『裏切り者(鞏志、糜芳伝)』 |
注意事項
・絶対正義派の人は好きなssではありません。
・反蜀ssです(特に愛紗好きにはいやなssかも)。
・タイトル通り「裏切り者」視点のssです。
・あとあじ悪いssです。
・反漫画三国志ssです。
あと、ご理解していただきたいこと。
注意事項の5個目、「漫画三国志」の話を元に作成してます。
三国志全体に「反」というわけではございません。
設定
数年前、北郷は武陵に降り・・この世界に合った名前に名を変えています。
ただ・・わかりやすいよう真名は「カズト」にしてます。
荊州西部に位置する、蜀軍本陣。
兵たちが寝静まり、虫の音しか聞こえぬ深夜。
月明かりの中で一組の男女が酒を酌み交わしていた。
「なあ、カズト」
「なに・・糜芳さん」
「今日の月は綺麗だな」
「そうだね」
「そういえば、お前と初めてあった日も月が綺麗だったな・・」
「だね〜たしか俺達が会ったのって糜芳さんが武陵に視察に来た時が始めてだったけ」
「そうだそうだ・・お前が武陵太守だった時だ」
「何年前のことかなーそんなに昔のことじゃないのに覚えてないや」
「5年?いやっ7,8年前か?・・分らん、私も思いだせん」
「・・お互いまだ若いのにねー」
「まあ、今は乱世1日一日が濃いんだ、ただ人と初めてあった日とかそんなたいした事じゃない話は覚えきれないんだろう」
「そうだねーでもさ、糜芳さん。初めてあった時に俺に言った第一声は俺、しっ〜かりおぼえてるよ」
「そりゃあ俺も覚えてるぞ・・今考えればまあ、我ながらよく言えたもんだ恥ずかしくて忘れようにも忘れられん」
「そうだね・・今じゃ糜芳さんも同類だし」
からかうような口調で話しながら、北郷がニヤつく。
「いや・・この状況だそれ以下だろう」
それに対し、糜芳も自虐的な笑み返しながらニヤつく。
「今じゃ、私は檻の中に入ってる犯罪者だ」
「そうだねーしかも、死刑囚っていう更に最悪な状況だし」
「・・なんか、自分でいうのは言いが。他人に言われると腹が立つな」
「ごめん、ごめん・・じゃあ、俺もあの時の発言許してあげるからさ」
「なんだ・・許してあげるって。さっきまではまだ根に持ってたのか?」
「そりゃあ・・そうだよ、アレは酷いよーあの時俺一番精神的に参ってたのにさ〜」
「わ、悪かったて〜お、俺の家金持ちだろうー生まれてこの方不自由したことないからさ〜。なんか昔は白か黒、正義か悪かしかそんな子どもじみた発想しかなかったんだよ・・今思えば自分でも気持ち悪いほどにさ〜」
「・・そうなのかもしれないけどさ、とはいえ、やっぱり同僚になったばかりの相手にあの発言は社会に出てる大人としとして無いよ」
「ま、まあ・・それはそうだな。い、今更だがすまん許してくれ」
「いいよ、いいよ・・さっき言ったとおり、さっきの俺の発言と合殺でいいよ」
「そ、そうか・・ありがとな、許してくれて」
「うん・・」
『ちかよるな、裏切り者』
それが・・。
俺が糜芳さんに初めて言われた言葉だ。
俺はかつて一人の人物を裏切ったことがある。
武陵太守金旋という女性を。
俺が裏切った彼女は漢(魏)に忠節を誓い、逆賊である劉備に戦いを挑んだ。
・・無謀とも言える戦いを。
彼女が無謀を冒した原因は前述の通り、漢への忠誠がほとんどを占めていた。
だが、心の隅には彼女が中央に残し事実上人質である妹や親族もいたであろう。
そして俺は・・。
その彼女の家族への愛や漢への忠誠という個人的な思いを「憎み」。
無謀な争いに巻き込まれる武陵の民を守るために。
野戦に敗れ城に戻ろうとした彼女を・・。
殺した
その後・・その行為は劉備軍に受け入れられ。
俺は、彼女の次の太守として武陵太守に就任した。
それから数日後だ、視察に来た糜芳さんから「裏切り者」と言われたのは。
俺は表向き笑顔を崩さなかったが内心、糜芳さんを殺したくなるほどの憎悪に包まれた。
俺の行為は・・彼女個人のエゴ(家族愛、忠誠)から武陵の民を守った大義に乗った行動であり「正義」だ。
俺の行為は・・劉備軍の為にもなり、実際、俺は劉備軍に太守として迎えられた劉備軍の最功労者の一人だ。
なのに・・なぜ、「裏切り者」と蔑まされなければならない!!
こんななにも知らない女に!!
まあ、そんな・・感じで。
昔はそう考えていた・・。
数年後。
糜芳さんへの憎しみを抱きながも。
武陵太守から中央での仕事に代わり、日々忙しく政務に取り組んでいた最中に事件はおきた。
蜀軍の荊州方面軍最高司令官関羽が戦死したのだ。
原因は味方であったはずの孫氏の急な裏切りである。
だが、荊州南部諸郡のあっけなさすぎる降伏にも関羽の死の遠因があった。
そしてその南部降伏の切欠となったのが、荊州南部の司令官的存在であった糜芳さんの降伏だ。
その数ヵ月後・・。
関羽を失った劉備は狂ったように呉攻めを開始するも大敗・・多くの将兵を失った。
そして、それからさほど時間をかけず・・劉備は失意のまま死んだ。
劉備の死後は親族である、劉禅が跡を継ぎ・・諸葛亮が蜀の実権を握る。
すぐさま諸葛亮は、小国蜀が魏、呉の二国を一気に敵に回す愚を悟り。
呉との和解を進め、呉側の好感触を得た。
だが、逆に身内である蜀内部では呉の裏切り行為への憎悪が今だ渦巻いており・・。
反対意見が無視できない情勢で交渉へ進めなかった。
とはいえ。
呉、蜀両国合わせても魏に劣る国力である両国にとって和解は現実的に絶対的に「必要」だった。
その為、密かに蜀、呉は協議を進め。
とある、手段にいきつく・・。
呉への憎悪を逸らすための「人柱」へと・・。
そして、その「人柱」こそが関羽の死の遠因の一人である糜芳さんであった。
数ヵ月後、和解の成立と共に。
檻の中に入れられ護送されてきた糜芳さんは、執行(生け贄の儀式=死刑)の日まで晒し者として唾を掛けられ、罵られ生きるだけの存在となった。
俺も始めは、あの時の恨みを晴らそうと糜芳さんの姿をみにいったが。
まあ・・なんというか・・。
その姿は元は平穏な現代に生きていた俺には「受け入れられない」物であった。
更に金旋さんを裏切り殺した自分も下手すればこういう立場であったと思うと。
同情といってしまえば・・それまでだが、なぜか糜芳さんの傍にいたくなった。
それから・・密かに俺は糜芳さんに一人勝手に話し掛けるようになった。
糜芳さんは最初こそすさんだ感じの反応だったり無言ばかりであったが・・。
まあ・・このごろはは同じ裏切り同士という事か。
今では人様に言わせれば「傷の舐めあい」・・とも言えるであろうなにげない会話を続けている。
そして今日・・最期の夜。
俺は糜芳さんの檻の前で座り込み、持ち込んだ酒を一緒に飲みながら過ごしていた。
「なあ、カズト・・俺は負けが決まっていたのに戦いを続ける愛紗から荊州の民を守るため降伏したんだ・・武陵の民を守ったお前と同じようにな。でも、お前は裏切りは許され、私の裏切りは許されんのだよな蜀では・・。不公平だと思わんか・・」
「そうだねーでも、俺は魏にいけばすぐ首が飛ぶよ」
「そういわれれば・・そうか・・。所詮、裏切り者とはそんな者だな」
「そうだよ」
「それにな・・私自身は民のためと言い聞かせてるが、ほんとはただ自分のためだけかもしれん」
「俺も時々そう思うよ」
「それになー、俺の姉上は俺の裏切りを苦に病になり死んだ・・」
「うん・・」
「わたしは・・その点だけは後悔しつづけている・・」
「・・・」
「あ、姉上はほんとにいい人であった・・傲慢な私に唯一真の微笑を向けてくれる人であった!・・そ、それを私は苦しめ・・殺した」
「・・・」
「わ、わたしはどう足掻こうとも、言分けしようとも・・罪人だ」
「・・・」
「な、なあ・・カズト?それでもさ、それでもお前だけは俺を許してくれるか?」
「うん・・・・だって糜芳さんを許さないと、俺も許されないからね・・自分のために許すよ」
「そうか・・自分のためか」
「うん・・駄目かな?」
「い、いや・・構わない・・それでも一人でも許してくれる人がいれば」
「ねぇ・・糜芳さん。俺も、金旋さんを殺した裏切り者の俺も糜芳さんだけは許してくれるかい・・糜芳さんの為に」
「な、なんだか・・お互い弱くて醜いなカズト」
「ああ・・そうだね」
「でも、許すよ・・お前を・・いやっ」
「鞏志を・・」
次の日びぼうさんは檻に入れられたまま、関羽、張飛の縁の者に公開されながら刺されて殺されたらしい。
一連の行為を見ていた兵や将校は感涙極まって泣いたり、喜んだりして大騒ぎしたらしい。
・・数ヵ月後、俺は蜀を去った。
俺みたいな裏切り者すらやさしく包んでくれていたこの国のなにかが・・。
徐々に壊れいくその音が聞こえたから。
〜終〜
俗に言う、中2病の作品かなとすこし反省してるssです。
説明 | ||
シリアスです。 注意点多数(ネタバレ含むなので1ページ目に載せてます) ただ・・絶対正義派の人には嫌われるssなので。 その手の人はお引き返し下さい。 |
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コメント | ||
善とはもう一方の立場で見れば悪であり、当時において悪手と思われる事が後に最善の手であったりするわけなんですよねぇ。(shirou) | ||
タグ | ||
鞏志 糜芳 恋姫 金旋 | ||
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