真・恋姫†無双 ~君思うとき、春の温もりの如し~ 合間11 前編 |
人は変化するものである。
それは私がこれまで生きていて、幾度も経験してきた。
江賊をやめ、私は呉の将となった。
そこで雪蓮様をはじめ冥琳殿や祭殿といった人たちと出会った。
……そして孫権様…一刀様と出会った。
人は変化に戸惑うものである。
私もはじめは戸惑った。
何故、呉は賊であった私を将にしたのかと。
過去に敵として戦った事のある私を迎えたのかと。
しかしそんな事はどうでも良いと思えるようになった。
私を仲間だと、家族だと言ってくださる人たちが出来たから。
だが私は再び戸惑っている。
自分の中の変化に。自分の気持ちに。
でも、その正体はもう分かっている。
大きくなりすぎた気持ちをもう無視することは出来ない。
だから、この気持ちにケリをつける。
変化を恐れてはいけない。
もう、自分の中で答えはわかっているのだから……
「ふぅ……」
朝の調練を終え、周りの新兵達がぐったりと倒れているのを見届けその場を後にした。
あれぐらいで倒れるとは、まだまだ鍛錬が足りんな。
今日はこの鍛錬が終われば後は休みとなっている。
さて、どうしたものか。
趣味などがあれば適当に時間をつぶすことができるのだが、生憎私には趣味と言うものは無い。
船の扱いは呉で一番だと自負しているが、それは戦いの時にであって趣味ではない。
今日一日どう過ごそうかと考えていると、
「思春!」
不意に自分の名を呼ばれ驚いて振り向くと、少しっ離れたところに一刀様が立っていた。
「……一刀様」
「朝の調練、終わったのか?だったら、一緒に朝飯でもどう?」
こちらに駆け寄ってきてそう聞いてきた。
特に予定もないので私は快諾し、2人で城の食堂へと向かうことにした。
食堂は空いており、適当に空いている席に座り料理を注文した。
いつもは2人きりになっても苦では無いが、自分の気持ちに気が付いてから一刀様と一緒にいると少しドギマギしてしまう。
「そういえば、新兵の調練の具合はどうだ?」
「っはい!……まだまだですね。
皆やる気はあるのですが、持久力が足りなく、今日もへばっていました」
私はさっきの新兵たちの様子を思い出し、一刀様に報告する。
「そうか……冥琳達と相談して、もっと効率の良い訓練を考えなくてはいけないな」
一刀様は顎に手を当て少し考える様子を見せた。
「多分、もうすぐ華琳が…曹操達が攻めて来るだろう。
彼女の望みは自身の手による大陸の統一だ。
だから一刻も早く新兵の調練を終えたいのだけど……」
そう言うと再び考えを始めた。
曹操の話をするときの一刀様の顔は少し嬉しそうに見える。
それは自分が認めた相手に対して、敬意と対抗心をのぞかせている顔だった。
曹操は一刀様の私塾時代の学友だったと聞く。
一刀様に少しでも敬意を払われている曹操を少し羨ましくもある。
そう考えていると、注文していた料理が机へと運ばれてきた。
「今日は思春、もう休みだったよな。
じゃあ、一緒に劇を見に行かないか?」
「劇、ですか?」
芝居にはあまり興味がない。
一度、穏に連れられて演劇を見に行ったことがあるが、その時の話は内容が難しく、穏は楽しそうに見ていたが私はちんぷんかんぷんであった。
「いえ、難しい話は……」
非常に残念ではあるが断ろうとすると、
「別に難しい話じゃないよ。今回は項羽と劉邦の話だ」
そう言い懐から木で出来た2枚の券を取り出した。
「話も軍記物だし、きっと面白いよ。どう?」
確かに項羽と劉邦なら私でも知っているし、軍記物なら小難しい話では無いはずである。
「…わかりました。ご一緒させていただきます」
「よかった〜。
劇は昼過ぎからだから、昼前にここを出て、街で昼飯を食べてから劇場へと向かおう」
その後、集合場所を決め、一度別れることとなった。
約束の時間となり、集合場所に向かうとすでに一刀様の姿が見えた。
「申し訳ありません。お待たせしました」
「いや、俺も今来たところだよ」
そう言い私の手を取り、
「じゃあ、行こうか」
私は握られた手に少しびっくりしながらも努めて冷静を装った。
一刀様に手を引かれ、なされるがままに歩いているとあることに気が付いた。
「一刀様、先に昼食を食べるのでは無いのですか?」
私たちが向かっている方向は料理店がある区画とは全く違う。
「その前に思春の服をね……」
「私の服ですか?」
改めて自分の姿を見てみるが別段変わったところは無い。
いつもの服装に一刀様から誕生日にもらったかんざしを挿している。
「特にいつも通りですが……」
「だからだよ。
せっかく2人で出かけるんだ、思春もお洒落しなくちゃ」
一刀様はある店の前で足を止め、私を連れて中に入っていった。
店は服を扱っているところで、きれいな服が並んでいた。
普段お洒落には興味がなく、動きやすい服を選ぶ私にとっては馴染みの無いところだ。
「済まない!この娘に似合う服を探しているのだが」
一刀様は店員を呼ぶと私を店員の前へと押し出し服を選び始めた。
店員はニコリと笑いながら、愛想良く私たちに対応をする。
「わかりました。でしたらこちらのところからお選びください」
私の体格に合う服のところに案内され、一刀様はいくつかの服を選んできた。
「まずはこれだ…」
店員に試着室へと連れられて、一刀様が選んだ服を着る。
「一刀様!これは何ですか!?」
試着室の仕切りを勢い良く開け抗議の言葉を叫んだ。
着てみて後悔した。
一刀様がまず選んだのは黒を基調とした上と下が一体の服であった。
長い腰巻には白のフリフリが付いており、腕の袖部分にも同様のフリフリが。
「おっ、可愛いじゃないか」
「〜〜〜!!そんなことありません……」
例えお世辞でも一刀様に可愛いと言われれば悪い気はしない。
「思春は元が良いからやっぱり可愛いな。でも気に入らないか……似合ってるのになぁ」
「でも、この服は少し動き辛いです……」
一刀様はそっかと言うと次の服を探し始めた。
「ふふふ、お優しい彼氏さんですね」
「か!彼氏ではない……」
微笑みながら聞いてきた店員の言葉に慌ててしまう。
少し経ち、一刀様は新しい服を持ってこちらにやって来た。
新しい服に着替え、諦めのため息を吐きながら仕切りを開けた。
「はぁ〜。どうですか?」
一刀様が次にもってきたのはいわゆる旗袍であった。
しかし普通の旗袍とは違い胸元の部分が開かれており、雪蓮様がいつも着ている服に近かった。
丈は短く膝の上までである。
私のささやかな胸ではあまりこの服は……
そう思っていると店員が
「お似合いですが物足りませんね。
……これを羽織ってはどうでしょう」
そう言い、薄手の肩掛けを肩に掛けてくれた。
これでいくらか胸の部分が隠れてくれる。
「ほらっ!こうしたほうが気品が出て良いでしょ」
「そうだな……別人みたいだ……」
一刀様はそうつぶやくと少し顔を赤くしたように見えた。
「……では、これにします!」
私がそう言うと、一刀様は店員に金を払った。
私の服なのだから私が出すと言ったのだが、一刀様は「俺が言い出したんだからいいよ」と言った。
服を買いその後、私達は昼食をとることにした。
昼食もいつも行く大衆向けのところではなく、少し高級な個室の店であった。
やはり高級ということだけはあって料理は美味しく、個室でゆっくりとすることが出来た。
ここでは先程の服の時を思い返し、私は割り勘にすると言い先にお金を出した。
いくら呉の王族といえど金は無限ではない。
来るべき戦いに向けて孫家は率先して倹約に励んでいる。
つまり小遣いは限られているのだ。
一刀様はここでも自分が金をだそうとしていたが、私の必死な姿を見ると仕方がないといった顔をして、諦め割り勘にした。
店から出ると、丁度良い時間となったので、本日の目的であった劇を見に、会場へと向かうことにした。
今回は思春と一刀のデート前編でした。
後編はこの続きを一刀視点で書きたいと思います。
思春が服屋で着ていた服ですが、はじめのはいわゆるゴスロリ。
ゲームで翠が着ていたのを想像していただければ良いです。
思春にゴスロリ…とっても似合いそうです。
次の服は本文にも書いてましたが雪蓮の着ているのに似ている、胸元がバックリな旗袍。
雪蓮のよりも裾は短めでミニとなっております。
それに胸元を隠すためのストールを羽織っています。
本当は文明開化!ハイカラさんのような服を着せたかったのですが、文字でどう説明すればわからなかったのでチャイナ(旗袍)に。
でも少し上品な感じのデザインとなっており、大人っぽくなっていると脳内補完してください。
説明 | ||
思春拠点の前編です。 前後編に分かれています。 今回は思春視点です。 後半は一刀視点? では、どうぞ! |
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コメント | ||
>根黒宅様 チャイナ服のはじまりは清かららしいです。でもややこしいので中国語の旗袍に変更しました。(lovegtr) っていうか、中国なのにチャイナ服って。。。色々突っ込みどころのある言い回しだと思うけど。(根黒宅) |
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