蒼に還る夏(改) 真・設定資料編 ―暗黒面― |
真・設定資料編 ―暗黒面―
”局長”:
表向きの地位は火星海洋管理局、特別支局”チラン”の局長、偽名は”アル・ナスル”。
しかし本当の地位は火星宙軍の特殊部隊大佐、射手座で敬虔なユダヤ教徒。
ユダヤ系米国人の子孫、遷移小惑星キロン(2060 Chiron)のコロニーで生まれたが、
木星圏側の侵略を受け差別的隔離政策により強制移住させられ火星移民となった。
元々は火星救難隊の隊長でありフリーメイスンリー火星グランドロッジの長でもある。
火星救難隊が火星宙軍に組織改変される際、ある考えがあってそのまま居残った。
温和で腰の低い紳士だがその過去は決して平和ではなく、手は血で穢れている。
プロト・トランジエント就役から間もない頃、火星の新技術に目をつけた地球が、
当時まだ幼かったαシリーズを強奪すべく特殊部隊を送り込んできたことがある。
大佐は部下を率いてそれを迎え撃ち、地球側特殊部隊員を「排除」した。
あの最新鋭の特殊部隊用強襲揚陸艇は、その時鹵獲した戦利品である。
地球側は武力による略奪という事実上の侵略行為の弱みを握られ事件を闇に葬った。
現実を生き抜く男の冷酷さと我が子を守る父の暖かさを同時に持っている「大人」
彼の真の目的は全ての軍備の廃止、そして2度と戦争の無い世界の実現であった
”トレーナー”:
表向きの地位は火星海洋管理局、特別支局技官、コードネームは”アクラブ”。
しかし本当の地位は火星宙軍の技術大尉、蠍座で無神論者、生物工学を主に研究する。
日本系ドイツ人の子孫、地球生まれの火星育ち、孤児となった後は自分の力で生きてきた。
飛び級に次ぐ飛び級で僅か10歳で火星宙軍士官学校海洋生物学課程に編入し、
12歳で博士号を取得すると、特例処置として士官学校未了であるにも関わらず、
火星宙軍の特務機関である海洋管理局特別支局「知覧」に配属されα素体を育てた。
単なる天才ではなく、鹵獲兵器である地球製の強襲揚陸艇を軽々と使いこなすなど、
特殊部隊の戦士としての素質も兼ね備えている、「父親」では無いが「男」ではある。
直接自分の手で人を「排除」した経験は無いが間接的には大佐以上に「手を下して」いる。
地球側のαシリーズ強奪未遂事件とほぼ時期を同じくして木星側も同様の行動に出た。
その際、彼は他のトランジエント・オルカを使って百頭を超える巨大な人喰いザメの群れを
木星側特殊部隊のダイバー達の潜伏場所に追い込み、全て「行方不明」にさせている。
天使の悪行と悪魔の善行を割り切る分別に辿り着いた「大人になりつつある青年」
彼はオルカの軍事利用を諦めさせ未来の悲劇を防ぐと同時に残ったα個体を殺した
アレス:マルスの異名、戦の狂乱の神にして全ての蛮族の父、アテナの対照存在。
トランジエント級自律型無人航宙戦闘艦の試作艦プロト・トランジエントの
制御中枢にするため生体脳を取り出されてしまった最初のα素体のオルカ。
その後の極秘試験では、たった1隻で地球と木星の連合艦隊に拮抗する
圧倒的な高性能を見せたものの、αシリーズの誕生と時を同じくして暴走
小惑星エウレカ(5261 Eureka)の火星非公式基地で保管されることとなり、
計画そのものも凍結された。
アンタレス:さそり座の主星、アレスに対抗する者という意味、アレスの対称存在。
アレスが暴走した場合にそれに対抗するための戦力として準備された。
アレスと全く同じクローンとして同時に創られた”違うのに同じ者”。
その後アレスは生体脳の反応がなくなり、反乱の危惧が薄れたため、
彼は生体脳を取り出されずに済み、他のαシリーズとともに鮫駆除の
任務についていた。ジョーイの本当の名前になるはずだった呼称。
チラン:αシリーズだけを管理する特務機関、小惑星「atami」に城ヶ崎極秘研究所も持つ。
αシリーズ:トランジエント級量産の為にアレスとは似て異なる胚でクローニングされた素体。
アンタレスの身体:艤装途中のまま保管されていた、より高性能なトランジエント級初号艦。
トランジエント級自律型無人航宙戦闘母艦:
火星宙軍が期待を掛けていた無人戦闘艦、従来の無人艦と違い戦術的な判断だけでなく、
作戦級、準戦略級の判断が可能なAIが搭載された画期的かつ革新的な、
”戦争を諦めさせる為の抑止力戦艦”を目指して火星は開発を決意した。
その正体はαシリーズのオルカ達から取り出された生体脳による制御である。
(ノーマル・トランジエント達も全て搭載機の制御中枢にされる予定だった。)
その最初の被験体として”アレス”と”アンタレス”は全く同じ存在として創造された。
”アレス”は生体脳を取り出されて試作零号艦に搭載されてしまい、
”アンタレス”はそのモニター用としてシャチの姿のまま生かされていた。
しかし”アンタレス”の真の任務はもしも”アレス”が人間に叛旗を翻した時”アレス”を破壊することである。
アテナとの”魂を取り戻す”交流の背景で、現実は彼にそこまで過酷な義務を課し、完遂を求めていた。
ナノマシン”オメガセル”:
アレスの失敗から生体脳を取り出さずに、生体を丸ごと制御中枢化する目的のため、
開発が進められていた軍用ナノマシン、外見はどろりとした濃厚なゲル状物質である。
開発は通常のトランジエント用ナノマシン”TYPE−α”の後継種”TYPE−β”の予算を隠れ蓑にして、
火星横断小惑星「熱海(1139atami)」の極秘研究所で進められていたが本当の出所は未だに謎である。
これを適用されてしまえば兵器として生きていくか、消去されるか、の選択肢しか残されていないはずだった。
隠された伝説の艦隊群:
火星宙軍はトランジエントΩの実用化に成功した暁には、地球と木星の対立に武力介入する為
全てのトランジエント・オルカを戦闘用と化しアンタレスを旗艦とする大艦隊を編成するつもりだった。
残12個体のα・オルカもΩ化され、ノーマル・トランジエント達200個体はその艦載機に変えられ、
12艦のΩ・オルカ母艦にそれぞれ16機づつ搭載されて実戦投入される計画であった。
アンタレスは自艦直衛機8機を装備し、他の12艦を指揮する艦隊総指揮艦になる立場だった。
(本来は火星の名を冠するアレスが旗艦となり、アンタレスはアレスを監視する監察艦であった。)
幸い計画は未完に終りオルカ達は救われ、計画を知る者は後に「隠された伝説の艦隊」と呼んだ。
局長とトレーナーが隠そうとしていたこと:
彼らはジョーイが無意識に発揮していたテレパス能力に気付いていた。
同一存在である”アレス”と”アンタレス”はこれにより魂まで同一だった。
しかし、アテナによって”アンタレス”は”ジョーイ”としての自我に目覚め、
それにより異なる魂となってしまった”アレス”は自ら閉ざしていた自我を
”アレス”として取り戻し、命と引き換えに海の蒼さに還ることを決意した。
空間的距離や光速度の束縛も受けず、あらゆる種類のジャミングも効かず、
意思と情報の完全な共有が可能というこの能力がもしも外部に知れ渡れば、
オルカ達は軍事目的に大量培養され、戦争と無数の悲劇を産み出す事になる。
そのことを予見した局長とトレーナーは反逆行為として自分達の生命に危険が及ぶ事も顧みず、
さらには家族同然のαシリーズ達を自分達の手で殺してでも全てを闇に葬る苦渋の決断をした。
トレーナーの企んでいたこと:
トレーナーはアリシア達やその他の周囲全てを利用していた。
局長は自分が利用されている事すらも承知の上でそれを知らぬふりをしていた。
今回のことは全く予期せぬ偶然ではあったが彼はそのチャンスに賭けることにした。
アレスもアンタレスもあのままでは本来の自我に還れずそのまま死ぬことになる。
しかし、本来の自我に還すことが可能なのは肉体を持っているアンタレスのみ。
アンタレスが自我に還ればアレスは同一存在ではいられなくなり破壊されることになる。
そしてアンタレスも人間との共存を自ら望むことが出来なければ不適格な存在として
消去されることになる、アリシア達はそのための「アンタレスの還る所」の候補だった。
彼は”魂のトリアージ(生存選別)”を試み、そのために全てを欺く演技をしていた。
彼の企みではΩ化されたアンタレスがアレスを破壊した後、例え兵器としてであっても
アリシア達の中の誰かと心を結び続け、その魂が生き残れることを望んでいた。
しかし彼はアテナのもたらした”ジョーイ”という可能性を見抜けなかったのかもしれない。
もしも”魂”というものが”想い”ならばアンタレスがアレスの”想い”の全てを受け取ることで
アレスとアンタレスが”ジョーイ”という一つの魂へと新生して生き続けているかもしれない。
その答えは恐らくジョーイ自身にもわからない
魂の還る星[ところ]へ続く
説明 | ||
2006年8月「天野こずえ同盟」様にて初掲載、2009年4月「つちのこの里」様にて挿絵付き細部修正版掲載 | ||
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