【杏さや】 名前で呼び合うのって、いいよね。 |
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☆☆
「……ねぇ」
「ん?、何だよ?」
夜、寝苦しくなって、ふと横にいる同居人兼こいびとに話しかけた。
彼女――佐倉杏子はやはり寝ていなかった様で、私の言葉にさっと返事をする。
「……あたし達、こいびとどうしになったんだよね」
「…そーだな。 ま、アンタがあの駅で強情張らなきゃもう少し前にこんな関係になってたんだろうけど、さ」
にしし、と意地悪な表情で微笑いながらあたしにそれを言う杏子。 それにムッとしながらも、どこかやわらかな感情が心中にあって、、
「……どうかしたか?、突然んな事言い出して」
「んーん。 確認してみただけ」
そう発して、彼女に笑いかける。 すると杏子は頬を緋く染めながら、寝返ってそっぽを向いた。
その様子を見てたら、なぜか勝った気分になって来た。 付き合う前から戦ったりなんたりして負けてたりしてたからかも知れない。
…………勝ち負けとか言ってたら、なぜか思い出したコトが出てきた。
「……ねぇ…」
「…まだ何かあんのか?」
「なんか、こう……名前で呼び合うのって、いいよね」
「……何だよ突然。 藪から棒に」
杏子はあたしの言葉を寝ぼけ眼で聞き、言葉を返す。
「いやさ、織莉子さんとキリカっていつもラブラブじゃん?」
「ん?、あぁ……あいつら今日もベタベタしてたな…」
「で、キリカに聞いてみたんだ。 『どうやって、織莉子さんとそんなにラブラブになったの?』 って」
「…………聞く人選間違ってねーか?」
興味が出てきたらしく、杏子は身を乗り出して、あたしの話を聞くようになっている。
「で、何て言ったのよ?」
「えーと、 『私の推理によるとだね……いや、推理すら及ばないよ。 同士さやか、それは名前で呼び合う事さ』 」
「………………」
「 『どんな関係であれ、親しくなるコトが大事なのだよ。 こいびと関係なら尚更だ、先ずは意識して互いの名前を言ってみるといい。 それで幾らか世界が広がる。 それはほんの些細なコトだけども、一段上の世界へと往く鍵になるのさ。 ……私は、それを体感した1人だからね』 ……だったかな」
「ふーん……つーか、どうしたらそんな話になったんだ?」
「…………そこは覚えてないのよね…」
確か、キリカと言い合いしてた様な…戦ってた様な……。。
その後のこの言葉のインパクトが強すぎて、どうにも覚えていないのだ。
「名前で呼び合う、か……」
杏子はキリカの言葉を反芻する様に口に出した。
そしてしばらく口元に手の平を当てて何かを考えていたと思いきや、ぽっと赤面し始める。
…………何をしているんだろう…。。
「――――……さやか…」
不意に、杏子に名前を呼ばれた。
いつものちゃらけた口調やだらけた口調ではなく、
あたしを見ながら・あたしを思いながら言ったのだと思わせるには充分な程で。。
「……っ!!…」
突然に呼ばれたからか、あたしはどぎまぎして・心臓がバクバクと昂ぶり杏子の顔をまともに見れない。 いつも、いや……ほとんど彼女からはそう呼ばれていた筈なのに。
…………どこか、新鮮な気がして。。
「あー…何つーか……うん、照れる、な」
彼女を見ると、気恥ずかしそうにぽりぽりと鼻の頭を掻いていた。 ただし、罰が悪そうな表情ではなく、何というか、、幸せを実感している様な……。。
「何なんだろうな、ホント。 ……ただ、名前読んだだけなのに、な」
「………………」
……――返さなきゃ。 あたしをこんな気持ちで満たしてくれたんだから、
だから、、返さなきゃ。
「ありがとう、とても嬉しかったよ。 ――杏子」
「…………っ!!」
言った。 言って、しまった。
ついに杏子に…………って、そうだ、いつも心の中じゃ杏子って言ってたけど、、本人の前で名前を呼んだの、初めてだった。
「――――――……」
そのコトに気付いた途端、あたしは瞬時に赤面した。
おそらく杏子本人と同様に、もしくはそれよりも真赤なんだろうなと思うほどに。
「……き、杏子」
「…………何だよ」
「…へへ、……呼んでみただけ」
「…そうか、うん……そうか」
杏子はあたしの言葉を噛みしめる様に頷き、どこか納得したようだった。
それと同時に感じたのは高揚感。
甘いケーキやアイスでお腹の中が幸せいっぱいに満たされているような、そんな満足感。
――もっとそれを感じたくて。
「きょう、こ……」
だからあたしは、こいびとの名前を呟いた。
「……さやか」
びつくりしていた杏子も、あたしに合わせたのかあたしの名を呟いた。
「…杏子……」
「さやか……」
「…杏子っ……」
「さやかッ!」
「杏子っ、杏子っ!、っ杏子ぉ!!」
「さやかッ、さやかッ!、さやかぁッ!!」
最初は呟く様に言っていた名も、仕舞いには半ば叫ぶ形になってしまった。
だけど不快感は無くて、溢れてくるのは、喜びばかり。
杏子の表情を観ると、きっとあたしと同じなのだろうと思わせるには充分過ぎて……。
「……なんか、いいなぁ」
気付くとあたしは、自然とそんな言葉を発していた。 …名前を呼び合うだけでこうなるだなんて、まったく、キリカには頭が上がらなくなりそうだ……。。
…よし、今度さやかちゃん直々にショッピングモールを連れ回してやろう。
んで、服を買ってやるんだ、ミッドナイトウルフなんてどうだろう?
「あぁ……そーだな…」
杏子も笑顔でそれをそれを言った。
「 「 ……………… 」 」
そして、しばらく続く無言の時間。
喋りたくないとか言う話じゃない。
ただ、名前を呼ばれたという余韻を身体に浸透らせているだけなのだ。
「…なぁ、さやか。 …………眠れない、よな?」
「うん、眠れない、、かも」
そうだ。 愛しい人と一緒に同じ部屋で寝ているのだ。 それに、さっきまであんなに叫びあってドキドキが止まらないのに、、寝れるわけがない。
「明日はがっこーも休みだし ……このまま眠らないってのは、どうだ?」
布団から起き上がり、私に覆い被さりながら問う杏子。
彼女の右手があたしの唇を捕らえ、ゆっくりと降って行き・頬から首すじへ・鎖骨からおっぱいへと伝い、そこで止まった。
……バカ…。 ………答えなんて、分かりきっているじゃないのよ。。
「…………そう、ね。 あたしも言い考えだと思う、よ」
「…ははっ、やっぱり?」
恥ずかしくて視線を逸らしながら答えるあたし。 それに構わず、杏子の顔がだんだんと近付いて――、、
説明 | ||
自作の焼き直しみたいなモノを杏さやでやってみたかったので。 ちょいと修正してます。 | ||
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