夢見る「女の子」
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こんな私にだって、当然夢はあるんですよ?

 

お母さんの欠片を拾い集めて行こう、って。

何時か又その山を登ろう、って。

そして、あの人の――――。

 

 

気が付けば、お肌年齢は既に曲がり角を通過してて。

重ねた齢も間もなく大台目前の土壇場窓際崖っぷち。

まるで「女の子」なんて呼ばれてた時代は、遥か彼方の過去のお話の様に思えちゃう。

 

でも私は、あの人に出会ってから又一人の「女の子」になりました。

明るくて。優しくて。温かくて。

そんな素敵な人の所為で。

尤も、彼を射止める為に乗り越えなきゃいけないハードルは……多分普通の人よりすっごく高いんでしょうけど。

なんせ、周りにはとても魅力的なアイドルの女の子達が何時も居るんですから。

おまけに、もう一つ超えなきゃいけない高い障壁もあるし。

…ともすると……そっちのハードルの方が大変だったりして。

 

ぶっちゃけ言うと、物凄く鈍いんです。

あの人。

思わずため息が出るくらい。

はぁ…。

 

「―――どうしたんです? ため息なんかついて?」

「…うぇ!?」

ボーっとしてたから不意打ちみたいな問い掛けになっちゃったとは言え…、ああ、また素っ頓狂な声を。

以後は事務所でこの人の事を考えるのはちょっと控えましょう。危険だわ。

又、こんなヘンな声聞かれたら更にイメージ(ry

って、ちょっと落ち着け。私。

「な、な、なんでも…ありませんから!」

「えー? そうですか? ボーっとしてたから、何か悩み事か何かかなぁって。 尤も、相談されたとしても俺なんかじゃお役に立てるかどうかも判りませんけど」

 

………… そ ん な 事 あ り ま せ ん 。

っつーか、ズバリ正解です。答えは貴方なんですから。

ああ、もう…それにしても相変わらず素敵な笑顔だなぁ。

くそぉ…。

 

「そ、それよりも…どうしたんです? 事務所になんて?」

そう言えば、珍しいと言えば珍しいかも。

考えて見れば、彼女達を魅力溢れるアイドルに育てあげた売れっ子プロデューサーが、事務所に居るなんてヘンな話ではあります。

「…へ? なんか、おかしいですか? だって、もう終業とっくに過ぎてますよ?」

え? …あ、確かに。

普通の稼業なら十分宵の口だわ。

「いやだなぁ。 俺だって、仕事が早く終われば早く帰りたいですよ。 明日も又アイツらと激戦が待ってますからね。 たまにはユックリしたいですから」

…そっか。

そう言えば、今日は殆ど定時で予定終了の日だったっけ。

 

「…で、物は相談なんですが」

「はい?」

 

ん? 何だろ?

 

「これから、…どうです?」

お猪口を傾ける仕草。

「…は?」

「だから、今晩、ちょっとどうですって。久しぶりに飲むんで一人じゃなんですし。」

「え、あ…、だ、誰…に…ですか…?」

 

…やだ、何か顔赤くなって来た…。

まさか、これ…?

…………ごっくん。

きょろきょろ辺りを見回しても、当然、私とこの人以外には誰もいません。

 

「はぁ…。 だーかーらー、今、俺の目に前に居る人に、ですよ。 あ、けど予定が有るなら(ry」

「!? あ、あ、あ、あ、ありません! 全然っ! 全くっ! これっぽちもっ!!」

 

キタ―――――――(゚∀゚)―――――――――――ッ!!!!

ハラショー!!!ブラボー!!!ワンダホー!!!

わ、私にも、チャンスは有るのねっ!

…う、うう…か、神様ありがとうございます…ぐっすん…。

 

「い、行きます! 行きますともっ、是非喜んでっ!」

「よかった、一人じゃ何か味気なくって」

「は、はい! わ、わ、私でよければ何時でもっ!」

「あはは。 ありがとうございます。 じゃ待ってますんで、出る準備できたら声掛けて下さい。」

「はいっ!」

 

と、勢いよく立ち上がったは良い物の、当然お約束事がそこには待ってて…

ま、そりゃ、顔が火照ってのぼせてるのに急に立ったら誰だってクラリと眩暈がしちゃいますよね?

 

「…きゃ!?」

「…えっ!? あ、あぶなっ!!!」

「きゃあっ! …んみゅっ!?」

 

転ぶ私を、この人が咄嗟に抱きかかえてくれて。

下敷きになってくれて。

そして――――。

 

「……………!?※☆♯*」

慌てて私はこの人から身体を起こします

 

「…ってぇ…。あたた…。 …って、だ、大丈夫です!?」

「………え?…あ……、は、、は、はひっ…! だ、だいい、じょ、じょぶ、です!!」

「はぁ…良かった。 気をつけて下さいよ? ウチは誰が欠けても困るんですから。 怪我でもして入院とかになったら、それこそ大ダメージですし」

「ふぁ、ふぁいっ!」

「あれ? どしたんです? 顔、なんかすっごく赤いですよ? …まさか、どっかぶつけて熱出ちゃったとか!?」

「ひ、ひえっ!? そ、そ、そんな、事、な、なひ、れすっ!!」

「ほんとですか?」

 

ぶんぶん。

 

私は頭を縦にふるだけです。

だって、この人を見ながらなんてもう何も言えないんですもの。恥ずかしくて。

 

「ふう…。 それなら良かったですけど。 本当に気を付けて下さいよ? さ、じゃあ、片付けはその位で。 行きましょうか。」

「…は、はい。」

 

大きな温かい手が、私を支えてくれて。

 

 

…あーあ。

何時かこの手が、ずっと私だけを支えてくれたらなぁ…。

んー、でもやっぱり難しそうかも。

だってこの人、やっぱり本当に鈍そうなんだもん。

とてもキスの1回や2回位じゃ振り向いてくれなさそうだし。

 

ま、それは2回目以降に望みをかけてからの話なんでしょうけど。

 

 

今の不意打ちみたいなのじゃなくて、ね♪

 

 

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