧は、調子もそのままに続ける。

 

 「しかし相手に真名を名乗らせておいて自分が言わないのは無礼の極み、ですね。 というわけで、ワタシの 真名を預かってほしいのですが。」

 「や、だから俺からすれば真名とかは関係なくて、」

 「そちらが良くっても、こっちが礼儀にもとることになるので。」

 

 それに、と寧は更に続ける。

 「北郷さんはワタシと朱里ちゃん、雛里ちゃんを助けてくれました。ワタシからすれば真名を預けるに充分値する方です。ですから、ワタシは真名で呼んで下さい。…それに、」

 

 ここで寧、言葉を切る。

 「?」

 「いえ、まだ早いですね。 ともかく、むしろ真名を受け取ってほしいのですよ。お願いします。」

 そしてスッと頭を下げる。これに罪悪感すら感じた一刀は、

 「…分かった。それじゃあ、元直の真名、預かるよ。」

 「ありがとうございます。ワタシは寧、といいます。」

 「俺は一刀。…真名に当たるのがこれだから、一刀って呼んでくれればいいよ。」

 

 そこに更に、

 「あのっ、わ、私の真名も、預かってください!」「わたし、もっ…」

 横で一刀と寧のやり取りを見ていて、何度か何かを言いかけていた朱里と雛里の二人も申し出てきた。

 

 

 「それじゃあ、朱里に寧に雛里。俺は向こうに行ってるから。」

 

 そう言って一刀が離れての後。

 

 「そういえば、男の人に真名預けたのって初めてですね?」

 ふと寧が言ったことに朱里と雛里は反応。その反応は顔に赤い色で現れた。

 

 「は、い…」「…うん。」

 「でもワタシは嬉しいですよ?初めての人が一刀さんみたいな人で。」

 「わ、私も、そうですっ。」

 「…わたしも、初めてあげられて、よかった。」

 

 …セリフだけ聞いてたらなんかアレっぽい内容だがそうではないので。

 

 「…乱世を鎮静す、です。私たちが身を捧げる人は、あの人なのかもしれません。」

 そう、三人が言ってたのはそういうことであって、文面通りのアレな意味合いではない。

 

 「…劉備さんも、優しい人、だったね。」

 「とにかく、劉備さんや一刀さんとその話をしてみましょう。」

 カチャン、と鉢をつづらのなかに入れた音がした。そこに、

 

 「あの、食事が出来たので貴女方もいらっしゃって下さい。」

 難を逃れて無傷だった人のうちの女性が、三人の所に歩いてきた。

 「ん、ワタシ達も、いいんです?」

 「当然です。貴女方にはあちらのお医者さん方と一緒に皆が助けられました。お礼にもなりませんが、どうぞ。」

 そういうわけで、丁度片付けもあわったので三人は厚意に甘んじるべくその女性に付いていく。

 その途中、

 「あのところで、お腹大きくなってますけど、動いても大丈夫なんですか?」

 朱里が女性に話しかけた。 言うとおり腹部が大きくなっていて、どうやら、もとい明らかに妊娠していた。

 「いえ、あまり動かないほうが当然良いのですが、こんなことになってしまったので。それにまだ産まれるまでには日にちがありますから。動けるなら動かないと。」

 いいながら女性は腹部をなでる。その表情に、

 「この子が産まれたら、母はこんなときにも頑張っていた、と自慢してやりたいですし。ね。」

 三人はどこか懐かしいような感覚を覚えた。

 

 

 ・来る、きっと来る・

 

 一刀が朱里たち三人と話しているときのこと。

 

 「むぅ、そうか。料理ではもうやることは無いか。」

 「あぁ、あとは熱通すだけでね。 やることかい?なら篝火に木でも足しといておくれ。」

 

 と言われ。愛紗と鈴々は拾ってきた木っ端を足すべく火に向かって歩いていた。

 

 「しかし料理か…。やはり出来るに越したことは無いな。 よし、今度機会があればやってみるか。」

 「出来たら鈴々が全部食べるのだ!」

 「おいおい、桃香様と御主人様の分が無くなるだろう。あと今日の食事は控えるんだぞ。」

 

 そんなことを話しながら歩いているが。

 

 近い未来、愛紗の料理がそれはもうなんていうか、なことになることは、今のところ誰も知らない。

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 <あとがき>

 

 仮にも拠点と名の付く話なのにあんまし楽しくない、というのは自覚してるので突っ込まないで下さい。

 

 さて。今回は自分の持論をいくつか書いてみました。例えば「やる気が無いと結果は出ない」というのとか。当然のことなんですが。

 

 あと寧、こと徐庶が羽織着てるのは後付けでなく。前回のあとがきで書き忘れていたので今回で着せました。 太腿の「六葉」を隠すのに羽織は便利と思ってのアイテムです。

 

 最後に少し次回予告を。

 妊娠中に過度なストレスを感じると、流産などの可能性が出てきます。

 …なにこの妊娠中の注意事項?

 

 ではまた。

 

 

 

 PS コメントは元気の源、です。切望。

 

 

 

 

 もう一個PS そしてBUMP OF CHICKENもまた然り。R.I.Pとかメーデーとか。

 

 

  

 

 

 

 

 

   

 

説明
4話の中です。前の話で「次は下」って言ってたけど。…だって長くなったんだもん。
半分本編半分拠点、みたいなかんじです。
 
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コメント
jonman以下略さん 指摘感謝。 いやな予感は大概当たるものですよ♪ あと略してすいません。(華狼)
胡蝶さん なぜか話が基本的に固くなるのですが、面白く思われたならなにより。 あと彼女の料理は蜀軍の最終兵器に、なる…のですか?(訊くな)(華狼)
面白かったです。3p目の軍師たちのセリフは、それだけで聞くと勘違いしそうですね…そして愛紗!料理をやめろ!死人が出るぞ!(胡蝶)
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