真・恋姫無双〜君を忘れない〜 三十三話
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猪々子視点

 

 強さが欲しい。誰にも負けないような強さが。もう誰も泣かせないように、誰も傷つかないように、アタイは最強になりたい。そのためならどんなもので捨ててやる。鬼にだってなってやる。

 

「猪々子、もう止めにせぬか? これ以上はお主とて無事では済むまい」

 

 もうこれで何度目だろう? 桔梗さんに鍛錬をお願いして、毎日のように手合わせをして、その度にアタイは大地に叩きつけられ、泥を舐めることになっている。

 

 アタイはどうしてこんなに弱いんだ。

 

 アタイはどうしたら強くなれるんだ。

 

「もう少し……。あと少しで分かりそうなんだ」

 

 斬山刀を杖代わりにして、無理矢理身体を起こす。足がガクガクと震え、頭が泥沼の中のように判然としなく、身体が鉛のように重い。少しでも気を抜こうものなら、一瞬で意識が飛んでしまうだろう。

 

「ふぅ……。儂とて武人。これ以上傷ついた者を痛めつけるのは性に合わぬ」

 

「だったら、軽口叩けねぇようにしてやるよ……」

 

 桔梗さんが言っていることは本当だ。アタイは弱い。桔梗さんが本気を出したら、二合だって打ち合えるか分からない。

 

 だけどアタイは強くならなくちゃいけないんだ。

 

 斗詩が言ってくれた、アタイは最強だって。姫が言ってくれた、アタイを頼るって。だったら、二人のためにもアタイは最強で頼りになる女にならなくちゃいけないんだ。

 

「やれやれ……ならば来い。その性根に叩き込んでやる」

 

「うがぁぁぁぁぁぁ!」

 

 脚部にありったけの力を注ぎこんで、桔梗さんに正面から突撃する。手前で跳び上がって気合一閃、全体重を込めた上段を放つも、桔梗さんは苦笑交じりにそれを片手で受け止めて、軽く弾き返す。

 

「儂に力勝負なんて十年早いわっ!」

 

 着地と同時に下から斬り上げるも、半身を捻ることで軽く避けられる。さらに斬り返し、そこから連続で突きを放つも、桔梗さんはその攻撃を全て捌き切り、攻撃の境目を狙って、アタイの胴を蹴り飛ばす。

 

 肺から空気が抜け去り、その分だけ一気に新しい空気が入ってくる。既に身体はそれを受け入れるだけの力は残っておらず、無様に咳き込み、その場で嘔吐してしまう。

 

「今日はこれで終いだ。傷を癒して頭を冷やせ。このままではお主は強くはなれぬ」

 

 そう言い捨てて、桔梗さんはその場を去ってしまった。

 

「うぅ……くそぅ……なんで……なんでだよぅ」

 

 瞳から溢れ出る涙が地面を濡らした。自分の実力のなさが恨めしく、強くなれない自分が憎かった。弱いアタイなんて価値なんかない。姫の側には必要ない。姫がもう一度自分の足で立ち上がったんだ。そんな姫を二度と泣かせたりしない。

 

 頭の中でざわざわと何かが競り上がってきた。蜜に群がる蟲のように蠢くそれは、怜悧で禁忌的な魅力に縋るように触れた。

 

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桔梗視点

 

 猪々子が儂に修練を頼みこんできてから数週間程経過した。相変わらずその武は粗削りで、大した成長は見せてない。疲労で動けるはずがないのに、無理を承知で臨んでくるあやつの姿は既に狂気的ですらあった。

 

 あのままではいずれ獣に取り込まれてしまうであろう。そうなってしまったら最後、将としては使い物にならず、そればかりか始末せねばならぬであろうの。

 

 そもそも儂があやつの修練を受け入れたのは、別に酔狂からではない。あやつが儂と同じ種類の人間だからだ。獰猛な獣。戦いに、血に飢えた化物を心に巣食わせておる。それは自らの意志で制御できれば、並みの人間では相手にならぬ程の力となろう。

 

 しかし、その衝動に負け、闘争本能を抑え切れぬ単なる戦闘狂に成り下がれば、誰彼構わず斬りたくなる文字通りの獣になってしまう。

 

 儂の前に現れたあやつの瞳を見て、頭の奥がチリチリと燃え出す感覚が訪れた。儂の中に眠る猛獣の如き本能が瞬時に覚醒し、低い唸りを上げたのだ。それ故にあやつを一端の武人へとしてやりたかった。

 

 禍々しい怨念や憤怒に溢れた剣では、本当の強さとは言えぬ。武とは自身を映し出す鏡。そのように汚濁した武はこれから先争う者たちには通じぬ。

 

 それにあやつには将として才を発揮してもらいたかった。闇に堕ちた剣は兵を殺すだけで、生かすことはない。

 

 現在益州でもっとも問題なのが将の数だった。儂や紫苑や竜胆のみでは全ての戦線を支えるられるはずもなく、焔耶では一人で任すには実力が足りない。武人としての才は上々だが、将才はまた別問題。

 

 そして何よりも騎馬隊の増築をしなくてはならないのだ。益州は峻厳な山々に囲まれた地。そこでは伝統的に騎馬隊を育てる習慣はなく、逆に弓兵や歩兵の育成に力を入れていた。

 

 儂や紫苑が弓の扱いに優れているのはそのためだが、それは益州内での戦闘に限られている。平原の戦いでは儂らは歩兵や騎兵の力なくして、諸将と渡り合うことなど到底出来ぬ。

 

 河北にて騎馬隊を率いた実績が唯一ある袁紹軍のあやつにそれを託したいと思っている。それだけの潜在能力をあやつには感じていた。

 

 反乱前の問題であった軍師の件に関しては、詠とねねの参入により解消し、詠は現在麗羽を育成しているようだった。元々名家出身の麗羽は、人格形成では酷く歪まされていたが、教育水準は高く、頭の回転も悪くないようだ。

 

 それにより、大局的な戦略を詠が練り、戦術に関してはねねと麗羽で支えられる。ねねは詠が認めるほどの才。あの恋と行動を共にしているだけあって、その野性的勘は勝負所を見逃さない。

 

 ここに麗羽が加わることにより頭脳陣営は厚みを増す。常に冷静で奇策を嫌う麗羽と、

瞬間的な策の発想力に富み、思考の裏をつくねねを、詠という大陸屈指の軍師が纏め上げれば、知能戦ではどこにも劣るまい。

 

 儂らは力を蓄えなくてはならない。北郷の言が正しいのなら、あやつが歴史に介入してしまえば消滅してしまう。ならばあやつが歴史に介入するなんて事態が起こらぬように、儂らがあやつの矛になり、盾となってあやつを守らなくてはならん。

 

 それがあやつの覚悟に対する誓いだ。あやつを消させはせん。相手が世界だかなんだか知らんが、あやつと紫苑を傷つける者は誰であろうと容赦はせん。

 

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 翌日、懲りずに猪々子は儂の許に訪れ手合わせを願い出た。一日で完治する程の軽い怪我を負わせたわけではないが、己の限界を越えた鍛錬をして、それで得る物もあるだろうと快諾した。

 

 しかし猪々子の光彩を欠いた瞳を見て、背筋に怖気が走った。猪々子の特徴的な快活さは一切排除され、儂を見るその瞳には儂は映っていない。

 

 こやつ、憎悪に取り込まれようとしておるの……。

 

 まだ完全に闇に堕ちたわけではないがそれも時間の問題だろう。こやつの強く在りたいという願望は、麗羽や斗詩を守りたいという切なる想いから生じていたもの、そこに負の感情が入り込む隙などないと思っていた。

 

 猪々子、何をそこまで恨む。そのまま得られる力などに価値はなく、憎悪の先にあるものは絶望のみだ。お主の愛する者を守りなどせん、穢れた武なのだぞ。

 

 猪々子は一言も発することなく、儂の後に従い練兵場に着いた。そこで猪々子と対峙すると、こやつの違和感がさらに募った。体勢を下げ、まるで猛虎が獲物を狙うかの如く爛々と瞳を輝かせる。

 

 まるで本物の獣だの。それが本能に全てを任せてしまった人の姿か。そこまでして強さを望むか。

 

 そこにあるのは嘲りではなく憐れみ。まだ完全に獣に支配されていないのだから、ここでこやつを人として斬った方がこやつの尊厳も守れるやもしれぬな。

 

 儂に構える暇など与えず、声もなく猪々子はこちらに向かってきた。思考を遮断し、身体を戦闘状態へと切り替えるが、猪々子は儂の手前で身体を反転させると、足で地面を削り砂煙を起こした。

 

 視界が判然とせぬまま、気配のみで猪々子の所在を探ろうとするが、反応が一歩遅れて、死角から剣先が伸びてきた。

 

 身体を捻らせることで身を剣先からずらすが、頬に鋭い痛みが流れた。生暖かい液体が流れ出て、それを舌先で掬い取って味わいながら、猪々子から一定の距離を保つ。

 

 そうか。お主は儂を殺したいのだな。儂に勝てぬ悔しさが捻じ曲がり、怨嗟の想いとなって衝動を抑え切れんかったのだな。

 

 ならばいいだろう。お主に教えてやろう。獣の欲望に穢れただけの武と、清濁を呑み込んで獣を飼い慣らした者の実力の差というものを。

 

「もっと速く……もっと強く……」

 

 自分の攻撃を確認するようにぶつぶつと何かを呟きながら、猪々子は再びこちらに向かってきた。強者になるための太刀は、ただ勝利に飢えた太刀に、覚悟を湛えた瞳は暴欲に塗れた瞳に。

 

「容赦はせぬぞ……!」

 

 真っ向から猪々子の攻撃を受け、気合とともに撥ね返す。普段の鍛錬であればそこで様子を見るが、今回だけは手を抜かずに、重心を後ろにずらしつつ、猪々子に向けて豪天砲を放つ。

 

 強弓から放たれた矢は寸分の狂いもなく猪々子に向かうも、猪々子は寸でのところで大剣を盾にしてそれを受ける。しかし豪天砲の矢は大剣ごと猪々子の身体を軽々と吹き飛ばした。

 

 轟音と共に壁に激突した猪々子。しかし、それでも猪々子は立ち上がった。剣を引き摺るようにしながらも、儂に向かおうとしていた。

 

 その表情には口角を歪めながら浮かべる凄惨な笑み。そこには最早猪々子の可愛らしい面影はなく、戦闘に対する興奮と、死と隣り合わせであることへの快楽しかなかった。

 

 既に儂にはこやつを正気に戻すことなど無理かもしれぬ。こやつをここまで至らせた責任が儂にもある以上、やはりここで始末するのが道理というものか。

 

「文ちゃん!」

 

 そこに思わぬ人物が現れた。その声に一瞬であるが、猪々子が反応を示した。こやつならば獣になりかけた猪々子を救えるやもしれぬ。

 

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 斗詩視点

 

 文ちゃんが無理な鍛錬をしているのを見て私はとても心配だった。桔梗さんに身体を相当痛めつけられ、立てるはずもないのに、文ちゃんは深夜まで剣を振るい続けていた。

 

 何度も無茶をしないようにお願いしたのに、文ちゃんは首を縦に振ってくれず、毎日まるで自分を虐めるかのように鍛錬し続けた。

 

 きっと麗羽様を守りたいって想いがあったから、自分の身体なんか顧みずにそんな無謀なことをしているんだろう。だから、私も最初は陰から文ちゃんのことを見ていようって思っていた。

 

 だけど、その日、文ちゃんの顔を見て言葉を失った。あんなに元気一杯で、隙を見つけては私を抱きしめようとする愛らしい文ちゃんではなく、そこにいたのはまるで別人のようだったから。

 

 あまりにも様変わりしてしまい、心配のあまり鍛錬に行く文ちゃんと桔梗さんの後を追った。そこで目の辺りした文ちゃんの姿は、私の知る文ちゃんではなかった。

 

 卑怯な手を嫌う文ちゃんが砂埃を利用したりするはずもなく、況してやあんなに嬉々として戦うはずもなかった。

 

 身体が震えていた。まるで文ちゃんがどこか遠くへ行ってしまったかのような気持ち。傷ついた麗羽様を笑顔で元気づけていた文ちゃんはそこにはいなかった。

 

 嫌だよ。

 

 帰ってきてよ。

 

 そんなの文ちゃんじゃないよ。

 

 溢れる文ちゃんへの想いは涙となって瞳から流れ出て、自然に足は文ちゃんへ向けて駆けていった。

 

「文ちゃん!」

 

 私は文ちゃんを力一杯抱きしめた。いつもの元気な文ちゃんに戻って欲しかった。ちょっと強引で、だけど何故か憎めなくて、振り回されても許してしまう愛しい相手。

 

「斗詩……見ろよ、アタイこんなに強くなったんだぜ。斗詩も姫も守ってやるから。最強で頼れる女になってみせるから」

 

 こんなになるまで思い詰めて、私と麗羽様を守りたかったんだ。だけどね、文ちゃん、それじゃダメなんだよ。こんな文ちゃんを見たら、私も麗羽様も悲しむだけだよ。

 

「分かった。文ちゃんは私と麗羽様を守って。私は文ちゃんを守るから。だから、お願い、もう無理しないで。一緒になろうよ、最強で頼りになる女に。私と文ちゃんならきっとなれるから……」

 

 文ちゃんの身体から徐々に力が失われていった。私はそれを優しく抱き留めながら文ちゃんの頭に顔を埋める。

 

「私と文ちゃんは二人で一人なんだよ。一人で強くなるなんて許さないから」

 

「斗詩ぃ……アタイ……」

 

 文ちゃんが斬山刀で敵を叩き切るなら、私は文ちゃんを守る盾になる。二人でお互いを守り、そして麗羽様も守ろう。今度は私も力になるからね、文ちゃん。

 

 だから、いつでも頼っていいんだよ。

 

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 猪々子視点

 

 アタイはただ強くなりたかっただけ。

 

 最強の女なるために。頼れる女になるために。斗詩と姫の側にいるためにはそうならなくちゃいけなかったから。だから何を失ってもいいって思ってた。

 

 だからそいつがアタイに語りかけたとき、自然と受け入れていた。暗くて冷たい水の中に投げ込まれように、ずぶずぶとアタイを包み込んで、思考も理性も全部融かしてしまうみたいな感覚に身を任せた。

 

 朧気な意識の中で桔梗さんの許に行って、普段通りの鍛錬をするつもりだったのに、桔梗さんと対峙してから、身体が灼熱を発したみたいに熱くなって、感覚は緩慢になっていくのに意識だけは冴え渡った。

 

 まるで自分が自分でないみたいな、外から自分を眺めているような気分で、桔梗さんと立ち合う。力が溢れ出るようで、普段の何倍も速く強く動けた。いつもだったら絶対やらないズルイ戦いも平気で出来た。

 

 楽しい。

 

 もっと速く。

 

 もっと強く。

 

 桔梗さんを倒す。

 

 その先へ進む。

 

 最強で頼れる女になる。

 

 姫と斗詩を守る。

 

 誰にも負けない。

 

 だから……。

 

 全員、殺す。

 

「文ちゃん!」

 

 斗詩……? どうしてここに? どうして泣いてるの? アタイは強くなったよ。もう斗詩にも姫にも指一本触れさせないよ。

 

「斗詩……見ろよ、アタイこんなに強くなったんだぜ。斗詩も姫も守ってやるから。最強で頼れる女になってみせるから」

 

 だから泣くなよ。そんな目でアタイを見るなよ。

 

「分かったよ。文ちゃんは私と麗羽様を守って。私は文ちゃんを守るから。だから、お願い、もう無理しないで。一緒になろうよ、最強で頼りになる女に。私と文ちゃんならきっとなれるから……」

 

 斗詩、アタイは一人でも強くなれるよ。斗詩には危険な目になんか遭わせない。もっと強くなるから。誰にも負けないくらい強くなるから。そんな悲しい顔するなよ。

 

「私と文ちゃんは二人で一人なんだよ。一人で強くなるなんて許さないから」

 

 二人で一人……。そっか。アタイは最初から一人じゃ駄目だったんだ。斗詩が側にいないと強くなんかなれなかったんだ。

 

「斗詩ぃ……アタイ……」

 

 アタイ、本当に馬鹿だ。

 

 斗詩がアタイを包んでくれた。温かいなぁ。斗詩のいい匂いがする。もう一人じゃないんだ。アタイには斗詩がいてくれる。斗詩がアタイを守ってくれるなら、アタイは何の戸惑いもなく剣を振るえるよ。

 

 だって、斗詩はアタイの最高の嫁なんだから。

 

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桔梗視点

 

 どうやら猪々子はもう大丈夫みたいだな。二人に近づいて、猪々子の穏やかな表情を見て安堵した。瞳は輝きを取り戻し、まるで母親に甘える幼子のように斗詩に抱きつく猪々子は、儂と目が合うと恥ずかしそうに苦笑した。

 

「桔梗さん、ごめん。アタイもう最強じゃなくていいや」

 

「ふむ、してお主は何を目指す」

 

「斗詩と一緒に最強目指す!」

 

「くくく……どこが違うのやら。だが良いだろう」

 

 既に普段通りの快活な笑顔を浮かべてそう答える猪々子。言っていることの意味は分からぬが、そんなものはどうだっていい。

 

 それにしても儂も阿呆よな。最初から斗詩と共に育てておればこのような事態にもならんで済んだものを。

 

 袁家の騎馬隊はそもそもこの二枚看板なくして在り得ぬ。二人が揃わねば意味など為さなかったの。しかし裏返せば二人を纏めて面倒見てしまえば、こやつの言う最強の騎馬隊にもなれるのやもな。

 

 儂は斗詩と猪々子の頭に手を置き優しく撫でた。今日はもう鍛錬など出来ぬのだから、最後くらい甘くなっても良いだろう。

 

「猪々子、斗詩、儂の鍛錬は甘くはないぞ」

 

「へっ、そんなもん斗詩がいればへっちゃらだ!」

 

「はい、文ちゃんと一緒だったら平気です!」

 

 二人揃って泣き笑いのような表情を浮かべているが、そう断言した。

猪々子に獣を飼い慣らせぬのなら、代わりに斗詩が抑えれば良い。

 

 互いの不足を補い合って、初めて一人前の武人となるか。儂からすれば二人ともまだまだ半人前にもなっていない。だが潜在能力なら一級品よ。

 

 くくく、楽しみになってきたの。兵も将も徐々にではあるが、儂の思惑通りに揃うてきた。これでやっと諸将と並び立つことも出来るであろう。

 

 最初に争う相手は誰になるか。翡翠や曹孟徳とも剣戟を交えるときは必ず訪れる。やつらは正真正銘の王。その才は比類なきまでに研ぎ澄まされ、儂らの喉元を狙うであろう。

 

 斗詩、猪々子、お主らの刃は一本では連中には届かぬ。しかし一本で届かぬのなら、二本三本と纏めて叩きつけてやれば良い。お主の絆なら必ずや届くであろう。

 

 そのときが来るまで自分たちの腕を切磋琢磨し、存分にその将才を発揮せい。この益州の地を、益州の民を共に守るのだ。

 

 そして必ずや北郷を世界から守ってみせる。これは誰にも言えぬ儂だけの決意だ。儂一人で太刀打ちできぬ相手でも退くわけにはいかぬ。

 

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あとがき

 

 第三十三話をお送りしました。

 言い訳のコーナーです。

 

 さて、今回は猪々子をメインに物語を描きました。強さを求めるあまり、歪んだしまった想いに取り憑く獣。

 

 桔梗さん曰く、それはコントロールさえ出来れば大きな力をもたらすが、一歩間違えれば猪々子のように暴走してしまう危険なもの。

 

 麗羽様がシリアス化したので、猪々子にシリアスになってもらいましたが、どこに需要があるのかと迷いながらの執筆になってしまいましたね。我ながらグダグダ感が否めません。

 

 獣に堕ちようとする猪々子を救ったのは、親友である斗詩。二人の友情も熱く表現したいなとか思いつつも、後半はやや失速気味だったでしょうね。

 

 とりあえず桔梗さんと猪々子、二人の決意と想いに描けたのでそこを理解して頂ければ今回は成功かと。

 

 ちなみにこの話は、まどかマギカを見ている最中に思いつきました。猪々子ってさやかに似てますよね。主に髪の色とか、髪の色とか……。

 

 はい、次回はほのぼのとした展開を描きます。出番のやたら少ないあの人が巻き起こす騒動。被害に遭うのは誰でしょう。

 

 この先の展開に関しては未だ迷い中。桃香たちの扱いに困る毎日。対外勢力も出番がほとんどないから書かなくては思うも、上手く思いつかず筆が進みません。

 

 相も変わらず駄作ですが、楽しんでくれた方は支援、あるいはコメントをして下さると幸いです。

 

 誰か一人でも面白いと思ってくれたら嬉しいです。

 

説明
第三十三話の投稿です。
強さは黙っていても身に付かない。死ぬほどの努力と、自身の才能に恵まれた僅かな者のみ辿りつける境地。
凡才が強さを求め、得られぬ苦悩に葛藤し、やがて心は荒んでいく。
袁家の猛将猪々子こと文醜の強さに拘るその訳は……。

コメントしてくれた方、支援してくれた方、ありがとうございます!

一人でもおもしろいと思ってくれたら嬉しいです。
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コメント
2人が1人…バロム1かな?桔梗さんが師だったらこの2人も良将になると思いますー(はこざき(仮))
Raftclans様 素晴らしいお言葉ですね。正に斗詩と猪々子にはぴったりな言葉だと思います。いえいえ、過去作品であろうと、コメントを頂けるのは作者にとっては至福でございますよ。(マスター)
「一人ひとりでは単なる『火』だが、二人合わせれば『炎』となる。」今頃ですが、コレを思い出したのでコメントしてしまいましたw(Raftclans)
320i様 桔梗さんの言葉通り、二枚看板は揃ってこそ本来の力を持つんでしょうね。それだけ強い絆に結ばれた友だと。そして、麗羽様の軍師の部分に触れていただけたのはとても嬉しく思います。さてさてシリアス化の次は軍師、キャラがどんどん崩壊しますね。(マスター)
クォーツ様 拙作を御覧頂けたことに感謝を。そして、作者には過ぎた言葉だとは思いますが、素直に嬉しいです。シリアスパートは出来もせぬ伏線張りでグダグダに、ギャグパートは才能を欠片も感じられない程の駄作だと自覚しておりますが……。それでも喜んで頂ける方のために頑張ります。そして、一刀と紫苑さんを温かく見守っていてください。(マスター)
砂のお城様 髪の色だけで反応してしまうなんて最早手遅れですね。斗詩と猪々子、演義では猛将なので、本作品でもある程度は活躍させたいなと。麗羽様もシリアスになったわけですしね。そして桔梗さんはやはりかっこいい。正体も知れぬ世界相手に一歩も退くことを善しとしません。桃香たちの扱いは未だに……。早く何とかしないと。(マスター)
執筆お疲れ様です。今更遅すぎますが、今回から読み始めました。・・・・一気読みしてきました。シリアスな政戦パートとギャグなぶっ飛ばされパートのバランスがよく、笑ながらハラハラして、とても面白いです。これから一刀と紫苑の行く先は・・・どうすれば華琳戦後どうすれば消えずに済むのか・・・次作期待(クォーツ)
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真・恋姫無双 君を忘れない 北郷一刀 猪々子 斗詩 桔梗 

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