「・・・逃げて逃げて、一月か。」

私はお尋ね者・・・と、言うより探し人となっている。『この者見つけ次第、陳留・曹孟徳の処へ。賞金千金。』という、札が現れて以来私はキ州の国境沿いまで逃げていた。何故かは解らない。ただ、北に行って頭を冷やそうとしたからかな？？

ふと森を散策中、審配という旅人にであった。

曰く、袁紹に仕えるため仲間と共に旅していて、今は自由行動中らしい。

袁紹か・・・はっきり言って私よりも馬鹿だぞ？と言ったものの、「だからこそ、面白いんじゃないかな。つまり突拍子の無いものが現れる。つまりその事で頭をフルに使えるんだ。軍師明利だろ。ましてや、軍師は君主を使って自分の名を広める者。君主を選ぶ自体、自分の才能に自身の無い証拠だ。」と、言い返した。

どこぞの猫耳に聞かせてやりたいな。あいつは袁紹からあの方の元へ来たものだからな。

しかし・・・面白いなコイツ。話をしていても頭は疲れないから尚更だ。・・・途中、解らない単語が出るも、そのときそのときで解りやすく教えてくれる。

コイツにだったら、教えても良いかもしれないな・・・自分の傷を・・・

途中、天啓が来たーーー！！と、どこぞの極道崩れの孤児院経営者張りの声を出した雪蓮によって、森の中をそれぞれで三人分かれて散策した。

そこで少し疲れたから小川の音がするところに出ると、そこには木刀で素振りをする眼帯を付けた女性に出会った。

はて、自分の知識では隻眼で武将は、曹操の所じゃないか？と、思いつつ取り敢えず声を掛けるのに成功した。

自分の考え道理、彼女は『夏候惇』であった。なぜここにと聞いてみた所、

曰く、戦場で不覚を取って隻眼になってしまった事。

曰く、恐る恐る主君の所に報告しようとした所、傷ついた自分は要らないと主君と軍師が密議をしている事を聞いてしまった事。

結果、逃げて放浪中との事であった。

（そうか・・・彼女も『被害者か』）

そんな傷心中の彼女の心に自分の声を通らせる。彼女もまた、復讐すべき被害者なのだから。

"なぁ、俺たちと一緒に復讐しないか？この世の中・・・漢王朝に対して"

・・・言っている意味が解らなかった。

"君もわかっているだろう？賊のせいで主君と離れなければならない事を。賊さえいなければ君は皆と幸せに暮らせたのかも知れないんだぞ"

・・・しかし、賊在っての武人だぞ？矛盾しているではないか。

"別に戦うだけが武人ではない。武を教えるのも武人だし、強くなるのも武人だ。何より、戦うとは守る事、守りこそ武人としての頂点じゃないのか？"

・・・

"俺は来てほしい・・・無論、今から曹操の下へ行くのも構わない。俺としては、傷ついた女性をほっとけ無かっただけだしな"

・・・華琳様。自分の不忠をお許しください。自分にも守るものを見出す事が出来ました。

「春蘭だ。春蘭と呼べ・・・え〜と。『一刀。審正南、真名を一刀。』うむ、よろしくな！」

一刀！！

彼らは合流し、ギョウへと入る。そこから先は、生き地獄。決して振り返れない道を彼らは、決して振り返ることなく、威風堂々と前進する。

漢王朝は衰退の窮みに入り、賊たちが蜂起する。

天はただ見つめ・・・何も答えない。答えなど無い。"盛者必衰"その言葉道理、世の中は変わり果てる。

復讐者たちの闇はどこまで続くか・・・決して解らない。