IS<インフィニット・ストラトス> 〜あの鳥のように…〜第十六話
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「何故、こんな面倒な事をするんだ?」

 

高層マンションの最上階。豪華な飾りで溢れかえっているその部屋から一望できる都市の夜景をワイングラスに注がれた血の様に真っ赤なワインを優雅に揺らしながら眺めて楽しんでいると、突然オータムがそんな事を訪ねてきた。

 

「面倒な事?」

 

突然の質問にはて?と首を傾げる。彼女の言う面倒とは何を指す言葉なのだろう。生憎と、私は面倒事と共にするような生活を送っているので心当たりが多すぎて何の事か伝えてくれないと分からない。

 

「例の出来そこないの人形の事だよ。何故さっさと殺さない?別にドイツを利用する必要も無いだろう。さっさと殺してしまえばいいじゃないか。何なら私が…」

「確かに、貴女の言う通りではあるわね。でも…」

 

そう付け加えて私は小さく笑みを浮かべてワイングラスを窓から見える夜景と重ねる。グラスから見える街並みは、その赤い液体によってまるで燃えている様に美しかった…。

 

「ただ、殺すだけなんて芸が無いでしょ?」

 

彼女のいう通り、殺すだけなら簡単に出来る。ドイツのあの少女を使わなくとも何ら問題無く寧ろ確実に…。でも、私が本当に求めているのはそんなんじゃない。私が求めているのは『火種』だ。大きな炎を生み出すための火種。今回の件がその火種を生み出す事はまず無いだろうが、国同士の捻じれを生み出すための切っ掛けには使えるだろう。そのためにドイツに潜ませていた構成員を動かしたのだから。あの少女には精々派手に暴れてもらいたいものだ。

 

その為に、『アレ』を仕込んでおいたのだからね。フフフ…。

 

あの子の部下も此方に気付き掛けている。流石はドイツが誇る特殊部隊と言った所か、隊長が駄目ならしっかりと部下がサポートに回っている。予定より少し早いけど、幸いなことに植えられた種が芽吹くのは近い。強い執着は水となり肥やしとなって…。その歪んだ『忠義』と『愛』は、どんな花を咲かせるのでしょうね?

 

「…また、私に隠し事をしてないか?」

「ふふ、どうかしら?」

「むぅ…」

 

明らかに不満そうな表情を浮かべるオータムを見て私はくすくすと笑うと、手に持っているグラスをテーブルに置いてオータムをベッドに押し倒すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

第16話「セシリア・クッキング!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――Side 織斑 一夏

 

 

 

 

 

「味方か敵かって…えっと…オリヴィアさんは苛めとかにあってるの?だとしたら僕はそんなことしないよ!」

 

心底心外だと眉を吊り上げ、今にもぷんぷんと擬音が聞こえて来そうな程に怒りだしそうになるシャルル。

 

「違うって、そういうんじゃなくてだな…」

 

シャルルが怒る気持ちも分かる。自分が他人を苛める様な人間と思われれば誰だって不愉快に感じるだろう。でも、俺が言いたいのはそんな事じゃない。ミコトの周りの人達との関係は円満で苛めなんて起こる筈も無い。仮に起こったとしても俺達が見過ごす筈ないし、ミコトを可愛がっている先輩達や一部の教師が黙ってはいない。だから、苛めなんて有り得ない。俺が訊きたいのは…―――。

 

―――…待て。此処で言うのは流石にまずいだろ。

 

周りには沢山の生徒が居る。しかも俺達は目立つからどうしても周りの生徒達の意識は俺達に向けられてしまい、俺達が話す内容も訊かれてしまう可能性が高い。こんな所で話してしまえばミコトの事が全校に知れ渡り大変なことになってしまう。千冬姉や山田先生が何も言わないのは、この話を秘密にしなければいけない理由があるから。だとしたら、此処で話すのはまずいだろう。

 

…どうしよう?

 

今の反応からシャルルがミコトを狙っている可能性は低い。此処は適当に誤魔化すのが得策か?それとも、事情を説明して協力して貰うか…後者は無いな。今日初めて会った人間を巻き込むなんてどうかしてる。

 

「そうじゃなくて…何?」

「わぁっ!?」

 

顔を覗き込んできたシャルルの顔と仄かに香る甘い香りに思わずドキリとしながらも驚いて後ずさる俺。な、何でだ?何でドキッてなってんだ俺!?相手は男だぞ!?

 

「うわっ、ビックリしたなぁ。突然大声出さないでよ」

「わ、悪い…」

 

先に驚かされたのはこっちだけどな。

 

「それで?そういうんじゃなくてどういう訳かな?」

「…すまん。やっぱりさっきのは忘れてくれ」

 

それがシャルルにとっても一番いい事だろう。危険な目に遭わせるなんて友達のする事じゃないしな。

 

「…うん。分かった。気にならないって言えば嘘になるけど、一夏が言いたくないならそれで良いよ。ゴメンね?嫌なこと訊いて」

「すまん」

「でも、これだけは訊いて良いかな?」

「ん?何だ?」

「一夏は、オリヴィアさんの『味方』なの?」

「ああ、勿論さ。ミコトは俺の、俺達の大切な友達だ」

「そっか。僕もそうなれると良いなぁ…」

 

そう言って羨まむ視線に、俺ははて?首を傾げた後に、ああ成程と納得して頷く。

 

「ミコトが好きだからか?」

「だから違うってばっ!?」

 

必死にそう否定するシャルルは、がしっと俺の襟を掴みブンブンと物凄い勢いで揺さぶる。おいこら止めろ。さっきの演習で疲れてるんだから。酔う。酔っちゃうから…。うぷっ…。

 

「違うんだよ!?違うんだからねっ!?」

「わ゛、わ゛がっだがら…て、手を放ぜ…」

「え?わっ!?ごめん!?」

 

脳をシェイクされて顔色が青に染まり始めたぐらいにシャルルがそれに気付いて慌てて手を放し、ようやく解放される。まさか日常会話で死にかけるなんて思いもしなかったぜ。

 

「で、でも一夏が悪いんだからね!勝手に僕がオリヴィアさんの事が好きだなんて決め付けるから」

「悪かった。悪かったって。でも、そんなに羨むもんか?シャルルだって故郷に友達くらいいるだろ?」

 

天才博士の妹や代表候補生とかそんな特殊なメンツではあるけど、それ以外は別に一般的な交友関係だと俺は思っている。シャルルが羨むものでもないと思うんだが。

 

「………」

 

ピタリと、シャルルの表情が固まる。そして、硬直から回復すればその表情は悲しみへと変わっていた…。

 

「僕ね…友達、居ないんだ。正確にいうと『今は』だけど…」

「…何だって?」

 

誤魔化す様にシャルルは笑うがそれは全然誤魔化しになっていない。見ているこっちの方が辛く思える程に痛々しくて…。それはまるで、継接ぎだらけの笑みだった。

 

「…デュノア社は知ってるよね?」

「ああ」

 

量産機ISのシェアが世界第3位を誇る大企業だ。さっき演習で使用された量産型ISのラファール・リヴァイヴも、デュノア社が製造した…待て。デュノアって…。

 

「まさか、デュノア社ってシャルルの…」

「うん。僕の父が経営してる企業なんだ。だからね。それが関係して僕も手伝いとかで友達と遊んでる時間とかなかったんだ」

 

…そうだったのか。そうだよな。今はIS学園に居るけど、俺の場合一般家庭だったから入学するまでは普通の生活を送る事が出来たんだ。でも、シャルルの場合は父親がIS関連の大企業を経営していたから、普通の生活を送れないよな…。

 

「だから。だからね?一夏達を見てるとすごく羨ましいんだ」

「シャルル…」

 

そう言って微笑むシャルルに、俺は何と言ってやればいいのか言葉を迷い。結局、何も言えぬまま教室に辿り着いてしまい。心に蟠りを残したまま会話を終えてしまったのだった…。

 

 

 

 

「この時間はISの整備についてのおさらいだ。午後からは先程実技演習で使った訓練機で整備を行うのでしっかりと聞いておく様に」

「むぅ…」

 

千冬姉が講義している最中、俺は先程の事が頭から離れないでいた。

 

――― 一夏達を見てるとすごく羨ましいんだ。

 

羨ましい。友達と楽しく会話する光景が、ごく普通の誰でもしているであろうその光景が羨ましい。彼はそう言った。

シャルルの事を気にかけてる場合では無い。それは分かってる。でも、どうしてもシャルルがさっき言った言葉が何度も何度も頭の中で再生されて気になってしょうがなかった。だから悩む。如何にかならないか、と…。

 

「―――ぃ…むら…」

 

……いや、悩む事なのか?これって。

 

よくよく考えてみれば、何を悩む必要がある?何ら難しい問題は無い。俺自身がシャルルの友達になればいいだけの事じゃないか。何よりシャルルはこの学園で俺のを除いて唯一の男子生徒。必然的にこれからも行動を共にする事になったり、助け合ったりするだろう。もうそれは友達同然じゃないか。

シャルルに対する疑いは晴れた訳じゃない。でも、あの笑みを見た俺にはもうシャルルを疑う気持ちなんて何処かにへと消え去ってしまっていた。

 

「ぃて…か?…織…ら…」

 

よし!そうと決まればさっそく昼飯でも誘って…―――。

 

「聞いているのか。馬鹿者」

 

メキッ

 

「ぐおぉおおお〜…」

 

骨が軋む嫌な音と頭部にめり込む固い何かが、考える事に没頭していた俺の意識を強制的に現実へと引き戻し頭部に奔る激痛に俺は頭を抱え机に突っ伏する。目に涙を溜めて見上げて見ればそこには出席簿を角を此方に向けて構え、こめかみに青筋を立てて怒りのオーラを絶賛放出中の千冬姉の姿が…。冗談抜きで怖い。身体が震えてやがる…。

 

「私の授業中に考え事とは良い度胸だな?織斑」

「い、いや!これは授業に集中し過ぎてですね!考える事に没頭してたんですよ!はい!」

「ほう。ならこれから言う質問に答える事は出来るな?何、そんなに難しい物じゃない。授業を私の声が届かない程集中して受けているお前なら簡単な質問だ。勿論、答えられるよな?」

「い、いや俺は「答えろ」はい…」

 

迫力に負けて言い訳も出来ずに屈する俺。勿論、馬鹿みたいに難しい質問には答えられず拳骨が俺の脳天に叩き込まれ頭蓋骨が陥没しましたとさ。

 

 

 

 

「あ〜やべ…確実に頭蓋骨変形してるよこれ…ん?」

「じぃー…」

「…な、何だ?ミコト?」

 

確かに違和感を感じる頭を擦りながらぐったりと椅子の背もたれに身体を預けていると、興味深そうにじーっと俺の頭を眺めているミコトに嫌な予感を覚え、恐る恐る訊ねてみる。すると、ミコトは俺の頭に指をさして。

 

「たんこぶ…すごい」

「…そりゃあ、あんな威力のある打撃を2回も喰らえばな」

 

しかも1ミリもずれずに同じ場所にだ。我ながら何て石頭だと感心する。たぶん、やわな人間が喰らえば頭かち割れてたと思う。あれはそれだけの威力はあった。喰らった本人がそう言ってるんだ。間違いない。

 

「おぉ〜…」

 

今度はキラキラと目を輝かせて感嘆の声を漏らすミコト。ますます嫌な予感が増す。何だ?何を企んでるんだ?このチビっ子は?

 

「触って、いい?」

「駄目だよっ!?」

 

期待に満ちた眼差しで止めを刺そうとするとは末恐ろしい子である。無垢とは時に邪悪よりも恐ろしいもんだ。平然とした顔で惨い事をしてきやがる。

ちゃっかりたんこぶを触ろうと伸ばされた手を「やめなさい」と窘め、「むー」と不安そうに拗ねるミコトから逃げるように席を立つと俺はシャルルの席へと向かう。

 

「あっ、一夏。さっきは大変だったね。大丈夫?すごい音してたけど…」

「大丈夫じゃない。千冬姉は俺の限界を知ってるからな。さっきのはギリギリの所までキテた」

「あ、あははは…ご愁傷様」

 

シャルルは笑っているが俺にとっては笑い事じゃない。姉弟だから互いの事を理解していると言うのは聞こえはいいが、今回みたいなのは御免だ。身体がもたん。生かさず殺さず限界ギリギリの所まで痛めつけられるなんて質が悪い。…まぁ、そんなことは今はどうでも良い。過去より今を生きようぜ!ってことで…。

 

「シャルル。飯食いに行こうぜ」

「ごはん?あ、そう言えば今は昼休憩だね」

「そういうこと。食堂ははじめてだろ?一緒に行こうぜ」

「ほんと?ありがとう…でも良いの?」

「ん?何がだ?」

「だって、一夏も僕なんかより仲の良い友達と一緒と食べた方がいいでしょ?」

 

なんだ、そう言う事か。だったら何も問題無い。

 

「ああ、その事なんだけどさ。言うの忘れてたけど他の連中も一緒だけど良いか?」

「僕はかまわないけど…無理しなくていいんだよ?食堂の場所くらい他の子達について行けばわかるし」

 

この時間、生徒達が集まるとすれば必然的に食堂になる。シャルルの言う通り他の生徒達について行けば食堂に辿り着く事は出来るかもしれないがそう容易な物じゃないと思う。この学園内ではシャルルは歩く誘蛾灯そのものだ。転校初日で無闇に一人で行動してると大変なことになるぞ。

 

「無理なんてしてないって!俺がシャルルと飯が食べたいだけなんだし」

「一夏…ありがとう。優しいんだね」

 

そう言ってやわらかに微笑むシャルルにドキリとすると、それを誤魔化す様にシャルルから俺は顔を逸らしてあははと笑いながら頬を掻く。やめろ。面と向かっていわれると流石に照れるじゃないか。

 

「そ、それじゃあ、皆連れてくるから少し待っててくれ」

「うん!」

 

柔らかな笑顔に見送られ、俺は箒達のもとへと向かうと、そこにはシャルルの笑顔とは対照的にジト目で不満一杯の表情を浮かべた箒達が俺を迎えてくれた。とんでもない温度差である。ていうか何時の間に来てたんだ鈴。

 

「えっと…あの…」

 

俺に向けられてくる複数の視線に尻込みをしてしまう俺。第三者から見れば何とも情けなく見えていることだろう。箒達から視線を逸らし周りを見てみれば此方を見て苦笑を浮かべるクラスメイト達がちらほらと見える。うん。恥ずかしい。

 

「随分仲が宜しい様ですわね。一夏さん?…所で、今の状況を分かっていらっしゃる?」

「先程の授業もそうだったが。気が緩んでいるのではないか?」

「アンタって本当に…呆れて何も言えないわ」

「おりむ〜。ダメダメだよぉ〜…」

「うぐっ…」

「???」

 

箒達の情け容赦ない言葉がぐさぐさとガラスのハートに突き刺さってきやがる。ミコトの不思議そうに首を傾げるだけで良かった。ミコトにまで蔑む様な目で見られたら俺は完全に折れてた。心が…。

 

「はぁ…それで?どうしたのだ?何かデュノアと話をしていた様だが?」

「あ、ああ!えっとな。シャルルと一緒に食堂で飯を食う事になったんだけどさ。皆も良いよな?」

「「「「はぁ!?」」」」

「別に、いい。たくさん居た方がごはんおいしい、から」

「そうか?ありがとな!ミコト!」

 

俺の突然の提案に驚く箒達。そしてどんな箒達とは違って隣で座っていたミコトはこくこくと頷いて賛同してくれた。そう言ってくれると助かる。誘っておいてやっぱり駄目でしたなんて言えないもんな。

 

「お、お待ちなさいな!一夏さん!本気で言っていますの!?」

「おう。別に驚く事は無いだろ?友達同士で一緒に飯を食べるくらい。セシリアだっていつも一緒に食べてるじゃないか」

 

箒、セシリア、鈴、のほほんさん、ミコト、そして俺。これがいつもの昼食タイムのメンバーだ。傍から見ればとんでもないメンツではある。朝食や夕食は食べるタイミングがずれたりして一緒に食べる機会は少ないが、昼食は特別な用事が無い限りほとんど一緒にする事が多かった。今日だってそうだ。

 

「そういう問題ではございませんわ!一体何を考えて―――「セシリア?何で、ダメ?」っ…ミコトさん」

 

俺に詰め寄ろうとしていたセシリアの袖を引いたのはミコトだった。何故こんな言い争っているのかミコトは理解できていないのだろう。ミコトの瞳は何処までも無垢で、その澄んだ瞳はセシリアを映し、その見つめられたセシリア本人も言葉を詰まらせてしまう。狙われてる本人がこれでは怒るに怒れないっと言った所か…。

 

「仲間はずれ。かわいそう。みんな、一緒が…いい」

「でもこれは、うぅ…箒さん!」

 

ミコトの縋る様な視線を向けられ居た堪れなくなりセシリアは隣に立っていた箒に助けを求める。勿論、箒は自分に振られるとは思っても居なかったのでセシリア同じ反応を見せることになる。

 

「わ、私に振るなっ!?えっと…ミコト?その、だなぁ…り、鈴!『たまには』中国代表候補の威厳を見せてやれ!」

「アンタら、都合の悪い時だけ持ち上げるとか良い度胸してるわね。ていうか喧嘩売ってる?売ってるわよね?よし買った。買うわよアタシ」

 

ぷるぷると拳を震わせて頭に怒りマークを浮かべる鈴。待て待てISを展開しようとするな。落ち着け落ち着けって。

 

「りんり〜ん。どうど〜う」

「あたしは馬か!」

 

じゃじゃ馬なのは違いないな。HAHA!ウマイ事言ッタ☆…自分で言っておいてなんだが、すごくウゼェ…。

 

「鈴稟の事は置いておいてー。おりむー本気なのー?デュノッちとお昼ご飯食べるのー」

 

間の伸びた声でそう言ってくるが目は真剣そのもの。流石にそんなのほほんさんを相手に冗談とか言える程、俺もふざけるなんて精神なんて持ち合わせてはいない。ミコトを思う気持ちは多分、この中ではのほほんさんが一番だと思うから。

 

「ああ、本気だ。大丈夫。シャルルは敵じゃない。断言できる」

「んー…?」

 

じっとのほほんさんは俺の目を見つめてくる。そして、俺もその視線を逸らさずに受け止めると数秒見つめ合う状態が続いた。

 

「んー、わかったよー。おりむーがそう言うんならわたしは信じるよー」

「ほ、本音?本気なのか?」

「本気だよー?おりむーだって実際に話してみて大丈夫だと思ったから一緒にお昼を食べようって提案したんだよねー?」

「ああ、シャルルは良い奴だ。俺が保障する」

「何の根拠にもなりませんわよ…」

「そうかなー?私はおりむーの人を見る目は確かだと思うよー?だってー」

 

俺達を見回してにこりと笑うのほほんさん。

 

「現にこうやっておりむーのおかげで良い友達に巡り合えたんだもん♪」

「良い友達…か」

 

箒、鈴、セシリア。皆、最初は喧嘩はしたけど今はこうして話をしたりしている。でも、今思えばなんだかんだいってそのきっかけは全部俺にあるんだよなぁ。俺がセシリアの決闘を受けなければ、きっとセシリアとは友達にはなれなかったし、箒や鈴だってそうだ。今の様な関係になれなかっただろう。

 

「おりむーのおかげで皆出会えたんだよー?そんなおりむーだもん。人を見る目は確かだよー」

「ん。皆と友達になれたのは一夏のおかげ」

「う…む。そうだな」

「…そうですわね。ええ、そのとおりですわ」

「まっ、一夏が手当たり次第に女の子に手を出してるのは間違いないわね」

 

折角感動の場面だったというのに…鈴。お前のせいで台無しだ。それに俺はそんな軟派な男じゃないし手当たり次第に女の子に手を出した思えは無い。ん?何だ?何処からか嘘言うなって弾の声が聞こえてきた様な…気のせいだよな。

 

「はぁ…わかりましたわ。一夏さんがそこまで言うのでしたら信じましょう」

「一夏のお人好しは今に始まった訳ではないしな」

「それもそうね。言うだけ無駄ってカンジ?」

 

暫し悩んだ後、もう諦めたと肩を落とし溜息を吐く。でも、その表情は一見不満そうではあったが何処か穏やかな物が感じられた。しかし何故だろう?何か馬鹿にされている様な気がしてならないのは…?

 

「じゃあ、良いんだな?シャルルも一緒で!」

「どうせダメって言っても意志を曲げる気ないんでしょ?だったら口論するだけ無駄じゃない」

「まったくだ。随分と時間を掛けてしまった。これでは食堂の席どころか食券を買うことすら容易ではないぞ」

「うげっ…そういやそうだ。どうしよう?」

 

随分の遅れてしまったスタートダッシュ。今頃食堂では食券を買う為に長い行列が出来ている事だろう。箒の言う通り食券を買うだけでも一苦労しそうだ。それに、食券を買ったしてもそれをカウンターに持って行って食事がこの手に運ばれてくる時間を考えるとゆっくり食事を楽しんでいられる時間もなさそうだ。午後の授業も実習だって言ってたからその準備もしないといけないし…。

 

「その事ならご安心を!わたくしに良い考えがございますわ!」

「良い案?」

 

何だろう。すごく嫌な予感がする。物凄い失敗フラグが…。

 

「こんな事もあろうかと!お弁当を用意してきましたの!沢山ありますから皆さんも食べられましてよ?」

 

そう言うと鞄から大きめのバスケットを取り出すと目の前の机に置くセシリア。今朝から妙に大荷物だなと思っていたがそんな物を用意してたのか。しかし何故だろう?あのバスケットから危険なオーラが漏れ出してきてるのは俺の気のせいか?

 

「おぉ〜…」

「セシりんナイスだよー!」

「ふふんっ!ですわ!」

「―――なん…だと?くっ、卑怯な!こんな状況で一夏の評価を上げようなどと考えているとは…っ」

「ん?何か言ったか?」

「な、何でもない!」

「そ、そうか?」

 

明らかに何か言ってた気がするんだけどな。評価が如何とかって。

 

「…何故かしら。すごく嫌な予感がするのはあたしだけ?」

 

額に汗を浮かべ、目の前のバスケットを凝視する鈴。お前だけじゃないぞ、俺もだ。弁当を用意した本人の前だから口に出してはいないけどさ。

 

「何を無駄話をしているんですの!?さぁ!昼休憩が終わってしまいます!早く行きましょう!」

「あ、ああ…おーい!シャルルー!」

「あっ、OK貰えたのかな?」

「あ、ああ…うん。良いってさ」

「そっか♪ありがとう♪」

「………」

 

俺の呼び掛けにニコニコと笑顔を浮かべて近づいて来るシャルルに何故か罪悪感を感じてしまう。昼食を共にする許可は得られたというのに、何だこの気持ちは?まるで、地獄へと道連れにする様な気分何だが…。

 

「シャルル」

「ん?何?一夏」

「…すまん」

「え?」

 

 

 

 

場所を変えて此処は屋上。本来なら食堂へ向かい筈だったのだが今朝の事を考えると食堂に向かうのは無謀と判断し屋上で昼食を食べることになった。誰だって食事をするときくらいは落ち着いて食べたいだろう。女子達の視線を浴びながら食べるのはご遠慮したい。幸い、中身はどうであれセシリアがお弁当を用意してくれたのだこれを活かさない手はないだろう。中身はどうであれ。

 

「ごめんね。皆。僕の我儘聞いて貰って…」

 

俺の隣にすわるシャルルが未だにそんな事を言っていた。これで何度目だろう?さっきから何度も何度も似たようなことばかり言っている気がするが…。遠慮深いのも考えものである。

 

「男同士遠慮するなって。こんなの我儘の内にもはいらないから」

「ん」

「ありがとう。一夏。それにオリヴィアさん」

「ミコトでいい」

「! う、うん!じゃあ!僕はシャルルって呼んでね!」

「ん。シャルル」

「うん♪(かわいいなぁ、もぉ…)」

 

名前を呼ばれ、ぱぁっと表情を明るくして嬉しそうに笑うシャルル。どうやら二人は早くも打ち解ける事が出来たようだ。まぁ、ミコトならすぐに仲良くなるであろうことは予測済みだったけどな。シャルルも何だかミコトの事を気にしてたみたいだし。…何がとは言わないけどナ?口は災いのもと。食事前にまた脳をシェイクされるのは勘弁だ。

…しかし、二人が仲良くするのを快く思っていない人物が約2名程いた。

 

「むぅ〜!」

「むむむ…ですわ」

 

ミコトの親友であるのほほんさんと、ミコトのお母さんことセシリアだ。

 

「何ですの?あの二人は?あんなに仲睦ましそうに」

「危険だよ。危険だよみこちー。男の子は皆オオカミさんなんだよ?気をつけないといけないんだよ?」

 

いつの間にか俺も危険人物になってる。俺、狼なのか…。これでも耐えてる方だと自負してるよ?こんな女の子しか居ない学園で男子一人で。それでも俺を狼だと言うのかい?のほほんさんよ。寧ろ褒めてくれよ。胸張って威張る事でも無いかもしれないけどさ…。

 

「あたしには別に異性として見てる様には見えないんだけど」

「む?そうなのか?私は良く分からんが…」

「あれはどちらかと言えば小動物を見てる目でしょ。どうみても」

「…ああ、成程」

 

反対に此方の二人はセシリア達とは違って冷静の様子。それより鈴はシャルル達の事よりバスケットの中身の方を気にしてるらしい。先程からちらちらと警戒するように視線を向けているのを俺は知っている。代表候補生を恐れさせるほど危険なモノなのか。これは…。

しかし意外だな。あののほほんさんがああも敵意を剥き出しにするなんて。まぁ言葉にすれば物々しいけど実際はぷく〜っと頬を風船みたいに膨らませて可愛らしく威嚇しているだけだけども。それでものほほんさんがあんな態度を取るのは珍しい。いつもののほほんさんなら誰でもフレンドリーな接し方をするのに。俺も箒も最初から変なあだ名で呼ばれたりとかされたしな。

 

「…いけませんわ。乱れた男女の交友はミコトさんの教育に悪影響を及ぼしかねません」

「そうだそうだー!」

「お前達の認識とその存在がまさにミコトに悪影響だと思うのは私だけか?」

「右の同じく」

 

俺もそう思う。

 

「そこ!うるさいですわよ!と・に・か・く!わたくしは認めませんわよ!」

「みとめないぞ〜!」

「え、え?何?何の話?」

「セシリアと本音…へん?」

 

二人だけのまったりしていた所に突然セシリアとのほほんさんにズビシ!と指を差されてきょとんとする二人。そりゃ急にそんな事言われればそんな顔になるわな。それにしても今日もセシリアは絶賛暴走中である。

 

「どうしてもミコトさんとお付き合いしたいと言うのでしたらこのわたくしを倒し………い、いえ!ブリュンヒルデになってからになさいな!」

「え、えええええっ!?」

 

一体何を言い出すんだこの金髪ロールは…。よりにもよって『ブリュンヒルデ』。世界最強になれってのか。壁が高すぎるだろ…。

 

「一夏に負けたから言い直したな。というか無理だろう性別的に…」

「男がモンド・グロッソに出場できる訳無いでしょうが」

 

あー…男が『ヴァルキリー<戦乙女>』って呼ばれるのは変だしなぁ。

 

「それぐらいの器を持つ方でないとと言う意味ですわっ!」

「あ、あの、別に僕はミコトをそんな風に思って…―――」

「まぁ!?ミコトさんに魅力が無いとおっしゃいますの!?確かに身形は幼く殿方にとって物足りない体型ではありますがまだ希望はあります!それに性格は素晴らしくてよ!何処に不満があると言うのです!?」

「むしろそれが良いんだよ!貧乳はステータスだよ!希少価値だよ!抱きしめたいよみこちー!」

「僕にどうしろって言うの!?わけがわからないよ!」

「何気に今サイテーに下品な事言ったわよねこの自称淑女(笑)」

「もはや病気だなこれは…」

 

理不尽な事ばかり吐いて暴走する二人に困り果てるシャルル。また厄介なのに絡まれたなぁ。同情するよ。というか良いのか時間の方は?昼休憩だってそう長くはないんだぞー?

 

「そ、そろそろ昼飯にしないか?昼休憩終わっちまうぞ?」

 

時間的にもヤバいので暴走する二人を止めに入る。流石に飯抜きで午後の授業を受けるのは自殺行為に等し過ぎる。それを二人も理解しているのか俺の言葉に大人しく引き下がる二人であった。

 

「む。確かにそうですわね。今回は見逃してさしあげますわ」

「え?次回もあるの…?」

「何かおっしゃいまして?」

「い、いえ!なんでもないですぅ!」

「いやもうそう言うのは良いから。はやく食べない?ほんとーに時間無いわよ?」

「そうがっつかなくてもお弁当は逃げはしませんわよ。鈴さんはお行儀がなっていませんわね」

「その言葉をそっくりそのままアンタに返すわよ」

 

全くだ。先程の自分を振り返ってみろと言ってやりたい。

 

「お腹を空かせた方がうるさいのでお昼にしましょうか。さぁ、たんと召し上がってくださいな」

 

そう言って膝の上に乗せてあったバスケットの蓋を開けて俺達の中央にそれを置く。バスケットの中身は一見普通のサンドイッチだ。具も豊富で見た目も綺麗だしまずそうというよりも寧ろとても美味しそうに見えた。これは俺の思い過ごしだったか?

 

「サンドイッチ…」

「はい。ミコトさんはお好きでしたわよね?」

「ん」

 

いつもサンドイッチとかパン系ばかり食べてるもんなミコトは。好きと言うよりただ小食で和食セットとかそういう量が沢山あるメニューが食べられないだけだけど。以前、一度だけミコトが俺の真似をして同じ和食セットを頼んだけど半分も食べ切れずに残った分を箒と俺とで分けあって食べたこともあったし。

 

「美味しそうだね〜♪」

「ん。びっくり…」

「そ、そうですか?ま、まぁ!このセシリア・オルコットが作ったのですから当然ですわね!」

 

そう言って胸を張るセシリアだったが明らかに照れ隠ししているのが丸分かりだ。素直じゃないなぁ。意地を張らずに素直に褒められたことを喜べばいいのに…。

 

「パンも自分でカットしてるんだな。綺麗に切り揃えられてる」

「ホント、彩りも綺麗だし本当に美味しそうだね」

「むぅ…洋食は好かんのだが…」

「見た目は美味しそうよね…見た目は」

 

俺を含めた他の連中も感想はそれぞれだが評価は上々のようだ。鈴は未だに警戒してるみたいだけど多分考え過ぎだろう。こんなに美味しそうなんだ。不味い筈ないじゃないか。そんな漫画みたいなオチ実際にありはしないって。

 

「さぁ、召しあげれ♪」

 

「「「「「「いただきます」」」」」」

 

食事前の挨拶を済ませて一斉にサンドイッチ手を伸ばす俺達。そして、手に取ったサンドイッチを一口齧り。このまま硬直した…――――。

 

「ぐっ!?」

「みゅっ!?」

「むぐっ!?」

「〜〜〜〜っ!?」

「「!」」

 

「「「「(あ、甘〜いっ!?)」」」」

 

鼻に侵攻して来る甘い香り。そして舌を刺激する異常な甘み。可笑しい。俺が食べている物は『たまごサンド』の筈。それなのにどうしてバニラエッセンスの香りがするんだ?何でこんなに甘いんだ?何だ?何だこれは?可笑しいだろ常識的に考えて!

箒達を見てみれば箒達も俺と同様に一口目を食べた状態のまま硬直して表情を歪めている。そうか。他のサンドイッチも同じだったか…。

…しかし、俺達とは異なる反応を見せる異端者が居た。

 

「美味しいね〜♪このサンドイッチ♪」

 

「「「「はぁっ!?」」」」

 

手を頬に押し当てへにゃ〜と表情を緩ませているのほほんさんの反応を見て俺達は信じられないと言った感じで驚きの声をあげる。しかし、驚きはこれだけではなった。…そう、居たのだ。のほほんさんと同等の異端者がまだ…。

 

「新しい世界が開けた…セシリアは天才」

 

「「「「ミコトも!?」」」」

 

何か訳の分からない事を言って驚いてるみたいだけどお兄ちゃんはもっとびっくりだよ。ミコトやのほほんさんもセシリア同様に壊滅的な味覚の持ち主だったんだな…。

 

「喜んでいただけて何よりですわ♪さぁ、一夏さん達もどんどん食べて下さいまし♪」

「あ、ああ…」

 

そう言ってセシリアが差し出して来たのは沢山のサンドイッチ?が入ったバスケット。正直一口目で胸焼けや色々な理由で一杯一杯なんだが…。

しかし、目の前のセシリアの期待に満ちた眼差しを向けられると断るに断れない。何だこの拷問は…。

 

…ど、どうするっ!?このサンドイッチ?を食べずに午後の授業を受けるかっ!?

「(だ、だが、午後の授業は夕方まである。補給する暇さえなければしかも午後は実習だ。体力は激しく消耗する。昼食を抜くと言うのは自殺行為…)」

「(我慢してこれを食べるか。それとも空腹のまま千冬さんの授業を受けるか…)」

「(選択は二つ。あ、あれ?でもこれって選択肢は無い様な…あれれ?)」

「((((生か死…いやどちらも死っ!どうすればいいんだ(の)っ!?))))」

 

異様なオーラを放ち目の前に鎮座するサンドイッチ?を見て究極の選択に頭を悩ませる俺達。ごくりと固唾を呑み下し、意を決して手を伸ばしてみたものの、その手はすぐに引っ込められ、また手を伸ばしては引っ込めとその動作を繰り返しては時間を浪費していた。しかし、悩んでいる時間は無い。時計の針は止まることなく昼休憩の終わりは刻一刻と迫っているのだから…。

 

「あ、あたし、実はお腹一杯で…」

「っ!?逃げるとは卑怯だぞ鈴!」

「何とでも言いなさい!あたしはまだ死にたくないのよっ!」

「折角セシリアが作ってくれたんだぞ?それを食べないと言うのは失礼じゃないか。とりあえず座れ。(※訳 お前だけ逃げてんじゃねぇよ」

 

立ち上がろうとした鈴の両腕を俺と箒でガッチリと拘束して無理やり元の位置に座らせる。一人だけ逃げようなんてそうはいかない。一人欠ければその分このサンドイッチ?食べなければいけなくなるではないか。

 

「押し付けの善意なんて悪意と同じよ!やり掛けのRPGを自分が居ない間に「代わりにクリアしてあげたよ♪」とか言ってクリアされるのと同義じゃない!」

「何をわけのわからない事を。とりあえず喰え!貴様だけ逃げようなど認めんぞ!」

 

顔を青くして

セシリアに聞こえない様にヒソヒソと醜く言い争う二人。まるで地獄に吊るされたクモの糸を取り合っている様だ。どれだけ足掻こうとも待っているのは地獄だけなのにな…。

 

「ぼ、ぼぼぼぼ僕は無理を言って混ぜてもらった様なものだからこれ一つでいいよ。うん!ありがとね!ご馳走様でした!」

 

そうは問屋がおろさねぇ…。

 

「何言ってるんだ?シャルル。此処まできたら一蓮托生だろ?ほらほらまだこんなに沢山あるんだし」

「い、いいいいいいよ!僕は!あとは一夏達が食べて!ね?」

「あら?そんなに遠慮しなくてもよろしいんですのよ?沢山作りましたからご遠慮せずデュノアさんも召し上がってくださいな」

「だってさ♪ほらセシリアもああ言ってるんだから遠慮せず食えって♪」

「(神は死んだ!?)」

 

俺はシャルルの肩に手を回しニヤリと笑うとシャルルは絶望した表情を浮かべる。

 

「何をしてますの?早く食べないと次の授業に遅れますわよ?」

「「うまうま♪」」

 

ソレを平然とした表情で食べているセシリアの尤もな言葉に、俺達は意を決してというか、何か色々な事を諦めてサンドイッチ?を口に含むのであった…。

…追伸。この日、普段は飲む事のないブラックコーヒーがやけに美味しく思えたのはきっと気のせいでは無いだろう。そして苦いコーヒーを飲みながら俺達は誓った。絶対にセシリアの料理はもう食べないと…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美味しい美味しい夕食を終えて、俺とシャルルは部屋に戻って来た。やはりと言うか当然と言うか。予想通りシャルルと俺は同室となった。まぁ学園で二人だけの男性だしこれは必然と言えるだろう。そして現在、俺達は未だ舌に感じる昼の『アレ』の甘みを紛らわせるために俺の淹れた日本茶を飲んでいる。

 

「嗚呼…生き返るなぁ。やっぱり俺は甘いのよりこっちの方が好きだ」

「うん。紅茶以外のお茶を飲むのは初めてだけど美味しいね、これ。何だか落ち着く」

「おおそうか。シャルルも日本茶の素晴らしさを理解してくれるか。うん。日本茶は良いよな」

「何より、甘くないのが良いね」

「だな」

 

俺とシャルルは笑い合う。

 

「色々酷い目に遭ったけど、楽しかったよ。ありがとね?一夏」

「おう。今度は皆でどっか遊びに行こうぜ。出来れば甘いものが無い所に」

「あはは、そうだね。僕もしばらくは甘い物は見たくないや…」

 

と、言った物の。ミコトとのほほんさんは食後のデザートを楽しんでたけどな。俺や箒達は昼間の甘みが残って見てて吐きそうになったよ。

 

「それにしてもすごいね。ミコトに布仏さん。あれ食べたのに夕食後にデザートまで食べて」

「きっと今頃は部屋に貯蔵してあるお菓子を食べてる頃だろうな」

「ほ、本当に凄いね…」

 

ああ、ミコトとのほほんさんは『お菓子だけ』は物凄い量でも完食するからな。一体何処にあの量が入るんだか。

 

「あれで専用機持ちで機動じゃあ学園のトップクラスだってんだから信じられないよな」

「ええ!?そうなの!?」

「ああ。俺もセシリアもミコトに追いかけっこで捕まえた事は一度も無いんだよ。ミコトの奴ひょいひょい楽しそうに避けてさ。そのたんびに俺とセシリアが千冬姉に怒られるんだよ」

 

ホント、理不尽だよな。

 

「ぷっ、大変だね?」

「む、他人事じゃないぞ?シャルルだって専用機持ち何だからシャルルも追いかけっこに参加だ」

「え、ええ〜…」

 

ふふん。俺達に痛みを貴様も味わうが良い!

 

「うぅ、嫌だなぁ…」

「お前の大好きなミコトと追いかけっこだぞ。もっと喜べ」

「だからそんなんじゃないってばぁ…ただ僕は小さくて可愛いなって思っただけだよぉ」

「なるほどシャルルはロリコンっと…」

「いやな誤解をしないでよ!?」

 

…いや。今のは誰だって誤解すると思うぞ?

 

「まったく…何で一夏はそんな勘違いするかなぁ」

「お年頃なもので」

「ただ僕で遊んでるだけでしょ?もー!」

「何だ、バレてたか」

「一夏〜?」

 

悪かった悪かった。謝るから怖い顔で襟を掴むのはよせ。今あれをやられると確実に吐くから。昼の物がリバースするから。そう言うと、シャルルはものすっごく嫌な顔をして俺を放してくれた。

 

「とにかく!そう言うんじゃないんだからねっ!?」

「はいはい。分かったよ。そうムキになる事でもないだろ」

「一夏がしつこいからだよ!もう!」

 

そういう面白い反応するからからかわれるんだって。でも良いな。こういうのって。こんな気楽に話したのはどれくらいぶりだ?昨日弾と話したばかりだけどあれは学園外だったし、今は学園の中だ。学園生活中にこんなに気楽に会話が出来るなんて思っても居なかった。だからシャルルが来てくれたのは本当に嬉しいぞ。

 

「なぁ、シャルル」

「ん?何?」

「これからよろしくな?」

「へ?………うん。よろしくね?一夏」

 

一瞬、きょとんとするシャルルだったが、すぐに笑顔になりよろしくと返してくれた。うん。今日は何だか安心してぐっすりと寝れそうだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

どうも、更新遅れて申し訳ないですm(__;)m。

戦極姫3やってました。とても面白かったです。ええ。足利は凌辱シーンさえなければ…ね。

 

時間開け過ぎた所為で物を書く感覚を忘れてて妙に大変でした…

 

 

説明
更新遅れて申し訳ないです。
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コメント
セシリアママとのほほん姉ちゃんがミコトの彼氏候補を厳しく厳選!!!一夏パパは傍観中(D,)
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