真・恋姫†無双〜二人の王佐〜]一章第九話 「花婿は一刀!?」 |
夕焼けに染まる部屋、そこには一組の男女が向かい合って立っていた。
「あ、あの〜一刀さん、話って一体なんですか?」
「突然呼び出してごめんね。実は…風里、君が好きだ。僕と結婚を前提に付き合ってほしい」
「えっ!?そ、そんないきなり……それに私達出会ってからあまり経ってないのに結婚を前提に付き合ってほしいなんて…」
「時間なんて関係ないよ。僕は一目会った時から君に惚れてしまったんだ」
「一刀さん////」
「駄目かい?」
「そ、そんなことないです!!じ、実は私も一刀さんのことがす、好きです!!」
「ならよかった。これで晴れて僕達は恋人だね。すごく嬉しいよ風里」
「はい。私もです一刀さん////」
そうして自然と二人の距離が近づいていき…
「大好きだよ風里」
「一刀さん////」
唇が重なり合う寸前、
ドスン!!
「ふみゅ〜?」
風里が驚いて目を開けるとそこは夕暮れの教室などではなく、逆さに映った自分の部屋だった。
「も、もしかしてさっきまでは全部…………夢?ふみゅ〜〜〜〜〜〜〜〜////////////」
夢だったことに気がついた風里は耳まで真っ赤にして手に持っていた枕に顔を埋めた。
「(ふみゅ〜あんな夢見ちゃうなんてやっぱり昨日の“アレ”が原因だよ〜////////)」
「うぅん…風里ちゃん…?」
「ふみゅ〜!?…み、美雷ちゃん、お、おはよう!」
「う…ん、おはよう風里ちゃん…あふっ…ところでなんで風里ちゃんは床で枕を抱いているの?」
「えっ?…あっ!?え〜と…その〜、あ、あのね!ちょ、ちょっと寝ぼけて寝所から落ちちゃって…」
「そうなんだ…それと凄く顔が赤いよ?風邪?お薬もらってこようか?」
「ふみゅ〜!?ち、違うよ!ただちょっと昨日は暑くて寝苦しかったから顔が赤いだけで風邪じゃないよ!」
「そっか、なら安心だよ。昨日“あんなこと”があったからそれで体調を崩しちゃったんじゃないかって心配したよ」
「本当に大丈夫だよ。心配してくれてありがとう美雷ちゃん。」
「そっか、なら準備して食堂いこ♪」
「うん!」
元気に返事をした風里だったが実は違うことを考えていた。
「(そういえば夢って確か無意識に抱いている自分の願望の現われだって本に書いてあったよね。ってことはも、もしかして私一刀さんのこと………////////////)」
「風里ちゃん?」
「な、何でもないよ!?い、今行くね!!」
「(これってやっぱり恋、だよね?)」
「おはよう」
教室に入った一刀達はいつものようにみんなに挨拶をしながらそれぞれの席に着いた。すると一刀の前の席の風里がおずおず後ろを向き…
「あ、あの…おは、おはようございます!“一刀さん”!!」
「「「!?」」」
「うん、おはよう“風里”!!」
「「「!?!?」」」
「ふみゅ〜〜〜〜//////////////」
風里は一刀に挨拶をすると顔を真っ赤にして体を前に戻した。
「お兄様!!い、一体いつの間に彼女と真名の交換を!!」
「そうね」
「そうですわ!!」
「ああ、それは………………………」
話は昨日、つまり桂花達の料理対決の時まで遡る。
〜@風里SIDE〜
「ふんふんふ〜ん♪」
「本当によかったね!欲しい本が買えて!」
「うん!この本どのお店も売りれちゃってたから最後に入ったあのお店に一冊だけ残っててよかった♪」
「じゃあさ!お買い物も終わったことだし休憩がてら茶店に寄っていかない?」
「そうだね!それじゃあさ、この前出来たばかりのあのお店に行こうよ!あそこのお菓子すっごく美味しいらしいんだ!!」
「わぁ〜楽しみだなぁ♪」
こうして茶店に行く事になったのだが…
「きゃ〜〜〜!!」
「うわぁ〜〜!!」
突然人々の叫び声が聞こえた。
「何だろう?」
「どうしたのかな?」
「!?美雷ちゃん!あれ!」
何かを見つけた風里が指差すほうを見ると前の方から剣を振り回しながら男が走ってきた。
「も、もしかして泥棒さん!?」
「逃げよう!!ここ泥棒さんの通り道だから避けないと危ないよ!!」
「うん、そうだね…って、えっ!?」
すると逃げようとする二人を追い越し女の子がおもむろに前から来る泥棒に向かって歩きはじめた。
「あ、危ないですよ!!」
「心配してくれてありがと♪でも私は大丈夫だから貴女達は逃げなさい!」
「お姉さん…」
年齢は二人より少し上くらいだろうか、褐色の肌に赤い服を着た女の子は微笑むとまた歩きはじめた。
「それにしても皇帝陛下のお膝元の洛陽でもこういうのがあるんだ!来てよかった♪」
そうしてついに泥棒の目の前に女の子が立ち塞がる形になった。
「ぎゃはははは、どきなお嬢ちゃん!退かないと可愛い肌が真っ赤に染まるぜ〜!!」
「そう訳にはいかないわね。泥棒を見逃したなんて母様に知られたら怒られちゃうもの♪」
「ほぉ〜、どうしても退く気がないなら……死にな!!」
ヒュン!
男の持っていた剣が女の子に振り下ろされ女の子が血まみれに…
キーン!
「なっ!?」
ならなかった。女の子は持っていた剣で泥棒の剣を受け止め、そして弾いた。
「母様に無理やり連れてこられた時はどうしようと思ったけどこんな面白いことが起こるならまた来てもいいかな♪」
「こっっのガキー!!子供だからって優しくしてりゃ図に乗りやがって!!ん?よく見りゃガキのくせにいい体してるじゃねぇか!ついでだからこのガキも攫って俺の慰み者にしてやるよ!ぎゃはははは!」
「ふんっ、下衆が!アンタみたいなクズに体を許すわけないじゃない!!」
そう言うと女の子は泥棒に切りかかった。
ヒュン!
「ひゃあ!?」
ヒュン! ヒュン!
「うひゃあ!?」
「ほら!ほら!」
女の子の太刀筋はとても鋭く泥棒は逃げるので精一杯のようだったが…
「うわっ!?ちっ、こうなったら!!」
「あら?どうするつもり?」
「こうするんだ、よっ!!」
ばさっ!
泥棒はいつの間にか掴んでいた砂を女の子に向かって投げつけた。
「きゃっ!?でもこんなことしてもすぐに「動くな!!」何?」
女の子が目を閉じたのはほんの一秒にも満たない時間、しかしこの『一秒にも満たない時間』が女の子と泥棒の立場を逆転させてしまった。
「動くとこの娘がどうなっても知らないぞ?」
「風里ちゃん!!!!」
女の子が目を目を開けるとそこには風里の首に剣を突きつけている泥棒の姿があった。美雷が人質にされた風里を見て悲鳴をあげていた
「ぐすっ、ごめんなさいお姉さん」
「心配いらないわすぐに助けてあげるからね。それにしても、外道はどこまで行っても外道ね!」
「へっ、なんとでも言えばいいさ!それよりも剣を捨てな!」
「なに?」
「ふ、ふん!聞こえなかったのか?剣を捨てろって言ってんだよぉぉぉ!!!」
「ひぃ!?」
泥棒は風里の首筋に当てた剣に力をこめた。
「はぁ〜わかったわよ……これでいいんでしょう?」
女の子が剣を投げ捨てると泥棒は剣を手の届かない所へ蹴飛ばした。
「…よし、これであんたは何もできない」
「あなたの要求は聞いたわ。だからその娘を放しなさい!!」
「駄目だね。ここでこいつを放せばあんたは俺を殺しにくる!だから放すわけにはいかないな!」
「くっ!!じゃあどうすればその娘を放してくれるのかしら?」
すると泥棒は下卑た笑いをし、
「それじゃあ“服を脱げ”」
「なっ!!」
「ぐへへへ、俺様を馬鹿にした罪だ!さっさとしろさもないと…」
「お゛ね゛え゛ぢゃん!!」
「大丈夫よ。すぐに助けてあげるからね」
女の子は風里に微笑んだあと泥棒を見て
「下衆が!わかったわよ、脱ぐからその娘に危害を加えるのは止めなさい!!」
「ぐへへへ、そうだ、それでいい」
「くっ、こんな民衆の前で素肌を晒すなんて…」
そう言いながら女の子は服を脱ぎ、そして下着一枚の姿になった。
「ぐへへへ、やっぱりいい体じゃねぇか!う〜ん、いいねぇ〜!!」
「さぁ!約束は守ったわ!その娘を放しなさい!」
「い〜や、まだ足りないねぇ〜!」
「何!!」
「その下着も脱げ!」
「なんですって!!」
「ほら、早くしろ!!さもないとこいつが血まみれになるぞ?」
「ぐすっ」
「待ちなさい!脱ぐわ!!脱ぐから止めなさい!!」
「ぐへへへ、そうだよ、それでいいんだよ!!」
「(ごめんなさい母様。少し強いからって調子に乗って油断して相手に人質までとられ、さらに民衆に裸を見られるなんて私は『 』の娘失格です。それに初めては大好きな殿方って決めていたのになぁ。今からでも誰か助けてくれないかなぁ〜。…なんてね。誰も来ないよね?みんな自分の命は惜しいもの)」
そう思いながら下着を脱ごうとしたその時!!
『伏せろぉぉぉ!!!!』
「!?」
女の子は突然後ろから叫ばれたので、混乱しながらもしゃがんだ。すると…
ヒュン!! ヒュン!!
ドスッ ドスッ
「ぐあぁぁ」
女の子が前を見ると剣を落とし膝をつき両目を押さえる泥棒の姿があり、すぐ近くには石が二つほど転がっていた。そして…
ふぁさ
「えっ!?」
突然女の子は大きな布に包まれた。
「(これって服?…誰が…)」
女の子が見上げるとそこには自分と同い年ぐらいの男の子が先ほど人質にされていた娘を抱いて立っていた。
時は少し前に遡る。一刀は一通り修練をし、水浴びをしたあと頑張っているみんなにお土産を思い、何か買っていってあげようと市にきていた。
〜A一刀SIDE〜
「さてと、みんなへのお土産何にしよう?お饅頭とかは折角みんなが料理作ってくれているから駄目だとして……う〜ん、やっぱり果物が一番いいかな。よし!そうと決まったら…」
一刀は果物屋を目指して歩き出した。しかし角を曲がった所で大勢の人垣作っていた。
「どうしたんだろう?すみません!」
一刀は気になって近くにいるおばさんに聞いてみた。
「!?(かっこいい子だねぇ!数年後が楽しみだよ!!じゃなくて)な、なんだいぼうや?」
「何かあったんですか?」
「あ、ああ。詳しくは知らないけど剣を振り回す泥棒に若いお嬢ちゃんが立ち向かっているそうだよ」
「そうなんですか!?」
「えぇ、もうすぐ警備隊の人達が来るはずだからそれまでもつといいけど…」
「そうですか、教えていただきありがとうございました」
おばさんにお礼を言った一刀はもう少し詳しい状況を知ろうと人垣の中心へと進んでいった。そして…
「えっ!?」
そこで一刀が見たのは風里が人質になって女の子が脅されて服を脱いでいる所だった。
「(あそこにいるのは諸葛誕さん!?それと下着姿の女の子………なるほど、あの泥棒の指示か……なんて非道な!女の子を民衆の前で辱めるなんて許さない!!早くなんとかしないと!)」
事の重大さに気付いた一刀は即座に行動した。まずは泥棒に見えない位置、つまり女の子の後ろに移動し、小石を二個拾ってすぐに投げられるようにした。
「(あとは泥棒に意識を逸らせられれば…)」
しかしその時、女の子にとって最悪の指示が飛ばされてしまった。
「その下着も脱げ!」
「(!?なんてやつだ!女の子にそこまでさせるなんて!!……くっ、こうなったら)」
隙を探す時間がなくなったのでしょうがなく一刀は大声で、
『伏せろぉぉぉ!!!!!!』
「!?」
女の子が一刀の声で伏せてくれたので、すかさず持っていた小石を泥棒の両目目掛けて全力で投げつけた。
ヒュン!! ヒュン!!
ドスッ ドスッ
「ぐあぁぁ」
「よし、今だ!!」
投げつけた小石が泥棒の両目に直撃し、痛みで剣を落とした隙に一刀は凄い速さで飛び出し風里を抱え、女の子着ていた服を女の子に掛けてあげた。
〜@、A合流SIDE〜
「君、大丈夫かい?」
「え、ええ」
「諸葛誕さんも大丈夫?怪我はない?」
「ふみゅ〜〜〜!?は、はひ///だ、大丈夫れしゅ!!」
一刀に抱きかかえられているのに気付いた風里は顔を真っ赤にして答えた。
「二人共ちょっと待ってて、すぐに片付けるから(なでなで)」
「え、えぇ///」
「は、はい///」
風里を下ろし、風里と女の子を撫でた後、一刀は泥棒を睨んだ。
「あなたは女の子にこんな酷いことをして何とも思わないのですか?」
「へっ!この俺様に逆らうからそういうことになるんだ自業自得さ、ぎゃはははは!!」
「そう…ですか」
女の子は息を飲んだ。一刀は悲しそうにそう言ったあと一瞬で泥棒との間合いを詰め、黒牙刀で両腕、両足、そして顔に打ち込んだのだ。
「ぐふっ!」
泥棒が吹き飛び意識を失ってしまったので警備隊の人達に『あなたの利き腕と利き足を折り、他のところは痣が残るぐらいに打ち込みました。ですので怪我が治るまでは生活がとてもし難いでしょう。不自由な中で五体満足のありがたみを噛み締め、これからは悪いことをせず一生懸命生きてください』と泥棒あて伝言を頼んでから二人のもとに戻った。すると、一刀は拍手喝采の嵐に包まれた。
「二人共大丈夫かい?」
「は、はひ!?お、おかげさまで大丈夫でした/////1」
「ありがとう。お陰で助かったわ//////」
「気にしないで、当然のことをしただけだからさ」
すると突然人垣から女の子が走ってきて風里に飛びついた
「風里ちゃ〜〜〜ん!!」
「あ、美雷ちゃん!!」
「ぐすっ、無事でよかったよ〜〜〜!!」
「心配かけてごめんね美雷ちゃん」
「ううん、風里ちゃんは悪くないよ!悪いのはあの泥棒だよ!!」
「ありがとう美雷ちゃん!」
「よかった、よかった」
「あ、あの……」
「ん?どうしたの?」
「あのね実は(ボカッ)いった〜い!!誰よ!いきなり殴…った…のは……」
女の子が振り向くとそこには女の子と同じ褐色の肌と赤い服を着た女性が立っていた。
「か、母様…」
「この馬鹿娘が!!どこにいったのか探しに来てみれば、下着姿で道の真ん中にいるとはなんだい!恥を知れ恥を!!」
「母様これには訳が!!」
「言い訳は無用だ!!とっとと帰るぞこの馬鹿娘が!!」
そう言うと女性は女の子を小脇に挟み歩き出してしまった。
「ちょっと待ってください母様!!まだちゃんとお礼が!!あ〜もう!母様ったら融通が聞かないんだから!!しょうがないわね…さっきは助けてくれてありがとう!!私の真名は『 』いつか必ず貴方に会いに行くわね!!」
「それじゃあ…僕の真名は『一刀』だよ!!それじゃあまたね!!」
お互いに手を振り再会を約束したのだった。
「なんかすごい親子だったね」
「は、はいです…」
「うん」
「ともかく無事でよかった。諸葛誕さんが泥棒の人質にされていた時は驚いたよ」
「本当だよ。あの時は正直焦っちゃったよ。さっきの女の子と泥棒が戦っていると思ったら突然あの泥棒が私達の方に来て風里ちゃんを連れていくんだもの!」
「うん、とっても怖かった。でもあのお姉さんが私に危害が加わらないようにしてくれたから私は今こうして無傷でここにいられるの。だからとっても感謝しているのに…」
「お母さんに抱えられてどこかに行っちゃったもんね」
「はい、まだお礼言ってなかったのに…」
「大丈夫だよ。またきっと会えるさ!きっと…」
「はい!!でも、その…」
「何?」
「荀鳳さん…にも…とっても…感謝して…います。それで…その………(もじもじ)…すーはー、すーはー、よし!荀鳳さん!も、もしよかったら私の真名『風里』受け取ってください!!」
「諸葛誕さん!?」
「駄目…ですか?」
「いや、ありがとう風里。それじゃあ僕のこともこれからは『一刀』って呼んでもらえるかい?」
「はい!一刀さん/////」
「それじゃあ私も預けようかな♪」
「美雷ちゃんも!?」
「うん、だって風里ちゃんが真名を許すんだし、それに私の親友の命の恩人だもん!真名を預けるのは当然だよ♪」
「そっか、わかった。なら預かるよ」
「よかった。私は姓は鍾(しょう)、名は会、字は士季(しき)、真名は美雷、改めてよろしくね!それと実は一応私塾に通っているけど勉強より体を動かす方が得意なんだ!だから今度手合わせしてもらえるかな?」
「そうなんだ。わかったよ機会があったらやろうか!それじゃあよろしく美雷」<pf「………………っていうことがあったんだ」
「ふみゅ〜〜〜〜//////」
「(よく見たら結構可愛いわねこの娘)そうだったの……ところで一刀、さっき貴方の話しに出てた女は誰?」
「(そうですお兄様!!一体誰なんですか!!)」
「いや〜それがわからないんだ。どうやらこの街の住人じゃないみたいでさ。街の人にも聞いたんだけど誰も知らないらしいんだ。多分、他の街から来た人達だと思う。それなら街の人達が知らないのも無理ないもの」
「そう、ならよかったわ」
「よかった?」
「こほん!何でもないわ!」
「(ほっ、よかった!)」
桂花と華琳は一刀の話を聴き内心ほっとしていた。なぜなら一刀の話を聞く限りその女の子の貞操を一刀が守ってあげたようなもので、そのまま一刀に惚れているかもしれなかったからだ。だがもし仮に惚れていたとしてもすでにこの街にいないのであればもう一度再会するのは難しくなるのがわかったのでほっとしているのだった。近い将来その女の子と劇的な再会を果たすとは知らず……
「とりあえず話はわかったわ!」
「それはよかった」
「一刀一つ聞くけれど貴方、真名を許したということはこの娘達と頻繁に話をするということよね?」
「そうだね。当然そのつもりだけど…」
「そう、貴女達たしか諸葛誕と鍾会と言ったかしら?」
「は、はい!」
「そうだけど、どうかした?」
ちなみに美雷の席は桂花の前で一刀が昨日の出来事について話している時に風里の側に来ていた。
「貴女達が一刀と話すということは“い・つ・も”側にいる私とも話す機会が多々あるということ。それなのに親しく呼び合わないのは変でしょう?だから貴女達にも私の真名『華琳』を呼ぶことを許可するわ」
「えっ!!本当にいいんですか?」
「もちろんよ。」
「わかりました。それじゃあこれからは私も『風里』って呼んでください」
「わたしは『美雷』よ。よろしくね華琳『ちゃん』♪」
「ちゃんっていきなり馴れ馴れしいわね貴女!」
「あはははは〜」
「全く!って!!」
「んっ?どうかした華琳ちゃん?」
「い、いえ何でもないわ(よく見たらあの娘の胸大きすぎじゃない!!あの麗羽ぐらいあるのではないかしら?くぅぅ〜一体何を食べればあんなに大きくなるのよ!!)」
ちなみに桂花は華琳が気づく少し前から美雷の胸の大きさに気づき凝視していたのであった。
「それじゃあ桂花はどうする?」
「えっ!?な、何がですかお兄様?」
「真名の話だよ。僕と華琳は許したけど桂花はどうする?」
「わ、私はお兄様が真名を許したのでしたら構いません」
「う〜ん、お兄ちゃんとしては僕がするなら自分もっていうのじゃなくって桂花にはもっと自分の意思を持って物事を決めて欲しいかな」
「お兄様…」
「そうすればお互いこれからも色々と意見交換とかもできるからね♪」
「はい!わかりましたお兄様!これからはお兄様の決めたことに流されず自分の意見を言うことにします!!」
「そっか、偉いぞ桂花(なでなで)」
「お、お兄様/////(あ〜やっぱりお兄様のなでなでは最高です〜〜〜〜???????????????)」
「(いつ見ても羨ましいわね…どうしたら私も撫でてくれるのかしら?)」
「(荀ケさん凄く気持ちよさそうだなぁ、私も撫でてもらいたくなっちゃいました…)」
「(あ〜荀ケちゃん可愛いーーー????)」
「はっ!?こほん、私の真名は『桂花』です…」
「よろしくね桂花さん」
「よろしく桂花ちゃん♪」
「ちゃん付けは固定なのね…」
そのあとすぐ先生が来たのでみんな自分の戻り、続きは放課後に麗羽も入れて話をした。ちなみに一刀は気がつかなかったが話している間、風里は終始一刀を見つめていた。もちろん桂花、華琳、美雷は気づいていたが…
その日の夜、風里と美雷の部屋
「美雷ちゃん!私決めたよ!!」
「そっか、ついに決めたんだ」
「うん、やっぱり一刀さんに頼むことにする」
「それはいいけど大丈夫かな?一刀くんはともかく桂花ちゃん達が許すとは到底思えないよ?」
「そうだよね。はぁ〜どうしよう…」
「……そうだ!こういうのはどう?風里ちゃん!」
「どんな?」
「え〜とね…ごにょ、ごにょ」
「ふん、ふん…えっ!?そ、そんなことするの?美雷ちゃん//////」
「大丈夫だって!風里ちゃんならできるよ♪」
「わかったよ美雷ちゃん!私頑張る!!」
そして作戦実行日の放課後、まずは美雷が桂花達を一刀から引き離しに掛かった。
「それじゃあみんな帰ろ「か〜ずとく〜ん!ど〜ん!!」うっ、うわぁ!!」
「ちょ、ちょっとアンタ!!いきなりお兄様に抱きついてなんのつもりよ!!!!!」
「そ、そうよ!早く離れなさい!一刀が迷惑がっているでしょう!!」
「そうですわ!貴女図々しいですわよ!!」
「え〜そうなの一刀くん?」
そう言いつつ美雷はその自慢の巨乳をグイグイと一刀に押し付けていた。
「そ、そうだね/////は、離れてくれるとありがたいかな」
「そっか〜そう言われちゃったらしょうがないね。離れてあげる!でも気持ちよかったでしょ?私の胸」
「なっ!?」
「なんて下品な!!」
「人のこと言えないわよ。アンタだって前にやったじゃない」
「あ、あれは…その…出来心というか……その…」
「あはははは、それじゃあ最後に、ちゅっ?」
「「「あーーーーー!!!!!!!」」」
「あはははは!!それじゃあね〜〜♪」
なんと美雷は一刀の頬に口づけをしてから離れ教室の出口に向かっていった。
しかしやはりそうは問屋が卸すわけはなかった…
「ウフフフフ、コノワタシノメノマエデオニイサマニフラチヲハタラクナンテイイドキョウネ!!(訳:うふふふふ、この私の目の前でお兄様に不埒を働くなんて良い度胸ね!!)」
「ソウネ、コレハオシオキガヒツヨウヨネ?(訳:そうね、これはお仕置きが必要よね?)」
「ワタクシモオテツダイシマスワ!!(訳:わたくしもお手伝いしますわ!!)」
般若と死神、そして新たにドリル神が降臨し、美雷を追いかけようと走りだした。
「「「マア〜〜〜〜テェェェェェ!!!!!!!」」」
「うわっ!?すごっ、逃げ切れるかな?いやいや、風里ちゃんの為にもここは逃げ切らないと!!(それとがんばれ風里ちゃん!)」
こうして美雷VS般若と死神、そして新たに降臨したドリル神との鬼ごっこが始まった。美雷と風里の作戦とも知らずに…
嵐の去った教室は一瞬時が止まったかのように静かだったがすぐにみんな正気を取り戻しそそくさと帰り支度を再会した。当の本人である一刀はいきなりの口づけに戸惑ったものの、すでに正気になっておりこれからどうしようか困っていた。
「(う〜ん、これからどうしよう?追いかけるかな?それとも部屋に戻ってみんなが帰ってくるのを待つか?)」
「あの〜」
「(でも三人とも無茶するから心配だよね。やっぱり追いかけるべきかな?)」
「あの〜一刀さん」
「(そうだね。やっぱり心配だから追いかけよう!)」
「一刀さん!!」
「えっ!?あ、風里!ごめん気が付かなかった」
「い、いえ。大丈夫です」
「それと僕これから桂花達を追いかけないといけないから話はまた今度でいいかな?」
「あ、あの〜そのことで話が…」
「ん?」
「実は美雷ちゃんは私が一刀さんと二人きりで話すために囮になってくれたんです」
「……………………あ〜、なるほど!兵法の一つ『調虎離山の計(ちょうこりざんのけい)』か」
『調虎離山の計』とは簡単にいうと一部隊が相手を誘き出してその間に別の部隊が本拠地を攻める兵法である
「はい、ごめんなさい。お友達を騙すようなことをして…」
「そっか、悪いと思っているならあとで三人に謝らないとね。きっと桂花達もちゃんと謝れば許してくるよ。それと僕はもう謝ってもらったから許すからね」
「許してくれるんですか!」
「だってそこまでして二人きりで話しをしないといけない訳があるんだろう?」
「…はい」
「なら、僕はそれで十分だよ。それよりもここじゃあまだみんないるから人がいない所に移動しようか」
「は、はい!」
こうして一刀と風里は話をするため、人気の無い校舎裏へと移動した。
「それで話って?」
「はい、それは………“私と恋人同士になって一緒に母に会ってください!!!”」
「えっ!?えっ、え、え?恋人?」
「ふみゅ〜〜〜//////色々説明を飛ばしてしまいました。えと、実は私と偽の恋人になって母に会ってほしいんです」
「びっくりした!!なんだ“偽の恋人”か…でもなんでそんなことまでしてお母さんに会う必要が?」
「は、はい、実は私このままだと結婚させられちゃうんです」
「結婚!?本当に?」
「はい…」
「でも何で?」
「それは…実は私には母が勝手に決めた許婚がいるんです。そしてこの私塾から卒業したらそのまま式をあげるって…」
「そんな勝手な!!」
「嫌だって言ったんです。でも全然聞いてもらえなくて…」
「そうしたらある日、母が『なら彼氏を連れてきたら結婚の話は無かったことにしてあげる』って言ってくれたんです」
「そっか、それで…」
「はい、でもこの私塾に入塾できたのは一刀さんただ一人だけ。お願いします!一度だけでいいので私と恋人のふりをして母に会ってください!!」
「う〜ん、一つ聞くけどもしここで許婚が解消されたとして、私塾を卒業したあとはどうするんだい?」
「そ、それはその…」
「また許婚の話が出ないとも限らない。その時も他の誰かに僕と同じように偽の恋人になってもらうのかい?」
「………」
「それじゃあ問題の先延ばしにしかならないよ?」
「………ぐすっ」
一刀の問いに答えられない風里はついに泣き出してしまった。
「あ〜、ごめん、ごめん!!泣かすつもりはなかったんだ。よしよし(なでなで)」
「あぅ〜////(一刀さんに撫でてもらっているよ〜/////)」
「とにかく僕も協力するからさ、今回は二人でこの場は乗り切ろう!でも次からは自分の力で何とかするんだよ?」
「はい、ありがとうございます!」
「よし、それなら僕はどうすればいいか詳しく教えてもらえるかい?」
「はい!!」
こうして一刀が風里から教えてもらっている一方、美雷を追いかけている桂花達はというと…
「「「マ〜〜〜〜テェェェェェェェ〜〜〜〜!!!!!!!」」」
「あはははははっ♪さすが一刀くんの事になるとしつこいなー♪」
と夕餉の時間まで追いかけっこを続けているのだった
そしてあっという間に風里のお母さんに会う日がきた。
この日一刀は街で出会った男の子達と遊ぶ約束があると言って出てきていた。
「桂花には悪いことしちゃったな。全部終わったらきちんと話さないと」
そんなことを考えながら待ち合わせに場所に向かうとそこには既に風里が待っていた。ちなみに風里の服装はいつも着ている服ではなく、お洒落をしてきていた。
「ごめん、待たせたかな?」
「い、いえ。私も今来たばかりなので気にしないで下さい!」
「そっか、風里を待たせていなくてよかったよ!」
「(何だかこの会話、本物の恋人達みたいだよ〜///)」
「 それにその服、とても似合ってるよ」
「あ、ありがとうございます////////(何時間も迷って選んだ甲斐があったよ〜!!」
「風里?」
「な、何でもないです!!」
「そう?それじゃあ風里のお母さんの所に行こうか」
「は、はい!」
一刀達が風里の母のいる宿へと移動を開始したその後方では二人の後を追いかける四つの影があった
「ちょっと!!あの娘何お兄様と馴れ馴れしく話してるのよ!!離れなさいよ!」
「もう少し静かにしなさい桂花!あまりうるさくすると尾行がバレてしまうでしょう?」
「うっ、わかったわよ。静かにすればいいんでしょう?」
「ところで美雷さん?あの話しは本当なのでしょうね?」
「もちろん♪」
なんと桂花達がここにいるのは美雷が手引きをした為だった。
「それにしてもまさか貴女が私達に協力するとは思わなかったわ。どういう風の吹きまわしかしら?」
「あはははっ♪別に華琳ちゃん達に協力した訳じゃないよ?もちろん風里ちゃんを裏切った訳でもないから、私は一生風里ちゃんの味方だから。私はただ様子を見に来るついでに華琳達を連れてきただけ。だからもし華琳ちゃん達が風里ちゃんの邪魔をしようとするなら容赦しないからね♪ 」
そう言う美雷の目は本気だった。本気で風里為なら友達を傷つける覚悟がその目を通して伝わってきた。
「ふふっ、それほどまでにあの娘のことが大事なのね」
「もちろん♪風里ちゃんは私の一番の親友だもん♪それにね、あの娘は私の恩人なんだ。友達がいなくていつも一人ぼっちだった私に声をかけてくれてたのが風里ちゃんだった。初めてできた大切のお友達。だから私は風里ちゃんの為なら何でもするって決めたの!」
「そう、貴女を勧誘しようと思ったけど止めたわ。どうやら勧誘するべきは貴女ではなくて風里の方みたいね」
「あはははははっ、それは正しいけど風里ちゃんを落とすのは私を落とすより大変だよ?」
「ふふっ、それこそ上等よ。欲しいものがそう簡単に手に入ってしまってはつまらないもの。苦労した末に手に入るからこそ価値があるのよ」
「そっか、せいぜい頑張ってね♪」
「ええ、そうさせてもらうわ」
そうして二人が話していると慌てた麗羽が話しに割り込んできた。
「ちょっとお二人共!!早く来ないと見失ってしまいますわよ!!桂花さんなんてわたくしたちのことなんて無視して、さっさと先に行ってしまっているんですから!」
なんと桂花は華琳と美雷が話していても立ち止まらず、兄を尾行していたので三人の遥か前方にいた。
「さすがお兄ちゃん大好きっ娘ね。私達のことなんて眼中にないというわけね」
「本当に一刀くんのことが大好きなんだね桂花ちゃんは♪」
「そうね。とりあえず私達も追うわよ!」
視点は戻り、宿に着いた一刀と風里は風里の母のいる部屋の前にいた。
「じゅ、準備はいいですか一刀さん?」
「ああ、今から僕達は恋人だ。よろしくね風里」
そう言って一刀は風里の手を取った。
「ふみゅ〜〜〜〜〜!!!!!!か、一刀さん!?」
「だって僕達は恋人同士なんだろう?それなら手をつないでいないと風里のお母さんに不自然に思われるかもしれない。それとも嫌だったかな?」
「い、い、いえ!そんなことは/////」
「これで準備完了だね。それじゃあ入ろうか!」
「は、はいでしゅ!!すーはー、すーはー、よし!お母さん、風里です。入りますね」
「風里!ええ、いいわよ。入りなさい」
「失礼します…」
こうして『偽恋人作戦』(命名風里)が開始された。
中に入ると一人の女性が椅子に腰掛けこちらを見ていた。
「久しぶりね風里。元気だったかしら?」
「はい。お母様もお元気そうでなによりです」
「それはよかったわ。それでそちらの方が手紙に書いてあった風里の彼氏さん…でいいのよね?」
「は、はい!荀鳳といいます。娘さんとお付き合いさせていただいています」
「そう、私は諸葛礼よ。よろしくね荀鳳君」
「一刀で構いません。諸葛礼さん」
「そう?なら私も真名を預けないとね。私の真名は『楓』よ。よろしくね一刀君」
「ところで、お、お母様!約束通り、か、かか、彼氏を連れて来たのだから許婚の話は…」
「そうね、無かったことにしてあげるわ」
「ありがとうございます!!」
「よかったな風里!」
「はい!!これも一刀さんのおかげです!!」
「楓さんもありがとうございます!!」
そう一刀が言った瞬間、楓の目が細くなり…
「違うでしょう一刀君?確かに真名を教えたけど後ろに“お義母さん”ってつけて呼ばなきゃ駄目じゃない♪」
「「「「「えっ!?」」」」」
「だって風里と一刀君が結婚するんだから私は一刀君の義理の母親になるんだからねぇ〜?それに私、息子も欲しかったからとっても嬉しいわ♪♪」
「か、楓さん!い、今なんて……」
「あ〜ん、もう!お義母さんって呼んでって今言ったじゃない♪それに聞こえなかったかしら?風里と一刀君は結婚するのよ。しかも式は三日後♪」
「「えーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」」
「「(な、なんですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!?)」」
「………………………」
この結婚話に驚いたのは一刀と風里だけではなかった。すぐ側、扉の外で聞いていた華琳達もこの話を聞いていたのだった。
「な、なんですの今の話!?一刀さんが結婚!!ありえませんわ!一刀さんと結婚するのはわたくしですのよ!!それなのに…きいいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」
「別に一刀は麗羽と結婚しないわよ!!そんなことよりまさかこんなことになるなんて、でも良く考えてみればその可能性はあったのよね。すっかり失念していた…って一刀の一大事なのに桂花、貴女は何を……………」
華琳は桂花の方を向いたまま言葉を失ってしまった。なぜなら…
「…………………………………………」
桂花は中の声を聞いている姿勢で気絶していたのだった。
「け、桂花さん!?貴女一体どうしたのですの!!」
「おそらく桂花は耐えられなったのよ…兄の突然の結婚という凶報に。かわいそうに…頭で情報を処理しきれなかったのね……」
閑話休題
「お、お母さん!!なんでいきなり結婚する話になってるんですか!!だってその話は無くなったはずじゃあ…」
「あら?無くしたじゃない“許婚の話”は、それにこれは決定事項で、すでに準備は始まっているから今更中止はできないわよ?」
「………」
「………た、例えそうでもけ、結婚なんて早すぎます!!それに私達は付き合ってまだ日も浅いし、まだ私塾生だし…」
「それは大丈夫よ。今回の式は練習みたいなもので本番はあなた達が私塾を卒業したあとに盛大にやるから安心しなさい」
「で、ですが…」
「それに知り合いの方々もすでに呼んでいるから今更中止にすることはできないわよ?」
「呼んであるってお母さんは始めからこうするつもりだったんですね!!」
「そうよ。だってそうでもしないと風里、貴女奥手だから一生結婚出来なさそうなんですもの」
「そんなの私が決めることです。お母さんには関係ありません!!」
「あら、関係ならあるわよ?」
「えっ?」
「風里、貴女が結婚しないと私が孫の顔を見れないじゃない♪」
「ま、まま、孫ってお母さん!!!!!」
「私はね風里、孫の顔が早く見たいのよ!私が選んだ男と結婚するのが嫌で彼を連れてきたのになぜ彼、一刀君と結婚出来ないのかしら?彼のことを愛しているのでしょう?」
「そ、それとこれは話が違います!!それにこのことを一刀さんのご両親はご存知なのですか?」
「いいえ、まだ知らないわね。「なら!」でも先ほど早馬にこの式のことは伝えてあるから問題ないわ」
「そんな!!」
「話はおしまいよ風里。私はこれから結婚式の打ち合わせに行かないといけないの。悪いけど今日はもう寮に戻りなさい」
「でも…」
「戻りなさい」
「……はい」
楓の有無を言わさぬ態度に何も言えない風里は先ほどから呆けている一刀を連れ部屋を出て行った。
「それじゃあ私も…」
しかし楓は部屋の外に出て歩き出そうとした所で立ち止まり、ふと一言呟いた。
「警備の兵、もう少し増やそうかしら」
誰かに言うわけでなくそう独り言を言って楓は去っていった。そしてもちろんそれを聞いていた華琳達はというと…
「どうやら私達がここにいたのに風里の母親は気付いていたようね」
「そんなこと別にどうでもいいですわよ!!今最優先で考えることはどうやって一刀さんを奪還するかですわ!!」
「それはわかっているわよ麗羽。でもね、その前に聞かなければいけないことがあるのよ。美雷、貴女やっぱり向こうに付くのかしら?」
「何を言っているのですの華琳さん?美雷さんはもちろんわたくし達に協力してくれるはずですわ!そうでしょう美雷さん?」
「ごめんね麗羽ちゃん。残念だけど華琳ちゃんの言うとおりなんだ。私は風里のお母さん、楓さん側つまり風里ちゃんと一刀くんの結婚に賛成なんだ」
「そんな!?」
「やっぱりね。それじゃあこのことを…私達が一刀を取り戻そうとしていることを風里の母親に伝えにいくのかしら?」
「そうだね。残念だけどそうするかな♪まぁ、さっきの口ぶりだと知っていそうだけど…」
「そう」
「そうって華琳さんったら何納得してるんですの!!これは裏切りですのよ!!わ、私達を裏切って一刀さんをか、風里さんと結婚させようとしているのですわよ!!それなのになぜそんなに冷静でいられるのですの!!」
「いいえ麗羽、私は冷静でいるのではないわ。美雷ならそうするってすでにわかってるのよ。彼女さっきこう言ってたでしょう?『私は一生風里ちゃんの味方だから。だからもし華琳達が風里ちゃんの邪魔をしようとするなら容赦しないからね♪』って、つまり美雷にとって風里が一刀と結婚するのが良いと判断したのよ」
「さすが華琳ちゃん正解だよ♪」
「それならさっさと行きなさい。これ以上ここにいるなら強制的に排除するわよ?」
「そんなつれないこと言わないでよ華琳ちゃん♪私達友達でしょう?」
「そうね。確かに友達にはなったわ。でもそれとこれは話は別よ。私達から一刀を横取りしようとするなら、たとえ友達だとしても容赦するつもりはないわ!だから覚悟しておきなさい!」
「あははははははっ、わかったよ。肝に命じておくよ。それじゃあね〜♪」
そう言って美雷は楓の向かった方向に走っていってしまった。
「行ってしまわれましたわね」
「もともとこの話が出た時点で美雷が離れるのは予想していたことよ。だから別に驚かないわよ。それより驚いたのはこの娘の方よ…」
「確かにそうですわね…」
そう言いつつ隣で動かなくなっている桂花を見た。
「まさか気絶するとは思わなかったわ。せいぜい堪忍袋の緒が切れて怒鳴り込むか、完全犯罪でも企むくらいだと思っていたのに気絶するなんて…」
「まさかそんなこと桂花さんが考えるなんて…」
「兄一筋で兄に近づいてくる娘がいればどんな手を使ってでも排除してきたこの娘がその兄の突然の、しかも寝耳に水の結婚を聞いて何もしないと思う?」
「それは……やりそうですわね…すごく」
「でしょう?」
「え、えぇ…」
「それよりもまずは桂花を起こすわよ。そうしないと作戦を立てられないわ。私も一応軍略の本を読んでいるけど私や麗羽は策考える立場ではないから知識が不足しているのよ。でも元々一刀の軍師を目指している桂花なら私達以上の策を考えてくれるはずよ」
「そう、ですわね。……桂花さん!起きてください!起きて策を考えるんですのよ!……だめですわ。全く起きてくださる気配がありませんわ!」
「それならいい方法があるわ。私に任せなさい!…すーーー、桂花!!起きないと貴女の大事な兄が風里と結婚して貴女の元から去ってしまうわよ!!!!」
華琳がそう叫ぶと桂花は一瞬で反応した
「お兄様!!行かないでくださ……って、あれ?ここは?」
「さすが華琳さんですわ!一声で桂花さんを起こすなんて!!」
「って、華琳に麗羽!!私は一体…」
「そのことについては今から話すわ。心して聞きなさい」
そうして華琳は桂花が気絶してから今までのことを話して聞かせた。
「……というわけなの。だから貴女に策を…って聞いているのかしら?」
「フフフッ」
「ん?」
「フフフフフフッ」
「け、桂花?」
「桂花さん?」
「フフフフフフフフフフフフッ、ソウ・・・・・・アノオンナソンナコトイッテタノ………フフフッ、ナラアノオンナノノゾミドオリシカケテアゲヨウジャナイ。ソレモトビキリノサクデシキヲブッコワシテアゲルワ(訳;そう……あの女そんなこと言ってたの………フフフッ、ならあの女の望み通り仕掛けてあげようじゃない。それもとびきりの策で式をぶっ壊してあげるわ) フフフフフフフフフフッ」
そう言う桂花の背後には以前現れた般若ではなく新たに阿修羅が出現し、桂花同様、不気味な笑いをしていた。
「え〜っと、華琳さん?もしかして桂花さんキレちゃいました?」
「どうやらそうみたいね。でもこれで一刀を奪還するための駒は揃ったわね。あとは・・・」
「フフフフフフッ、ヤッパリアノサクガイイワネ。コレナラアノオンナニ・・・・・・ブツブツ・・・(訳;やっぱりあの策ががいいわね。これならあの女に・・・)」
「作戦も桂花が考えてくれているからそれまで待ちましょう」
待つことにした華琳と麗羽だったがずっとここにいるわけにはいかないので一人で考えている桂花を引っ張り茶店に入った。
「それにしても桂花さんは本当に一刀さんのことが大好きなのですね」
「そうね・・・一刀を手に入れる為の最大の障害は間違いなく桂花ね」
「しょ、障害ってそんな大袈裟な!」
「あら、ならあの娘が今までやってきたこと聞かせてあげましょうか?もっとも私が知っているのは桂花のやってきたことの極一部らしいけどね・・・」
「極一部って桂花さんったら一体何をしたんですの?」
「それはね・・・」
華琳は麗羽に琴から聞いた話を聞かせてあげた。例えば、寒空の下待ち伏せをしている女の子がいる道へ行こうとする兄を別の道に誘導した為その女の子が風邪を引いてしまったり、一刀宛の女の子からの荷物は全部桂花が回収し全て持ち主に返却されたり、実は桂花専属の隠密がいて女の子が兄に近づこうとする娘がいるとすぐに知らせるようになっているなど、どれも衝撃的な話の内容だった。
「そんなことが……」
「これでもまだ優しい方らしいわね。どうやらもっと過激なことも偶にやっていたそうよ」
「そ、そうですか・・・」
「とにかく、私達が一刀を手に入れるにはあの娘と戦う覚悟がいるということよ」
「華琳さんはあるのですか?その覚悟が」
「もちろんあるに決まっているじゃない!貴女には無いのかしら麗羽?」
「も、もちろんあるに決まっていますわ!!」
「そう、それじゃあどちらが一刀を手に入れるか勝負といった所かしら」
「の、望む所ですわ!!」
すると隣の机に座って策を考えていた桂花が立ち上がり
「フフフフフフッ、ツイニデキタワ!!コノサクデケッコンシキナンテブチコワシテアゲルワ!!(ついに出来たわ!!この作戦で結婚式なんてぶち壊してあげるわ!!)」
「どうやら策が決まったようですわね」
「そのようね。それじゃあ始めましょうか作戦会議を!!」
〜あとがき〜
皆さんお久しぶりです。本編の更新が送れてしまいすみませんでした。ふと華琳の料理のきっかけが欲しくなったのですが次の話、曹操と袁紹の花嫁泥棒(二人の王佐バージョン)で少年編が終わりだったので急遽番外編として書いてしまいました。でも話が繋がってしまい、全然番外編でない気が・・・
今回の話についてですが、勘の良い方は気付いていると思いますが一刀が風里と一緒に救ったあの娘についてですが、みなさんが良く知る場面でまた出てきます。なのでまた出るのを楽しみに待っていてください。
それと美雷の本名ですがやっと出てきましたがいかがでしょうか?とりあえず元気で風里が大好きで蜀でいう朱里と雛里のような関係と思ってくださって結構です。
最後に予告です。
ついに一刀と風里の結婚式が開始された。それをぶち壊すは桂花、華琳、麗羽の三人、桂花の策は成功するのか?それとも一刀が風里と結婚してしまうのか?それとも・・・
次回[真・恋姫†無双〜二人の王佐〜]一章第十話 「一刀の決意」
『突然の選択を前に一刀は何を思うのか』なんてね♪
それではまた次回会いましょう!!
説明 | ||
まず始めに前回の番外編の話が見事“初王冠”を取ることができました!!これもいつも読んでくださる皆様のお陰です。本当にありがとうございます。この小説『二人の王佐』もエンディングを迎えられるようがんばりますので、これからもよろしくおねがいします!! 今回の話で第一章『少年編』が終わりです。 とある事件がきっかけで真名を交換した一刀と風里。そのお陰でついに風里は“あの件”を一刀に頼むことに・・・ だが、事態は思わぬ方向へと進んでいってしまい・・・ついに一刀が結婚することに!? 拙い文ですが最後までお楽しみください。 |
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桂花のやってることがすごすぎる。雪蓮一刀に惚れたな(VVV計画の被験者) | ||
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