GROW3 第八章 体育祭、武道大会最終日part2 |
1
織物衣VS湖都海天使
ついに表生徒会同士のぶつかり合いになってしまった。
出場者が見守る中、二人はフィールドで向き合う。
「やっと衣と戦える・・・」
天使さんは無表情だが少し嬉しそうに見える。
「まったく仕方ないね。トーナメント表を見た時予想はしてたけど、やっかいだよ
まったく・・・」
お互いの能力を知らない俺は、ゴクリ、と唾を飲み込む。なぜなら二人から出てるのは殺気
以外の何者でもない。殺し合いでしか勝負がつかない相手。そういうことなのか・・・
「始めっ」
審判が合図をする。
その瞬間二人の姿がフィールドから消えた。
シャシャッ
「光雷殿(こうらいでん)」
バリバリバリバリ
「んん」
空中に突如として現れる巨大な電気を帯びた城のようなもの。衣さんはその上に鎮座していた。
「千の雷を纏う精霊(チハヤブルイカズチ)」
衣さんが地上の天使さんに手をかざすと、一千本の雷(イカズチ)が降り注いだ。
「水流御流れ(すいりゅうみながれ)」
バリバリバリバリ
目を閉じて唱える天使さん。頭上に現れた水流の壁に当たった雷がすべて真横に流された。
「あーあ。やっぱ効かないかー」
「わたしに雷の類は効かない・・・」
「ちっ」
舌打ちすると、衣さんは光雷殿を投げつけた。
ぶんっ
ギュァァァァァッ
ブシャアアアアア
城に直撃した天使さんの身体が水になりばらばらになる。
「心酔水々(しんしんすいずい)」
「発動しちまったか“あれ”が・・・」
ばらばらになった天使さんの身体が再生した。
まるで身体が水に変化したみたいだ。
「水の神との契約により、殺戮天使(ジェノサイド・オアシス)はフェード2になりました。
純粋な水の肉体。もう雷は一切通らない・・・」
「やっかいだよまったく・・・」
2
一気に状況が不利になってしまう衣さん。
「衣、もう終わり。悪魔の泥水(グリモア・ゲリルドリフィア)」
手を出して言う天使さん。強力な水が衣さんを包み込む。
電撃で応対するが、電撃を通さない水には効かないようだ。
「ちっ。暗電無双(ダークデルマタ・オルタナティヴ)」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「電熱蒸水(フルティマルガ・オラゴデニッソ)」
ジュァァァァァァァッ
衣さんを囲む水を、電熱ですべて蒸発させる。
衣さんの身体はすさまじい電熱で真っ赤になり蒸気が上がっている。
「そんな手であれを消滅させるなんて・・・
流石だよ衣。でもその技は長くは持たないんじゃない?リヴァイアサン、ポセイドン」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ギャァァァァァ
ムムムムム
巨大な海の海獣が二体も出現する。
「行け」
二つの影が衣さんに迫る。
「千倍電圧(サウザンドラ・ディビラジュール)、我瑠奈放電(ボルト・セルテゴマーレ)」
ピシャァァァァァァァッ、ゴロゴロゴロゴロゴロ
雷を自分の身体に落とし電圧を無理やり上げる衣さん。迫ってくる海獣二体を、一瞬にして
蒸発させた。
ダンッ、バリバリバリバリっ
「雷の精霊降臨、わが肉体に宿りし心雷を喰らいし纏え!御神の精霊(みかみのせいれい)、雷電槍(らいでんそう)、魔白真濾(マシマロ)!」
「無理しすぎだよ衣。身体の障壁まで取っ払って・・・」
白く光る衣さんの身体。あまりの電圧の高さに空間が歪(ゆが)んでいる。更に手には5mを
有に超える高位精霊の一本槍を持っている。
「水の神契約フェード3、水魔(ウンディーネ)。」
迎撃態勢に入る天使さん。新たに術式を展開していく。
しかし、衣さんのスピードは雷速を凌駕していた。接近しきった衣さん。射程範囲に天使さんを
入れた。
「もう遅い!雷聖幕貢納殿(ワルディルマボルティッカ・ツターミルディアマルゴラカッセ)」
「んんっ」
ゴシャァァァァァァァァ、ゴゴゴゴゴゴゴ
強力な電流が天使さんに流れ込む。障壁も張る余裕すらなかった天使さんはまともに食らってしまう・・・
「ウンディーネじゃなかったら電熱で即死だったな天使っ!だがこれで最期。」
槍を構える衣さん。身体から連動する電気に反応するせいで、天使さんへの電撃攻撃は持続した
ままだ。
「終わりだ。雷の精霊の絶対槍(ディジュライド・ホーリ・ロンギヌス)」
「うう、め、メルトダウンっ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
右手を伸ばし槍を止めようとする天使さん。
「無駄な抵抗だよ天使。その電圧で苦しみながら反撃をしてきたのはご立派だったがわたしには届かない・・・」
そう。もし投げた槍を破壊できたとしても、投げ終わってはなれた場所にいる衣さんには届かないのだ。
「よく頑張ったよ天使。そんなお前にもう一撃追加をやろう。」
「えっ?」
更なる追加攻撃の宣言に、表情が歪む天使さん。ただでさえ槍を止めるのに必死なのに追加攻撃
を受けたりしたら・・・
3
「堕天した天使はどこに堕ちるのかなぁ。ねぇ天使ちゃん・・・
古代の禁書電流(エンシェント・グラミドレーマドゥ・ボルドム)」
バリバリバリバリ
更なる追撃が天使さんを襲う。もはや意識すらほとんどないだろう・・・
「うう。み、水の神契約フェード4、水神の涙(リュナディア・ティア)」
「ん?」
シュァァァァァ
バチィィィィィン
浄化されていく電撃。それと同時に弾き飛ばされた巨大な槍。
「ばかなっ」
「げほげほっ。まだ、これから・・・」
ふらつく天使さん。もう意識がほとんど飛んでいる。
「第四段階だと?聞いてないぞ。ちっ、だがもう立っているのがやっとの状態か。
これで終わりだな。鳴神雷電槍(なるかみらいでんそう)」
「・・・・・」
それを天使さんに投げつける衣さん。しかし、
バチィパリパリ・・・
「何ぃ!?」
天使さんに当たった槍はまるで空気が当たったかのように呆気なく消滅する。
「全部の攻撃を無条件で浄化する技・・・だと・・・」
もはや無敵と同等な状態の天使さんだったが、意識がついに無くなり地面に倒れこむ。
勝者、織物衣。
「ちっ。全然勝った気にならねぇ。だいたいお前の術の発動は遅すぎんだよ・・・
これだとまだ続きがあるかもしれぇじゃねぇかよ。ったく、世話がやけるぜ。」
そういうと、天使さんを抱えてフィールドから下りてくる衣さん。
次の対戦相手を見る。
「次は勝ったほうのどちらかだな・・・」
そのセリフに答えるのは、松さんだ。
「まっててね衣ちゃんっ。すぐに勝ってくるからね(^_^.)」
にっこり笑って言う松さん。隣で対戦相手の薪南がジト目で見る。
「是非あんたには去年のリベンジがしたいからな。まあその小娘相手じゃ楽勝だな・・・」
なにかの含み笑いをする衣さん。それに対して薪南が返す。
「勝つのはわたしです。絶対に本選に出場してやるもん!」
「なるほどね。まあ油断するなよ松。負けたら次の試合でこの娘がわたしにどうされるか・・・」
「そんなに睨まなくても分かってるよぉ。でもね。わたしが本気を出すのは三尋くんだけに
なりそうだから・・・」
その謎のセリフに衣さんは笑って返す。
「確かにそうなりそうかな。まあせいぜい粘らせて頂くよ・・・」
謎のセリフを残して松さんはフィールドに立つ。
薪南はわけが分からずに衣さんに聞いた。
「今のってどういう意味なんですか?」
ゆっくりと答える衣さん。
「戦えば分かるさ・・・」
そのセリフを言った衣さんの身体は多少震えていた。
貢納松。果たしてその真の実力とはいったい。