真・恋姫†無双 ~君思うとき、春の温もりの如し~ 22話 |
ドクンドクン
さっきから自分の心音が聞こえる。
ドクンドクン
これは本当に俺の心臓の音か?それにしてはやけに大きくはっきりと聞こえる。
ドクンドクン
これは俺の心臓の音なんかじゃ無い。
この音は姉さんから流れる血の音……
ガサッ
「!?誰だ!」
茂みの揺れる音で我に帰り、今の状況を思い出す。
そうだ母さんの墓参りをしていたら姉さんが何者かの矢を受けたんだ。
「や、やたぞ!に、逃げろっ!」
茂みから数人の兵士が現れ逃げてゆく。
「くそっ!待て!「一刀!」姉さん!?」
そうだ姉さんの傷の手当が先だ。
「少し痛いかもしれないけど我慢してくれ」
「うっ……」
矢を抜き取り、止血と傷口の手当をした。
姉さんは矢を抜くとき痛みです少し息を漏らした後、そのまま気を失ってしまった。
おかしい。
姉さんがこれくらいの痛みで気を失うなんて。
見ると汗が酷く、顔色も悪い。
「まさか……毒?」
この様子は間違いない。
「雪蓮姉様ー!一刀お兄ちゃんー!
大変だよっ!魏が攻めてきたよ!」
早く適切な処置を行うため、矢を受け気絶した姉さんを抱え城に戻ろうとしていると小蓮が走ってやって来た。
「って、どうしたのお姉様!?」
姉さんの様子を見て驚いた小蓮は聞いてきたが、
「今は話している暇は無い!急いで城に戻るぞ!」
「え?あ、うん…」
困惑する小蓮を連れ、急いで城に戻ることにした。
その道中、先程の報告を小蓮から聞く。
「魏が国境を超えてとうとう攻め来たの。
もう城のすぐそこまで来てるんだからっ」
ということはさっきの兵は魏の兵か。
華琳が姉さんの暗殺を命令した?
いや、華琳はそんな卑怯な事をよしとしない。
なら、功を焦った兵達の行動か……
「そ、それより!お姉様、どうしたの?
気を失ってるし、傷を負ってるみたいだし…」
不安そうな顔で姉さんを覗き込み小蓮は聞いてきた。
「……母さんの墓参り中に矢を受けた。
矢に毒が塗っていたみたいで、そのせいで今は気を失っている」
「えっ!?そんな……お姉様は助かるの!?」
こちらを見て今にも泣きそうな顔で聞いてきたが、俺は小さくわからないとつぶやき、その後は会話もなく城を目指すことにした。
城に着き、傷を負った姉さんを小蓮に預け俺は将たちが待つ玉座に向かう。
「済まない皆!待たせてしまって」
「ああ。それよりも雪蓮はどうした?」
姉さんの姿が見えないのに気が付き冥琳がたずねてきた。
「実は…」
俺は姉さんが矢を受け気を失っていることを皆に伝えた。
「そんな……」「雪蓮様…」
烈火と亞莎は俺の話を聞くと顔を真っ青にし、今にも泣きそうな表情をした。
「くっ」「……」
栄は悔しそうに拳を壁に打ち付け、祭は何か考えるように目を閉じ腕を組んでいる。
「雪蓮……」「なんですと〜!?」
恋は眉尻を下げ心配そうな顔をし、音々音は頬に両手を当て驚いた表情をする。
「雪蓮様ぁ…」「…様態は?」
穏は普段の笑顔を曇らせ、茶々は姉さんの体を気にしている。
「許せません…」「ああ……」
明命は暗殺を行った者に怒り、思春もそれに同感する。
「……雪蓮…一刀、それでこれからどうする?」
姉さんの一番の親友である冥琳は断金の交わりの友の名を呟くと顔を切り替え、目の前の魏への対応を聞いてくる。
「もちろん迎え撃つ」
「出陣準備はできているぞ」
俺の答えに冥琳は満足そうな顔をする。
「なら、出陣だ!皆至急準備せよ!」
「「「「おう!!」」」」
出陣の号令を受け、皆は姉さんの仕返しと言わんばかりに張り切って玉座を出て行った。
【曹操 side】
「それにしても敵の動きが鈍いわね……」
もう私たちの陣は呉主城の目の前まで来ている。
何かあったのかしら……
「そうですね〜。……お?門が開きましたよ?」
呉の様子を一緒に見ていた風が城の方を指を指す。
呉軍は出てくると早急に軍の展開を済ませた。
「ふふ、やっとお出ましね。さあ、戦いが始まるわよ」
風に軍の展開を指示し、こちらも戦闘態勢に入る。
すると敵軍から単騎で出てくる者が現れた。
「孫策かしら……先頭前の口上ね」
そう思い近づく者を見ると、孫策では無かった。
「あれは…一刀?何故一刀が……」
出てきたのは孫策ではなく孫権、一刀であった。
「呉の精兵たちよ!よく聞け!今我なの地を愚かにも犯そうとする者達がいる!
その者達は我等の王孫策を卑怯にも毒をもって暗殺しようとした!」
何ですって!
「誰だ!誰が暗殺など命じた!」
「わ、私達は知りません」
くそっ!一体誰が!
「現在、王はその毒を受け生死をさまよっている!
我等の王を!誇りを穢されて黙っていられるか!否!」
困惑する私たちをよそに一刀の口上は続く。
「華琳様!わかりました。
どうやら許貢というもののところにいた兵達が独断で行ったようです」
「その者達の頸を早急に刎ねよ!」
桂花の報告を受け、怒りが頂点に来た私は戦いを穢した者達の処刑を命じた。
「なんなの!なんなのよこれは!こんな事あっていいはずがないわ!」
「呉の兵達よ!我が家族たちよ!この報い敵の屍をもって報いるべし!…全軍!突撃ぃい!!」
「「「おおおぉぉぉおおお!!!!」」」
一刀の号令のもと、敵軍は一斉にこちらに向け突撃を開始した。
「軍を退かせるわよ!」
「し、しかし!敵はこちらに向け攻撃を開始しました!
今退けば甚大な被害を受けます!」
私の命令に稟は反対をする。
いつもならその誰にでも対して物怖じせず意見を述べる姿勢は良いのだけど、
「ならばどうせよと言う!このような大義を無くした、穢れた戦いをして何の意味がある!
……春蘭と秋蘭は殿を務めよ。この戦いできるだけ被害なく終わらせよ」
「「御意!」」
くっ!どうしてこうなった!
私は英雄との堂々とした戦いを望んだだけ。
それなのに……
【曹操 end】
「我等の王を穢した罪を与えるのだ!」
「敵を囲み逃げ場を無くしなさい!」
「やあ!オレの友達を傷つけた奴は許さない!」
「雪蓮様の恨み、晴らすべし!」
号令とともに魏軍を食い散らすべく、俺達は突撃を開始する。
「雪蓮、傷つけた……許さない!」
「容赦は無用ですぞ!すべて滅するのです!」
「出てくる者はすべて潰します!」
「敵に私たちの怒りを刻み付けるのです!」
「殺せ殺せ殺せ!容赦をするな!」
覇気凄まじく、敵を一方的に蹂躙してゆく。
「……一刀、引き際を見誤るな。
でないと死兵となり、こちらも被害が増えるぞ」
俺の近くに居た冥琳は戦況を見て助言をする。
「……分かってる。ここで力を失うのは姉さんも望んでいない」
その後、冥琳の案で殿に全軍をもって当たり痛打を与え、軍を退かせた。
こうして敵を退かせることに成功し、魏との戦いは幕を閉じた。
敵に痛手を負わすことに成功したが、こちらも被害も無視できるものではなく、なんとも後味の悪い結果となった。
今回は魏との戦いでした。
矢を受け気を失った雪蓮は小蓮によって城の医務室に運ばれました。なので小蓮は戦いに参加してません。雪蓮のそばにいます。
原作でもそうですが、華琳にとってこの雪蓮暗殺は大きな試練の一つだと思います。自らの理想と思い道理に行かない現実との差。
万能だと思われている華琳ですが、現実にもがき苦しむのは普通の人と同じですね。
しっかし、今回も曹操視点の話は力が入ってしまったぜ!これも華琳愛の力でしょうか……
毒を受けた雪蓮はどうなるのでしょうか?最悪は回避できるのでしょうか。
では次回もまたノシ
説明 | ||
22話です。 今回はやっと魏との戦いが始まります。 毒矢を受けた雪蓮はどうなったのでしょうか。 では、どうぞ! |
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コメント | ||
執筆お疲れ様です。やはり、雪蓮は打たれましたか・・・魏を退けたはいいものの、雪蓮の生死が・・・どうなる?! 次作期待(クォーツ) ノシ面白かったです。(readman ) あの名台詞ww(IFZ) |
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真・恋姫†無双 孫権 一刀 孫策 雪蓮 曹操 華琳 周瑜 冥琳 | ||
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