Do you know me?
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なんだか不思議な人。それが第一印象。その外見も雰囲気も見慣れないもので、彼の黒曜石に映る世界はどんな風に色付いて見えるのか考えると、ちょっとだけ好奇心が沸いた。

 

 

 

 

Do you know me?

 

 

 

 

 

 

高い位置で二つに纏め上げたやわらかいブロンドの髪と、赤く縁取られた眼鏡がトレードマーク。皆それぞれ自分の個性に合わせてスカートの丈を短くしたり、リボンを少し改造したりする中で、制服は一切手をつけずにフォーマルな状態をきっちり保つ事を曲げなかった少女がいた。ローザ・カークランド――学園の、元生徒会長である。

入学当初から三年の前期にかけて生徒会に所属し、その内二年前期から三年前期を生徒会長として学園のトップに立っていた。今は弟分のアルフレッドがその席につき、若干回りに無茶振りをかましつつも懸命に働いているらしい。

ローザがトップにいた時は、信頼を置く者達からは『高嶺の花』『淑女の鑑』等と言われ、様々な恨み辛みをそのカリスマ性から跳ね除けてきた輝かしい経歴もあって既に付属大学への進学が決定しており、残りの半年という短い女子高生の時間をしっかり満喫しようと意気込んだのは、少し苦い思い出だ。

何故なら彼女は生徒会の役員として様々な人物と関わって来たけれどその殆どが「知人」止まりの関係だからだ。女子というものは意味もなく集団で行動したがるもので、今までクラスメイトとの交流を「会長として」しかして来なかったローザに気安く話しかけたり、お昼を共にする勇気の有る存在はいなかった。ならば、今この瞬間から友達を作ればいい。というわけにも行かない。殆どの生徒が来る受験に向けて切羽詰っている中、「元生徒会長のお友達」という肩書きはもはや価値が無く、既に進路の決まっている彼女に構う者が居てもその殆どが受験して進学する意思も、不景気ながらも頑張って職に就こうともしないような者くらいだろう。勿論ローザの性格からして、その様なレベルの人とつるむなんて誰も思わない。故に、一人ぼっちだった。

そんな教室に居ても居心地が悪いだけ、かといって生徒会室に入り浸ることも出来ない(現役には歓迎されるだろうけれど、雑用を手伝わされるのは真っ平ごめんだ)。

どこか、この学校に後半年を無駄にしない空間は無いものかと歩き回り、そうしてやっと見つけた「居心地の良い空間」が、図書室だった。

この施設は付属大学の図書館と繋がっており、ある程度の地位か学力を持つ生徒は自らの足で蔵書に入ることも許される。また特に読書を目的とせずとも、静寂と清潔を保つのならば例え漫研が原稿を書こうがギャルがメイクを直そうが構わないのだ。窓際の、晴れた日は比較的日当たりの良い席に腰を下ろして刺繍に針を通す事もあった。

もっと女子高生らしく、友人とハメをはずしたり、恋をしたりして、華やかに卒業したかったと思うが、まぁこれも良いだろうと思い、お気に入りの一冊を手に取る。名前を知る人はそう居ないだろう無名の作家が描いたファンタジー小説。登場人物の心情がどことなく自分に似通った風に思えて、妙な親近感を抱いた作品だ。何度も何度も読み返したそれは、特にお気に入りのシーンになると暗唱もすらすらと出来るかもしれない。けれど何度も笑い、なき、感動を与えてくれる。赤く色付いた木々の囁きをBGMにして、ローザは物語の世界へ足を踏み入れた。時間の流れを気に留めることなく、物語は山場に差し掛かる。ああ、ここで主人公のとった行動には心底驚かされたんだっけ。仲間の一人が――という時、背後から遠慮がちに肩をたたかれた。

驚いてばっと振り向くと、そこには見覚えの無いテクノカットの黒髪の青年が、此方の様子を伺うように中腰で立っていた。誰だ。人脈は広いがアジア系の知り合いは殆ど居ない。人違いだろうか、いやでも長い事生徒会に居たから顔だけは広く知られているかも…等と振り向いたままの状態で彼を見上げて考えていたら、彼は困ったように眉をハの字にたらして口を開いた。

「あの、ローザ・カークランドさん、ですよね?」

「そっ、そうだけど、誰よ貴方」

「これは失礼しました。私ここの司書をさせていただいている本田と申します」

そういって首にかけてあるネームプレートを見せた。Kiku Honda と確かに彼の名前が記入されており、その横に顔写真が貼ってある。

「仕事の殆どが蔵書の管理や裏方の事務なので、図書館の常連さんにもあまり顔は知られていないんですよ」

「そ、そうなのか…私は半月ほど前からここを利用するようになったけれど、確かに見ない顔だと思ったわ。それで、私に何の用が?」

すると彼はどこか事務的な笑顔で、手に持っているクリップボードを机の上に置いた。

「書籍貸し出し延滞者のリスト…?」

「ええ。蔵書の方で一冊、カークランドさん名義で貸し出しされた本が帰ってきていなくて。まぁ無くなると大変って程のものじゃないんですけど、一人貸し出し待ちがいるので」

「それは悪いことをした。でも私にはこの本を借りた覚えが無いんだ。夏休みは生徒会の移行準備が忙しくて」

「え゛っ!? …その時期、学生証を落としたとか誰かに貸したりとか、しませんでした?」

「生徒会の誰かが勝手に持ち出したっていうのは考えられる…。でも生徒会なら私のをわざわざ借りる必要も――あの馬鹿だな。あらかた検討がついたから確認してくる。申し訳ないけど明後日までには返却できると思うから、待ってもらえるか」

「そうですか。よろしくお願いします」

 

 

「アルフレッド!貴方勝手に私の学生証で蔵書に入っただろう!」

「ん? 何の話だい?」

「とぼけるんじゃない、生徒会選挙の数日前「あー、あれか! すっかり忘れてたよ! いやぁなんてったってあの頃は君の『雑用』だったからね」」

「…で、その本は何処に?」

「あの資料の山に紛れてると思うんだぞ」

「は!?」

「悪いけど自分で探してくれないかい? 今の俺は生徒会長だからね、忙しくてそんな事に構ってられないんだ」

説明
サイトより。学生パラレルで菊とローザのお話。
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ヘタリア にょたりあ 本田菊 

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