桔梗√ 全てを射抜く者達 第10射
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桔梗√ 全てを射抜く者達   第10射

 

 

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視点:一刀

 

俺は桔梗さんの天幕に行き、軍議が行われることを天幕の外から伝えた。

一人っきりにしてくれと桔梗さんに言われたのだから、天幕の中に入るのを躊躇ったからだ。

桔梗さんは慌てて返事をする。その後バチーンと何かを叩く音が聞こえたので、慌てて天幕に入ろうとした瞬間、桔梗様が天幕から出て来た。両頬にもみじが出来ていた。

俺は桔梗さんに声を掛けると、桔梗さんは『儂はもう大丈夫だ』と答え、早歩きで城へと向かった。

俺は桔梗さんの後を追う。横に並ばないのは……横に並べないのは俺が歩くスピードを上げれば、同時に桔梗様が歩くスピードを上げて、俺を突き放そうとしてくるから俺は桔梗さんに追いつけない。

何度も繰り返していたら今やっている事が完全に無駄骨だと理解したので、俺はトボトボと歩いて行く。

 

玉座に着くと人が集まっていた。玉座の間は戦前の為か緊迫した空気に包まれていた。

俺は狙撃手、と同時に観測者だ。狙撃体勢でない限り、気配や場の空気を感じ取るのは慣れているつもりだ。

それができなければ、観測者は務まらないからな。

しかし、ここまで張りつめた空気はこの世界に来て初めてだ。

今まで桔梗さんの所で軍議をしても、黄巾党や山賊退治でまず負けることは無かった。

だが、今ここに集まっている人達は勝敗が分からない為、緊張している。故に此処まで真剣なのだろう。

俺はタクティカルベストから無限バンダナを頭に巻いて、久しぶりに感じた戦場の空気で気を引き締める。

俺は指定された場所に立った。しばらくすると杏里と馬岱ちゃんが玉座に入って来て全員そろったようだ。

馬騰さんが玉座から立ち上がり、部屋の中心に置かれた机の前に来ると軍議開始を告げた。

 

「これで全員そろったな。では、軍議を始める。

この地を荒らしている五胡と賊の本隊の兵力と居場所がつかめた。この地図を見てくれ。

五胡は二万。賊は三万。俺の軍と桔梗の軍を併せて一万だ。

五胡の場所はここから西に50里行ったところの草原に天幕を張ってこちらの様子を伺っている。

賊は北西の砦に留まって、同じようにこちらの様子を伺っている。

この砦は皆の知っての通り、この砦は漢王朝が栄えて頃に五胡襲来の時に前線として建てられた砦だ。

砦の塀は高くて強固、守りは酷く高く攻めにくい事この上ない。しかし、このまま放置するわけにはいかない。

放置しておれば、五胡と賊の分隊がこの地を荒らすことになる。ならば、短期決戦で勝たなければならない。

皆の意見を聞きたい。誰でも良い。五胡と賊の二勢力を倒す方法は無いか?」

 

玉座の間の武官文官共が騒ぎ出した。

それもそうだ。なんたって、こちらは一万。敵は二万+三万の五万。正攻法では勝てない。

机の上の地図を見る。この城から西に大きな道が延びている。途中少し北へ行くと山に行くことになる。砦はその山の中腹にあった。で、さっきの道をそのまま西に向かえば、五胡の軍へとたどり着くようになっている。

砦の正門前は広くて上り坂の草原ようだ。なるほど、こうやって敵を正門に誘導しようって訳だな。

正門前が開けていれば、大軍を率いているなら、正面から攻めた方が軍を動かすうえで楽だからな。

俺は自分なりに作戦を考えてみたが、やはり難しい。勝利には実現不可能な要素が多すぎる。

 

「一刀さん、少し良いですか?」

 

「何だ?杏里?」

 

「砦の中の人を狙撃できますか?」

 

「おそらく狙撃出来ないことはない。ただ、確実に狙撃出来る場所は此処に限定だな。

それ以外で狙撃するなら、もっと詳細な現場の情報が必要だ。天候、時間によって左右されるから。」

 

「此処からは出来ませんか?」

 

「無理だな。さすがに下から塀の向こう側を狙撃するのは………。」

 

「ですよね。さすがに見えない壁の向こう側の敵を殺すことは出来ませんか。

でも、大丈夫です。それでも勝てますよ。」

 

「勝てるのか!?」

 

「ええ。余裕です♪ぶっちゃけ何を悩んでいるのか意味不明です?

こんな戦いで勝つ方法が思いつかないなんて文官は失格です。このウジ虫野郎が?きゃわわ?」

 

玉座の間が更にざわつく。一万VS五万の状況にも関わらず勝てると言ったのだ。

しかも簡単な方法でそんなことも分からないなら文官失格だと言って挑発したのだ。

 

 

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「と、一刀さんが言ってましたぁ!!」

 

「えぇ!俺言ってないよ!そんなこと!」

 

「冗談ですよ♪一刀さん?

ですが、勝つ方法について何か意見を出せないのは本当に文官失格です。勉強不足ですね。」

 

「んだと!もしアホみたいな作戦だったら、承知しねぇぞ!小娘!!」

 

ある文官が馬鹿にされて激情しているのか、怒鳴るように杏里を脅し始めた。

それに触発されてか、馬騰様の臣下の他の文官達は杏里を罵倒する。

そして、最悪にもある若い文官がすごい形相で杏里に殴りかかろうとしてきた。馬鹿にされたのが我慢ならなかったのだろう。

 

杏里の近くには俺しか居ない。桔梗さんは馬騰さんの近くに居て此処からは離れている。

杏里を今護れる奴は俺しか居ない。俺は右手で杏里を後ろにさがらせる。

文官は右手を振り上げて俺を殴ろうとしてくる。目線からして俺の顔面を狙っているようだ。

ここで使うに最適なCQCはアレだな。少し……いや、かなり痛いが我慢して貰おう。これは正当防衛だ。

俺は右足を後ろにして立ち、CQCの構えを取る。

 

文官は右ストレートを出してくる。もちろん顔面狙いだ。

俺は文官の右手を上に弾き、左足を曲げて文官の懐へと飛び込み、左肘を前に出す。男の懐はガラ空きだったので、脇腹に肘鉄が綺麗に入った。男はこちらに向かって歩きながら殴ろうとしていたので、勢いが増す。

肘鉄を食らった文官は苦痛に顔を歪め、力が抜け、ふらついているようだ。

俺は更に前に出している左足を少しだけ前に出して文官の脚の後ろに置き、肘鉄を喰らわせた左手を伸ばして文官の顔を掴み、体のひねりで文官を後ろに倒す。背中を床に叩きつけられた文官は苦痛で咳きこむ。

 

「杏里はマジで口が悪くて性悪だが、これでもウチの大切な軍師で、女の子だ。

仲間として、男として黙って殴られるのを見過ごすわけにはいかない。」

 

「くそっ!」

 

「おい!貴様ら止めんか!ここは軍議だ。文官同士が殴り合う場所では無い!反論するなら、口でせんか!

これ以上騒ぎを大きくするなら、貴様らに暇をやろうか?それとも俺が根性叩き直してやろうか?あーん!?」

 

馬騰さんの喝で静まり返る。馬騰さんの右手には三叉戟が握られていた。あれがあの人の武器か。

三叉戟とはポセイドンの持っている槍の形状をした戟だと思ってくれたら良い。

 

「すまんな。蒼。ウチの杏里は口が悪くてな。」

 

「いいさ。気にするな。俺の代わりに役立たずに役立たずと言っただけだ。

貴様ら!本格的にこれから戦乱の世になるだろう。

その時に今の自分の地位で安泰しているような奴が真っ先に死ぬ。

地位なんてものは戦乱になれば、すぐに失う脆い物で、それ自体が直接己の身を守ってくれる訳ではない。

死にたく無いなら、己の能力を伸ばし、これからの戦乱の世を生き抜いて見せろ!良いな!」

 

「「「はっ!」」」

 

「北郷と言ったな。」

 

「はい!」

 

「俺の文官を止めてくれた事感謝する。

それから、今の相手の動きや人体の仕組みを上手く利用した徒手拳見事だった。」

 

「……お褒めの言葉、光栄です。」

 

 

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視点:桔梗

 

ほう、蒼が北郷を褒めたか、確かに今の徒手拳は見事だった。

蒼の言う通り、相手を無力化することが目的の徒手拳。焔耶から話には聞いておったが、奇怪な動きをする。

儂にはとてもではないが習得が難しそうだ。凪なら日頃から徒手拳を使っておるから容易にとはいかないだろうが、習得は出来るだろう。

話は逸れるが、不可解な事に北郷を褒められて何故か儂は自分が褒められた如く嬉しかった。

 

「で、杏里よ。その戦で勝つための策を教えてくれんか?」

 

「はい。では、まず桔梗様、馬騰様。犬兎の争いや漁夫の利という言葉をご存知でしょうか?

両方とも意味は同じなのですが、要するに二者が争い、互いに疲弊した所を第三者が利益を得るという意味です。

我々が先に戦いを五胡や賊に仕掛ければ、犬兎の争いや漁夫の利の如く、もう片方の方がこの城を攻め落とす可能性が十分に高いです。だから、馬騰様はここから出陣出来ずにいる。違いますか?」

 

「そうだな。」

 

「だったら、簡単です。賊と五胡が戦をすれば、良いんですよ。」

 

「小娘!何を絵空事を言っている。相手はこちらの様子を伺って本隊は動かないのだぞ!

貴様馬鹿か?はっはっはっはっは!!」

 

「きゃわわ♪話は最後まで聞きましょうね。無知ウジクズゴミムシ無能早漏野郎?」

 

「んだと!」

 

「やめんか!徐庶も少しは言葉を選んでくれ。軍議が進まん。」

 

「きゃわわ!すみません。馬騰様。そこまで考えが及びませんでした。

では、無知ウジクズ瞬間沸騰脳みそ野郎は無視して話をしますね。

確かに五胡も賊も動く気配はありません。だったら、どちらかを動かざるを得ない状況にして、五胡と賊同士が潰しあうようにしむければ良いのです。一番手っ取り早い方法は山焼きです。」

 

「山焼き?」

 

「えぇ、山焼きです。賊は山の中腹の砦に立て籠っています。山の木々を焼いて砦から出なければならない状態にすれば、良い。更に砦からこちらの方に続く街道の両端の森の木々を大量に倒して道を塞いでおけば、山火事の火でこちらに来ることは出来ない。となると賊は西に向かうしかない。その先に居るのは?」

 

「五胡が居ると、賊の方が錬度は低いが数が多い。相打ちになって数の減った所を俺の軍が攻めれば、一万の軍で五万の軍を倒した事になるという訳だな。

なるほど。それなら、こちらの損害が軽微で五胡と賊の両方を同時に倒せるという訳だな。」

 

「はい。その通りです。ただ、山火事の影響力は色んな意味で大きいです。

周辺の自然を焼き尽くすので最良手段ではありません。あくまで山焼きは最終手段です。」

 

「確かに山焼きは後始末が大変だな。では、何か手段はあるのか?」

 

「一応他にも方法はあるのですが、どれも下準備が必要です。

しかし、1つだけ下準備も無く、すぐに実行できて森を破壊せずに済む方法があります。」

 

「その方法は?」

 

 

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「北郷一刀さんです。」

 

「え?俺?」

 

「はい♪」

 

「冗談だろ?」

 

「冗談じゃないですよ♪。」

 

「……北郷一刀。もしや!天の御遣いにして、天の弓を持つ弓の名手の射撃狼のことか!?」

 

天の御遣いという言葉に反応して玉座の間は再び騒がしくなる。

誰もが隣の武官や文官と話しながらこちらを品定めするように見てくる。何とも居心地が悪い。

 

「見事な説明、ありがとうございます♪

一刀さんが賊を襲撃すれば、黄巾の賊も砦を捨てて出てくるでしょう。

賊が出て来てこちらの方に来ようとしたら、何かしらの方法で妨害し、五胡の方へと誘導します。

まぁ、妨害は先ほど言った木々を切り倒して道を塞いで、油を掛けておげば十分です。倒木を越えてこちらに来たのなら、射撃で攻撃し、それでもこっちに来るのなら、火計でその木を燃やせば十分だと思います。

如何でしょうか?馬騰様?」

 

「ほう、さすがは、桔梗の所の軍師。てめえらもこれぐらいの意見出せるように頑張れよ!

では、徐庶よ。具体的な軍の配置を教えてくれ。」

 

「はい。まずここの……。」

 

杏里が具体的な兵の配置と目的等を蒼に伝えていく。

この策は以前儂の軍が行った策を組み合わせている策だということに儂は気付いた。これなら大丈夫だろう。

杏里も最初はたどたどしかったが、今は実戦を積んだおかげか、策の説明もしっかりしておる。

儂は北郷の近くに行く。北郷は緊張しているようだ。

 

「北郷よ。そんなに緊張するな。深呼吸をしろ。いつも通りに狙撃すればよい。」

 

「え!は、はい。すー……はー……すー……はー……。」

 

「うむ。良い顔になったぞ。」

 

「桔梗様のおかげです。」

 

「一刀さーん、狙撃する場所は此処で良いですか?」

 

「杏里が呼んでいるぞ。行ってこい。」

 

北郷は玉座の間の机で策の説明をしている杏里の所に走って行った。

その後、儂も呼ばれ、蒼と蒲公英、紫苑と共に道の封鎖と倒木を越えてきた兵を射撃する役割を与えられた。

狙撃する北郷の護衛は儂の城の衛兵で北郷と仲の良い者数名を北郷は指定してきた。

これまで何度も護衛をしてきた者で観測者もできるというのが、理由らしい。

それだけでは狙撃ポイントまでの道案内が居ないので護衛も兼ねて翠の部隊がすることになった。

 

出陣は夜明け前と決定。蒼の騎馬隊が先行し、道の封鎖を行う。

儂の軍が次いで出陣し、封鎖作業を行う蒼の護衛と作業の手伝いを行う。

最後に北郷と翠が出て山を登る。狙撃体勢が取れたら儂の方に連絡係をこちらに送る。

そして、道の封鎖が終われば、蒲公英を北郷の所に送らせて、北郷が狙撃して作戦開始じゃ。

 

軍議は終了し、解散。

杏里は蒲公英と共にまた町を案内してもらうと言って、町へ行った。

翠は鍛錬すると言って外へ出た。紫苑と蒼と儂が此処に残った。

北郷は気が付いたら居ない。

 

 

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「一刀さんはどうだったかしら、蒼?」

 

「うーん、少しばかり徒手拳を使えるが、冴えない男にしか見えないぞ?本当に天の御遣いなのか?」

 

「最初はそんな評価かもしれないわね。でも、優しくて男性として素晴らしい方よ。」

 

「紫苑がそこまで言うのだったら、そうなのだろうな。ふむ、翠と蒲公英の旦那に考えておくか。

北郷一刀は桔梗の旦那という訳でもないようだしな。構わんよな。」

 

「駄目じゃ!北郷の嫁は北郷が選ぶのじゃ!お主らが勝手に決めるな!」

 

「宣言するぐらい自由だよな。紫苑?選ぶのは北郷に任せたら良い。」

 

「えぇ、そうよね。蒼。桔梗ったら何をムキになっているのかしらね?

もしかして、一刀さんのことが好きだけど、自分はどうしようか悩んでいるのかしら?」

 

「どういうことだ?紫苑。俺にも教えろ。」

 

「桔梗から求婚したら、優しい一刀さんは受け入れてくれるかもしれない。

でもそれは桔梗に惚れているから求婚を受け入れたのか、一刀さんが持っている優しさや桔梗が上司ということから自分の気持ちを殺して求婚を受け入れたのかどうかは分からない。

でも桔梗は一刀さんに愛されたい。だから、桔梗は悩んでいるのよ。」

 

「なるほどな。さすがは紫苑だな。

時に紫苑。お前は北郷一刀を次の旦那に狙っているのか?」

 

「あら、良く分かったわね。」

 

「もちろん、俺も女だ。そういう雰囲気の女は見れば、分かる。

では、紫苑と翠と蒲公英……あと俺も参加したとして。誰が北郷一刀の嫁になるんだろうな?」

 

「あぁ…もう…好きにしろ!」

 

儂が此処におってもどうせ紫苑と蒼を楽しませるだけじゃ。

儂は玉座の間を出て自分の天幕に戻ろうとする。明日は早い。早く準備をして休憩をしておかんとな。

城門で北郷が壁に背中を預けて立っておった。儂を見つけると声を掛けてくる。

 

「大丈夫ですか?何やら気分がすぐれない様ですが…。」

 

「あ、あぁ。大丈夫じゃ。少しイライラして居っただけじゃよ。」

 

「そうですか。天幕に戻ったら、休んでおいて下さい。俺に出来る範囲の事なら、代わりに俺がしますから。」

 

「本当に大丈夫じゃ。気を使って貰ってすまんな。北郷。」

 

「いえ、桔梗様は俺にとって、とても大事な人です。心配するのは当然ですよ。」

 

「う…うむ。そうか//////」

 

「桔梗様、本当に大丈夫ですか?」

 

「北郷、そんなに心配するとは儂に惚れているのか?//////」

 

儂は自分が蒼と紫苑にからかわれた仕返しに北郷をからかってみた。

まぁ、内容が内容だけに、からかう側の儂も挙動不審になってしまう。

いつもの北郷ならこういう時は顔を真っ赤にして慌てるか、固まって動かなくなるかのどちらかだが…。

北郷はその場で立ち止まり、何度も瞬きしたかと思うと、顔を背ける。

 

 

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「えぇーと、どうして分かったのですか?」

 

「………ん?北郷、今何か言ったか?」

 

「だから、どうして俺が桔梗様に惚れていると分かったのですかと言いました//////。」

 

はぁ?オレガキキョウサマニホレテイルと言ったか?

儂の勘違いでなければ、『オレガキキョウサマニホレテイル』=『俺が桔梗様に惚れている』と思う。

決して、『オレガキキョウサマニホレテイル』=『俺餓鬼きょう様に掘れている』とかいう訳の分からんことを言っているのではなさそうだ。

えぇーっと、『俺が桔梗様に惚れている』という文章が何を意図しているのか分析してみるか。

まず、『俺』……。俺って一人称の言葉だから、当然『北郷一刀』自身だよな。

で、問題は次の2つじゃ。『桔梗様に』『惚れている』だな。

『桔梗様』とは誰のことを指しておるのかのう?普通に考えれば、儂自身じゃ。

嫌でも別人物の可能性もある…か……?………無いな。今儂は北郷に儂に惚れているのか?と聞いたのじゃ。

で、その返事が『どうして分かったのですか?』だったのじゃ。『桔梗様』=『儂』じゃろうな。

普通に考えれば、それ以外はあり得ないと思う。

で、『惚れている』という言葉じゃが、儂の頭がおかしいのでないのなら、ある特定の人物が異性として興味を持ち、好意を抱いているという意味のはずじゃ。

ってことはじゃ……。北郷一刀という男は儂を一人の女性として興味を持ち、好意を抱いていると思って間違いないよな?

 

って、おい!儂は北郷をからかおうとしておったのに、なんだこの展開は?

儂にどうしろというのじゃ!自分で蒔いた種じゃが、本当に儂にどうしろというのじゃ?

 

「えぇーっと、桔梗様?」

 

「あぁ。お前が儂を『大事な人』と言ったから、からかってみるつもりで言ってみただけじゃ//////」

 

「そうだったんですか//////俺をからかうつもりだったんですね。真に受けてすみません。」

 

「儂こそすまんかった。北郷の気持ちに気付いておったら…そのなんじゃ……。」

 

「……。」

 

「…………。」

 

「えぇーっと!桔梗様!明日!戦!俺!天の弓!整備する!先!天幕!戻る!」

 

「……おぉ!明日は戦じゃ!気合入れて行くぞ!北郷!」

 

「はい!桔梗様!」

 

そう言うと北郷は全力疾走で天幕の方へと走って行った。

遥か向こうの方から『俺の馬鹿―!』と聞こえたのは気のせいではないと思われる。

あぁ、もう儂にどうやって北郷と接すればよいか分からんではないか!

 

そして、北郷と顔を合わせること無く、次の日の朝を迎えようとしていた。

 

 

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視点:一刀

 

BarrettM82A1を昨日分解して、砂を噛んでいないかチェックもした。

無限バンダナもまいて、ボディアーマーにタクティカルベストを着用。

朝飯も食って、ペットボトルに水補充。携帯食料も持った。

今は桔梗さんの事は忘れておこう。俺は冷水で顔を洗うと外に出た。

 

「馬超さん。おはよう。」

 

「北郷か!?何だ、その顔は?。」

 

「あぁ、これはフェイスマスクって言って砂埃を吸わない様にする天の国の仮面だよ。

こっちの世界に来てから、作ってもらったんだ。」

 

「ふーん、そっか。目から下が真っ黒で見た目がかなり不気味だぞ。一瞬幽霊が出たのかと思った。

じゃあ、行くぞ。ちゃんとついてこいよ。」

 

俺達は道案内の馬超さんを先頭に50人ほどの護衛を引き連れて城を出て山へと向かった。

途中まで馬で行ったが、途中から悪路のため、徒歩で山を登って行く。

この頃には日は登り切り、明るく登山しやすい時間帯だ。暗い中登山するのはそれなりの装備が居るからな。

山を登り始めて1時間ほどで噂の砦が見えてきた。俺は双眼鏡を取りだして、砦を見る。

砦の壁は枝を落とした丸太を地面に刺して隙間なく並べただけの壁だった。だが、そんなシンプルだからこそ落とすのは難しそうだ。RPG7のようなロケットランチャーでもない限りすんなりとは落とせない砦だな。

今の場所は砦から500mと近いが、位置的に低い為、見張りの賊しか狙撃出来ないな

俺は双眼鏡を外し、辺りを見渡す。とりあえず、もっと上に登ってみることにした。

 

「よし、此処にしよう。」

 

1時間ほどあちこち歩いていたら狙撃するのに最適なポイントを見つけた。

砦から約600m。木々の間の先に砦が見える。砦の内部をよく見ることが出来る。

砦の中を賊はまばらで、見せつけるような狙撃をするには少しばかり早いな。

もう少し賊が砦内部を行きかう様になったら、狙撃するには持って来いだな。

俺はリュックを降ろし、狙撃の準備を始める。よく観測者をやってくれる城の衛兵の鮮花が観測者として狙撃の手伝いをしてくれる。彼女には観測者の仕方を叩きこんでいるから、こちらとしては狙撃が大分楽だ。

 

「おいおい、砦から離れ過ぎているぞ。北郷。何のつもりか知らないが、大丈夫なんだよな。」

 

「ああ、大丈夫だ。馬騰さんの所に伝令を送ってくれ。何時でも狙撃出来ると。

それから、馬超さん達は周囲を警戒しておいてくれ。見た感じ周囲に人影はなさそうだが、念のために。」

 

「分かったよ。伝令、行け。」

 

そう言うと馬超さんの兵が山の麓へと走って行った。

リュックから風速計測用フラッグを取りだして、鮮花に渡す。鮮花はそれを地面に刺して立てる。

俺は首から掛けていた双眼鏡を鮮花に渡す。鮮花は双眼鏡を覗き込み、此処から砦までの正確な距離を測ろうとする。その間、俺は地面の枯れ葉を払い、狙撃銃を置く場所を作る。

枯れ葉はリコイルの衝撃で滑る。素早く次の的を狙うには邪魔だ。

俺は袋からBarrettM82A1を取りだす。

 

「それが、天の弓か?」

 

「あぁ。俺の国では、BarrettM82A1と言い、Barrett Firearmsが開発した大型セミオート式狙撃銃だ。

軍事目的で開発されたため、兵士が一人で運用できる重量や操作性と火力の両立を目指して作られた。

BarrettM82には様々な種類があるんだが、俺が持っているのは中でも一番普及しているM82A1という方だ。

イラク戦争では1,5km先の人間を両断したという逸話まである。」

 

「………ごめん。何言ってるのかほとんど分からないんだけど。要するにどんな弓なの?」

 

「要するに4里(2km)先の人を手加減なしに殺せる化け物だ。」

 

 

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視点:翠

 

「4里先だって!?」

 

衝撃的な内容だった。4里先の敵をも殺せる弓。しかも手加減できないという。

もし、あの時に無理やりにでもあたしと北郷が戦っていたならと考えると恐ろしい。

あたしは北郷にあるモノを渡された。北郷の話によるとこれは耳に当てる物で、天の弓が矢を放った時に出る音から耳を保護するものだというが、耳を塞いでいたら、索敵に支障が出ると言って、受け取るのを止めた。

しばらく北郷達と話していると蒲公英と先ほど出した伝令が来た。

 

「向こうの準備出来たよ。杏里がいつでも良いってさ。」

 

「了解。耳ふさいどけよ。少しばかり五月蠅いからな。」

 

北郷はそう言うと地面にうつ伏せになり、その横に北郷の従者と思しき女が座る。

北郷の雰囲気が一気に変わった。優男が武人へと変貌したと言えば、分かりやすいだろう。

殺気を殺し、息を潜めているようだ。

 

「快晴。4時の方向から風速2mの風。目標570〜700mです。」

 

「了解。鮮花、最も賊から注目されている者は特定できるか?

その方が、賊たちに混乱が伝染しやすいだろう。だが、指揮官で無い方が良い。指揮官を無くしたら単なる烏合の衆となり、五胡の連中にぶつけるには弱過ぎる存在となってしまう。」

 

「はい。賊たちは広場に集まって、ある方向を見ていますが、その先は砦の家屋が邪魔してこちらからは見ることが出来ません。」

 

「分かった。では、賊の集まりの先頭と中央の間を狙撃対象物とする。観測を頼む。」

 

「はい。目標は620mです。」

 

「了解。んじゃ、狩りますか。」

 

そして、北郷の持った天の弓から轟音が鳴り響いた。

あたしはあまりの音の大きさにビクッとしてしまう。私が連れてきた兵も大半の者が同じような反応をしたが、数名気を失っている。周りの者がそれに気付いて起こそうと頬を叩いたりしている。

 

「鮮花。どうだ?」

 

「目標命中。賊二人の死亡を確認しました。

一人は頭部の致命傷で即死。もう一人は貫通した矢を受けて胸部損傷による失血死だと思われます。

他の賊にも十分効果はあったようです。死体から人が離れて行きます。広場の賊たちは混乱しています。」

 

「嘘!今ので、賊が死んだの!ねえ、お義姉様、何が起こっているの?」

 

「あたしだって分からないんだ。知るわけ無いだろう!」

 

あたしからは砦が見えるだけで砦の中は何も見えない!何が起こっているのかサッパリ。

それから立て続けに数回北郷の持つ天の弓から轟音が聞こえた。

 

「砦の門が開きました。一気に賊が飛び出していきます。作戦成功です!」

 

「よし!俺達はこの場から離脱して、馬騰様の軍へ合流する。

馬超さん、馬岱ちゃん。誘導をお願いします。」

 

「お…おう!任せろ!」

 

あたし達は山を降り、母様の軍の方へと向かった。

賊は封鎖した道の方には来ず、西の街道の方へと向かったらしい。

数刻後、賊の内部に潜入していた斥候が戻ってきた。斥候の話によると五胡を賊が破ったらしい。

正確には大部分の賊が五胡に突撃。その間に賊の大将と護衛が砦のあった山の北側を通り、東へ逃げたらしい。

斥候の話によると賊の大将は張角を長女とした三姉妹だという。賊が砦を出たのもこの三姉妹を北郷に殺されない様に逃がす為だったという。

結局五胡や賊との戦闘は無く、道を封鎖した倒木を撤去し、軍は引き揚げることになった。

 

「翠、蒲公英、倒木の撤去、ご苦労だったな。

しかし、あれだな。戦いが無いというのもいささかつまんねぇーな。」

 

「こっちは疲れたよ。」

 

「どうした?」

 

「だってさぁ、天の弓がえげつない物で吃驚したんだ。」

 

「あぁ、桔梗から少し聞いたが、何でも轟音と共に遥か先の敵を射抜くとかいう代物だろう?

そんなにすごかったのか?」

 

「すごかったよ。おば様。だって…狙撃?だっけ?御遣い様が狙撃した時格好良かったし。

御遣い様の言う倒した賊の倒れた所に行ってみたら、賊が倒れていたんだもん。吃驚したよ。」

 

「……そうか。なあ、翠に蒲公英、その天の御遣いの北郷一刀を俺の再婚相手にして俺の陣営に引き込もうと思っているんだが、どうだ?」

 

「はぁ!?何言ってんだよ!母様!」

 

「俺は本気だぞ。それともお前たちが北郷一刀と結婚しても良いぞ。」

 

「&●%#☆〒¶!!」

 

「それとも、俺達親子で重婚していうのも良いな。」

 

「蒲公英は良いよ。」

 

「蒲公英、お前!あぁ!もう、あたし先に帰るからな!!」

 

確かにあの時は格好良かったけど……。

今度、北郷にあったら一発殴ってやる!!

 

 

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へぅ( ゚∀゚)o彡°黒山羊です。

 

なでしこ!ばんざーい!!サッポロスーパードライ!ばんざーい!!

朝3時半から起きてプロジェクターで右にPC、左にビールで観戦していました。

ラウンジを見てみるとおちRさんも観戦していたらしく、試合中の一喜一憂を共にしました。

あぁ、感動をありがとう!なでしこジャパン!!

 

テンション上がってそのまま執筆していたら、なんか予定より早く書きあがってしまいましたので、投稿しました。(本当ならナマズ料理の感想を書こうと思っていたのですが、楽しみにしていた方すみません。)

 

では、今回の話にしましょう。

CQCの描写を入れました。これはひたすらMGS3の動画や弟にCQCを掛けて研究しましたww

CQCって結構痛い。吃驚したわ。

それから、新キャラ?鮮花(せんふぁ)さん登場。っていってもこれまでも少しは出ていました。

そう、名も無き城の衛兵Aとしてww

BarrettM82A1の説明を少し載せました。これでどんな狙撃銃なのか分かってもらえたら嬉しいです。

 

では、最後の奴をしましょう。

最近は皆さんノリが良いので、嬉しいです。

では、御唱和下さい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

へぅ( ゚∀゚)o彡°

 

 

説明
なでしこ万歳!歴史的快挙ですね。すごいですね!
テンション上がって一日で1話書ききりました!
黒山羊です。

『第2回同人恋姫祭り』について
http://www.tinami.com/newsletter/12149

最後になりますが、
現在私は2本長編作品を書いています。
『真・恋姫†無双 武と知の2人の御遣い伝』を読まれる方はこちらの第1話から読んだ方が話が分かると思います。
第1話http://www.tinami.com/view/201495

『桔梗√ 全てを射抜く者達』を読まれる方はこちらの第1話から読んだ方が話が分かると思います。
第1射http://www.tinami.com/view/219495
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コメント
≫320iさん、はてさてどうなる事やらww(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
≫きのさん、萌将伝で桂花が毒吐いていたので、大丈夫だろうと思うのですが…。どうなのでしょう?(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
≫ZEROさん、へぅ( ゚∀゚)o彡°ホントマジ可愛そうww。(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
≫berufegoalさん、へぅ( ゚∀゚)o彡°(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
≫ノワールさん、一刀と恋仲になったら開き直るかもしれませんよ。『儂の旦那は若いから、夜が楽しい」とか言ってww(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
≫ハンニバルさん、へぅ(゚∀゚)o彡°(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
≫2828さん、へぅ( ゚∀゚)o彡°御指摘ありがとうございます。早速修正逝きます。(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
≫Raftclansさん、へぅ( ゚∀゚)o彡°さあ、どうでしょうね。窮鼠猫を噛むって言いますから、窮一刀桔梗さんを襲うかもしれませんよww(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
≫anngetuutekiさん、へぅ( ゚∀゚)o彡°(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
≫大ちゃんさん、へぅ( ゚∀゚)o彡°(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
≫cupholeさん、へぅ( ゚∀゚)o彡°(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
≫readmanさん、へぅ( ゚∀゚)o彡°(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
≫アロンアルファさん、へぅ( ゚∀゚)o彡°メッチャスローペースで進展していく予定です。(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
≫はりまえさん、哀れですね。蒼と蒲公英が悪い!(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
≫森羅さん、へぅ( ゚∀゚)o彡°(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊)
さすがに他所の文官を無意味に罵倒したら懲罰モノじゃない? もっと頑張れよ的なのならともかく(きの)
へう! 理由もわからずいきなり殴られるなんて大変ですね。(ZERO&ファルサ)
恋姫には「よく殺されないな…」って思うほど口悪いのも多いですが、杏里は一際シャレになりませんね…。桔梗、また親友にからかわれてますね〜……開き直れるのは何時の事やら。(ノワール)
へぅ( ゚∀゚)o彡°(ハンニバル)
へぅ( ゚∀゚)o彡°9p詰まねぇーな→つまんねぇーなかな?(2828)
へぅ( ゚∀゚)o彡° こちらの一刀と桔梗さんは見ていて面白いですねwこの一刀は自分からは手出しできないけど、押されると弱そうな気配がw(Raftclans)
へぅ( ゚∀゚)o彡°(anngetuuteki)
へぅ( ゚∀゚)o彡°(大ちゃん)
へぅ( ゚∀゚)o彡°2828www(cuphole)
へぅ( ゚∀゚)o彡°(readman )
ちょっとは進展したかな?へぅ( ゚∀゚)o彡°(アロンアルファ)
殴られるカズトって哀れじゃね?(黄昏☆ハリマエ)
へぅ( ゚∀゚)o彡°(森羅)
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真・恋姫†無双 桔梗 厳顔 一刀=軍人 オリキャラ  蒲公英 

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