桔梗√ 全てを射抜く者達 第5射
[全7ページ]
-1ページ-

 

桔梗√ 全てを射抜く者達   第5射

 

 

-2ページ-

 

 

視点:一刀

 

明日、この地の豪族が兵の補充と税の徴収をする為にあの村に来るらしい。

何故明日なのかと徐庶に聞いたが、周期的に推理した結果、豪族が来るのは明日とのこと。

更にその時に諸葛亮と鳳統が来るというのも毎回の事らしく、他の時も常にそばに置いているらしい。

何でも、その豪族は重度のロリコンだとか…。

 

それで、村に来ると、まず村を包囲して村人が逃げないようにした後に村の大通りを行進し、兵となりそうな男を確保する。適当な人員が集まれば、村の包囲を解き、豪族は村から去っていくらしい。

村の大通りに居る時の豪族の警備が一番手薄になるのはこの時らしいが、並みの武官では警備を突破し、豪族を討ち取ることが出来ないらしい。以前、村人が数十人ほど豪族を襲撃しようとしたことがあったらしいが、見事に返り討に会い、村の大通りで公開処刑されたらしい。

 

他の村でも同じような事が起こっているらしく、他の村に逃げても同じだそうだ。さらに遠くに行っても黄巾党に襲われて死ぬか、内乱に巻き込まれて死ぬか兵になって戦場で死ぬかのどれかだ。

そのため、豪族が来た時に男は隠れるか、自分の手足を切るしか方法はないらしい。

あの屋台の店長、もしかして自分で足を切ったのか?

 

話は元の計画の話に戻そう。

豪族の兵が村を包囲し、豪族が村の大通りを行進している時に狙撃し、豪族が死んだことによって発生するであろう混乱に乗じて、徐庶が諸葛亮と鳳統を救出し、三人はこの家まで逃げてくる。

救出時に誰かが徐庶達の逃走の妨害をしてきたら、狙撃して妨害要因を排除することになった。

ターゲットや妨害要因を狙撃出来るように狙撃ポイントから見える道を通ってもらうことになった。

 

そうなると狙撃ポイントから見える道を確認しなければならない。俺達は現場に行った。

狙撃場所は村の中心から直線距離で1km離れた崖の上だ。現場を見に行ったが、まず人は寄りつかないし、狙撃ポイントに行くにはかなり迂回しなければならなかった。

俺は双眼鏡で狙撃ポイントから見える道を確認し、徐庶の持っている町の地図に見える道を書き足す。

そこからターゲットの場所と徐庶達の逃走ルートを確認。ターゲットが町のある交差点に差し掛かった時に俺がターゲットと護衛を数名狙撃、後はさっき説明した通りだ。これが諸葛亮と鳳統救出計画の全貌だ。

 

それから、俺達は町に行った。ターゲットが撃たれる場所と、徐庶達の逃走ルートを確認。

徐庶は体力が無いから逃げ切れるかと心配していたが、ターゲットが撃たれる場所から村の端までそんなに距離が無いことが分かった上に、森に入ってからは道が細く、大の男が大勢走っていける道では無い。

ってか、そもそも三人の逃走の妨害要因はすべからく俺が狙撃して排除するので大丈夫だ。

 

作戦の最終確認も終わったので、村の屋台で晩飯を食べることになった。

久しぶりに料理らしい料理を食える。最後に料理らしい料理を食ったのは三日前の朝食ったラーメンだ。

それに椅子に座って食べることが出来る。

地べたに座って果物、木の実、蛇の素焼きを食べるという食生活から解放される。

徐庶の家の前で座り込みをした三日間が豪く長かったように思えた。

 

さあ、何を食べよう。俺は店の壁にかかっているメニューを見る。

だが、文字は読めないので、徐庶にどんなメニューがあるのか聞くが……

 

「きゃわわ♪北郷さんは文字が読めないんですか?」

 

と、徐庶は満面の笑みで俺を馬鹿にしてきた。こんな幼女に馬鹿にされるとはかなり屈辱だ。

 

「仕方が無いだろう。元々俺はこの大陸の人間じゃないんだ。」

 

「この大陸の人間じゃない?ということはやはりあの弩もこの大陸のモノでは無いのですか?」

 

「……そうだが。これって話していいのかな?徐庶って俺達の陣営に来てくれるんだよな?」

 

「はい。

ですが、朱里と雛里には自分で自分達の主君を見つけていただきたいので、朱里と雛里は客将として扱っていただけますか?」

 

「分かった。だから、俺が今から言うことは諸葛亮と鳳統には黙っていてほしい。」

 

「分かりました。で、北郷さんは何処の国の方なんですか?」

 

「管路の占いって知ってる?天の御使いがなんちゃらって言う。」

 

「ええ、あのほら吹き管路の嘘がどうしたんですか?

天の国なんて実在しないのに何言っているんでしょうね?論理的に考えてありえないですよ。

絶対頭に蛆湧いて、頭食われて、逝っちゃってるとしか考えられないです。きゃわわ?」

 

「……徐庶。」

 

「何ですか、北郷さん?」

 

「天の御遣い…俺なんですけど。」

 

「きゃわわ?」

 

 

-3ページ-

 

 

視点:徐庶

 

「きゃわわ?」

 

「だから、俺が管路の占いで言われている天の御遣いで、あの弩が天の弓って言われてる。」

 

「……。」

 

北郷さん頭大丈夫かな?私君主選ぶの間違えたのかな?

 

でも、よく考えてみましょう。

北郷さんの着ている服の構造、装飾。それから北郷さんの持っている双眼鏡、ぺっとぼとる、時計。

どれをとっても私がこれまで見たことの無い物ばかりでした。もしかして、本当に天の御遣い?

でも、管路がこの人が天の御遣いですと言わない限り、北郷さんが天の御遣いかどうか分かりません。

 

「北郷さんが天の御遣いかどうかは分かりませんが、この大陸の人じゃないのは信じましょう。

そして、北郷さんが天の御遣いだと民衆が認めているなら、それでも良いんじゃないでしょうか?」

 

「頭柔らかいなぁー、徐庶は。」

 

「軍師たる者これぐらい自由な発想が出来なければ、視野が狭め、発生しうる可能性を殺し殺されます。」

 

「そっかー、さすがだな。」

 

「軍師の心構えを言っただけです。」

 

「いやいや、それでもさ。」

 

「そう言っていただけると軍師として嬉しいですね。」

 

「で、徐庶。ここの店には何があるのかな?君に会いに来る前に別の店に寄った時はラーメンって字が読めたから何とかなったけど、今回はちょっと難しいから、注文は君に任せるよ。」

 

「分かりました。店員さん!」

 

私は遊び心から北郷さんを虐めたくなったので、ちょっと変わった料理を注文する事にした。

北郷さんの分の料理は蛙のお吸い物、蛙の肉まん、鼠の炒め物、蜂の甘辛煮、蝙蝠の丸焼きで良いですよね。

きゃわわ♪私は……チャーハンと杏仁豆腐で良いわ。さて、北郷さんはどんな反応をしてくれるのでしょう?

少し待っていると店員さんが蛙のお吸い物と鼠の炒め物を持って来ました。

 

「あ、その料理、この人のです。」

 

「どうも。美味そうだな。」

 

「冷めないうちに食べて下さい。北郷さん。」

 

「お、ワリいな。じゃあ、先に食べるわ。頂きます。ん!美味いな、これ。なんて料理なんだ?徐庶」

 

「蛙のお吸い物と鼠の炒め物です?」

 

「……もう一回言ってくれ。」

 

「蛙のお吸い物と鼠の炒め物です?」

 

「蛙……鼠……。」

 

「この村は田舎で、内乱ということもあって、食材は普通の町や村で食べられない物が多いです♪」

 

「そ…うか。まあ、美味いし…良いか……。」

 

「それは良かったです♪あ、店員さん、その普通チャーハン、私のです。」

 

「って!自分だけそういうのってずるくないですか?徐庶さん。」

 

「世の中、不条理の塊なので諦めて下さい?…でも……。」

 

「でも?」

 

「人の命に対する不条理を私は許さない。

人の命は全て等しく重いのですから。命をモノや代えが効くと思っている人を私は絶対許さない。人は道具じゃない。私達は意思を持っているのだから」

 

「そうだな。」

 

「人の嫌がることは止められませんけどね?」

 

「ははははは…。」

 

北郷さんは乾いた笑いしかしません。その後、私と北郷さんは家に戻り、明日の準備をします。

と言っても、北郷さんは天の弓の整備とか言って弓を分解して砂を噛んでいないか見ているらしいです。

私は水浴びに行きたかったので、北郷さんの天の弓の整備が終わった頃合いを見計らって護衛を頼み、近くの川に行くことになりました。

北郷さんに水浴びの姿を覗かない様に言ったら、明日に備えて狙撃の練習をすると言われました。

最近まで水鏡先生の私塾に居たから男の人との接し方なんて知らないのですけど、女としての自信を無くしそうです。仕方が無いですよね、私胸ないし…でも、朱里や雛里よりはありますよ!ドングリの背比べって言うかもしれませんが、絶対にあります!これは数字で出ているので事実です!2寸差…なんですけどね……。

水浴びから上がると私は北郷の所に向かいます。北郷さんは相変わらず、天の弓と睨めっこしてました。

私が水浴びから上がった事を伝えると、今度は北郷さんが水浴びに行きました。

 

私は護衛して貰う為に北郷さんの近くに居ようと北郷さんに背を向けて地面に座りました。

私は暇だったので、北郷さんと少し話をしました。

 

北郷さんは天の世界では他国の民間の兵士をしていたらしいです。

戦う理由を聞いたら、戦えない誰かの為に戦って、自分が無力で無いって証明したかったそうです。

何故無力で無いと証明したいのかと聞いたら、あまり話したくないと言われてしまいました。

天の弓は『ばれっとえむえいてぃつーえーわん』と言う名前で、2年の付き合いで、戦場ではいつも一緒だったそうです。対物狙撃銃という分類の弩みたいなものだと言っていました。

あの荷物の殆どはその狙撃に必要な物だそうです。狙撃とは遠距離射撃のことをいうそうです。

ただ、距離はこの世界の弓や弩では到底届かない様な距離から射抜くことが出来るそうです。

まあ、狙撃は実際見ましたが、本当にすごい物です。

 

北郷さんの水浴びは終わり、家に戻ります。

北郷さんの寝床が無かったので、朱里の寝台で寝て貰いました。

 

 

-4ページ-

 

 

視点;一刀

 

天気は快晴。無風。狙撃にはもってこいだ。これぐらい環境が良いと外しようが無いな。

俺はいつもの日課の長距離走を始める。今日は山の中だ。リュックを背負い、BarrettM82A1を持つ。

狙撃してその場から離脱する時のルート確認と現場に慣れておく為に徐庶の家から狙撃ポイントまで走った。

距離は学生時代の時ならうんざりするような距離だが、兵士として訓練を積んだ俺にとって遠くなかった。

まあ、問題があるとすれば、少しばかり足場が悪いってところか?

コロンビアの麻薬企業の私兵部隊と戦った時のことを考えれば、まだ楽なモノだ。あれはマジ過酷だったな。

 

俺は三往復して道を完全に体に叩きこんだ。これで迷子にはならないだろう。

そもそも暗記術を持っているスナイパーが地図を見て迷子なんてあり得ないのだがな。

三回目の復路の時に川に行き、水浴びをして汗を流す。

ついでにペットボトルに水も補給しておく。

 

徐庶の家に行くと朝ご飯が用意されていた。メニューは雑穀米と山菜の汁物。とても、健康的な朝飯だ。

朝食後、作戦の最終確認をする。俺が狙撃をして豪族とその護衛を暗殺し、混乱に乗じて徐庶が諸葛亮と?統の二人を連れて離脱。で、狙撃して敵を排除。特に変更無し。

時間はいつも通りなら丁度正午ごろだというが、念のために少し早めに行って、待機となった。

 

俺は徐庶の家を出て、狙撃ポイントに来た。

村からここまでは結構な距離があり俺が単独で気付かないとは思うが、念のためにギリースーツを着る。

風速計測用フラッグを立て、風を見る。6時の方から風速1m。かなり穏やかだ。

狙撃の準備をする。マガジンを銃にセットし、手動で弾を排莢する。ターゲットは現れていないのでセーフティにしておく。これで何時でも狙撃出来る。後はターゲットが現れるのを待つだけだ。

徐庶の話によるとターゲットは村の入り口から堂々と入ってくるらしい。

 

双眼鏡で村を観察する。現在村は平穏。活気は無いが、人の行き来が見られる。

徐庶を発見した。路地裏の大きな少し割れた壺の中に入り、外の様子をうかがっている。

俺も双眼鏡で村を見ながら、音で周囲を警戒する。俺が居る付近には平穏を書き乱すような音は無い。

俺はターゲットが現れるという村の入り口に目を向ける。

 

「来たな。」

 

ターゲットが現れた。徐庶の言っていた通り、デブだ。服がパッツンパッツンでへそが出て、乗っている馬車を引く馬が可哀想で仕方が無いと思ってしまうほどのデブ。超メタボだ。

悪党面ってああいう顔のことを言うんだろうな。○沢一○みたいな面をしている。

そう!本当に地震の復興でやることあるのに政局がどうとか言ってる偽装献金王オッサンをデブくした感じだ。

馬車に乗りながら酒を飲んでいる。馬車はオープンカーのように屋根が無い。ターゲットが良く見える。

酔いながら死ねるとは幸運だな。苦しまずに死ねる。

デブの両端には徐庶と年齢の近そうな女の子が2人居る。金髪が諸葛亮で、水色の髪の方が?統だそうだ。

 

俺は狙撃体勢に入る。風は6時の方向から風速1m。変更無し。

距離は930m前後。ターゲット捕捉。ゆっくりと交差点へと俺から見て右から左へ移動中。

ターゲットの移動速度と距離に合わせて、サイトを修正。これは感覚的なモノだから、何をどういう計算でどれぐらい修正するかは言い表すことが出来ないので勘弁して貰いたい。だが、修正は完了。

これで何時でも撃てる。後はターゲットが俺に殺される場所まで移動すれば引き金を引けばいい。

俺はその場で待機し、ターゲットを唯ひたすらに待った。

 

「貴様に本当の終焉を見せてやろう。」

 

俺は引き金を引いた。

 

 

-5ページ-

 

 

視点:徐庶

 

私は今壺の中でヒビから外を見て、北郷さんの狙撃を待っています。

あ、見えてきました。あの忌まわしき皺くちゃカビ野郎。今日こそお前の最後です。きゃわわ♪

木っ端微塵になって、汚い肉片撒き散らしながら、死にやがれです。

 

そして、カビ野郎の頭は弾け飛びました。

初めて人が血潮を撒き散らしながら死ぬのを見て私は目眩を覚えます。朱里と雛里を助けに行かなくちゃ。

私は朱里と雛里の方を見ます。2人はカビ野郎の死体を見て、涙を浮かべて固まっていました。

私も朱里も雛里も初めて人が目の前で死ぬのを見ました。いくらカビ野郎といっても良い気分にはなれません。

私は吐き気と目眩と戦いながら外を見ます。カビ野郎の護衛も次々弾けていきます。

護衛たちは主人と自分の仲間たちが次々と殺されていって混乱しています。

朱里と雛里を助けに行くなら今だ。私は壺から外に出ました。

 

外から現場を見て私は更に吐き気を覚えてしまいます。気持ち悪い。本当に吐きそう。

私は顔を上げて必死に朱里と雛里の方に向かいますが、千鳥足のようになってしまい、なかなか進めません。

 

そこに乱入者が現れました。3人組です。

一人は桃色の長髪で、両端で髪を括り、羽の髪飾りをして居ます。巨乳です。乳オバケです。

二人目は黒髪の艶のある長髪で龍の飾りのある武器を持っています。

三人目は赤髪の短髪で身長は私と同じぐらいに見え、この子は藍色の飾り布をした武器を持っています。

 

二人目の女の人と三人目の女の子がカビ野郎の護衛を倒していき、一人目の乳オバケが朱里と雛里を助けました。

二人は乳オバケに肩を揺さぶられながら声を掛けられて正気に戻ったようです。

助けられた瞬間朱里と雛里は私を見つけたのか、乳オバケと一緒にこちらに向かってきます。

 

「「杏里ちゃん!」」

 

私は二人の声を聞いて、少し平常心を取り戻す事が出来ました。

 

「朱里!雛里!こっちから逃げよう!」

 

「わかったよ。杏里ちゃん。」

 

「劉備さんもこっちに来てください。」

 

「わ、わかった。」

 

私と朱里、雛里、朱里に劉備と呼ばれた乳オバケの4人で北郷さんとの作戦で決めた道を進みます。

途中、村を囲っていたカビ野郎の手下が現れましたが、北郷さんの狙撃で肉片になります。

私以外の三人は動揺しますが、後で話すので今は逃げましょうと言って、私は目を瞑り、朱里と雛里の手を引いて森の中へと入っていきます。獣道を行き、庵に着きました。

私は庵に着くと、戦場から離脱出来た安心感から嘔吐感が戻ってきました。そして、勢いのまま吐きます。

口からは酸っぱい液体がたくさん出て来ました。更に目眩が襲ってきたので、横になります。

たまたま視界に入った朱里は過呼吸で、雛里は気を失っていました。

私も目の前がチカチカしてきたので、苦しくなり、そのまま気を失いました。

 

私は目が覚めました。私はどうやら誰かに寝台に運ばれたようです。

外が暗いことから、結構な時間寝ていたようですね。

隣では朱里と雛里が寝ています。私は二人を起こさない様に部屋から出ます。

客間には劉備乳オバケとさっきの戦っていた二人と北郷さんが居ました。

ちっちゃい子は大の字になって寝ていて、他の二人は座りながらうっつらうっつらして居ます。

私の足音に気が付いたのか、北郷さんが起きました。

 

「もう、大丈夫なのか?」

 

「ええ、ご迷惑をおかけしました。」

 

「気にするな。むしろこっちが謝るべきだったな。すまない。」

 

「どうして謝るんですか?」

 

「俺が徐庶ぐらいの時だったら、目の前で人が死なれたら徐庶のように気が動転していたはずだ。

それなのに、俺はそんなことを考えずに、唯与えられていた任務をこなすことしかしなかった。」

 

「それだったら、自分のことを過信していた私に一番責任があります。北郷さんは悪くないです。」

 

「そうか。そう言っていただけると少し楽かな。

ところで、徐庶。何か食べられるモノは無いか?腹が減って仕方が無いのだが…。」

 

「ごめんなさい。

少し食べモノを見れる気分じゃないので、台所を教えますから、適当に自分で作ってくれますか?

雑穀と山菜が少しと塩と醤はありますが、それ以外は何もないので…、あまり量は無いです。」

 

「それだったら、そこらへんの蛇捕まえて客間の囲炉裏で塩焼きにするよ。素焼きじゃなくて塩焼きか?

後、あそこの川で水を汲んでくる。」

 

「すみません。私も先ほど吐いて少し胃がムカムカするので、多めに水を汲んで来てくれませんか?」

 

「分かった。入れ物を貸してくれ。」

 

瓢箪を北郷さんに渡すと、北郷さんは装備を整えて庵から出て行きました。また、蛇ですか。

自分の寝室から薄い掛け布団を持ってきて、客間で寝ている客人に掛けます。ですが、一人は目を覚ました。

 

「あ、ありがとう。徐庶殿」

 

「私の名前を知っているのですか?」

 

「ああ、先ほど、北郷殿から聞いた。申し遅れた。我が名は関羽雲長で、桃香様…劉備様の義妹だ。」

 

「関羽さんで良いですか?」

 

「ああ、そう呼んでくれ。」

 

「貴方はどうして朱里と雛里を助けてくれたんですか?」

 

「ああ、我々三人で旅をしていると『私腹を肥やす悪党に賢人が攫われた』という噂を聞いてな。

我々はこれから義勇軍を募ろうと思っているのだが、軍師が居なくて困っていたので、悪党から賢人を助けて、仲間に引き込もうと思ったのだ。」

 

「…そうだったんですか。」

 

庵の扉が開きました。北郷さんが帰ってきたようです。

 

 

-6ページ-

 

 

「ただいま。あ、眼覚めたの関羽さん。腹減ったでしょう?食べる?」

 

「丁度腹が減っていた所です。……何ですか?それは?」

 

「蛇だけど?」

 

「蛇をどうするのですか?」

 

「塩焼きにするんだけど?」

 

「……蛇の塩焼きですか?」

 

「おう。素焼きより絶対美味いって、俺が保障する。」

 

「……いえ、結構です。徐庶殿、何か他に食べるモノは無いだろうか?」

 

「台所に材料はありますよ。」

 

「私が料理するゆえ、貸して頂けないだろうか?」

 

「良いですよ。」

 

私は関羽さんを台所に案内する。関羽さんは料理を始めます。

なぜか関羽さんは大声を上げて武器を振るい山菜を斬っていきます。私は怖くなり、外に退却しました。

台所からは轟音が聞こえ、変な匂いがしました。ああ、関羽さん料理下手なんだ。

助けに行きたくても、巻きこまれたら嫌なので、私は無視し、台所の無事を願いました。

 

台所から出てきた関羽さんが持っている皿には群青色と紫色と土色の物体が乗っていました。

いきなり物体は裂けて、赤い煙を吐きました。きゃわわ!目に浸みます!

私の本能がこれは危険だと言っています。一体どうやったら、こんなモノがあの材料からできるのでしょう。

北郷さんの持っている天の弓並みの不思議でした。

食べるのを止めないと!幾ら私が人を虐めるのが好きと言っても、これはヤバイと思ってしまいました。

如何に傷つかない様に止めようかと考えていると関羽さんは客間に行ってしまいました。

どうしよう?色々と考えた末に私は関羽さんにこの料理を少し食べてもらい、関羽さんが料理下手であるということを自覚させることにしました。これ以外策がありません。

 

「北郷殿、私の作った料理です。食べて下さい。見た目は悪いですが、味は大丈夫です。

蛇の塩焼きより美味しい筈ですよ。」

 

「……え?…それじゃ。か、関羽さんがせっかく作ったんだし…。パクッ。」

 

「どうですか?」

 

「美味しいよ。関羽さん!」

 

え?美味しいんですか?北郷さん?

 

「北郷殿、どうしました。白目向きながら泡吹いていますが、大丈夫ですか?」

 

「らいひょうふ、おいひいお。」

 

「北郷殿!北郷殿!!

息をして下さい!北郷殿!」

 

すでに遅かったようです。

麻薬のように依存性と幻覚のある毒物をつくれるとは、関羽さんの料理はおそろしいです。

 

 

次の日には北郷さんは少し落ち着きましたが、まだ呂律が戻っていません。

その後、方針が決まり、朱里と雛里は劉備さんの所で、私は北郷さんの所に行くことになりました。

朱里と雛里と劉備さん達は行くところがあると言ったので、この日の内に村を出て北へと向かいました。

後日、私と北郷さんもこの村を出て北郷さんが仕える厳顔さんの所に向かって出発しました。

 

厳顔様を見て『超乳オバケ』と驚いたのは数日後のことです。

 

 

-7ページ-

 

 

へぅ( ゚∀゚)o彡°黒山羊です。

祝・60作品目!

久しぶりに書きました。『真・恋姫†無双 武と知の御遣い伝』で詰まってしまい、なかなか進まなかったのと風邪をひいてしまい、画面酔いが酷かったので、執筆が出来ませんでした。

 

さて、今回はどうだったでしょうか?

徐庶の真名が出ました。その名も『杏里』です。

朱里と雛里のように○里にしたかったので、色々と考えました。候補が幾つかあったのですが、これが一番しっくりきたのでこれになりました。

朱里と雛里、杏里がこの年で戦慣れしていて、血を見慣れているというのはどうかと思ったので、血を見て動揺する描写を入れました。

あと、愛紗の料理下手の描写は書いていて楽しいですね。何故でしょう?

 

では、最後になりますが、いつもので閉めましょう。

それでは御唱和下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

へぅ( ゚∀゚)o彡°

 

 

説明
久しぶりの投稿ですね。お待たせしました。
髪の毛を切って、髭をほったらかしにしていたら、ビッグボスみたいな面になってしまった黒山羊です。
無鉄砲Tシャツゲットならず!無念。

最後になりますが、
現在私は2本長編作品を書いています。
『真・恋姫†無双 武と知の2人の御遣い伝』を読まれる方はこちらの第1話から読んだ方が話が分かると思います。
第1話http://www.tinami.com/view/201495

『桔梗√ 全てを射抜く者達』を読まれる方はこちらの第1話から読んだ方が話が分かると思います。
第1射http://www.tinami.com/view/219495
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
6677 5390 58
コメント
≫ZEROさん、あってますよ。あんりです。彼女がある政党を設立するのは後の話だとかww(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
≫TAPEtさん、たしかに元直ちゃん、きっついですよねww(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
≫アロンアルファさん、並乳のなんとかがいましたよ。たぶん…。(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
≫320iさん、そこまで受けて頂けると嬉しい限りです。(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
≫ノワールさん、乳オバケの次の登場を楽しみに待っていてください。(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
≫ヒトヤ犬さん、ネコミミ軍師様も頭では分かっているのですが、多分素直になれないだけですよww(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
≫cuphoneさん、愛紗の毒料理はネタにしやすいですからねww(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
≫きたさん、後ろを振り向かずに真っ直ぐダッシュで離脱しろ!(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
へう! 乳だけの評価とはきっついですねえ。 あと、あんりで読み方あってます?(ZERO&ファルサ)
この元直ちゃん、うちの奏よりも濃いww(TAPEt)
恋姫の世界じゃ貧ぬーか乳オバケしかいないwえ?普通サイズの人?誰かいたっけ…(アロンアルファ)
無事に軍師仲間に出来ましたね〜……でも、その乳オバケは将来君の上司になる可能性が。今回はゲスト扱いだった桃園三姉妹、別の形で再会しそうですね。(ノワール)
軍師の心構え、偏見で凝り固まった視野の狭いネコミミ軍師に教えてやりたいですねW(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
へぅ( ゚∀゚)o彡°愛紗の料理は鉄板ですね(cuphole)
乳オバケ・・・プッ! あれっ何か背中に冷たいものが?(きたさん)
タグ
真・恋姫†無双 桔梗 厳顔 オリキャラ 桃香 愛紗 鈴々 朱里 雛里 一瞬ジ・エンドの名言を吐きます 

黒山羊さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com