真・恋姫?無双一姫伝・魏 第三話 恋姫ランド45 |
いきなり三国志の世界に放り出された私は、母親を殺された鞘花という女の子を助けた後曹孟徳…華琳の下で双子の姉妹、夏侯惇…春蘭、夏侯淵…秋蘭、と一緒に働く事になった。
そんなある日、盗賊討伐に出陣する事になったんだけど其処で出会ったのが荀ケ…桂花。
華琳を試したりして怒らせるようなまねをしたけど何とか軍師として採用された。
そして、行軍中にあらわれた盗賊達を偵察していた私と春蘭の前で一人の女の子が闘っていた。
「お前達なんかに村は襲わせないぞーーー!!」
真・恋姫+無双一姫伝・魏
第三話「新しき仲間、そして明日の為の涙」
私達はその光景に唖然としていた。
一人の小柄な少女が盗賊達を次々と薙ぎ倒しているのだから。
「おお、何と勇敢な少女だ。私も負けてはおれん!」
そう言うと、春蘭はまっすぐに盗賊達の所に走って行った。
「ち、ちょっと春蘭待ちなさい!はあ、まったく猪なんだから。ねえ、貴方達の中で一番早いのは誰?」
「はっ私です。馬の扱いには自信があります。」
私の問いに一人の兵士が答えて来た。
「そう?じゃあこれから私と春蘭で盗賊達を適当に蹴散らして何人か逃がすから後をつけて連中の拠点を見つけてちょうだい」
「了解しました!」
「残りはここで待機、後で来るかr…曹操様に報告をしてちょうだい」
「「了解!!」」
そう言って私は春蘭の後を追いかけた。
「…いくら盗賊とはいってもやっぱり人を傷つけるのは怖い。…でもそんな弱音を言ってる場合じゃない、覚悟を決めなくちゃ」
シュルッ
私は腕から外したスカーフで髪をポニーテールにまとめて戦闘準備をととのえた。
「うりゃあーー!!」
少女は盗賊達を倒して行くが、多勢に無勢、徐々に追い詰められて行く。
「相手は一人のガキだ、周りを囲んで一気に畳み掛けろ!」
「く、くそう!」
「今だっ、かかれーー!」
「やらせるかーーー!」
ズバッザシュッザシュッ
其処に春蘭が盗賊達を切り捨てながら少女の元に辿り着いた。
「大丈夫か、勇敢な少女よ。遅ればせながら私も手を貸すぞ」
「あ、ありがとう」
「礼などいらぬ、大の大人が少女一人を相手に群れをなして襲いかかるとは、恥を知れ!この場で全員皆殺しにしてくれる」
「待ちなさい!全滅させたらダメでしょ、私達の任務は偵察なのよ」
(わ、また来た。今度は綺麗な姉ちゃんだな)
「ここで全滅させれば偵察の必要はなかろう」
「これで全員の訳がないでしょう、何人か逃がして連中の拠点まで案内させるのよ」
「おお、なるほど」
「じゃあ行くわよ、はあああーーー!」
「とおりゃーーー!」
「うりゃああーー!」
「ひいいいーーーーー!」
そして予定通り何人かは逃げ出し、その後を偵察の為の兵士が追いかけて行く。
後は偵察が戻って来るのを待つだけだ。
「あの、ありがとう!おかげで助かったよ」
「礼などいらぬといったであろう」
「そうよ、私は北郷。貴女は?」
「ボクは許緒」
「私は夏侯惇だ」
自己紹介をしていると、華琳達本隊が追い付いて来た。
「一姫、春蘭、御苦労さま」
「お姉様ーー!! ご無事ですかーー!?」
「!!!」
華琳の率いる軍勢を見ると、突然許緒の表情が固くなった。
「一姫、奴らの拠点は分かった?」
「まだだけど、逃げ出した奴らを追いかけさせたからじきに見つかると思うわ」
「何、何時の間にそんな事を?」
「貴女が後先考えず飛び出した後に兵士に頼んでおいたのよ」
「さすが一姫ね、頼りになるわ」
華琳と会話をしていると許緒が険しい表情のまま近づいて来た。
「ねえ、お姉さん官軍の人?」
「ええ、そうだけど何?」
「やっぱり…、ええーーい!」
そうだと答えると許緒は突然華琳に襲いかかった。
ガキイィィィィィィン!!
許緒が投げ放った鉄球を私と春蘭が何とか受け止める。
「くうっ」
「うぬうっ!! 許緒、貴様!!」
「ど、どうしたのよ許緒、いきなり何をするの?」
「官軍なんかが何しに来たんだ!! 払える税金なんかないぞ!盗賊達に襲われてみんな生きてくだけで精一杯なんだ」
「ちょっと待ってよ、私達はその盗賊達を討伐する為に陳留から来たのよ、税金を取りに来たんじゃないの」
私がそう言うと、許緒の強張った表情は呆然とした感じに変わり、溢れんばかりの闘気は空気の抜けた風船の様に小さくなっていく。
「えっ陳留から……ご、ごめんなさい!ボク聞いたことあります、陳留の刺史様は民の事を一生懸命考えてくれる立派な人だって。そんな人にボクとんでもない事を…」
許緒はそう言いながら鉄球を手放すと華琳に頭を下げながら謝罪をする、
「いいのよ、貴女達の様な弱い民達を食い物にする屑共が居るのは間違いのない事実なんですから。許緒と言ったわね、貴女のその力、私に貸してくれないかしら?」
「ボクの力を?」
「ええ、私はいずれこの大陸の王となるわ。その為には力が必要なの、まずは貴女の村を苦しめている愚かな盗賊共を退治するのを手伝ってくれないかしら」
「はい、ボクでいいなら喜んで!」
「良かったわね、許緒」
「うん、ありがとう姉ちゃん。それとこれからは仲間なんだからボクの事は真名で季衣って呼んでいいよ」
(うう〜、お姉様のことをなれなれしく姉ちゃんなんて…羨ましい……)
「ならば、私の真名も預けないとね。季衣、これからは私の事は華琳と呼びなさい」
「私は一姫よ。よろしくね、季衣」
「私の真名は春蘭だ。季衣よ、これから共に華琳様を守ろうではないか」
「私は夏候淵、真名は秋蘭だ。頼りにするぞ、季衣」
「私の真名は桂花よ」
「うん、よろしくね。春蘭様、秋蘭様、桂花様、姉ちゃん」
「ちょっと、貴女!! 何でお姉様の呼び方だけ姉ちゃんなのよ!?」
「ボク、姉ちゃんが居ないから姉みたいな人に憧れていたんだ。ダメ…かな、姉ち…一姫様?」
季衣は潤んだ瞳で指を咥えながら見上げて来る。
……か、可愛いじゃない。
「別に構わないわよ。私も妹が増えて嬉しいわ」
「やったぁーーっ!! ありがとう、姉ちゃん」
季衣は輝く様な笑顔で私に抱きついて来た。うう〜〜、可愛すぎ。
…だから華琳、羨ましそうに指を咥えながら見つめるのは止めなさい。
そしてまもなく盗賊達の拠点が見つかったという報告が入って来た。
ワアアアアアーーーー!!
盗賊達との闘いはほぼ一方的だった、何の策もなく力任せに襲いかかって来る盗賊達に軍としての正式な訓練を受けた兵士達が負けるわけがなかった。
そうして私と秋蘭は盗賊団の首領を追い詰めた。
「もう逃げられんぞ、大人しく投降しろ!」
「くそう、やなこった!オレはまだまだ面白可笑しく暮らしたいんだ、こんなところで捕まってたまるか!」
ピクンッ
今、この男は何と言った?
「…面白可笑しく?……」
ヒィィィィィィィン
心の奥底から湧きあがって来る怒りに呼応するかの様に私の持つ槍が低い音を立てながら震えている。
(ん、何だこの音は?何処から聞こえて来る?)
一姫と共に闘っていた秋蘭の耳に何か低く唸る音が聞こえて来た。
「何が面白いの?……」
ヒィィィィィィィィィン
一姫は盗賊の頭領へと一歩足を踏み出す。
「何が可笑しいの?……」
ヒィィィィィィィィィィィィン
また一歩、また一歩と近づいて行く。
「ひ、ひいいいい……」
「人の命を、人の幸せを……」
ヒィィィィィィィィィィィィィィィィン
一姫が近づいて来る度に頭領の顔は青ざめて行く。
「人の笑顔を奪うのがそんなに楽しいの?……」
ヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
「く、来るな……来ないでくれぇ……」
男はもはや一歩も動けず、その足は震え、逃げる事も出来ないでいる。
ふと秋蘭が一姫の槍を見ると小刻みに震えていた。
(何だ、槍が鳴いているのか?)
「許せない、面白半分に人の命を奪うなんて……絶対に許さない!!」
「…一姫……?」
「い、嫌だ、嫌だ、嫌だぁーーーっ!! 死にたくねえーー、助けてくれぇーーーーーっ!!」
ブンブンブンブンブンブン
一姫は体の前で槍を高速で回転させ、その烈風で真空状態を作り出す。
そして横薙ぎに一閃、無数の見えざる真空の刃が泣きながら命乞いを繰り返す哀れな男に襲いかかる。
『朱雀・烈風刃波(すざく・れっぷうじんは)!!』
ズババババーーーーッ
「ギャアアアアアーーーッ」
男の体は幾重のも真空の刃にズタズタに切り裂かれ、まもなく息絶えた。
「ハアハアハアハア……」
ヒィィィィ……
一姫の槍は男の命が尽きるのと同時にその鳴動も消えて行く。
(あの槍は一姫の怒りに反応して鳴動したのか、一体あの槍は……)
暫くして賊の討伐は終り、一姫は岩へと腰を下ろし自分の手を見つめていた。
その顔は今にでも倒れそうな位に真っ青であった。
(……殺した?誰を?誰が?私が?この手で?………)
「大丈夫ですかお姉様?顔色が悪いですよ」
「姉ちゃん……」
「大丈夫よ、ちょっと疲れただけだから」
桂花と季衣が心配そうな顔で覗いて来る。
だらしないな私、覚悟は…していた筈なのに。
「だらしないぞ、北郷。この程度の戦闘で」
「あはは…、そうね……」
「…本当に大丈夫か?」
その頃、本陣の天幕の中で華琳は秋蘭からの報告を受けていた。
「そう、一姫にそれほどの力が…」
「はい、それにあの槍にも何か隠れた力が」
「それでも一姫が私達の仲間であることに変わりはないわ」
「それは私も信じています、ですが…」
「待ちましょう、一姫が話してくれるのを」
「はい」
こうして盗賊討伐を終えた私達は季衣という新しい仲間を加え、陳留への帰路についた。
城に戻った私は体を引きずるように部屋に戻った。
扉を開き、部屋の中に入るとささやちゃんが駆け寄り抱きついて来た。
「あっ、おねえちゃん、おかえりなさい!」
「ただいま、さやちゃん」
ああ、帰って来たんだ。この場所に、何時もの日常に。
しかし、あの“現実”が変わる訳でも無く、さやちゃんの笑顔の向こう側にあの死に顔が見える。
「??おねえちゃん、どこかいたいの?」
「……え、どうして?」
「だっておねえちゃん、なんかいたそうなおかおをしてるよ?」
「…そんなに痛そう?」
「うん、だからね」
そう言ってさやちゃんは寝台に座って膝を叩きながら言った。
「ここにねて。さやがいたいのいたいのとんでけーってしてあげる」
「………さやちゃん…、ありがと…」
さやちゃんの言葉に甘えて私は彼女の膝を借りる。
そうしてると何だか目の奥が熱くなって来て仕様が無い。
「ねえさやちゃん。おねえちゃん、泣いてもいいかな?」
「うんいいよ。だいじょうぶだよ、さやがそばにいるからおねえちゃんのかかさまも、しんぱいはしないよ」
「うん、……グスッ…」
「いたいのいたいのとんでいけー」
そう言ってさやちゃんは優しく私の頭を撫でてくれた。
「ううう…うええ…、うわああああああーーーん!」
「いたいのいたいのとんでいけーー」
「うわあああーーーーーーん!」
ぅゎぁぁぁーーーーーっ」
華琳は部屋の外でその泣き声を聞いていた。
(ごめんなさい一姫、優しい貴女に人を殺めるなんて辛い重荷を負わせる事になって。でも私達に歩みを止めてる余裕はないの、人々の明日の笑顔の為にも…)
その思いを残して華琳は部屋を後にした。
「うわああああーーーーーーん!」
少女は泣いた。
人を殺めた罪から逃げる為では無く、それを受け入れて前に進む為に…
明日を迎える為にも、今はひたすら泣いた……
続く
《次回予告》
やめて華琳、なぜこんな事を?
「ふふふ、何故かしら」
そんな…桂花、貴女まで私を裏切るの?
「ごめんなさい、お姉様」
季衣、どうしてなの?
「ごめん、姉ちゃん」
いや、助けて、誰か助けて…
次回・第四話「華琳達の日常・そして、病みしモノの降臨」
裸の付き合いは大切よ♪
嫌ぁーーーーっ!
「やらしい目で見ちゃダメだからね!」
説明 | ||
再構成版・第三話 蜀√やGS美神の方も書き変えなくちゃな。 2013/1/14/再修正 |
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