出会い |
大学というのは思ったより暇なようで忙しい。世間では学生ニートと言われているが、それはどうだろうか。自分が受講している講義と講義の間の空いた時間、俗に言う空きコマはそれほど多いというわけでもないが、確かにあることはある。90分まるまる空くので暇だ。ときには昼休みもあわせて2時間以上あくときもある。そんな暇な時間の過ごし方は、大きく2種類に分類される。レポートをひいこら言いながらやるか、友人たちとお喋りしながらのんびり過ごすかだ。
私の空きコマの過ごし方はというと、どちらでもない。使っていない部屋を探して、そこで1人でゆっくりと本を読むのが専らだ。私のところではレポートはそれほどでないので、大学で焦ってやることはない。友人は……察してもらいたい。
いつものように私は本を読みながら空きコマを過ごしていた。ある人に言わせれば青春をぶん投げているらしいが気にはしない。本が好きだから。
「あちゃ、先客か。あー、自分の世界に入り込んでるみたいだしいいかな」
という声が扉を開けた音と同時に聞こえてきた。何やら言っているようだが、間違ってはないし、会話はめんどくさいので聞こえないフリを決め込んでおく。なにより今は物語の終盤でとてもおもしろいので会話などできりたくない。
私の会話したくないオーラを感じ取ったのか、その声の主は扉のすぐ近くの席に腰を降ろして本を読み始めたようだった。
10分くらいで私は本を読み終え、伸びをし、時計を見た。次の講義までまだ時間はある。喉が渇いたし何か飲み物を飲もうと席を立ち周りを確認すると、出口付近に人影が見えた。あぁ、そういえば誰か人がきてたのを思い出した。私はその人をぼーっと眺めていた。後姿なのではっきりとは分からないが女性のようで、黒い帽子に白いリボンみたいなのが巻いてあり、服装は上は白で下は黒っぽい茶色のスカートをはいている。
ぼーっと眺めていたら不意にその人が立ち上がりこっちを見た。目を離すと同時に近くの机に足を勢いよくぶつけてしまった。私の足と机が奏でる素晴らしい音色は部屋中に響き、当然その人の耳にも入ったらしく、
「大丈夫ですか?あー、あーゆぅおーけぃ?」
あぁ、そうか。まだ話してなかったのか。
「日本語で大丈夫です……私も大丈夫です」
私の髪はブロンドで眼も紫っぽい色をしていて、はたから見ればそれはとても日本人とは思えないだろう。だが私は日本産まれの日本育ちでれっきとした日本人である。ただ、祖父の血、異国の血が少しばかり強くでただけだ。
「それは良かった。えっと、何回生の方なんですか?」
「1回生で相対性精神学を専攻しています。あなたは?」
ただたんに1回生とだけ言えば良かったのに専攻まで言って聞き返したのは、焦っていたからだろうか。正直、何故なのかはわからない。
「あ、そうなの。私は1回生で専攻は超統一物理学で名前は宇佐見蓮子。あなたは?」
お互い1回生とわかり安心したのだろうか、急に話し方がかわった。相手が同じ1回生でよかったとは私も思うが。
「あら、名前は教えてくれないの?まぁ別にいいけどね」
「マエリベリー・ハーンよ」
私は確信した。この宇佐見蓮子は変人だ。だが変人だろうと名前は教えることにした。交友関係は広くても困らない。
「ブルーベリー?」
この流れも慣れっこである。私の名前の発音は日本語には無いので、多くの日本人が聞き取れないし、発音できない。さすがにブルーベリーは初めてだが。もしかして、変人さんだろうか?変人だろうと交友関係は広くても困らないだろう。
「マエリベリー・ハーンよ」
私のことはマリーとか、ハーンさんと呼ぶわよ。と、付け加えるつもりだったがブルーベリーが癪に障ったので助け舟はださないことにした。
「言いにくいわね。んー、メリーでいいかな。これからよろしくね、メリー」
メリーとは私のことを指しているのだろうか?この部屋には私と、目の前の宇佐見蓮子しかいない。なので私のことを指しているのだろう。メリーと呼ばれたのは初めてだ。あまり変なあだ名はつけないで欲しい。やっぱり変人だ。
「こちらこそ、宇佐見さん」
「あら、蓮子でいいのよメリー」
いきなり距離が近すぎない?この返しは相手と私にプラスにはならい。私はそこまでバカではない。交友関係は広いほうがいい。ならば、ここでの返答の仕方はひとつだ。
「じゃあ、こちらこそこれからよろしくね、蓮子」
いきなり距離を詰めてきて、しかも変なあだ名で呼んでくる。いつもの私ならあまり近寄りたくない。だがなぜだろう、私は彼女のことを突っぱねない。確かに交友関係は広いほうがいいのだがそれを足してもマイナスだ。だが私は彼女のことを突っぱねない。
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秘封倶楽部、蓮メリの大学での出会いはこんなんですかね? | ||
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秘封倶楽部 宇佐見蓮子 マエリベリー・ハーン | ||
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