鋼の錬金術師×テイルズオブザワールド 第15話〜16話
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〜バンエルティア号〜

 

一人の茶髪の青年剣士と、一人のツインテールの女の子が、この船に乗り込んだ

 

その異様な雰囲気に、アンジュは動じることなく、”客”と思い、挨拶をした

 

だが、青年は単刀直入に、用件を言った

 

『アドリビドムというギルドはここか?』

 

その唐突さに、アンジュは少しだけ戸惑ってしまったが、

 

『ええと……そうですが…?』

 

『ふぅ、ようやく着いたか』

 

すると、態度が少し変動し、堅い態度が少しだけ柔らかくなった

 

『あの……貴方は?』

 

『私は、ガルバンゾ国騎士団に所属する、アスベル・ラントです。横に居るのが……』

 

アスベルは、視線を隣の少女に向け、

 

目で合図を送っているようだった

 

『わたしの名前……ソフィ。アスベルが…そう呼ぶから…』

 

と、まるで感情の無い子供のようにそう言葉を出した

 

自己紹介が終わった後、まるで見計らっていたかのように、入口の扉がまた開く

 

そこには、クエストから帰ってきた三人が立っていた

 

『よぉ、たった今帰ったぜ。』

 

『おかえりなさい、赤い煙の情報、どうだった?』

 

アンジュがそう言った後、ティトレイは真剣な顔になり、

 

結果を、嘘をつかずに全て述べた

 

『暁の従者って奴らに、運び出されちまった』

 

『え!?それじゃぁ…それって…』

 

『ああ、結構大変な事になっちまったと思うぜ。なのに関わらず、そいつらを捕まえる事もできずしまいだ。俺が馬鹿だったせいで、な』

 

するとメルディは慌てだし、

 

『ちがうよー。エドワードはちゃんとがんばってたさ!メルディのせいでもあるよ!』

 

『まぁ、そんな事でアンジュさん。これから対策を考えねえとな。』

 

アンジュは、真剣な顔で報告を聞き

 

『そうね、これからはその団体が妙な行動を起こさないためにも、見張っておく必要があるわね』

 

そうアンジュが告げた後、エドは横に居た二人の男女を見つけた

 

『で、あんたらは誰?』

 

『申し遅れました。私はガルバンゾ国騎士団に所属する、アスベル・ラントです。』

 

『ガルバンゾ国……』

 

エステルが王女やってた国かと気付き、エドは顔を不穏にさせる

 

『そんな大国の奴が、こんなギルドに何の用だい?』

 

『ちょっと、エドワードさん……』

 

失礼な口遣いに、アンジュは少し慌てるが

 

アスベルは、そのような口調はさほど気にしてはいなかった

 

『いえ、私達は人探しをしているのです』

 

大体、エドは察しがついた

 

『エステリーゼ、様か?』

 

『ええ、ここにガルバンゾ国の王女、エステリーゼ様が滞在されているはずです。』

 

エドは、ガルバンゾ国の騎士を見て、納得をする

 

『なるほどね、姫様が国から離れてこんな所に滞在しているからと、連れ戻しに来たわけだ』

 

『おっしゃる通り。』

 

すると、アスベルは表情を少しだけ強張らせた。

 

何だ?とエドは疑問に思ったが、次の言葉で、さらなる疑問が生まれる

 

『…王女誘拐の罪で指名手配になっている、ユーリ・ローウェルはご存知ですね?』

 

『何!?ユーリが王女誘拐!?』

 

エドは思わず声を張り上げてしまった

 

あーあ、やっちゃったとアンジュは心の中で思い、額に手を乗せて溜息を吐いた

 

『やはり、この船にはユーリ・ローウェルも滞在しているのですね?』

 

エドは、その質問に何も答えられなかった

 

『彼と同じギルドだったという仲間がもう一人、このアドリビドムに逃亡してきたはずです』

 

あのオッサンか?

 

エドは、一体何をやってたんだ?何の事情があったんだ?と疑問が増えるばかりだった

 

『んで?そのユーリともう一人の共犯者を容疑で捕まえる為に、わざわざこんなギルドまで?』

 

『ええ、私達は彼らを追ってきました。』

 

ふぅん、とエドは頷く

 

『おいエドワード、どうすんだ?何かやばいぜ』

 

ティトレイが、心配するようにエドに言ったが

 

エドは、何も感情が無いかのように

 

『そんな犯罪者さんは、確かにこの船に居ますぜ。くまなく探してくれよな』

 

『ご協力、感謝致します。』

 

アスベルは礼をして、隣の少女と共に船のさらに奥へと行ってしまった

 

『エドワード!良いのかよ。ユーリは仲間なんだぜ!?』

 

エドは、捨てるように言った

 

『良いんだよ。どっちみち、王女誘拐って大層な犯罪犯したんなら、遅かれ早かればれるんだからよ。それに、エステルはどうも誘拐されたようには見えねぇ。どうせユーリの罪ってのも勝手に消えちまうだろうよ。』

 

と、エドは言ったが、やはり少し気になるらしく

 

『ちょっと見に行ってみようぜ。』

 

と、ティトレイを連れてアスベルが向かった先を追跡する事にした

 

 

 

 

〜ヴェスペリア組の部屋〜

 

『エステリーゼ様!』

 

アスベルが扉を開いた所に、運が良いのか、悪いのか、そこにエステルと共にユーリが居た

 

『…ユーリ・ローウェル!!』

 

『待って下さい!ユーリは何も悪くはありません。』

 

アスベルが、興奮の勢いに乗っていて、反論をしてしまった

 

『ですが!その人はエステリーゼ様を誘拐して』

 

『まぁ、俺は別に誘拐犯でも構わないけどよ』

 

ユーリは、あまりどうでも良いように頭を掻いて部屋の壁に座りこんでいる

 

『お前ら騎士団がここに居る理由は、エステルを連れ戻す為だろ?』

 

『……ああ、それもあるが』

 

『私は……戻りません。フレンにそう伝えて下さい』

 

アスベルが、また険しい表情になる

 

『…何か、理由があるのですね。』

 

『はい。私は、自分の国が起こした事による異変を解決するまでは、ガルバンゾへは戻らないと、そう決めたのです』

 

『ですが、エステリーゼ様のおっしゃった、生物変化の現象の調査は、これから評議会に提議すれば……』

 

ガタリと、扉が開く音が聞こえる

 

『ふぅん。前から王女がギルドに居るのはおかしいなと思ってたが、そう言う事ね』

 

『……師匠!』

 

『…師匠?』

 

エステルが、その小さい子供を師匠と呼ぶ事に疑問を感じたが、

 

エステルは、何故エドがここに居るのかが、少し戸惑った

 

『エステリーゼ様、この者達はどういう?』

 

『この人達は……錬金術を教えてもらっています。』

 

錬金術と聞いて、頭を傾げるアスベル

 

ソフィは、その錬金術という感じさえも、文字さえも良く分からない顔をしていた

 

『エステリーゼ様の師匠……と申したか?』

 

『俺はそう”師匠”って呼ばれるの嫌なんだけどね』

 

『錬金術とは、一体いかなる物でしょうか?何か怪しい臭いがするのですが……』

 

それは失礼な言葉だとエステルは感じたが、

 

エドは別に気にしてはおらず、

 

『まぁ、怪しいのは怪しいわな。そりゃぁ』

 

『そのような錬金術という物を習って、何になるのですか?生物変化の調査の上に、錬金術なんて…。何をお考えですか?』

 

『私は、一人でも多くの人を救いたいんです。』

 

アスベルは、さらに混乱する

 

『その錬金術が、生物変化の解決に導くと言うのですか?』

 

『それは分かりません。しかし、錬金術という力は、いざという時に人の生命力を強くして、治癒術と組み合わせれば、さらに有効的な治癒術を行う事が可能です。それに……赤い煙によって異形の形に変えられた人達を元に戻す可能性だってあるんです。』

 

エドワードは、驚いた

 

ちょっと錬金術をかじっただけで、もうそこまで考えているとは。

 

エドも、薄々は考えていた。先程のドクメントを使えば、異形の形となった人間や生物等を元の姿に戻す事が、

 

可能である事が、少しずつ確信に変わっていったのだ。

 

『伊達に、錬金術を習ってたってわけじゃねえのね……』

 

さすが王女様、結構貪欲だと感心する

 

『まぁ、エステルがこう言ってるんだから、多分戻ろうとは考えていないと思うぜ』

 

『…私も国、そして守るべき民の為に尽くしたいのは同じです。ですが、フレン様は、あなたを連れてくるまでガルバンゾ国には戻るなと命じられたのです。』

 

エステルが、表情を変えて言った

 

『だったら、ここにいて良いんじゃありません?』

 

『ここ?このギルドにですか?』

 

アスベルが、意外な答えに、少々戸惑ってしまう

 

『はい、ここなら色んな人を守る事ができます。』

 

『良いのかよ、仮にもユーリは誘拐犯にされてんだぜ?この騎士団の奴も共犯者扱いされる可能性があるかもしれねえぞ?』

 

『大丈夫です、師匠。フレンなら分かってくれます。いえ、分かってくれるはずです』

 

エステルが、自信満々にそう答えた。

 

エドはフレンという奴に会った事がないので、良くは分からないが

 

信用されているのならば、まぁ問題は無いだろう。

 

『ふぅん…。そんな上手くいけば良いけどな』

 

『エド、お前も弟を探してるんだろ?フレンを上手くまとめれば、弟の所在位置も早く見つかるかもしれねえぞ』

 

ユーリがそう言った後、アスベルはエドの方を向いた

 

『エド…君?弟が、行方不明なのか?』

 

エドは、無駄に心配されたくない為、特に何も気にしていない様に答えた。

 

『まぁな、昨日からどこに行ったか、はぐれちまってな。今頃何してんだろうな』

 

『きっと良い人に拾われて、美味しいご飯とか食べさせてもらっているはずです。』

 

エステルのその言葉に、エドは顔をしかめる

 

『ん―――、それはちょっとありえない話かもな。』

 

あの身体で、しかも中身が無いのでは、いずれ住民から化物扱いされているのには違いが無い。

 

多分、眠らなくても食べなくても良い身体なので、どこか魔物のいる森の中か、坑道の中とかに居そうな者だが、

 

だから、一刻も早く見つけないといけないのだがな

 

『……分かりました。』

 

アスベルが、頷き承諾した

 

『アスベル?』

 

『私も、このギルドに残り、王女の為に尽力致します。そして、エド君だったかな?』

 

中途半端に名前を覚えられても困るので、エドは改めて自己紹介した

 

『エドワード。エドワード・エルリックだ。』

 

『エドワード君、君の弟の捜索にも、全力で協力させてもらうよ。』

 

頼もしい表情で、アスベルはエドに約束をした

 

『ふぅん、なんでまた急に』

 

『僕にも弟が居るんだけど、幼い時に俺に力が無かったせいで、どこか遠くの養子にされたんだ』

 

エドが、その話を聞いて、あまり気持ちに良い話では無かった

 

『ふぅん、ひっでえ話』

 

『だから、エドワード君のように、離れ離れになっている兄弟っていうのは、見逃せなくてさ。』

 

その言葉で、エドはアスベルに心を開く

 

『おう!んじゃよろしくな』

 

そう言って、拳同士をぶつけ、誓いのようなポーズをした

 

それを見たエステルが、くすりと笑う

 

『良かったですね。師匠とアスベルが、すぐに仲良くなってくれて』

 

アスベルが、王女の言葉を聞いて少し照れくさくなった。

 

『ところで、エドワード君の弟の特徴は?』

 

『エドで良いよ、んでっと……アルの特徴ねぇ……』

 

『でかい鎧、2メートル超え。だっけか?』

 

アスベルとエドワードの話にユーリが割り込み、

 

アスベルは不愉快を表に出した

 

『ユーリ・ローウェルは黙っていて下さい。』

 

そして再びエドワードの方に目を向ける

 

『で、弟さんの特徴は?』

 

『ああ、2メートルを超えた鎧を着ている』

 

アスベルは固まった

 

ソフィも、固まった

 

『えっと……それは確かな情報なのでしょうか?』

 

『これ以上目立つ情報は無いと思うけどね。で?捜索してくれんのか?』

 

アスベルは、しばらく考えたが

 

『……はい。出来る限りの事はさせてもらうつもりです。』

 

と、承諾した

 

だが、ソフィは驚く言葉を言った

 

『でかい鎧……。見た事がある』

 

『!!』

 

その言葉を、エドは聞き逃さなかった

 

『本当か!!えっと…』

 

『ソフィ。アスベルはそう言っている…』

 

『ああ…ソフィ!本当にアルを見たのか!?』

 

ソフィは頭を傾げて

 

『アル……か分からないけど、ここに来るまで途中、王都に向かって走る鎧を見た』

 

『いつだ?いつ見たんだ?』

 

『………昨日の夜の2時』

 

今の時間と、12時間も時間が経っている

 

もはや、行動範囲は広すぎて分からないが

 

『……その国ん中に、アルが居るかもしんねぇんだな。』

 

『エドワード君、僕は一度国に戻り、エドワード君の弟を手配しよう。もしかしたら情報を得る事が出来るはずだ』

 

『いや、俺が直々に行く』

 

エドがそう言うと、アスベルはそれを止めた

 

『無駄だ!ガルバンゾ国の王都は君が想像している以上に巨大だ。君一人では……』

 

『アンタは今、その王都の中に入れねぇんだろ?それにエステルも、今入ったら危険だろ?ユーリは指名手配犯、じゃぁ俺が行くしか無いじゃねえかよ。』

 

部屋に居る全員が、ぐぅの音も出なかった

 

『人もどうせ集まんねぇんだから、俺一人でも十分だ。じゃぁ、行ってくる!』

 

『あ!師匠!!』

 

エステルが呼びとめたが、もう遅かった。

 

弟が見つかる、という事は良い事だ。

 

だが、エステルは、ある事に気が付いてしまったのだ。

 

エドワードは、短期契約員

 

『……師匠は、もうこのギルドから出ていかれてしまうのでしょうか…』

 

そう、弟が見つかったら、このギルドから出ていく

 

そういう、契約だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜バンエルティア号〜

 

『アンジュ!ちょっと俺から依頼を入れても良いか!?』

 

その唐突さに、アンジュは少し驚いてしまう

 

『あら…?珍しいわね。エドワード君から依頼を入れてくるなんて。』

 

『ああ、弟の所在地が分かったんだ。ここで諦めきれてたまるか!』

 

弟の居る可能性のある、ガルバンゾ王国にエドは、期待を膨らませていた

 

傍に座っていたカノンノが、その話を聞く

 

『へぇ…。弟の居る可能性のある場所が、見つかったんだね。』

 

笑顔でそう言っていたが、カノンノは少し、複雑な気持ちだった。

 

『ああ…!これで見つかったら、後はこの世界からの脱出だ!』

 

そうだ、エドワードは短期契約だ。

 

つまり、弟が見つかってしまえば……

 

『弟さんが見つかったら、もうこのギルドから出ていくの?』

 

アンジュが、単刀直入に言った。

 

その言葉に、エドは一瞬迷ったが、

 

それは、たった数秒だけだった。

 

『…まぁ、そういう契約だしな。』

 

そう、あっさりと答えたのだ。

 

『…………』

 

カノンノが、黙り込んでしまった

 

『そうなの、寂しくなるわね』

 

『まぁ、俺が居なくたってやっていけるだろ。騎士団だって王女だって抑え込んじまうこのギルドならよ。』

 

そう、ご機嫌に語った。

 

『じゃぁ、同行人はどうするかしら?』

 

『あ?そんな奴要らねえよ。俺一人で十分だ。』

 

『それは駄目よ。少なくとも移動中、魔物とかに襲われれば、一人では太刀打ちはできないわよ』

 

それを聞いて、エドは考える。

 

確かに、一匹二匹まではなんとかなりそうでも、

 

前みたいに、何十匹も仲間を連れてこられては、一人では太刀打ちできないだろう。

 

『カノンノちゃん。貴方はどうかしら?』

 

いきなりアンジュに指名されたカノンノは、ビクリと驚く反応を見せ、

 

その後、少しだけ暗い表情で、部屋へと戻って行った

 

『いえ…、私はちょっと部屋で休みます…。』

 

そう言って、笑顔を見せて部屋へと戻って行った。

 

『どうしたんだ?あいつ』

 

と、エドは少しだけ心配したが、それはアルを見つけられるという期待に、押しつぶされた。

 

『うーん…じゃぁ、とりあえず募集しておくわね。』

 

エドは、その”募集”というのが嫌でしょうがない。

 

確実に、”指名”の方が早く済むからだ。

 

だが、断られては、また無駄な時間を過ごすだけ。

 

ならば、選ぶのは

 

『よし!エミル!エミルとコレットかロイドを連れてこい!!』

 

『え?どうしてエミル君とコレットちゃんとロイド君?』

 

理由は、そいつらが一番断りそうにない性格だから、なのだが

 

『あいつくらいの剣士と、もう一人探す為の脚が必要だろ?ほら、とっとと呼んで来てくれ!』

 

そう言って、アンジュに命令するように言った。

 

『ふふ…分かった分かった』

 

アンジュはそう言って、エミルとマルタの部屋とコレットとしいなの部屋の呼び出しボタンを押した。

 

そして、しばらく経てば、エミルとコレットかロイドはやってくるだろう

 

『待ってろよ、アル……!』

 

エドの眼には、兄を心配している弟の姿が見えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ガルバンゾ国 王都〜

 

『うわぁ……とても大きな都市ですね。』

 

エミルが、その大きな都市を見て、圧倒されているような目をしている

 

まるで、こんな大きな街は見た事が無い、かのような

 

『見て見て、あそこにワンちゃんがいっぱい居るよぉ。』

 

コレットは、観た事が無いのか、ペットショップのショーウィンドウを、物欲しそうに見ていた

 

ロイドは、居ない。

 

少し、過去にさかのぼるとしよう。

 

 

 

 

メンバーが決まった時、真っ先に文句を言ったのはマルタだった

 

『ちょっと!どうしてエミルとコレットと一緒に王都まで行くのよ!どういうつもり!?』

 

目を吊りあがらせ、あきらかに怒っている表情をしているマルタ

 

それもそうだろうかもしれない。愛するエミルが、別の女と共に王都へ行くのだから、

 

エドの依頼だから、エドも同行するのだが

 

『仕方ないだろ。ロイドは別の依頼でどっか行っちまってるし、大体遊びに行くわけじゃないんだしよ』

 

『だったら私を連れていきなさいよ!』

 

『やだね』

 

エドは、マルタの要求をあっさり拒否した。

 

理由は簡単、目に見えているからだ。

 

王都なんかにエミルと共にこいつを連れていけば、

 

――ねぇねぇエミルゥ!次はあそこに行ってみようよ!

 

――うわぁ〜可愛いぃ〜。ねぇエミルエミルゥ、あれ買ってもいいでしょ?

 

――はいエミル!おそろいのペンダント。これでおそろいだね!

 

――エドー!記念に私とエミルの写真撮ってよー!勿論、あの城を全部入れてね!

 

このように、アルを探す事なんか一切しないような事が。

 

つまり、変わらないどころか邪魔なのだ。こいつを連れていく事が

 

『ねぇエミル!エミルだって私と王都に行きたいわよね!?』

 

その言葉に、エミルは苦笑いをするしかできなかった。

 

『だぁかぁらぁああ!遊びに行くんじゃねえっつってんだろうが!!ピーピー文句を言うな!!』

 

『だからって、エミルが別の女と一緒に王都へ行くなんて嫌!私も連れていきなさい!!』

 

『遊びに行くんじゃねぇから関係無えだろうがぁ!!我がまま言うなぁ!!』

 

エドとマルタのメンチがぶつかる

 

マルタは涙目になり、大声で叫んだ

 

『連れてけ!連れてけ!連れてけ!連れてけ!連れてけ!連れてけ!連れてけ!連れてけ!連れてけ!連れてけ!連れてけ!連れてけ!連れてけ!連れてけ!連れてけ!連れてけ!連れてけ!連れてけ!連れてけぇぇぇえええええええ!!!』

 

『断る!断る!断る!断る!断る!断る!断る!断る!断る!断る!断る!断る!断る!断る!断る!断る!断る!断る!断る!断る!断る!断る!断る!断る!断る!断る!断る!断るぅぅうううううう!!!』

 

言葉の戦争がはじまり、そして

 

アンジュがマルタに依頼を持ちかけ、それで終了した。

 

トボトボと落ち込んだ表情で頭を下げたまま、アンジュに連れていかれるマルタは、少し可哀想な気もした。

 

 

 

 

 

『分かってるな、遊びで来たんじゃないんだぞ。』

 

エドは、コレットとエミルにそう告げた

 

『はい。分かっています。まずは聞き込みから始めた方が良いでしょう。……ここで大声を上げて探すと言うのは、さすがにまずいですし……。』

 

大きな声を出すのが苦手なエミルは、そこで言葉を小さくしてしまった。

 

『コレットも、分かってるよな?』

 

『ねぇねぇ、このワンちゃん、どんな名前付けたら良いかなぁ?』

 

こいつを選んだ事は、何か間違っていただろうか

 

そんな気がして、たまらなかった。

 

『話聞けぇ!俺たちは弟を探しにここまで来てんだろうが!』

 

『ご……ごめんなさい…』

 

急にコレットは落ち込み、しょんぼりとしてしまった

 

『エドワードさん、そんなに言わなくても……』

 

さすがに言いすぎたか、そう気がして、少し申し訳なくなった

 

『ああはいはい。悪かった悪かった。』

 

だが、謝罪は適当だった。

 

 

 

 

〜ガルバンゾ国 王都 西〜

 

『お譲さん…。ここで会えたのも運命かもしれません。ちょっとあっちで俺と一緒に飲み飲みしなぁい?なんて!』

 

チャラけた、赤毛の長髪の男が、橋の上に立っている女性を口説いていた。

 

口説かれている女性は、少し困ったような笑顔になっている

 

その赤毛の横を、もう一人の赤毛の長髪の男と、

 

眼鏡をかけた茶髪の男性、そして茶髪の女性が通りすがった。

 

『おやおや、こんな所でこのような光景は、なかなか新選じゃないですか。』

 

眼鏡の長髪の男性が、皮肉るように、パーティの仲間にそう言った

 

『新鮮?どっかでも良く見る光景だろうよ』

 

『まぁ、関係の無い事でしたら』

 

眼鏡をかけた男は、ある光景を見て立ち止まる

 

『おやおや、これはまた新鮮な光景ですね』

 

目の前には、サレが軍を率いて前進している。

 

サレが、あの城の方へと向かって、歩き続けていた

 

『あいつ……サレって奴じゃねえのか?』

 

『所々、星晶を奪っている奴ね。』

 

赤毛の少年は、そのサレ率いる軍へと歩み寄ったが、

 

茶髪の長髪の少女により、それは止められた

 

『なんだよ離せよ!あいつはブッ飛ばさねえと気が済まねえ!』

 

『冷静になさいなさいルーク。今暴れては、こちらが困るわ』

 

少女のその言葉に、まだ反発しようとしたが、

 

眼鏡の茶髪の男性に、口を手で覆い隠され、言葉が出せなくなった

 

『んごー!!んごー!!』

 

『まぁお気持ちはわからない事もありませんが、ここは大人しくしてもらいませんと、ね?』

 

眼鏡の男性が横を向いた時、赤いマントを来た小さい少年が、中年の女性に何かと一生懸命説明していた

 

誰かを探しているように見えるその姿を見て、ジェイドは静かに微笑む

 

『そう、今は大人しく。ね』

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〜ガルバンゾ国 王都〜

 

『あの、すみません。とても大きな鎧が、この辺でみませんでしたか?』

 

『いやぁ…悪いけど見てないねぇ。そんなに大きいなら、すぐに分かると思うんだけど』

 

『そうですか…いやあの…お時間かけてすみません……』

 

弱々しいような声で。エミルは謝罪しながら移動した。

 

男は手を振って、そんなに謝罪しなくても…とのような表情をしていた。

 

『はぁ…やっぱり情報は無しか。これで12人目だなぁ…』

 

エドワードさん、怒るかなぁと不安な様子を隠せないでいるエミルは、

 

とぼとぼと悲しい背中を見せながら、移動していた。

 

その負の様子から、おばあさんから恵みのお金を渡されそうになったが、エミルは遠慮して逃げた。

 

『はぁ…この様子じゃ、誰も見て居ないのかもしれないな……』

 

エドワードさんかコレットさんは、どこか情報を手に入れただろうか

 

だが、自分でもこの様子なのに、多分見つかっていないだろう。

 

道端にあったベンチで少し一休みして、溜息を吐いた

 

『本当にこの都市に来ているのかなぁ…。いやもう出ていっているとしても、情報くらいは……』

 

一人悩むエミルは、このままではまた弟さんがどこか遠くに行っているのかもしれない。

 

顔も見た事の無い人をこんなに心配するのは、初めてだった。

 

友達のエドとの弟だからか、余計に心配になる

 

そう落ち込んでいる所、通路の東向こうから、どこからか何かが追ってくる

 

『ん?』

 

良く見ると、それは四足歩行で、毛がフサフサの白と茶色のような動物だ。

 

それが、こっちに向かってきている。

 

多分通り過ぎるだろう。とそう思っていたが、

 

その動物は、明らかにこのベンチに突っ込むように来ている

 

『ええ…?ええ!?』

 

急にエミルは焦りだし、そのベンチから逃げだそうとしたが、遅かった。

 

犬はエミルに向かって飛び込み、ダイブするようにエミルと激突した

 

『ぎゃぁぁあああああああああああ!!!』

 

犬に押しつぶされたエミルは、そのまま動かなくなった。

 

犬は、エミルの頭を嗅ぎ、嗅ぎ飽きたら、今度は首筋を舐める

 

それが、くすぐったくなって、エミルはピクピク反応する

 

『はは……あははははは』

 

あまりのくすぐりに、ついに声に出して笑ってしまった。

 

犬は横に移動し、その瞬間をエミルは見逃さず、すぐに起き上がるように犬とは反対方向に移動した

 

『な…何かな?』

 

しばらく犬との睨めっこが行われる

 

犬は、睨めっこに飽きたら、エミルに近づき、甘えるように顔をこすりつけてきた

 

『えっと?あの……?』

 

その光景にエミルは少し混乱したが、

 

その後、コレットが追いかけて来たようにこちらまで来た

 

『あ、エミル!そのワンちゃん…』

 

『あ、コレット。なんだかこの犬、僕の方まで来て……』

 

すると、コレットは犬の頭を撫でる

 

『このワンちゃん、エミルが気に入ったみたいだね』

 

正直、それでも困るが、

 

『ちゃんと飼い主に届けないと』

 

『飼い主は居ないよ?』

 

『え?』

 

『この子、ペットショップから逃げてきたんだよ。』

 

その事実に、エミルはまた驚く

 

だが、その驚きをかき消すかのように、犬はエミルの顔をぺロペロ舐める

 

『うわっちょっとっやめっ…くすぐった…』

 

そのくすぐったさに、またエミルは笑ってしまう

 

その光景を見ていたコレットは、笑顔になる

 

『エミルって、犬に好かれるんだね。』

 

正直、その言葉は少し疑った

 

今まで、犬に好かれた覚えは、余りないから、良く分からないのだが

 

『ねぇねぇ、このワンちゃんの名前は何にする?』

 

『え?』

 

『エミルに懐いているワンちゃんだから、きっとエミルが名前を考えてくれたら、嬉しいと思うな』

 

満面の笑みでそう言って、エミルはまた複雑になる

 

というよりも

 

『これ、ペットショップの商品でしょ?勝手に名前つけちゃ駄目だよ。』

 

『あ、そっか。』

 

エミルは、犬の頭を撫でながらコレットにまた言葉を出す

 

『ところで、エドワードさんの弟について、何か分かった?』

 

コレットは、んーと声を出して、考える仕草をする

 

『まだ分かんない。ペットショップの人も見た事が無いって言ってたから。』

 

『他の人は?』

 

『まだ聞いてない』

 

つまり、コレットが尋ねた人は一人と言う事だ

 

正直、コレットに少し期待した自分が、間抜けだったかもしれない。とエミルは考えた

 

また、そのエミルとコレットの近くで、一人の赤毛の男が、その様子を見ていた

 

『……ほう?何をしているのかな?コレットちゃん』

 

 

 

 

 

〜ガルバンゾ国 王都 北〜

 

『すいません、2メートルくらいの大きな鎧の奴なんだけど』

 

『見ねえな。そんな奴が居たら、とっくにぶっ飛ばして見せものにしているかもな』

 

冗談交じりに返されたその答えは、決して気持ちの良い者では無かった。

 

しかめた面をして、男を睨んだが、男はさっさとどこかへ去って行った。

 

『…ったく、本当にこの王都に向かってったのかぁ?』

 

今さらながら、ソフィの言葉に疑問を感じた。

 

嘘をつくような奴では無いのだが、ここまで多くの人が”見ていない”と言ってくると、

 

そのような答えに、また疑問を感じてしまう。

 

だが、聞き込みを止めるわけにはいかない。

 

『すみません、ここで2メートルくらいの鎧を見ませんでしたか?』

 

『いやぁ、悪いけど見てないね』

 

エドが聞き込みをしているすぐ近くに、行進している団体が居た。。

 

エドは、その行進する足音に気付き、後ろを振り向く

 

『なんだ?何か祭りか?』

 

その行進している奴を振り向くと、そこにどこかで見たような顔を見た

 

『ん?』

 

エドが見つめていると、その見た事のあるような顔は、エドに気が付いた。

 

そして、そいつは不気味な笑いをした

 

『あっ!』

 

エドは、その気にくわない笑顔を思いだす。

 

そうだ、昨日俺達の物資を武力で横取りしようとしていた奴らだ。

 

結構弱かったけど

 

『おお、そこに居るのは私の錬金術師さんじゃないですか?』

 

『誰がいつ俺がお前の物になったってんだ』

 

サレは、クックックと笑い、エドに近づく

 

『いやいや、そうだったかな?』

 

『そうだよ。俺はギルドの人間だ。お前の物じゃぁ無い。』

 

払いのけるように、エドはサレにそう言った。

 

だが、サレは

 

『まぁ、ここで錬金術師さんと争っても、勝ち目は無い事は存じて居ます故、今、勧誘はしませんけどね』

 

結構話が分かる野郎みてぇだな。とエドは思ったが、

 

それ以上に、何か裏があるかのように思えた

 

『話が分かってんなら、今俺の邪魔はすんなよ。んじゃ』

 

そう言って去ろうとした瞬間、背中に何かが刺さった

 

『んがっ!』

 

急に視界が悪くなる、

 

それで瞬時に理解した。背中に刺さったのは、

 

『少し、私達に協力してもらいたいのだよ。安心しろ、退屈はさせん』

 

仰向けになった時、サレの笑顔が見える

 

背中に刺さっていた物が取れてしまっていた。そうだ、これは

 

『起きている時には、もう目的地だ』

 

睡眠薬が塗られている、吹き矢だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ガルバンゾ国 王都〜

 

『うわっ!』

 

また犬は、どこかへ向かうように走りだした

 

『ワンちゃん!ちょっと待って!』

 

コレットが、また慌てて追いかけだす。

 

だが、犬は四足歩行だ。二足歩行の人間が追いつくには、少々骨が折れる

 

しばらく走っても、犬は止まる気配が無い

 

『どうしよう…もし見失ったら……』

 

ペットショップの店員は、きっと困ってしまうのでは。と思う

 

そうなれば、夜どおしにその犬を探す必要がある。

 

そのような事を考えているうちに、犬は急に停止した

 

『うわっ!!』

 

その唐突さに、エミルの脚が不条理を起こし、その場でこけてしまった

 

犬は、まだ一向に動かない

 

『エミル君…大丈夫?』

 

コレットが、倒れたエミルの方を心配する。

 

だが、犬はある一点の方向を見つめていた

 

『なんだ……?』

 

エミルが起き上がると、そこには行進があった

 

その行進の先頭に、サレが歩いていた

 

『サレ……?どうしてガルバンゾ国の王都に?』

 

エミルが疑問を持っていると、

 

『もしかして、エステルを狙っているとか…。そんな可能性もあるよね。』

 

『うん……でも、多分違うかもしれない』

 

もしかしたら、エドワードさんを捕まえようとしているかもしれない。

 

サレは、エドワードさんを気に入っていて、自分の物にしたいと考えていたからだ。

 

そう思いだした時、サレの後ろの兵隊が、大きな鎧を引きずっていた。

 

その鎧は、2メートルはあり、肩幅の大きい大男が着るような鎧だった

 

『大きな鎧……』

 

それは、エドワードの弟が来ていた鎧なのだろうか、

 

そして、その後ろの荷車の扉に、何か見覚えのある赤い布があった

 

『あれって、エドの布じゃないかな…?』

 

多分、もうエドは捕まったのだろう。

 

錬金術でこんな荷車は出られるはずなのだが、おそらく気絶しているのだろう。いつまで経っても荷車から出ようとしなかった。

 

『付いて行こう』

 

エミルはそう言って、ある程度サレから離れて。

 

尾行するように、離れながら付いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

だが、それは途中で断たれる。

 

サレ軍は、城の兵士を通じて、ガルバンゾ国の城へと招待され、中に入ってしまった

 

『エド…!』

 

エミルは、ここまでかと、悔しい顔をする

 

だが、しょうがない。

 

ここからは、他の手を考えていた。

 

城から出てきた所を、エドと一緒に逃げるか、

 

エステルに報告するか

 

アスベルに報告するか………

 

いや、ほとんど人任せじゃないか。

 

そう考えている時、後ろから息づかいの荒い何かを感じた。

 

『ワンちゃん…?』

 

振り向くと、そこには先程の犬が座っていた。

 

犬は、そのままゆっくりと、付いて来いと言っているかのように、エミル達を誘った

 

『なんだろう…?』

 

付いて行くと、そこには

 

城へと続いているかのような、大きな配管工があった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ガルバンゾ城 王の間〜

 

『ウリズン王国の使いの者が、国王直々に話があると申しておりますが。』

 

金髪の騎士は、国王に忠誠の証を見せ、城に来た客の情報を告げた。

 

国王は、その報告を耳に通した後、命令を下した

 

『通せ』

 

その一言で、廊下からこの王の間へと続く扉が、複数の兵士によって開かれた。

 

開かれた扉の向こうから、この場に居る兵士とは比べ物にならないような多くの兵が入ろうとしている。

 

『待て、王の間に入る事を許されるのは、使いの者だけだ』

 

『ならば、使いの者は数人居るのでね。それらの者は通させてもらうよ。』

 

『駄目だ。一人しか通せない』

 

その言葉に、サレは舌打ちをした

 

『分かった。しかし、まずはこの大きな物資を部下に運ばせてからでも良いんじゃないか?』

 

金髪の兵士は、王の代弁をするように答えた

 

『その物資は、我々がこの場へと運びだすとしよう。だから単独しか入場出来ないのは、理解の上で承知願います。』

 

『随分、親切な兵士共々だ』

 

だがサレは承知し、物資はガルバンゾ国の兵士達が、運び出すこととなった。

 

そして物資が完全に王の間へと入った所、サレ以外の部下は王の間から出ていかれ、

 

そして、扉が閉められた

 

『敬礼!』

 

金髪の騎士が先導を取って、王の局座に座る国王に向かい、一斉に敬礼をする

 

それがもう当然のようになり、国王はサレの方に目を向ける

 

『用件は何だ?ウリズン王国の者よ』

 

『ええ。ガルバンゾ国に対しても、私の国に対しても、とても良き物を届けに参りました。』

 

サレの笑顔は、より一層不気味だ。

 

その敬語が、何か裏があると。金髪の騎士は見抜いた

 

『ほう、それはどのような物資なのだ。もしく、その物資で我に何を望む?』

 

『一片に二つの質問をされては、こちらも困った物ですよ』

 

そう言って、まずサレは荷車の方に向かった。

 

荷車の扉が開かれる、中に居た少年が、光で目を覚ます

 

『んあ……?おい、どこだよここ』

 

王の顔が、しかめる

 

『そのような小さき者に、一体何の価値が存在すると?』

 

小さいという言葉を聞いて、エドは国王に向かって一瞥する

 

『おいおっさん!!誰が小さいだこらぁぁあああ!!!』

 

その大声に気付いた兵士多数は、エドに向かって太刀を抜き、刃をエドへと向けた

 

その光景を見たエドは、さすがにタダごとじゃ無いと感じたようだ

 

『国王の前だぞ!失礼な言動は許さん!』

 

『待て』

 

国王は、特に気にしていないかのようにエドの方へと向いている

 

多くの兵士は、まだ剣をエドに向けたままだが

 

『ウリズン王国の者、もう一度問う。このような少年が、一体何の価値があると言うのだ?』

 

その問いに、サレはまた笑う

 

エドは、その笑いに気味の悪さを感じた

 

『ええ。この少年はとても腕の立つ、錬金術師と申しまして』

 

『錬金術?ふん、そのような古い術式に興味を持つと思うか?』

 

『国王が存じているあのような錬金術ではございません。これは最新式の錬金術でございます。』

 

エドは、なにか良からぬ事を話しているな。と察する

 

『ならば、見せてもらおうか。その錬金術とやらを』

 

『喜んで』

 

勝手に話が進んでいるのが、エドは気にくわなかったし、

 

サレの言った勝手な言葉にも、苛立ちを感じた

 

『おいおい、勝手に話進んでっけど、俺は今、そんな暇は無いんでね。ちょっとここで帰してくれねえかい?』

 

その言葉に、また金髪の剣士が険しい表情になる

 

『それは……この状況を知っての上ですか?』

 

まぁ、その通りだ。とエドは言いそうになったが、

 

とりあえず、この言葉は隠した方が都合が良いだろうとのことで、隠しておくことにした。

 

国王は、ふっと少し笑っていた。

 

『そなた、名前は?』

 

国王は、エドに名前を問いた。

 

だがエドは、何も感じないかのように、まるで国王と話しているのでは無いかのような態度を取った。

 

『俺の名前はエドワード・エルリック。錬金術師かどうかは、保証しないぜ』

 

サレに意地悪をするように、わざとそのような自己紹介をした。

 

案の定、サレは少しだけ険しい表情をした

 

『錬金術師かどうかは、私が決める。』

 

王様はそう言って、手を少しだけ上げる。

 

その瞬間、兵士がエドの方へと近づいて来る

 

『……なんのつもりだ?』

 

『確認だ、少々強引なやり方だがね。』

 

エドは、国王の表情を見て納得する

 

『なるほどね、やらねえと殺すってか。本当に横暴だ』

 

『殺しはしない。大切な人民、命までは取らない。だが、少しだけ興味を持っただけだ。』

 

王様は少しだけ楽しそうな顔をしていた。

 

その顔は、気に入らなかった

 

『ああ、だったら見せてやるよ。』

 

エドは、手をパン!と叩き、地に手を乗せる。

 

瞬間、地が発光する

 

『ノーモーションで、魔法を…?』

 

金髪の剣士が疑問を感じる、

 

だが、さらに疑問を感じたのは、そのデタラメな出来事だった。

 

地中から、巨大な人が現れたのだ。

 

大理石で出来た、大きな人が。

 

光が止んだ時、それは巨大な国王が座っているのが見えた

 

『でけぇ……』

 

多くの兵士が、その大きさに圧倒されている

 

その光景を見たサレが、また不気味に、満面の笑みで笑う

 

『どうでしょうか王様?この者の錬金術さえ手に入れば、我々は、星晶をさらに手に入れる事が可能になるのは確実でしょう?』

 

『ほう。確かに興味深い。』

 

国王は、エドの方をマジマジと見ている

 

『これを機に、我がウリズン王国とガルバンゾ国、二国で同盟を結びませんか?』

 

『ガルバンゾ国?』

 

エドは、そのガルバンゾ国という言葉に、反応する。

 

同盟という言葉で、国王の表情が変わる

 

『同盟…?』

 

『ええ、まぁ簡単に言えば。私達が手に入れた星晶を山分けするという、簡単な同盟ですが、』

 

金髪の剣士は、その同盟に、どこか不満を感じた。

 

ウリズン王国は、このガルバンゾ国よりも星晶に対して貪欲であるからだ。

 

何か、絶対に裏が存在する

 

『あ、そうそう。まだもう一つ、プレゼントがあるのですよ』

 

サレが、また口調を変えてもう一つの荷車の方へと脚を歩ませた。

 

その荷車は、大きな布を被せただけの簡単な作りだった

 

『それは何だ?』

 

『まぁこれは、我が国の最大の科学ですよ』

 

そう言って布を剥がすと、そこには大きな鎧のような、全身機械鎧のような人形があった

 

『これは?』

 

『鎧の形をモチーフにした、星晶に反応して行動を起こす、ヒトガタのロボットです。』

 

その姿は、どう見ても鎧

 

『ここまで連れてくるのには大変でしたよ。ウリズン王国からここまで、まる一日使い切りましたからね。』

 

昨日、そういえばこいつらには森の中で会った

 

『重いし、でかいし、目立ちますから、賊に襲われたり、魔物に狙われたりもしましたから』

 

ここに来るまで途中、王都に向かって走る鎧を見た

 

その言葉を思い出した

 

『つー事は……』

 

多分、ソフィの言ってた、大きな鎧を見たと言うのはこれの事だろう。

 

どう見てもアルではない、鎧のデザインが大幅に違うのだからな。

 

『はぁ―――――……』

 

もうやってらんねぇ。

 

今日一日は、本当に何の意味が無い日だった。

 

根本的から間違っている依頼を受けたり、

 

変な宗教の野郎には、重要物を持っていかれるし、

 

挙句の果てには、アルの情報も間違ってた

 

エドは、ついにその場に座り込んでしまった

 

『にしても錬金術とは。今はこのようになるまで進化していたとはな。』

 

国王の楽しそうな顔は、突き進んでいるかのように増していった

 

エドは、暗い表情が増した

 

『エドワードよ。錬金術を私の国に伝える事を願いできるか?』

 

国王は、エドにそう言った。

 

その国王の顔は、興味しんしんの顔だった。

 

そうだ、ガルバンゾ国ならば

 

『…やっぱり、あんたとエステルは似てるんだな』

 

エステルという言葉を聞いた金髪の剣士は、表情を一変させた

 

『エステリーゼ様を知っておられるのか!?』

 

『としたら?』

 

剣士が、興奮を抑えながらエドの元へと歩み寄る

 

『エステリーゼ様はどこに居る?場所を教えてはくれないか?』

 

『さぁ、どうだかね。もう逃げちまってるかもよ』

 

エドは、嘘を言って挑発した

 

『だが、それでも情報は欲しい。ついでにユーリ・ローウェルもそこに居るはずだ。』

 

『さぁ?そこまでは言えねぇなぁ?』

 

エドは調子に乗るようにそう言ったが、

 

『フレン、今はエステリーゼの話はしておらん』

 

『ですが!王女誘拐という事件に対しては大きな……』

 

『今は、ウリズン王国の者と、エドワード君の錬金術の話をしている』

 

フレン、という名前を聞いて、

 

エドは再び、金髪の剣士に目を向ける。

 

こいつが、エステルの言ってた。

 

本当にこんな頭堅そうな奴が、分かってくれるのか分からなかったが

 

おそらく、エステルを一番心配している者であるだろう。

 

だが、それに比べて国王はどうだ。

 

『自分の国の王女ほったらかして、錬金術の話…ねぇ』

 

あきれて、物も言えなかった

 

だが、サレは上乗せするように語りかけてきた

 

『それほど、錬金術の話が重要と言う事だ。錬金術師君?』

 

その言葉は、エドの耳には入らなかったようだ。

 

『そんなに、星晶が大事かねえ?』

 

『勿論さ。星晶が多い土地は発せられるマナによって豊かな自然に恵まれる。エネルギー資源としても利用できる。とにかく、発展のためには、この星晶が必要なのさ。それに錬金術が加われば、それは…どうなる?』

 

サレは、大きく手を広げ、神に向かって話しているかのように、大声を天井に向けた

 

『俺達王族達は、神にも近い場所へとさらに辿り着く事が可能になる!さらに多くの地を牛耳り、星晶をさらに狩りだす事ができるのだよ!!』

 

それが、自分の名言を発見したかのように、大きく笑っている。

 

その笑いは、何にも感じない。とても馬鹿馬鹿しかった

 

『まぁ、言いたい事は良く分かったよ。』

 

そう言ってエドは、真中に作った大きな石像の真ん中に立つ

 

そして、石像の平らな部分にさらに錬成した、それは扉だった

 

エドは、その扉に手をかけて

 

『でも面倒臭いし、どうでも良いから、俺はパスな。じゃ』

 

そう言って、扉を開けて、その下へと続く穴へと落ちていった。

 

その唐突さに、多くの者は呆然としたが、

 

最初に声を出したのは、フレンだった

 

『錬金術師が逃亡したぞ。追え!!』

 

そう命令した後、兵士はエドが落ちた穴の扉へ向かい、その扉を開けたが

 

『フ…フレン隊長……!』

 

『どうしたっ。  ……!!』

 

扉の先は、ただ壁があっただけだった

 

 

 

 

 

 

 

〜ガルバンゾ城 地下〜

 

『エミル君、まだ鍵は開かない?』

 

犬が教えてくれた隠し通路に通じていたのは、

 

運が良いのか悪いのか、昔の脱走囚が作った抜け道で、辿り着いた先は地下牢だった

 

『うん、まだもう少しかかるかもしれない』

 

運悪く、その地下牢には誰もいなかったのだが、

 

扉が、完全に鍵が掛っているのだ。

 

しかも、鍵穴式の穴

 

ロックする事で、棒が挟まったままになり、いつまで経っても動かせない

 

『もう少し……もう少し……』

 

幸い、偶然持っていたカミソリで、その鍵を切断する事はできそうだったが、

 

それには、かなりの時間が必要だ。

 

『もう少し………もう少』

 

ガァァアン!!

 

と大きな音と共に、天井が割れ、砂埃が舞った

 

『うあぁああ!!』

 

エミルがとっさに叫んだ所、コレットは砂煙の中の人影を見つける

 

『……エドワード!』

 

その言葉を聞いたエミルは、とっさに声を出した

 

『エドワードさん!!』

 

目的の人物に出会えた事に、エミルは安心感を覚えた。

 

エドは、高い所から落ちてきたのか、頭を打ったようで、

 

『痛てててて……』と頭を抑えている

 

『なんだ?お前ら捕まってたのか?』

 

『いえ……そうじゃなくて……』

 

エミルは、牢屋の隅に存在する少しだけ大きな穴を見た。

 

その穴を見て、エドはその穴からエミル達は来たと分かった

 

『よっしゃ…!でかしたぜ』

 

『でも、この扉は鍵が掛っていて…。エドワードさんが来れるかどうかは……』

 

エドはパン!と手を叩き、扉に手をかけた。

 

発光した扉は、何も起こらず、変形して居ないかと思えば、

 

エドは扉に手をかけ、あっさりと扉を開けた

 

『エドワード…錬金術って鍵も開ける事ができるんだぁ。』

 

コレットが、輝く目でエドを見る

 

『すごく格好良いよ…!』

 

尊敬のまなざしで見ているそのコレットに、エドは調子に乗って

 

『へっ!錬金術にかかれば、どんな難関な鍵だろうと、ちょちょいのちょいで』

 

急に、上から降りてくる足音が聞こえる

 

『今のは!?』

 

『追ってだ。面倒になる前に逃げるぞ!』

 

エドはそう言って、大きな穴へと入って行った。

 

先頭にエドが入って行ったのだが、

 

自分たちは結構窮屈な穴だったのに対し、

 

エドはスイスイと簡単に前に進んで行った

 

『早くしろ!見つかるぞー!?』

 

多分、これも身長と身体の大きさに対する事なのだろうが、

 

身長の事を言うと、何をされるか分からない為、何も言わないでおこうと、暗黙の了解が生まれた

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ガルバンゾ城 門前〜

 

ようやく外に出れたと思って、思いっきり外に飛び出し、地に足を付けた。

 

その瞬間、エドの空に影が現れた

 

『ん?』

 

見上げると、そこには4足歩行の動物の影が

 

『うわぁああああああ!!』

 

エドの悲鳴を聞いて、急いで穴から脱出したエミルは、

 

『エドワードさん!!』

 

すぐに外に出て、エドワードを探す

 

『エドワードさん!エドワードさん!!』

 

いくら呼んでも、どこにも現れやしない。

 

そしてエミルの後ろには、あの犬が居た。

 

ずっと、僕たちを待っていたのか、そこで寝ころぶように胴体を地につけていた

 

『ねぇ、エドワードさんはどこに言ったか、分からない?』

 

エミルは、犬に向かって質問をした後、

 

ぅぅう〜〜…と、エドの唸り声が聞こえた

 

すると、犬は立ち上がり、その時にエドの所在地が確認できた

 

『あ』

 

確認と同時に、エミルは声を一言出し

 

エドは解放された瞬間、ガバっと起き上がった

 

『あ―――くそ。酷い目に会ったぜ』

 

だが、愚痴を言う暇も無く、

 

―――こっちだ!こっちで悲鳴を聞いた!

 

―――俺はこっちを探す。お前らはそっちを探してくれ!!

 

そのような声が聞こえた

 

『うわわっエドワード、どうしよう……』

 

コレットが動揺しだしたが、エドは何も悩んでおらず

 

『大丈夫だろ。こうすれば…よっと!!』

 

エドは、地に手を乗せ、錬成した

 

 

 

 

 

 

『こっちだ!』

 

一人の兵士が、自分の耳を頼りにその場所に辿り着く、

 

だが、そこにはでかい犬が一匹居るだけだった

 

『なんだ…?この犬』

 

犬は、兵士に興味を示さないかのように、その場でただ座りこんだ。

 

その様子を見て、兵士は一瞬脱力したが

 

『ええい!次はあっちだ!あっちを探せ!!』

 

と、他の方角へと、走って行った。

 

エドは、覗き穴で完全に居なくなった事を確認する

 

『居ない?』

 

『ああ』

 

そう言って、エドはさらに錬成し、分解の段階で終了し、

 

城の壁の中から、三人が現れる

 

『錬金術って、本当に便利な術だよね。』

 

エミルが、エドを少しだけ羨ましそうに見る

 

だが、エドはその言葉を皮肉る

 

『ああ、そのおかげでこの国の国王さんにまで狙われるようになっちまった』

 

『国王って…。エステルのお父さんに?』

 

『さっすが親子だぜ。目的は違えど、錬金術に興味を持つのは似ていたよ』

 

そう言って、この場所から離れようとした時、三人の後ろから声が響いた

 

『そうだな、便利な上に、厄介な能力だ』

 

振り向くと、騎士団の隊長であるフレンがそこに居た。

 

『!?…どうしてここに!?』

 

『鋭いねぇ。いつから気付いてた?』

 

『錬金術と言っても、二回ほど見れば、大体後は予想が付く。何をしても無駄だ』

 

どうやら、この者は一筋縄ではいかないらしい。

 

『さぁ、エステリーゼ様の居場所を教えろ』

 

『良いのかい?俺を捕まえないで』

 

フレンは、それは当然だというような表情をする

 

『僕が優先すべき事は、エステリーゼ様の安否だ。錬金術なんて興味は無い』

 

『偉いねぇ。でもそれは………』

 

エドは、パン!と手を叩き、錬成の準備をした

 

『自分の足で探しな!!!』

 

地面を錬成し、自分たちの周りに球体を作りだした

 

その球体はいずれ三人を包み、完全に三人は中へと包まれる

 

『エドワード!真っ暗で何も見えないよ!』

 

『走るぞ』

 

唐突の命令に、エミルは聞き返す

 

『え?』

 

『はい!回れ右!!』

 

そう言われて、コレットとエミルは回れ右をした。

 

『よし、走れ――――!!!』

 

エドのその合図により、三人は走り足の向いている方向へと走った。

 

すると、球体が動いているのが分かり、

 

しばらく走ると、何か柵のような物にぶつかったのが分かった

 

『よっし!止まれ!』

 

『え?』

 

エドは分かっていた、城は高い場所に位置している

 

『エドワード、どうして止まるの?』

 

『もう、動く必要がないからさ』

 

球体が、何もしていないのに動き出す

 

『ねぇエド……?なんだか動き出してるんだけど』

 

それはそうだ。

 

『だってこの先、坂だぜ?』

 

城の周りは、柵の向こうは急な斜面だ

 

球体は、慣性の法則に従い、急な斜面を猛スピードで下って行った

 

『うわぁああああああああああああ!!!』

 

『きゃぁあああああああああああああ!!!』

 

中で三人が、しっちゃかめっちゃに動きまわり、球体の壁に頭を打ったり、腰を打ったりしている

 

その中の様子までは分からないが、球体が坂を転がるのが分かり、

 

フレンは、自分の失態に噴怒した

 

『………くっ!』

 

フレンは、すぐに門の前に居る兵士を呼び、号令をかけた

 

『錬金術師は都に向かった模様だ!すぐに探し出そう!』

 

そう言って、兵士たちは都へと下って行った。

 

 

 

 

 

 

 

〜ガルバンゾ国 王都 城下町〜

『ああああああああああああああああああああああ!!!』

 

『があああああああああああああああああああああああああ!!!!』

 

猛スピードで下っていくこの球体の中は、ほとんど地獄と言ってもよかった。

 

いつになったら止まるのだろうか、三人はずっとそればかり頭の中で願っていた

 

ガァン!!

 

どこかにぶつかったのか。その衝撃で、球体の勢いは死に、止まった

 

『はぁー……。気持ち悪ぃいい〜〜………』

 

最初に弱音を吐いたのはエドワードだった。

 

エドは、球体を錬成して、穴をあけた。

 

そこから三人は出てきて、ふらふらになりながらも歩き続ける

 

『うぅ……酷いよエドワードさん………』

 

『しょうがねえだろ。これが一番効率的な脱出方法だったんだからよ。』

 

コレットは、酔ったのか、何一つ言葉を出さなかった。

 

いや、出せなかった。口元を抑えたまま、プルプル震えていたのだ。

 

『大丈夫?コレット……』

 

エミルがコレットの背中をさすると、コレットの震えはだんだんと収まってくる。

 

その様子を見てエドは、二人に告げた

 

『よし、落ち着いたらこの街とっとと出るぞ』

 

その言葉は、エミルにとっては意外だったらしい

 

『え?弟さんはもう良いんですか?』

 

『デマだったよ。アルの情報は。ったく、今日は本当に無駄足日だぜ』

 

そう言って、前に前に進んで行く

 

『んじゃ、帰りますか!』

 

そう言って、エドは走りだす

 

『あ……!待って下さい!!』

 

エミルは、コレットをおぶりながらエドの方へ追いかける

 

『モタモタしてっと、またあの野郎が追いついてくんだよ!』

 

そう言った後、後ろに振り向くと、

 

案の定、本当に奴が居た。

 

まだ、充分に引き離せているが

 

『ホラ居た――!本っ当にしつこい野郎だな!!!』

 

エドはともかく、エミルが捕まるのは時間の問題かもしれない。

 

奴の目的は錬金術師では無く、エステルの行方である為、エミルも必然的に捕まる

 

『ったくよ!!』

 

エドは、エミルの方に向かい、そして追い抜いた

 

『エドワードさん!?』

 

エドは地を錬成させて、大きな壁を作った。

 

『!?』

 

その壁は著しく大きく、フレン達の行方を断たせた。

 

高さ的にも登る事は不可能であり

 

横から回ろうとも、60メートルは作った。

 

かなりの時間がかかるだろう

 

『行くぞ!エミル!!』

 

そうエミルに告げて、とっとと走りだした

 

しばらくは引き離せたが、そこで大きな誤算が生まれた

 

 

ドカアン!!!

 

大きな音がエド達の耳に入った。

 

どうやら、あの大きな壁が壊されたようだ

 

『嘘ぉ!?』

 

エドは驚いた声を出す。そこまで薄い壁は作っていないのだが、

 

フレンの右手が光っている。おそらく、リタの使う魔術と同じような物を使ったのだろう

 

『ちっ!気に食わねえ…』

 

魔術は、あまり良い奴であるイメージが無い為、エドはしかめっ面をした

 

でかい箒にまたがった奴、錬金術を否定する奴、エミルの自慢をして来る奴

 

等と、上げていったら切りが無い

 

『エドワード!!』

 

後ろからまた、フレン率いる騎士団がこちらに向かってくる

 

『ったく!諦めの悪い奴らだな!』

 

すると、後ろからまた魔法の光が輝く、

 

そして、火属性魔法がエド達に襲いかかる

 

『うわぁアチチ!!んの野郎!!』

 

火を使う奴は、本当に嫌な奴を思い出す

 

すると、今度は地面が光り出す

 

『え?』

 

大きな爆発が、エド達を襲った

 

『うわぁあああ!!』

 

『隊長!少しやりすぎでは……』

 

だが、その騎士の言葉も甘かった。

 

エドは、巨大な壁を作り、爆発から身を守っていた。

 

『危ね〜。危機一髪』

 

安堵の息を吐くと、また再び走りだした。

 

だが、エミルは立ち止まったままだった

 

『エミル?』

 

エドは、エミルの方を見る

 

『おいエミル!何やってんだ!早く行くぞ!』

 

すると、エミルはコレットをエドの方に投げだした

 

『うわぁっ…!何やってんだこの野郎!!』

 

エドは間一髪でコレットを受けとめた。

 

だが、エドはそれよりもエミルに気を止めていた

 

『てめぇらは先に行け』

 

『は?』

 

エミルの目は、変わっていた。

 

『俺に喧嘩売ってるあの野郎共、ぶっ潰しに行ってやんよ』

 

その目は、前に見た獲物を見る目に

 

すると、エミルは騎士団の方へと向かって走り出した

 

『オイ待て!エミル!!』

 

『!!』

 

フレンは、剣を構える。

 

そして、向かってきた太刀を、太刀で受けとめる

 

はじき返されたエミルは、バック転をして、見事に着地をした

 

『へぇ…なかなかやるなぁお前。はなぁ!!』

 

嬉しそうな悲鳴を上げて、エミルは再びフレンに太刀を振りまわす

 

だが、フレンは予測ができなかったのか、瞬時にその太刀を交わす

 

『…!!』

 

だが、その太刀は足を掠め、少量の血が出た

 

『国家権力に立て着くと言うのか…?』

 

『じゃぁ、今ここでお前ら全員殺して埋めれば、証拠は隠滅出来るって事だよな?』

 

エミルは、狂気の笑みでフレン達を見た。

 

フレン以外の全員は、その目に恐怖し、手が震えて動けない状態だった。

 

『エドワード……エミル……怖い……。』

 

コレットは、その狂気のエミルの姿に、恐怖をしている

 

その姿を見ているエドは、対策を考えている

 

『殺す、か。そこまでの覚悟があれば、僕も全力で、貴方を止めよう』

 

『やれるもんならやってみろ。しっぽ巻いて逃げんじゃねえぞ!国家の犬がよぉおおおおおお!!』

 

二人が太刀を交わろうとした瞬間、二人の間に壁が出来た

 

『!?』

 

『そこまでにしろ!エミル!!』

 

エミルは、怒りの表情でエドを見た

 

『てめぇ…!!俺の邪魔をする気なら容赦はしねえぞ!』

 

エドは、機械鎧の方の右腕で、エミルの頭を思いっきり叩いた

 

その衝撃は凄まじかったらしく、エミルは頭を押さえてもだえていた

 

『〜〜〜〜〜!!!』

 

『目ぇ覚ましたか、アホンダラ』

 

エドはエミルの目を見る。

 

涙目ではあったものの、元のエミルの顔に戻っていた。

 

『い……痛いですよエドワードさん……』

 

『自業自得だ。馬鹿たれ』

 

そう言って、エドは王都の出口へとまた再び走った。

 

コレットもようやく、歩けるようになったらしく、

 

今度からは自力で走ってもらっていた。

 

『もう少しだ!!』

 

エドはそう言って振りむいて、元の位置に頭を戻した後

 

『おかえりなさい。』

 

そこに、会いたくも無い奴が立っていた

 

『……サレ…!』

 

またエミルが狂気の目になろうとしていたが、

 

エミルは横に頭を振り、自分を抑えつけた

 

『そこ、どいてくんねぇかな?俺たちは急いでるんでね』

 

『どく?そんな事どうして俺がしなくちゃいけない?んん?』

 

サレは、ふざけているかのように、エド達に挑発した

 

『喧嘩なら、今してやんねぇぞ』

 

『できれば、そうしてもらえば助かるんだけどねぇ』

 

そう言った後、合図をしたかのように、多くの兵がエド達を囲んだ

 

『ったく。本当にうっとうしい奴らったらありゃしねぇな』

 

『言っただろう?僕は欲しい者は手に入れなくちゃ、気が済まない性質だって、ね。』

 

サレの笑顔が、また不気味になる

 

兵がエド達に刃を向け、戦闘態勢に入る

 

『止めた方が良いと思うぜ。また優秀な部下たちに逃げられて、オチなんじゃねえの?』

 

『ふん、安心しろ。そんな事をすれば首をはねると、部下たちには言った。逃げる事はまずありえない』

 

『えげつない事するねぇ』

 

そう言って、エドは右腕の機械鎧を刃物に変えた

 

『やっぱりね』

 

サレの顔は、残念そうにしているが、それは演技で

 

闘える事を、実は奴は楽しんでいた

 

『やっぱりこうなるんだねぇ。僕は悲しいよ』

 

『俺はどうしても、お前の下には就きたく無いんでね』

 

サレは、不敵の笑みを浮かべる

 

『ならば、実際に闘ってみるか?何も失う物が無い部下たちは強いぞ?ククク……はははっはは!!!』

 

サレが不気味に笑い声で叫ぶと、それをかき消すかのように、上から声がする

 

『っしゃ!その喧嘩、俺達が買ってやるぜ!』

 

『!?』

 

サレの笑顔が消えた。

 

声が聞こえた上の方を見上げると、宿屋の屋根の上から一人の赤毛の長髪の剣士が現れた

 

さらに二人、眼鏡の男と茶髪の少女が立っている

 

『っと!とと!!』

 

飛び降りた赤毛の剣士は、屋根から飛び降りてバランスを崩すも、立て直し、立ち上がった

 

『おい、あんたらは一体誰なんだ?』

 

『ああ?自己紹介なんかしている暇なんか無えよ!!』

 

もう一人、眼鏡の男が呆れるような笑顔を見せる

 

『やれやれ、それは少し失礼と言う者ではありませんか?』

 

嫌味に近いその言葉は、どこかの大佐を思い描く。

 

だが、赤毛の長髪の剣士はそんな嫌味は気にせず、前を向く

 

『失礼でもなんでも言え。今、この時が大人しくしなくてもいい時、なんだろ!?』

 

眼鏡の男は、眼鏡の位置を調整するように指で調整する

 

『まぁ、この場合はかろうじて。ですがね』

 

『なんでも良い、サレ、俺はお前をぶっ飛ばしたくてしょうがなかったぜ?』

 

『黙れ、お前には興味が無い』

 

『お前の良い分なんか、知らねえんだよ!』

 

赤毛の長髪の剣士は、サレに向かって太刀を振る。

 

それをサレは、苦い顔で受けとめる。

 

赤毛の剣士は、なかなかの腕のようだ

 

『多分、またいずれお会いする事になるかもしれません。それがいつかは分かりませんが、とりあえず今は何も言わず、行ってしまわれた方が良いのではないですか?』

 

眼鏡の男は、エドに向かってそう言った。

 

エドは、その男の言葉を真に受け

 

『よっしゃ。んじゃよろしく頼むわ』

 

と言って、手を叩き、床を錬成した。

 

『!?』

 

その錬成物は、床を大きく盛り上がらせ、目の前の兵士を物理でぶっ飛ばし、一つの大きな道が出来る

 

『んじゃ!後はよろしくなー!!』

 

とエドは、後の責任は全てあの三人に押し付け、

 

エド達三人は、そのままどこかへ去って行った。

 

『あっ畜生待て!!』

 

『てめぇの相手は俺だろうが!!』

 

『邪魔を…するなぁ!!』

 

二人は、太刀をぶつけあい、本気の殺し合いをしているかのようだった。

 

だが、眼鏡の男はそちらの方を見ておらず、部下たちの方を片付けるのに目を向けている

 

少女は、先程の地面を操る術を見て、

 

ボソリと、小さく声を出した

 

『……あの小さい子に任せても、良かったのかもしれないわね』

 

その言葉に、眼鏡の男は

 

『いやぁ、本当に惜しい事をしましたね。』

 

と、笑った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ガルバンゾ国 バンエルティア号付近〜

 

王都から必死に逃げて、ようやく、船が見える場所にまで辿り着いた

 

『エドワードさん。』

 

『ああ、やっと辿り着いた』

 

あまりにも長いように感じられた、今回の任務は、

 

またしても、空周りに終わってしまった。

 

『…………』

 

『エドワードさん?どうしましたか?』

 

『いや…。済まねえな。こんなに命かけてまでやった依頼だってのに、アルは居ねぇし、ガルバンゾ国には喧嘩売っちまうし……』

 

その言葉に、コレットは首を横に振った

 

『エドワード。大きな騒ぎを起こしてまで、空周りにだったっていう事くらい、良くあるから大丈夫だよ。』

 

それは慰めのつもりだったのか、分からないが。

 

それは確かに、その通りであった。

 

前にも、探し物を探しにある都市まで行ったら、その探し物は偽物でしたで終わったし、

 

他にも、アホ大佐のせいで、空周りに終わる事も多かった。

 

『まぁ、それもそうかな』

 

そう言って笑ったエドは、船にまで歩み寄っていくと、誰かが船の前で待ち伏せをしていた

 

『………?』

 

もっと近づいていくと、さらに顔ははっきりしていったが、

 

やはり、誰かは分からなかった

 

『おい、あんた誰…』

 

『あ、ゼロス。』

 

コレットが、笑顔でその男に声をかけた

 

『よお!コレットちゃん!!いやぁまた随分可愛くなっちゃってさぁ!』

 

ちゃらけた態度で、ゼロスはコレットに話しかけてくる

 

『おい!そのゼロスとやらが、この船に何の用だ?』

 

『んん?どうした小っこいの?その態度は俺のこの美貌に嫉妬してんのか?』

 

小っこいという言葉で、エドは眉がつり上がる

 

『だぁぁぁぁあああれが!!虫眼鏡で見なければ見えないほどのドチビか――――――!!!!』

 

そう言ってそいつに殴りかかろうとした瞬間、エミルに止められる

 

『止めて下さい!エドワードさん!!』

 

『うるせぇえええ!!今日一日だけで本当にストレスがたまってんだ!!やっぱ一発殴んねえと気が済まねえんだよぉおおおおおお!!』

 

そんなわがままを言うエドに、エミルはため息を吐いた

 

『あーあーはいはい。悪かった悪かった。おチビちゃんは身長の事を言われると切れちゃうんだなー。でも大丈夫だって。大人になったらお兄さんみたいに背が大きくなるさ。』

 

『うるせぇー!!チビっつうな!後、てめぇのようにはなりたくねぇ――――!!』

 

まるであの大佐の前のかのように、エドはゼロスに全力に反発していた

 

『ところでコレットちゃん。あの……コレットちゃんが居るって事は、あのでかメロンは…?』

 

『でかメロン?』

 

『しいなちゃんの事だよ。しいな。』

 

ゼロスがそう説明すると、デカメロンの意味は分かってはいなかったようだが、

 

『うん!ちゃんと居るよ。』

 

そう返事した。

 

すると、ゼロスのテンションが上がり、

 

『マジですかぁ!?よっしゃ――――!!俄然やる気が出て来たぜ―――!!』

 

そう言って、再びエドに向き治る

 

『よぉ!おチビちゃんとアンテナ君だっけか?今日から俺もこのギルドに入っちゃうよ!入っちゃうから、これからもよろしく頼むぜぇ。』

 

『チビチビチビチビ言うなっつってんだろうがぁああああああああああああああ!!!』

 

さすがにこれは、エミルも反発した

 

『僕の名前はエミル・キャスタニエです。ギルドに入るなら名前は覚えて下さい。』

 

『俺の名前はエドワード・エルリック!!チ…とか、とにかく身長に関するあだ名とか!名前は本名以外禁ずるからな!!』

 

ゼロスは、まるで聞いていなかったかのように答える

 

『あ―――、その他大勢君1号、2号ね――。まぁこれからお世話になるから、よろしくよろしくー。』

 

エミルは、その言葉を聞いて、落ち込み、絶望し

 

エドワードは、完全にこいつの事が大嫌いになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜???〜

 

犬が、ある路頭に迷いこみ、ある三人組と、一人のディセンダーと共に立っている場所に近づく

 

『おかえり、見事な犬っぷりね』

 

女性が皮肉るようにそう言った。

 

すると犬は、それに反発するように、姿かたちを変えていった。

 

変えて行った際、その姿は、男か女か分からない、そんな中性的な外見の人間の姿となった

 

『ったく。犬の姿ってのも嫌なんだよなぁ。食っても不味いし』

 

犬から人間に変えた者は、さらに皮肉るように言葉を出した

 

だが、次にはその中性的な人は、笑顔になる

 

『まぁ、でも良い情報が手に入ったから、この苦労もよしとするか』

 

『あら、何か良い事でも?』

 

『ああ。とっても良い事さ。』

 

女性は、少しだけ興味深そうに話を聞こうとする

 

『例えば?あの鋼の坊やの今後の行動とか?』

 

『そんな物調べたって、何の得も無い。近づけるべき相手は…あのもう一人のアンテナだ』

 

もう一人のアンテナ、それで大体予想はついたが

 

『あの子が、私達の目的に何の関係が?』

 

『大ありさ。あのアンテナ小僧が見つかったおかげで、さらに良い事が起こりそうだよ』

 

中性ていな人間は笑う。

 

面白い事を思いついたから笑う。

 

それは、とても恐ろしい事だと、ディセンダーは知っている。

 

だが、ディセンダーも笑っていた。

 

説明
よくよく見てみたら、エドってほとんどのテイルズキャラと仲悪いよね。
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鋼の錬金術師 テイルズ クロスオーバー 

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