真・恋姫†無双〜赤龍伝〜第68話「龍の眼」 |
真・恋姫†無双〜赤龍伝〜第68話「龍の眼」
赤斗「ねえ嶺上。今回の人選はどうやったの?」
馬に乗り修行の場へと向かう途中、赤斗は嶺上に尋ねる。
嶺上「簡単さ。姫と恋はついて行くと聞かなかったから、火蓮さんが同行を許したんだ」
赤斗「ああ、火蓮さんはシャオに甘いもんね」
嶺上「姫の護衛に私がついてきて。亞莎は建業との連絡役だ」
赤斗「そうなんだ」
嶺上「まあ、修行するなら、組み手の相手ぐらい必要だろ。私もそれぐらいの協力はするからな」
赤斗「ありがとう。頼りにしているよ」
嶺上「ああ、頼りにしてくれ♪」
その後、半日ほど何気ない事を話している内に目的地に到着した。
そこは森と小川に挟まれた場所だった。
赤斗「ここですか?」
虎徹「ああ」
小蓮「わー、きれいなところ♪」
亞莎「陽が暮れる前に着いて良かったですね」
赤斗「そうだね。それじゃ早速、野宿の準備をしようか」
虎徹「いや、その前に軽く組み手をするぞ」
赤斗「今からですか?」
虎徹「そうだ。すぐ終わるから大丈夫だ」
赤斗「……そうですか。なら、やりますか」
赤斗は荷物を置いて、虎徹に向かって構える。
虎徹「勘違いするな。相手は俺じゃないぞ」
嶺上「じゃあ、私っすか?」
虎徹「いや、そっちの……」
その場に居る全員が、虎徹の視線の先に注目した。
亞莎「えっ? わ、私ですか!?」
小蓮「なんで嶺上じゃなくて、亞莎なの?」
虎徹「失礼だが、呂蒙殿。君は目があまり見えていないのでは?」
亞莎「はい」
虎徹「やはりな。それで呂蒙殿は戦う時はどうしているのだ?」
亞莎「私は戦いの時、目で見るのではなく、気配で相手の居場所を察知し、戦っています」
赤斗「へぇ〜そうなんだ」
虎徹「感心している場合か。今のお前に必要な事だぞ」
赤斗「気配を察知して戦う事ですか?」
虎徹「そうだ。だから、まず始めに呂蒙殿と戦ってもらう」
亞莎「私なんかが赤斗様に敵うはずありません」
嶺上「面白そうじゃないか。亞莎やってみなよ」
亞莎「嶺上様まで」
赤斗「亞莎。よろしく頼むよ」
亞莎「うう、分かりました」
しぶしぶ亞莎は組み手の相手を承諾した。
赤斗「じゃあ早く始めようか」
虎徹「ただし赤斗! 奥義は使うなよ」
赤斗「え?」
素手空拳同士の赤斗と亞莎が向かい合って構える。
虎徹「準備は良いか?」
赤斗「はい」
亞莎「は、はい」
虎徹「それでは、始めっ!!」
虎徹の掛け声とともに、赤斗と亞莎が動き出した。
二人は一気に間合いを詰める。
亞莎「はっ!」
赤斗「くっ」
亞莎が繰り出した掌底が赤斗の胸に命中する。
本来の赤斗なら躱す事も防ぐ事もできたはずだが、右目を使えない赤斗は、まともに亞莎の掌底を喰らってしまった。
亞莎「はああぁぁーーっ!」
続いて亞莎は左上段回し蹴りを繰り出す。
赤斗「がっ!!」
赤斗は蹴りもまともに喰らってしまい、そのまま地面に倒れた。
虎徹「それまで!」
小蓮「ちょっと赤斗! 大丈夫?」
虎徹の終了の合図とともに、小蓮が赤斗に駆け寄る。
赤斗「痛ったた、大丈夫だよ。けど……」
虎徹「何もできなかったな」
赤斗「………………はい」
亞莎「す、すみません赤斗様! わ、私、なんて事を!」
慌てふためきながら亞莎が赤斗に近づく。
赤斗「組み手なんだから、そんなに畏まらなくてもいいんだよ。亞莎は強いね♪」
赤斗は亞莎が安心できるように笑顔で答える。
亞莎「赤斗様……」
そう言うと亞莎は赤斗と見つめ合う。
虎徹「そろそろいいか?」
亞莎「すすす、すみません!」
虎徹に言われ、亞莎は赤斗から離れた。
虎徹「じゃあ、野営の準備をするぞ」
嶺上「了解っす」
赤斗「はい」
そう言うと赤斗たちは、野営の準備を開始した。
その夜…………。
赤斗は天幕を一人離れて、小川の辺に居た。
赤斗「…………」
右目が使えない事や奥義を使わなかったとはいえ、何もできずに亞莎に負けた事にショックを受けていた。
赤斗「……まだまだだな」
嶺上「本当だな」
赤斗が一人呟くと、背後から嶺上の声が聞こえた。
赤斗「嶺上!? ……いつの間に」
嶺上「別に気配は消していなかったはずだけど……」
赤斗「……そうか」
元気なく赤斗は答える。
嶺上「どうしたんだ? 本当に元気がないな」
嶺上が心配そうに近づき、赤斗の顔を覗き込む。
赤斗「別に、……何でもないよ」
嶺上の顔が近づけてきた事に、赤斗は顔を赤く染める。
嶺上「亞莎に負けた事が悔しいのか?」
赤斗「……いや。悔しくはないよ。ただ不安なんだ」
嶺上「不安? 何が不安なんだ?」
赤斗「このまま……何の役にも立たなくなってしまうんじゃないかって」
嶺上「…………お前の役目は戦う事だけじゃないだろ」
赤斗「そうかもしれないけど…………やっぱり不安なんだよ」
そう言いながら赤斗は、右目に巻かれた包帯に触れる。
嶺上「ふーーーん。……なら、その目を早く治して、より一層、強くなればいいだろ」
赤斗「ふふ、そうだね。嶺上ありがとう。少し元気が出てきたよ♪」
嶺上「そうか。良かったな。そろそろ天幕に戻るか」
赤斗「ああ」
赤斗の返事を聞いた嶺上は、赤斗に背中を見せて天幕へと向かう。
赤斗も嶺上のあとを追って天幕に戻る事にした。
その時、赤斗は何気なく触れていた右目の包帯を取ってみたいと思った。
火蓮からは医者の許可が出るまで外さないように言われたが、気になると外したくて堪らなくなる。
赤斗(汚れた包帯は取りかえないといけないしな)
そして、自分で都合の良い理由を作り、包帯に手をかけた。
右目に巻かれていた包帯を外して、赤斗はまず瞼に触れてみた。
しかし、瞼には火蓮が言っていたような腫れがある様には感じなかった。
赤斗(……腫れ引いたのかな)
そして、赤斗はゆっくりと右目を開けた。
赤斗「―――――――――っ!!」
その瞬間、赤斗の右目に入ってきたのは、凄まじい光だった。
もう夜だというのに、凄まじい光が赤斗の右目に入り込む。
赤斗「っ……ぁ……ぁあ」
赤斗は入り込んできた光の正体にすぐに気がつく。
小川の流れる音が、足元で咲いている花の匂いが、身体に当たる風が、辺りの気の流れすらも、赤斗の右目には見えた。
本来、視覚で認識するはずのない膨大な情報が右目から脳へと入り込んでくる。
赤斗「ぁ……」
かつて狂神を発動させた時も、関羽戦で奥義を同時発動させた時も、こんなに身体に負担は掛からなかった。
入り込んだ膨大な情報を処理する事が出来ない赤斗は頭が割れそうだった。身体が押し潰されそうだった。
赤斗「………ぐっ………あぁ」
堪らなく赤斗は地面に手と膝をつき、四つん這いに倒れる。
赤斗「は……はっ……はぁ、はぁ……は……」
呼吸も上手くできなくなっている。
嶺上「赤斗どうしたんだ!?」
赤斗の異変に気がついた嶺上が駆けよってきた。
赤斗「りん…しゃ……ん…………」
そこで赤斗は気を失った。
赤斗「うぅ……」
赤斗は目を覚ます。身体中が汗でビショビショになっている。
赤斗「痛っ!」
激しい頭痛に襲われ、頭を押さえた。
赤斗「うぅぅ……ぅぅ」
例えようのない頭痛に頭を抑えながら、その場で蹲る。
赤斗「うっ、はぁ、はぁ……ぅぅ……ぅぅ」
あまりの痛みに赤斗は泣きそうになる。
小蓮「赤斗っ!」
そこに小蓮が天幕の中に入ってきた。
小蓮「赤斗っ! 赤斗っ! しっかりして!」
赤斗「ぅぅ……シャ…オ?」
小蓮「もう大丈夫だよ。シャオがここにいるからね」
小蓮は赤斗を優しく抱きしめた。
赤斗「……シャオ」
小蓮に抱きしめられているうちに、赤斗の頭痛は次第に治まっていった。
つづく
説明 | ||
この作品は、基本的に呉√にそっては行きますが、他√に 脱線することもあります。また、主人公も含めてオリジナルキャラクターが出てきます。 未熟なため文章におかしな部分が多々あるとは思いますが、長い目で見てくださると助かります。 |
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