着いたのは森の中にある小川

そしてそのすぐ近くに小さな石碑のようなものがあった。

「これが・・・」

「母様のお墓よ・・・」

雪蓮は静かにそう言った。

そう、ここは彼女達の母である孫堅が眠る場所

姉妹揃っての墓参りに一刀は誘われ、一緒に来たのだ。

ちなみに恋は来ていない。

出来れば家族水入らずでやらせてほしいと、一刀が頼んだからだ。

甘寧もまた、孫権の頼みでついてくる事はなかった。

それぞれ掃除を始める四人。

・・・・・・・・・

「こんなモノかしらね？」

「うん！綺麗になったよ！」

「墓石もピカピカだぜ」

「・・・フゥ」

掃除を終えて一息つく四人。

そして皆墓石に向き直る。

そんな中雪蓮が一歩前に出て言った。

「母様。なかなか来れなくてごめんなさいね？この頃忙しくて・・・。でも今日は凄い報せがあるのよ？シャオが婚約したの。詳しい事はシャオから聞いてね」

雪蓮が下がり、それに続いて小蓮が前に出て話し出す。

「母様、雪蓮お姉ちゃんが言ったとおり、シャオお嫁に行くことになったの。スッゴクいい男なんだよ？・・・お母さん生きてたら横取りされそうな位」

小蓮が珍しく静かな声でそう言う。

「と言う訳で、ここにいるのが私のお婿さん、一刀だよ！ほら、一刀も自己紹介して」

グイッ！と一刀を引き寄せる小蓮。

そして一刀は姿勢を正した。

「孫堅さん、貴方の末娘の婿になる北郷一刀です。出来れば貴方が生きている間に・・・お嬢さんを下さい！！と言いたかった。そして孫を抱かせてあげたかった・・・」

一刀もいつになく真剣な口調（一部そうでもなかったが・・・）で墓石に語りかける。

雪蓮は微笑んで。小蓮は一刀の邪魔にならないよう下がって。そして孫権は驚きの表情で一刀を見ていた。

一刀の話は続く。

「俺は元々呉の人間じゃあありませんが、ここの皆は今の俺にとって大切な人達だ。貴方の愛した孫呉は潰させません・・・同盟破棄して攻め込んでこなければですけど。」

苦笑いして、最後に一刀はこう言った。

「シャオを不幸にはさせません、俺の命がある限り。どうか見ていてください・・・」

最後に頭を下げて、一刀は下がった。

「一刀・・・」

小蓮はそんな言葉が出るとは思わなかったのか、目を潤ませて感激していた。

「・・・・・・」

孫権は驚きの表情で固まったまま一刀を見ていた。

「蓮華？貴方が最後よ？」

雪蓮の声にハッとした孫権

慌てて前に出る。

そして墓石に話しかけようとした時・・・

「おい、孫権」

一刀が孫権に語りかける。

「・・・なんだ」

水を差されて不機嫌になる孫権。

しかし一刀の発言によって、それは激変した。

「肩に毛虫が居るぞ？」

「・・・え？」

一刀が指差した自分の左肩を見る孫権

そこには

（ヨジヨジ）

自分によじ登ってくる毛虫の姿が・・・

「イ・・・イヤ〜〜〜〜〜！！取って！取って〜〜〜〜〜〜！！」

叫びながら毛虫を振り落とそうとする孫権

「お、落ち着けって！今取るから・・・」

そう言って一刀は孫権の左に回りこんだ。

そして

ヒュッ！

グサッ！

「・・・は？」

一刀は後ろを振り返った。

自分の背中に何か生えている。

いや

そこには

一本の矢が突き刺さっていたのだった・・・

「グゥ！」

一刀は膝をついた。

「か、一刀！？」

小蓮と雪蓮は一刀に駆け寄る。

孫権は毛虫の事も忘れて唖然とそれを見ていた。

そして雪蓮は一刀の後ろの方の森を見る。

そこには弓を構えた兵士

周りにも何人か兵の姿が

「・・・！！」

それを見るや雪蓮は、兵士達に突っ込んでいった。

兵士達の悲鳴が響き渡る。

「一刀！しっかりして！！」

小蓮は一刀の近くで叫ぶ。

「・・・騒ぐなよ。矢を抜いて、まず服を脱がせてくれや・・・」

痛みはあるだろうに、動揺を見せずそう言う一刀。

「う・・・うん」

一刀の指示通り矢を抜き服を脱がす小蓮。

その傷は

紫色に変色していた。

「これって！！」

小蓮は傷を見て青ざめる。

明らかに毒矢の傷だ。

「・・・どうした？」

「・・・多分毒だよ」

「・・・そうか」

一刀はそれを聞いて即座に

「孫権よお・・・」

一刀の言葉にハッと正気に立ち返る孫権。

「傷を・・・剣で・・・」

「！わ、分かった！痛むが我慢しろ！！」

そして孫権は腰の剣を抜き、一刀の変色した場所を抉り出す。

「・・・！！」

一刀は血が流れ出すほど手を握り締め、歯を食いしばって痛みに耐えた。

抉られた場所から血が噴き出す。

そして小蓮と孫権は急いで止血する。

「・・・一刀は！？」

雪蓮が戻ってきた。

剣と全身に返り血を浴びて・・・

「応急処置はしました！すぐ医者に見せないと！！」

孫権が叫ぶ。

「・・・そうだな、俺もまだ死ぬ気はねえし・・・」

意識が朦朧とする中、一刀もそう呟く。

「一刀！」

「大丈夫だって・・・まだお前とモッコリで一発、やってねえし、未亡人にする気も・・・」

小蓮にそこまで言って一刀の意識は途切れた。

「一刀！！」

「シャオ！早く医者に・・・」

「皆で運ぶわよ！！」

慌てる二人に雪蓮が叫んで、一刀は三人によって運ばれていった・・・

城へ戻る途中、運よくまた別の国へ行こうとしていた華佗達と出くわした。

すぐさま治療に入る華佗。

そして

「・・・できるだけのことはやったが、今日か明日辺りが山だな・・・」

華佗の台詞に皆、顔をこわばらせる

「御主人様・・・」

貂蝉も泣きそうだ。

「とにかく、早く城に・・・」

「貂蝉！」

「卑弥呼！！」

二人はお互いに呼び合うと貂蝉が一刀を抱き上げ、華佗を卑弥呼が抱えた。

そして

「ヌオオオオオオオオーーー！！」

「行くわよーーーーーーン！！」

二人は全力疾走で城に向けて走っていった・・・

あっというまに見えなくなる。

「「「・・・・・・・・」」」

一瞬呆気に取られる三姉妹

だがすぐ正気に戻り

「私達も行くわよ！！」

「うん！！」

「は、はい！！」

三人揃って駆け出した。

城に帰った雪蓮は、冥琳に現場の調査を頼んだ。

そして割り出された犯人の身元は・・・

蜀

のものであった・・・・・・