諸君はじめまして、ガイル少佐だ。

　昨今、日本の若い男には女性との付き合い方がわからない者が多いと聞く。

　デートのプラン等もうまく考えられず、女性にリードされる男も多いとの事だ。

　この講義はそんな君達に、女性との付き合い方……上手いデートの運び方について、教示する物である。

　第一回の今日は、女性とのデートにおける二つの初歩的なシーンについて、軍人式の対処法を教える事としよう。

【シーン１、待ち合わせ】

　デートは始まる前からが戦場だ。

　もし待ち合わせに相手が遅れて来たとしよう、君ならどうする？

　頭ごなしに叱るのは失格だ、軍人ならば時間厳守が当然だが、一般人相手にそれを説いても仕方ない。

　ならば相手を気遣って「今来たところさ」と嘘をつけばいいのか……これもいい線は行っているが正解ではないな。

　嘘を信じられた結果、時間にルーズな男だと勘違いされて、遅刻の常習犯になられても困るだろう？

　つまり、この場合は『本当は待ち合わせ時間には来ていたが、彼女を気遣って今来たと言っている』と言う事を相手にそれとなく伝えなければならない。

　なに、難しい？

　ならば俺のこれからの実演を見て、しっかり学んでおく事だ。

　まずは待つ時のポーズ。

　ぼぅっと何気なく立っているのでは咄嗟の事態に反応できない、こう身を屈めて重心を常に後ろの方に保っておくのが大事だ。

　この状態を保ったままで、想い人が来るのを待つ、足が疲れてきても時が来るまでは動いてはいけない。

「ガイルーっ」

　そう言っている間に待ち人が来たようだ。

　おっと、相手が来たからと言って体勢を崩してはいけないぞ。

　その状態のまま、相手がこちらに来るのを待つんだ。

　当然相手は遅刻をした訳だから、急いで寄ってくる。

　こちらが微動だにしない事で、怒っていると勘違いしてくれたならば尚更だ。

　そうして彼女が息を切らせながら、君の目の前まで駆け寄ってきて、声を掛けてくる瞬間。

　この瞬間が何よりも大事だ、よく見ていてくれ。

「ご、ごめん。待った……？」

「ｿﾆｯｸﾌﾞｰﾝｯ。いや、今来たところさ」

　お分かり頂けただろうか。

　彼女に向けて笑顔を浮かべながら立ち上がるその瞬間、今までの間、溜めていたソニックブームを小さく放つ。

　こうすれば、君がこれまで彼女をどれだけ待っていたのか、「今きたところさ」と言う言葉が彼女を気遣ってのものだと言う事が、相手にもわかるという訳だ。

　勿論、相手に向けて撃ってはいけない。

　努めて笑顔を浮かべながら、明後日の方向に向かって撃つ事が大事だ。

　こうする事で彼女は、君が気配り上手な男であるという事に気付くと言う訳だ。

【シーン２、酒の後で】

　戦士には憩いの場所も必要。

　女性との二人きりでの酒と言うのは中々にいい物だ。

　軍隊の荒っぽい酒盛りも悪くは無いが、二人でシックな空間を楽しめるこの時間はまた違った魅力が在る。

　しかし、問題はその後だ。

　酒と言う物は、男にも女にも冷静な判断を失わせる。

　酔っていい雰囲気になった二人が、その後一夜を……と言うのは映画等でもよくあるパターンだ。

　単に一夜を共にするだけが目的ならば、そう言う手段に頼るのも悪くは無いのかもしれない。

　だが、そういった流れから出来あがった関係と言うのは非常に淡白かつ脆い。

　本当に愛した女性との初めての夜を、こういった形で作り上げようとするのは決して推奨出来る物ではない。

　酒などに呑まれて、見境を無くすのは愚の骨頂である。

　だが、もし相手から誘われたら？

　本当に好きな女性から、酔った勢いで誘われた時はどうするべきか。

　その時はやんわりと断りつつも、しっかりと相手を気遣う事で好感度の上昇を狙えばいい。

　具体的にはこうだ。

「いえへかえるんだな　おまえにもかぞくがいるだろう」

　第一回の講義はこれで終了だ。

　言っておくが、これはあくまで初歩中の初歩でしかない。

　今回の内容がわかったからと言って、すぐに女性と理想的なデート出来るとは思わない事だ。

　日々の弛まぬ精進が、君達を男へと磨き上げる。

　尚、次回についてだが、デートの最中でのアクシデントについて学んでいきたいと思う。

　以上で解散だ、しゃがみポーズを解いていいぞ