北郷一刀・帰還物語
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希望も救いも何もない。

どうしようもない現実が俺の前にある。

 

だからこそ、俺は還るんだ。

俺が俺であるために。

俺がいたということを証明するために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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深い…海の中を漂っているような感覚だけを感じていた。

目は閉じられている。開けることはかなわない。

いや、本当に目があるのかすら俺には確認する術がない。

 

つい先刻…本当に先刻なのかも分からないけど…俺は消えた。

愛しい少女の前から、世界から……。

 

 

俺の名前は北郷一刀。

聖フランチェスカ学園の学生で、ひょんなことから三国志の時代に流れ着き、

魏の警備隊長を務めていた『天の御使い』なんて呼ばれていた存在だ。

そこで俺は俺を拾ってくれた魏王・曹操こと華琳と、華琳を支える仲間と共に乱世を駆け抜け、

ようやっと三国を統一することが出来た。

そして華琳が三国を統一するのを見守るという役目を終えた俺は、世界から消えることになった。

 

体が透けていたことは覚えている。

寸前まで華琳と二人で話をしていたことも…。

ただ気がつけば此処にいた。

それはつまり、俺は完全にあの世界から消えてしまったのだ。

 

その事実が、今はもう曖昧に薄れている俺の自我を刺激する。

何にも言えなかったな、皆には…。

華琳には迷惑かけっぱなしになっちゃったよ。

 

華琳…。

 

俺の愛しい人。

それだけじゃない。

 

春蘭、秋蘭、霞、季衣、流琉、桂花、稟、風、凪、沙和、真桜、天和、地和、人和。

俺の愛しい魏の仲間たち。

 

俺の愛すべき日々。

生きた証。

彼女たちとの思い出があるからこそ、俺は消えることを選択できたんだ。

 

このまま俺はどうなるのか分からない。

もう考えるのも億劫になっている…。

現代に戻らずに本当に消えてしまうのかもしれない…。

それでも俺は一生懸命生きたって胸をはれる。

それだけで満足だ………。

 

ああ、でも。

 

最後に聞こえた華琳の泣き声だけが耳に残って仕方がなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…………え?」

 

目覚めは唐突だった。

眩い太陽の光が俺を照らす。

気がつけば、そこに俺は立っていた。

 

見覚えのある風景、建物。

此処は……

 

「聖フランチェスカ学園……?」

 

そう、俺が通っていた学校の敷地内に俺はいた。

 

「戻って……きたのか?」

 

少し肌寒い気温と、静けさが漂う空気。

時間は恐らく朝方だろうか?

とにかく、俺は聖フランチェスカ学園にいた。

 

さっきまでの浮遊感はない。

地に足をつける感触…。

唐突に感じた。俺は戻ってきたのだと。

 

「はは……戻って、きちゃったのか」

 

少し歩く。

正確な時間は流石に分からないけど、

一年以上になる母校の敷地内。

 

なつかしくは思えたけど、ただそれだけだった。

それ以上に喪失感みたいなものが心の中を覆っていたから…。

 

「華琳にはかっこつけたこと言っちゃったけど、

改めて帰ってきたんだって分かると……やっぱり寂しいな」

 

言葉にすることで更に感じる喪失感。

大切なものが両手から零れ落ちていく感覚。

足元が揺れる。

 

だけど、その足を折るわけにはいかなかった。

そんなことをすればきっと、華琳たちは怒ると思ったから。

 

「……とりあえず一度寮に行ってみるか」

 

と言ったもののあることに思いつき足を止める。

今、この時代って何年だ?

もし俺が向こうへ行った時間そのままが流れていたら、俺は行方不明ってことになってるはずだ。

それとも本当に胡蝶の夢のように夢を見てたってだけで、時間はたっていないのか?

後者なら問題はないけど、前者なら面倒くさいことになりそうだなぁ…。

 

なんて俺の考えは直に解決することとなる。

いや、解決というよりは更に大きな問題に膨れ上がったって言ったほうがいいかもしれない。

 

そう―

 

「……ご主人様?」

 

「おや、今日は早いのですね、ご主人様」

 

「え?」

 

この人たちの存在によって。

 

「どうしたのですか、そんな驚いた顔をされて?」

 

「恋の顔、何かついてる……?」

 

「関羽さんに……呂布さん……!?」

 

 

 

続く。

 

 

 

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どうもお久しぶりの人はお久しぶりです。

初めましての人は初めまして。テスタです。

今回はまた魏エンド後のお話を思いついたので投稿させていただきます。

 

お話は短編で、6話終了予定です。

よければお付き合い下さい。

 

ではまた次回にノシ

 

 

 

 

 

 

 

説明
タイトル通りのお話です。
魏エンド後です。
ただ僕の以前いくつか書いた魏エンド後の作品を見ていただければ分かると思いますが、
素直なハッピーエンドになることはまずありません。
それで嫌な方は見ないほうがいいかもしれません。
それでもいい方はどうぞ見てやって下さい。
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コメント
おぉ!これは気になりますね。(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
蜀の皆がいる現代か?(VVV計画の被験者)
何? 無印END後の世界に来たの?(劉邦柾棟)
ほうほう・・・気になりますね。(スターダスト)
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恋姫 魏エンド後 一刀 素直なハッピーエンド? ないないw 

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