真・恋姫†無双異聞〜皇龍剣風譚〜 第十二話 風詠みて水流れし都
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                         真・恋姫†無双〜皇龍剣風譚〜

 

                            第十二話 風詠みて水流れし都

 

 

 

 

 

 

 楽進こと凪は、于禁こと沙和、李典こと真桜と共に、玉座の間へと続く道をひた走っていた。北郷一刀の帰還に際し、一刀が宮中へ入るまでの警備を取り仕切っていた三人は、諸侯から少し遅れて宮中に入ったのである。

 急がなければ、玉座の間で行われる謁見の儀の開始時間に、間に合わなくなってしまう。

 

「凪ぃ〜!そないな勢いで走ってて誰かにぶつかったりしたら、相手轢いてまうで〜!?」

「そうだよぉ。速度違反なの〜!」

 凪は、後ろからそう叫ぶ二人を肩越しに睨んだ。

「呑気な事を言うな、二人とも!華琳様がいらっしゃらない今、魏の将である我々が醜態を晒す訳にはいかないんだぞ!」

 

 そう、彼女達の直属の主である曹操こと華琳は今、都に居ない。親衛隊である許緒こと季衣、典韋こと流琉の二人が率いる麾下の部隊を残して、他の将たちを先行させた華琳は、一日違いで大雨に降られ、雨で増水した川に阻まれて、到着が遅れていたのである。

 何分、天の気まぐれによって起きた事故であるから、それ自体は(華琳本人の気持ちはどうあれ)咎めだてされるような事ではない。

 

 しかし、大将不在のおりに部下が失態をやらかせば、どんな醜聞を立てられても、その大将は文句を言えないのである。いや、文句を言う者も居るだろうが、少なくとも曹孟徳と言う人物に関しては、それはあり得ないと言う方が正しいか。

 無論、それだけが凪の足を急かさせる原因ではないが。

 

「そないに目ぇキラキラさせといて、どの口が言うてんねん……」

 真桜が溜め息混じりにそう呟くと、隣の沙和がうんうんと頷いた。

「ホントだよねぇ〜。さっき隊長と目が合ってから、凪ちゃん、ずっとあんな感じだもんね〜」

 もちろん、真桜と沙和も、凪と同様に一刀と目が合った。と言うか、一刀が合わせてくれた。

 

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 その瞬間、長い間、胸の奥に押し込めていた恋心が蘇って来たのもまた、事実である。しかし、凪が半ば暴走気味に張り切ってしまっているので、残された真桜と沙和は、どうしても一歩引いて居なくてはならなかった。

 それが苦労だなどとは、思わないにしても。

 

「体力的にシンドいんは、どうしょうもないで〜」

 真桜が、たわわな胸を弾ませながらそう言ってもう一度溜め息を吐くと、沙和が苦笑いを浮かべて頷いた。

「だよねぇ〜。一昨日の夜遅くに着いて、昨日は朝早くから今日の夜明け近くまでお仕事だったから、殆ど寝てないのは凪ちゃんも一緒の筈なのに〜」

 

 二人がそんな会話を続けている内に、凪の背中越しに玉座の間へと繋がる大扉が見えた。

「いよいよやな!」

「そうだね!」

 真桜と沙和は、横目でお互いの顔を見ながら小さく微笑み合うと、先頭を疾駆する凪に追い着くべく速度を上げた。しかし―――。

 

「ちょ!?なんやねん!!」

「危ないの〜っ!!」

 二人は、床に靴底の痕を引きながら急制動をかけた。凄まじい速度で走っていた凪が、突如としてピタリと止まってしまった為だ。

 

 文句を言ってやろうと凪の横に並んだ二人は、次の瞬間、凪が急に立ち止った理由を悟った。凪の視線の先には、白い外套を着た北郷一刀と、その横に寄り添う様に佇む紅蓮の戦神、呂布こと恋、それにその副官である高順こと誠心、軍師である音々音の姿があったからである。

「たっ、隊長!?どうしてここに!もう、玉座の間に入られている時間では……!?」

 

 凪が驚いてそう言うと、一刀は優しく微笑んで、三つの竹の水筒を、三人に差し出した。

「何でって、近衛隊の初お披露目だって言うのに、小隊長が三人揃って居ないんじゃ恰好が付かないだろ?だから、待ってたんだよ。まぁ、取り合えず、その水飲んで、息を整えな」

 三人が、一刀の言葉に頷いて、喉を鳴らしながら水筒の水を飲み下していると、恋が小さく笑いながら言った。

 

「ゆっくりで、良い……。ご主人様が部屋に入るまでは、始まらないから……」

 誠心も恋も言葉に頷いて、おどけた口調で言った。

「そうだぞ、三人とも。勝手に遅れているのは御大将であって、お前達ではないのだからな」

「ですな〜。まぁ、実際、このボケ主は、建前くらいにしか、使い道がないですからのー」

 誠心と、それに便乗した音々音の言葉を聞いた一刀が、微苦笑を漏らした。

 

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「まぁ、世の中で起こる大体の事は、男が悪者になった方が丸く収まるもんだからな……。さぁ、準備は良いか?」

 水を飲み終わった三人は、一刀の言葉に頷くと、一刀を先頭としてその両脇に陣取る恋と誠心、音々音の後ろに並んだ。

 一刀の言った近衛隊とは、一刀が正史に帰る以前から構想されていた、呂布隊と旧北郷隊からなる北郷一刀直属の精鋭部隊である。

 本来が魏の将である三羽烏は、三人の意思と華琳の融通もあり、一刀の寄騎と言う扱いになっては居る。

 

 しかし、その実態は、一刀の身辺警護に加え、ほぼ一刀の直轄と言って良い警備隊の仕事や新兵の育成だけに止まらず、魏の将として仕事を要請される事すらあると言う、超が付くほど多忙な、正になんでも屋状態であった。流石の一刀や華琳もこの事態を憂慮しており、三人が過労で倒れる前に安定した体勢を作ろうと考えられたのが、近衛隊構想である。

 

 具体的には、三国最強と謳われる呂奉先を長とし(実際のところ、恋がまともにやってくれそうな仕事がこれだけだったと言う理由もある)、部隊の規模を拡大して、一刀の身辺警護と警備隊、そして各々の国から要請される仕事を効率良く分担出来る体制を作ると言うのが、最終目的であった。

 孫呉の誇る隠密部隊を束ねる甘寧こと思春と、周泰こと明命も、交代で身辺警護の手伝いをしてくれる事になっており、屋台骨自体は、一刀が正史に戻る前には殆ど完成していたのである。

 

 が、一刀が正史に戻り、三国の将達もそれぞれの国表に帰る事になってしまった為に、近衛隊は今の今まで日の目を見る事なく、宙ぶらりんの状態であった。主要な面子の揃った今日、一刀と三国の将達が再会を果たす事になる謁見の儀が、近衛隊の初仕事だったのである。

 一刀が誠心に目で合図を送ると、誠心は朗々と響くバリトンの声で、高らかに宣言した。

 

「北郷一刀様の御成りで御座います!御一同、御控え下さりませい!!」

 

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 謁見の儀は、恙無(つつがな)く円滑に進んだ。まず、三国の王達と、三国の文官を代表した周瑜こと冥琳からの祝辞が奏上された。一刀としては、主である華琳の不在を、名代である荀ケこと桂花に詫びられたと言う事が、華琳の不在そのものよりも衝撃であった。

 あの桂花に、建前上とは言え頭を下げられるなど、本来なら椿事どころの騒ぎではない。正直、袁紹こと麗羽が真面目に仕事をしだしたとでもいう方が、まだ現実味がある程の大椿事である。

 

 続いて、武官の代表として、呉の先代国王、孫策こと雪蓮の祝辞が奏上された。一刀が横目で、孫権こと蓮華をちらと見ると、蓮華の顔は、『また何かとんでもない事をやらかすのではないか』と言う不安に満ち溢れていたが、そこは流石に江東の小覇王。

 威風堂々、聞いている者が惚れ惚れする程、見事に祝辞を読み上げて見せた。最も、自分の席に下がる直前に、一刀に対して茶目っ気たっぷりに片目を瞑る事は忘れなかったが。

 

 その後、一刀の帰還の挨拶を持って謁見の儀は終了し、続いて城の中庭で、立食形式の食事会が催された。一刀が、各国の諸将を始め、食事会に招待された地方の豪族たちとの会話を一通り終えて、漸く自分の杯に口を付けたのは、食事会の開始から二刻(約四時間)以上が経った頃の事であった。

 現在は、招待客達は全て帰り、残っているのは三国の将達ばかりである。一刀が一息に杯を飲み干すと、今まで一刀の周囲に目を光らせていた凪、沙和、真桜の三人が近付いて来た。

 

「お疲れ様でした、隊長」

「ホンマ、えらい大仕事やったなぁ。ウチ、見てるだけで肩凝ってしもたわ」

「でもでも、みんな嬉しそうで良かったの〜!沙和、何回も泣きそうになっちゃったぁ」

 一刀は、三者三様、昔と変わらない言葉で一刀を労ってくれる部下達に、改めて向き直った。

 

「はは。なに、皆とまた会えて話が出来たんだ。苦労だなんて思ってないよ……。それより、凪、沙和、真桜……ただいま、元気そうで、本当に良かった」

 一刀が、改めて挨拶をして順に三人の頭を撫でると、三人は、嬉しそうに目を細めた。

「はい。私も、隊長がお元気そうで、本当に嬉しいです!」

 凪が瞳を潤ませながらそう言うと、真桜が悪戯っぽく笑いながら、一刀の腕に自分の腕を絡ませた。

 

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「ホンマやで!それに、オトコの色気も五割増し位になっとるし、エエ事づくめやわ!」

 真桜の様子を見ていた沙和が、負けじと一刀のもう片方の腕に飛び付く。

「そうなの〜♪沙和もぉ、もう、前より“めろめろ”な感じだよ〜」

 一刀は、二人の言葉に苦笑いを浮かべた。

 

「それは何よりだ。歳食ったのを好意的に取ってもらえるのは、嬉しい限りだなぁ。あっちに居る間、何が怖かったって、皆にオヤジとか言われて、相手にされなくなっちゃったらどうしようってのが、一番怖かったからな」

 一刀が冗談めかしてそう言うと、凪が顔を真っ赤にして、大声を上げた。

「そんな事、あり得ません!隊長がどんなにお歳をめしたとしても、私達が心変わりするなんて、そんな事……」

 

 凪は、ポカンとした顔で自分を見つめる一刀と、その両脇で頬を緩ませている二人の親友を見て、大きかった声を少しずつ萎めて行き、やがて俯いてしまった。

「ははは。凪は、相変わらず真面目だなぁ。でも、嬉しいぞ?」

 一刀はそう言って、真桜と沙和が自然に解いてくれた腕で、凪の頭を撫でた。

 

「いえ、その……すみません。お恥ずかしいところを……」

 凪が、俯きながら呟く様に言うと、背後から陽気な女性の声が聞こえた。

「あらあら、お邪魔だったかしら?」

「やぁ、雪蓮、冥琳。別にそんな事はないさ」

 

 一刀は、凪の頭に手を置いたまま、後ろから来た雪蓮と、その傍に寄り添っている冥琳に、顔を向けて言った。

「そう?それなら良かったわ。声かけようとしたら、いきなり可愛らしい告白が始まっちゃったから、どうしたもんかと思ってたのよ♪」

 

 雪蓮は、凪に意味ありげなウインクを飛ばしてそう言うと、照れて硬直してしまった凪を尻目に、軽く一抱えはありそうな大きさの酒瓶を、卓の上にドンとを置いた。

「すまないな、北郷。相も変わらず空気を読まぬ主で」

 冥琳が困った様な顔で一刀に詫びると、一刀はにっこりとほほ笑んだ。

 

「そんな事ないさ。さっきは、ちゃんと祝辞を読んでくれたしな。ちょうど、酒も切れていた所だったんだ」

「ほぉらね、冥琳。やっぱり私って、気の利くオンナでしょ♪」

 雪蓮が、得意げにそう言って、一刀と自分の杯に酒を注ぐと、冥琳は諦めた様に言った。

 

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「全く、北郷がそうやって甘やかすから、この呑兵衛が益々調子に乗るんだぞ?」

「良く言うよ……何だかんだで、一番甘やかしてるのは冥琳のくせに……」

 一刀が、雪蓮の注いでくれた杯を受け取りながらそう言うと、三羽烏が一斉に頷いた。

 

「そうですね。文句を言いながらもお仕事をたくさん肩替りしていらっしゃったり……」

「文句言いながら、嬉しそうに騒動の後始末しとるし……」

「ホント、冥琳様って、“つんでれ”さんなの〜♪」

 三人娘に、口々に冷やかされた冥琳は、端整な顔を朱に染めて、わざとらしく咳をした。

 

「う、うるさいぞ、全く……。大体、私は嬉しそうな顔をしてこやつの尻拭いなどしてはいない!主を支えるのは臣下の務めと思えばこそだな―――」

「はいはい。冥琳が私を愛してくれてるのは、十分わかってるって♪そ・れ・よ・り、折角、主賓用のお酒をこんなにかっぱら……じゃなかった。貰ってきたんだから、早く乾杯しましょ♪」

 

 冥琳の涙ぐましい言い訳をさらりと流した雪蓮は、その手に杯を渡すと、三人娘の方を振り返った。

「あなた達も、呑む?」

「いえ、残念ですが……」

「ホンマやったら、喜んで頂きたいんですけど……」

「お仕事中だから、ご遠慮するの〜」

 

 雪蓮は、そう言って首を振る三人に残念そうに微笑んだ。

「そう……。じゃあ、仕方ないわね。たまには、あなた達とも呑んでみたかったのだけど―――ま、それは次の機会って事で♪」

「自分も遠慮する、と言う選択肢はないのか?お前には……」

 

 冥琳が、あっさりと酒を進めるのを諦めて自分の杯を飲み干す雪蓮にツッコミを入れると、一刀は堪らず笑い出した。

「ははは。相変わらず息ピッタリだな、二人は」

「あら、愛し合ってるもの。当然でしょ♪」

 

 一刀が、苦笑を浮かべて「それはどうも、ごちそうさん」と、おどけて言うと、同じく苦笑を浮かべた冥琳が、少し表情を引き締めて言った。

「そう言えば、華琳殿達と愛紗達は、間に合わなくて残念だったな」

「あぁ。会えるのを楽しみにしてたんだけどな……。まぁ、仕方ないさ」

 

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 一刀は、冥琳の言葉にそう答えると、杯を煽った。華琳と季衣、流琉の三人がこの場に居ない事に関しては、先に述べた。

 だが、この場に居ないのは、彼女達だけではなかったのである。蜀の誇る軍神、関羽こと愛紗と、数え役萬シスターズの張三姉妹もまた、この場に居なかった。

 

「俺は、嬉しいんだ。天和たちが危険を冒してでも、怯えてる人々の為に歌を歌いたいって言ってくれた事も、愛紗が、その心意気を買ってくれた事も……」

 一刀は、芳醇な香りの酒が喉を灼く感触を楽しみながら、呟く様にそう言った。都に居た張三姉妹は、一刀帰還と、罵苦撃退の報を聞いてすぐ、『自分達も負けてはいられない』と、何度も罵苦が目撃された魏領、河北周辺の、慰撫と調査を兼ねたツアーの敢行を申し出てきたのであった。

 

 それを意気に感じた愛紗が、関羽隊麾下の精鋭を十人ほど選定し、彼等と共に、護衛役を買って出たのである。報告では、既に帰路には着いており、二・三日には帰れるだろうと言う事らしい。

「まぁ、今日来る筈の定時連絡が遅れてるってのが、少し心配ではあるけどさ……。華琳達の方は、確か今、河南の辺りだったっけ?」

 

 一刀が凪にそう尋ねると、凪は小さく頷いた。

「はい。最新の報告では、既に南陽に入り、彼の地を治めておられる張繍殿の居城、宛城で、河が渡れる様になるまでご滞在になられるそうです」

 それを聞いた一刀の顔が、一瞬、強張った。

 

「凪、華琳は、河南に滞在するんじゃなかったのか?」

「はい。当初はその予定だったようですが、張繍殿のお勧めもあり、出来るだけ都に近い方が良いだろうとの事らしく……あの、隊長?」

 一刀は、凪の問い掛けで、目まぐるしく渦巻く思考の波のうねりから自分を解放した。見れば、凪だけでなく、その場に居る全員が、気遣わしげに一刀を見つめている。

 

「ん?どうした、皆?変な顔して……」

 一刀が、務めて明るくそう言うと、沙和が怖々といった様子で、一刀に話しかけた。

「隊長、今、凄くコワイ顔してたの……どうかしたの?」

「あぁ……いや……」

 

 一刀は、小さく首を振って、沙和の頭を撫でた。そう、そんな筈はないのだ。この世界では、張繍は華琳に反乱を起こした事実はない。

 当然だ、正史でのブレーンであった賈駆は、詠として、ずっと一刀達と一緒に居たのだから。また、この世界での張繍は女性であると聞いた事があったし、正史での張繍の叔父、張済も女性であったと言うから、曹操が側妾にした事で張繍が曹操を恨む原因となったと言われる、張済の未亡人も当然存在していない。

 

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 個人的に華琳を恨む根拠のない張繍が、反乱を起こすメリットなど何処にもないのだ。まして、三国が協力体制を敷いている今、華琳を手に掛ければ、周りは即ち敵だらけ。保護や援助をしてくれる人物など、存在しないのである。しかし―――。

 一刀が、『なんでもないよ』と言おうとするより早く、今まで朗らかな笑みを浮かべていた雪蓮が、真顔になって一刀に言った。

 

「一刀、“貴方も”何か感じたの?」

 一刀が、驚いて雪蓮を見ると、雪蓮は構わず言葉を続けた。

「それとも、天の知識として、なにかしら知っているのかしら?」

「雪蓮、“貴方も”って事は、まさか……」

 

 一刀の問いに雪蓮は頷いた。

「そうなの。華琳が張繍の所に泊まるって聞いた時から、どうも胸騒ぎがするのよ……それに……」

「それに?」

「愛紗達の事もね……こっちは、今朝までは何ともなかったんだけど、さっき貴方が、『定時連絡が遅れてる』って言ったのを聞いた時、華琳の方と同じくらい嫌な感じがした……」

 

 一刀が口を開こうとした瞬間、胸元に振動が起こった。卑弥呼からの通信が入ったのである。

 一刀は、皆に詫びてその場を離れ、中庭にある林の木陰で、通信機を取り出した。

「卑弥呼、罵苦だな?」

 一刀が開口一番そう言うと、卑弥呼は少し面食らった様な声で答えた。

 

「う、うむ。その通りだ。ご主人様。だが、どうして解ったのだ?」

 一刀は、「雪蓮の勘さ」とだけ答えると、卑弥呼に続きを促した。

「成程な。孫伯符ならば、そんな事もありうるか……。では、反応が二ヶ所と言うのはどうだ?」

「予想はしてた―――場所は、河北の方と南陽じゃないか?」

 

「うぅむ、そこまで承知とは!儂の存在意義が無くなってしまうな……」

 卑弥呼が落ち込んだ声でそう言うと、一刀は小さく笑って言った。

「そんな事はないさ。これで、軍を動かすだけの確証が得られたからな」

「そうか。ならば良かった。しかし、ご主人様よ。今回は、両方とも一筋縄では行かんかも知れぬぞ」

 

「と、言うと?」

「うむ。今回は、二ヶ所とも、反応が非常に強い……前回同様、幹部の“四凶”が出張っているのかも知れぬ……」

 卑弥呼が珍しく神妙な声でそう言うと、一刀は乾いた笑みを浮かべた。

 

「なに……例え相手が何であれ、俺は自分のすべき事をするだけだよ。他に何か解ったら連絡をくれ。頼んだぞ、卑弥呼」

 一刀はそう言って通信を切ると、踵を返して、皆が居る中庭の中央へと急いだ。仲間達に、愛しい軍神と覇王を救う力を借りる為に―――。

 

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 さて、今回のお話、如何でしたか?

 一刀達も都へ戻り、いよいよ新章に突入しました。本当は、各勢力の恋姫達との再会もじっくりやりたかったんですが、それだと、いくらページ数があっても足りないので、個別EPに持ち越します。すみません……。

 さて、今回のサブタイ元ネタは、東京魔人学園剣風帳OPテーマ

 

 風詠みて水流れし都

 

 でした。

 インストですが、疾走感と和のテイストが融合した、カッコイイ曲です。

 バトルもののOPとしてもピッタリですし、これからは“都”が主な舞台になる予定ですので、そこら辺と絡めてみました。

 

 さて、ここで読者の皆様に簡単なアンケートのお願いです。実は今、愛紗と張三姉妹の登場する『関羽千里行』編と、華琳、季衣、流琉の登場する『宛城の激戦』編のどちらを先に書こうか、かなり迷っております。

 どちらも、ssを書き始めた初期の頃から構想のあった、とても書きたかったEPなので、自分でも決めかねてしまっている次第です。

 なので、皆様に背中を押して頂けたらと思います。因みに、あくまでも書く順番の事なので、結果によって、それ以降のストーリーが変わる訳ではありませんので、あしからず。

 

 1:関羽千里行』編 読んで字の如く、愛紗をメインに据えたお話です。

 2:『宛城の激戦』編 華琳と流琉がメインで、流琉の方が少し割合が高いかなぁ、と、現時点では考えています。

 

 では、コメント欄にてご回答をお願いします!

 尚、別に必ず答えなくてはいけない訳ではないので、普通の感想もお待ちしております!

 

 では、また次回、お会いしましょう!!

 

 

 

 

 

 

説明
 どうも皆様、YTAです。
 今回は、さっくりと都に到着した一刀達の話を書きました。じっくり行くのは個別EPの時と言う事で、御理解下さい。
 また、あとがきにて、簡単なアンケートのお願いがあります。本当に簡単な、皆様に背中を押して頂きたいと言うだけの物ですので、お気軽にコメ欄にてご回答頂ければと思います。

 では、どうぞ!!
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コメント
O-kawaさん あ、ホントだ。修正しときます。勢いで書いてる所は、結構こう言うの多いんですよねぇwwwありがとうございます。皆さん、意外と流琉ちゃん好きなんですね。ssではあんまり見かけないので、不人気なんだと思ってたのに……www(YTA)
細かいですが2Pの下のほう、「建前”に”位にしか〜」が余分では? あ、アンケートは2で。流琉好きなので。(O-kawa)
西湘カモメさん すみません。名前、抜かしてしまいました……orz最初のレスに入れたつもりだったのに……。(YTA)
はい、終了〜♪と言う訳で、アンケートはただいまを持って受付終了とさせて頂きます。流石に、これだけ2が圧倒的だと誰もコメくれませんでしたね……。兎も角、この結果を受けて、次回作を書いて行こうと思います。皆様、ご協力ありがとうございました!(YTA)
皆さん、ご協力ありがとうございます!一応、今日の午前零時までは待ってみるつもりでしたが、こりゃあ、当選確定っぽいですねぇwwwとは言え、待つだけは待ってみようと思うので、引き続き宜しくです!(YTA)
アレン★ゼロさん 一応、両方マジメなお話にする予定ですよ……多分。(YTA)
劉邦柾棟さん 別に、愛紗をオチ要員だなんて言ってませんよぅΣ(゚д゚)まぁ、テッパンではあるんでしょうがwww(YTA)
2828さん 全くです。十周年のネットラジオで新作出すって聴いた時は、小躍りして喜んだのに…(;´Д`)ウウッ…(YTA)
paradisaeaさん ここまで一方的な展開になるとは……。とは言いえ、結果が出てしまったので、愛紗とシスターズは、もう暫くお待ちください。(YTA)
akiecoさん 皆さん、華琳様より流琉が気になるみたいですね。意外ですwww(YTA)
にゃものりさん ご期待にそえるように頑張りますwww(YTA)
readmanさん、トトクロさん、tomatoさん、シリウスさん、了解しました。(YTA)
どちらとも捨てたがたいが、2からでお願いします。(西湘カモメ)
まじめ率の高そうな2からで(アレン★ゼロ)
2でお願いしまする(シリウス)
そういう訳で、最初はやっぱり2の華琳たちのマジメな話で最後に1で愛紗のオチ話という感じかな?(劉邦柾棟)
最初は2かな? いやだってねえww、1だと愛紗たちのピンチに駆けつけてきた一刀に対して惚れ直して抱きつこうとしたら天和たちが一刀といちゃいちゃし始めて愛紗がお約束で一刀にブチギレる展開が思いつくからオチ的な方向で御願いします。(劉邦柾棟)
2で サブタイ・・・・開発中止だもんなぁ・・orz(2828)
2ですかね。(tomato)
2で^^(トトクロ)
愛紗と張三姉妹と聞いては1を推さざるをえない(paradisaea)
流琉と聞こえたので2で(akieco)
2で。 (readman )
2.胸がゲフンゲフン..成長した流琉っちを早くみてみたいです。(にゃものり)
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