鋼の錬金術師×テイルズオブザワールド 第24話
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〜カノンノとエドワードの部屋〜

 

朝になり、目を覚ますと、カノンノはまだ寝ていた。

 

早く起きすぎたか?とエドは思ったが、

 

時間は、お早うと言うには少し寝坊していた。

 

いつもは、起きたらどっか行っていたような気がするが

 

疲れたんだろう。そっとしておこう。

 

そう思い、エドは朝食に食堂へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

〜バンエルティア号〜

 

エドは露骨に嫌そうな顔でアンジュを睨みつけた。

 

まぁ、こんな返事はもう慣れたのか、アンジュはいつもより強気で堂々としていた。

 

エドのその嫌そうな顔は、メンチ切っているかのように、アンジュとの目の距離をじりじりと近づけていた。

 

それはまるで、ヤンキーのように

 

『上官命令です。』

 

アンジュがそう言った瞬間、エドの口が大きく開く

 

『うるせぇえんだよ!!!もうてめぇの言うことは聞かねえ!!!今度こそまともに編成しろ!!青虫女!!』

 

『エ…エドワードさん。もうちょっと言葉を抑えたほうが……』

 

エドは、勢いよくエミルの方に振り向く

 

『てめぇも疑問に思えよ!!この依頼、錬金術師が二人居るんだぞ!?この女、何か良からぬ事を考えている気配がプンプンするわ!!』

 

確かに、この編成は何かを狙っているのかもしれない。

 

昨日、あのような事があったにも関わらず、エドワードさんはともかく、マスタングさんまで

 

だが、アンジュに限ってそんな事はないと、エミルは考えていた。

 

『この依頼の場所は、霊峰アブソールという氷山なのよ。だからマスタングの力は確実に必要じゃない?』

 

『だったら俺要らねえだろうがぁ!!!』

 

『……いつもそんな我がまま言ってたけど、そんな我がままが通ったことが、今まであったかしら?』

 

アンジュのその言い分に、エドはさらにイライラした

 

『それに、精霊に会えば元の世界に戻れる可能性だって広がる事があるかもしれないわよ?』

 

『そうだぞ鋼の。これは絶好の機会ではないか。抵抗せずに従事したまえ』

 

マスタングが、アンジュ側についた。

 

しかも、偉そうな言葉で命令されたため、エドの頭の中の血管は破裂寸前であった。

 

その様子を見ていたエミルは、さらに動揺していた。

 

『知るか!!俺は行くつもりは無いね!!だったら俺は抜ける!他の奴入れてくれ!!』

 

そう言って、エドは部屋に戻ろうとした

 

『エド!そんな事……』

 

エミルが、自身が無いような表情で、エドを追いかける

 

『……今回のこの任務にエドワード君を入れたのは、それ程の信頼があると思わない?』

 

『あ?』

 

エドが、ご機嫌斜めでアンジュに振り向く

 

『だって、精霊に会うのよ?そんな仕事を簡単に振り分けられる人物で、エドワード君が居る事は素晴らしい事だと、私は思うな』

 

アンジュが笑顔でそう言ったが、

 

エドはその言葉が全部屁理屈にしか聞こえなかった。

 

その為、エドはその言葉が癪に触り、大声で叫んだ

 

『知るか!!!要するにてめぇらは雪山なんて寒い所行きたく無えだけだろうがぁ!!だったら脂肪の多そうなてめぇが行けば良いだろ!!小太り女!!』

 

『あ』

 

言ってはいけない事を言ってしまった。

 

その事に、エミルは恐怖した。

 

エドは、そのエミルの震えに疑問を抱く。

 

エミルからアンジュに視線を移すと、アンジュの目が鈍く光っていた

 

さらに表情は黒く塗りつぶされているかのように確認が出来ないが、周りにまとまりつくオーラで怒っている事が分かった。

 

机が、アンジュの握力でメキメキ言っている。ピシィ!!という割れる音さえも聞こえる

 

その様子に、マスタングも少し恐怖していた

 

『あ……アンジュ……さん?』

 

エドが、引きつった声でアンジュの名前を呼ぶ

 

『行け』

 

『え?』

 

その声は、まるで女性ではないかのように低く、恐ろしく迫力のある声だった

 

『行けって言ってるのよ……。捻り潰して味噌汁にしてやろうかこの豆粒がぁぁぁぁぁぁあああああああああああ』

 

その様子は、まるで化け物を見ているかのようだ。

 

師匠の怒りと似たオーラが、感じ取れる

 

『い……行ってきまーす!!!』

 

エドとエミルは、すぐに入り口から出て行って霊峰アブソールへと向かった。

 

マスタングも、逃げるようにエドとエミルの後ろに早歩きで進んでいった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜霊峰アブソール〜

 

『ぬぅぉぉおおおおおおお!!寒い!!寒い!!!痛い!!!』

 

エドが、地を踏み入れた瞬間、唐突な吹雪がエド達を襲った

 

歩けば雪に足を埋められそうになり、

 

必死に歩けば歩くほど、体力が奪われていく

 

疲れて眠くなったら、明らかに死んでしまうのだろう

 

『……昔から寒い所だって聞いていたけど……まさかこれほど……』

 

エミルはガチガチ震えながら両腕を押さえてじりじりと歩いていた

 

『おい……大丈夫か?』

 

『あ……はい。なんとか』

 

エドは正面を向いて嫌な顔を再びする

 

『ったく!あの小太り女!風邪ひいたらどう責任取るか楽しみだな!!』

 

『……風邪で済んだら良いけどね……』

 

そう文句を言いながらも、エドとエミルとマスタングはじりじりと前へ進んでいった。

 

エドとエミルに比べて、マスタングは前の方で平然と歩いている

 

『……なんであの野郎、あんな平気に前に進めんだ?』

 

マスタングの涼しい顔に、エドは嫌な顔をする

 

『遅いぞ二人。このまま単独行動をさせてもらってもよろしいのだぞ?』

 

『ちょ……ちょっと待ってください!』

 

マスタングのその発言に、エミルは動揺する。

 

マスタングを戦力から外せば、僕だけでも自分の命を守れる自身が無いのに

 

と思った矢先、エドは口を開く

 

『けっ!勝手にしやがれ』

 

と暴言を吐くようにマスタングに言葉をぶつけた

 

『エド、本当に良いの?マスタングさんはこの雪山では、確かに有効だよ』

 

『あんにゃろうが俺達の為に動くはずが無えからな!』

 

そう叫んだ瞬間、エミルは何かに躓き、その場で転ぶ

 

『うわぁ!』

 

エミルが転んだ場所には、綺麗にエミルの身体の形が残った

 

『おいおい、大丈夫かよ』

 

『ははは…大丈夫だよ。ちょっと足を躓いただけ……』

 

足を動かすと、躓いた物体も一緒に動いた。

 

動いたと同時に、それは雪の中から姿を現した。

 

人間のミイラだった

 

『ぎゃ嗚呼ああああああああああああああああああああ!!!!!』

 

エミルは甲高い声で叫び、エドの後ろに素早く隠れた

 

『ミ…ミ…ミミ…ミ………』

 

エミルは涙目で、その躓いたミイラに指を指す

 

『……成る程ね。こんな所に精霊が居るとしたら、そいつは心臓も氷で出来たとんでも無え野郎かもな』

 

エドがそのミイラを見つめて、このままほっといている精霊について考えた。

 

『そ…そんな怖いこと言わないでくださいよ……』

 

ここまで来た人間を、こんな簡単に殺す

 

これは、ただ話すだけでは聞けねえって事か

 

『本当に信頼されてんのかぁ?』

 

エドは、アンジュの言っていた言葉に疑問を持ち始めた。

 

ガシュ

 

『ん?』

 

また遠くから、足音が聞こえた。

 

マスタングからは別の方向からだった。

 

その足音はエミルも気づいたらしく、その音のほうに顔を向ける

 

そこには一人の人影があった

 

『誰だ?てめーら』

 

エドがそう言うと、笑い声が聞こえた。

 

偏屈で、嫌らしい事を考えていそうな

 

『お……』

 

エドは、その顔を知っていた。

 

その顔を見たとき、何か驚きと同時に嫌な顔をした

 

『どうも、お久しぶりです。エドワードさん?』

 

ジェイドが雪山を舐めているかのような軍服で笑顔でエドに近づいていた

 

『あ……。前に船に来た人だ。』

 

エミルはその人物を覚えていたらしく、ジェイドに挨拶をした

 

『…………』

 

『おやぁ?心外ですね。そのような顔をされる覚えはありませんが?』

 

ジェイドが、白々しくそう言った

 

『………変な事をして、情報を搾り取られるのは御免だからな……!!』

 

怒りと嫌な顔を混ぜたような顔で、エドはジェイドを睨みつけた

 

『そうですか。まぁ大丈夫じゃないですか?もうそれ程知りたい情報は今のところありませんし。』

 

『嘘をつけ!!なんだ!?その興味津々な顔は!!!!!』

 

エドはジェイドの笑みをツッコミながら、怒りの顔でまだ睨み付けている

 

『これから精霊に会うというのですから、誰であっても興味は湧くと思いますがねぇ。』

 

ジェイドの不気味な笑いは、エドから離れて、エド達の向かう方向へと歩いていった

 

『ところで、ライマ国の騎士団に入る準備は出来ましたか?』

 

『誰が入るか!!俺はまだアドリビドムに居るってのに!!』

 

『こちらの方が、貴方の弟さんはすぐに見つかると思いますが』

 

その言葉で、エドはまた止まってしまう。

 

そのような言葉は、どうも今は弱い。だが

 

『結構だよ。今、俺の入ってるギルドの奴らも探してもらってるはずだ。』

 

エドはそう言って、ジェイドの言葉は一瞥した。

 

そうですか。とジェイドは半ば冗談のような声でそう言った。

 

多分、また何か良からぬ事を考えている。そんな気がしてたまらなかった。

 

ジェイドは、前に歩いている青い軍服の男に目を向けた

 

『彼は?』

 

『………………』

 

エドは黙った。

 

正直、できればこの野郎と大佐とは会わせたくないと思っていた。

 

最悪×最悪が揃うのだから。

 

『ただの通りすがりの』

 

『あの人はマスタングさんと言います。僕達の仲間ですよ』

 

エミルが言い終わる前に、エドはエミルの頭を殴った

 

エミルは殴られた場所を手で押さえ、痛がった

 

『い……痛いよ……エド……』

 

『そうですか。ですがどこか、エドワードさんと何か同じ気がしますねぇ。』

 

ジェイドは、マスタングを見つめてそう呟く。

 

その呟きが気に入らなかったのか、エドは癇癪を起こす

 

『俺とあの野郎と一緒にすんなぁあ!!!!』

 

エドの叫びと共に、マスタングがこちらに振り向く

 

『どうした?そこに誰か居るのか?鋼の』

 

そう言って、マスタングはこちらに近づく。

 

そして、初めてジェイドと顔を合わせた

 

『失礼。貴方は?』

 

『私は、ライマ国の騎士団で大佐をさせてもらっています。ジェイド・カーティスと申します。』

 

着々と、二人の自己紹介が進んでいく

 

『私の名前は、アドリビドムで一般隊員をさせてもらっている、ロイ・マスタングと言う。』

 

ロイの自己紹介が終わると、ジェイドは言葉を付け加える

 

『そちらの話は聞いております。別の世界からこちらに来たとか。』

 

イズミから聞いたのだろう。そのような話をすると、ロイの顔は柔らかくなる

 

『そうですか。ならば改めて自己紹介をする必要があるな。私の名は焔の錬金術師。階位は大佐。アメストリスの軍に所属している。ロイ・マスタングと言う。』

 

その改めた自己紹介に、ジェイドは少しだけ笑顔が増した

 

『成る程、私と同じ階位だったのですか。どうですか?お気持ちは』

 

『いえ、いつも昇進するために色んな人をこき使っていますよ。』

 

『はっはっは!それは有効的だ。』

 

『私は、無駄な努力はしない主義でね。努力というものは大抵部下に行わせています。』

 

笑いあいながら話しているが、内容は結構恐ろしい物だった。

 

そのような話を堂々としている二人に、エミルはミイラの時より震えていた

 

『貴方とは仲良くなれそうですね。どうですか?この依頼、協力をしませんか?』

 

ジェイドが、マスタングにそう話を持ちかけた。

 

『依頼?依頼とはこの山に住む精霊の事ですか?』

 

『ええ。ライマ国では私一人であるために。少しだけ不安があるのですよ。』

 

そもそも、どうして一人でこんな所まで来たのだろうか。

 

エドは、そんな事が頭をよぎった。

 

だが、そんな事よりも早くして欲しいという事が頭に一杯だった。

 

せめて歩いて話してくれ。どんどん雪が積もっていく

 

『良いですよ。どうせ話を聞きに行くだけですし。』

 

『そうですか。いやぁ貴方が話の分かる人で良かった』

 

たった今、その話がとんでもない事が分かった。

 

『ちょっと待てぇ!!お前…まさかついて来るつもりか!?』

 

『ついて来るも何も、そういう約束をたった今したじゃないですか。』

 

そう言われて、エドは何故あの時反抗しなかったのかと後悔した。

 

寒い上に、吹雪の風の音で良く分からなかったからだろうか。集中が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜霊峰アブソール 精霊のふもと〜

 

エドにとって、ここまで来ることが、地獄だった

 

マスタングがエドの話をジェイドに話したり、

 

その事で、良くジェイドがエドに突っかかったり。

 

『んな仲良くなったんなら、大佐はライマ国の騎士団に行きゃあ良いんじゃねえのか?』

 

エドが皮肉るようにそう言ったが、

 

『『いやいや、別々に所属していった方が面白いことになる』』

 

と二人は同時に語り、息もピッタリにそう返してきた。

 

正直、この二人のセットにはエドはウンザリした。

 

この依頼、早く終わらねえかとばかり考えていた。猛吹雪が幾度も無く襲ってくるし。

 

二人の嫌味攻撃が、エドに集中的に襲ってくるからだ。

 

『あ…お母………さん。……』

 

さらに、エミルは次第に幻覚が見えるようになってきたらしいし。

 

ダブル大佐はともかく、エドとエミルは限界に近かった。

 

エドは精神、エミルは体力

 

『ここだ』

 

マスタングが、真っ直ぐ前を見ている

 

この平らで、綺麗に雪が敷かれている地に、精霊が居ると言うのか

 

『……誰も居ねぇじゃねえか』

 

『精霊は自身の自由で姿を現したり、消したりすることが出来ますからね。それとも視界が低ければ見えないとか』

 

『チビかぁ!?チビって言いたいのかぁああ!?クォラァ!!』

 

エドが怒涛の声をジェイドにぶつけるが、ジェイドは涼しい顔をしている。

 

『いえ?別に視界が低いと言っただけで、身長の事は言っておりませんが?』

 

『ほとんど同じ事だろうが!!その遠まわしの言い方が一番腹立つ!!!』

 

エドは大きな声でジェイドに怒りの言葉をぶつけたが、ジェイドはもうエドの方を見ていない。

 

じっと、この地の雪景色を見つめていた。

 

『………。呼びかければ、出てくるかな?』

 

『無理じゃないですか?人間が気軽に呼んで出てくるような存在では無さそうですし。もしそれで出てきたら、そいつは大したことの無い精霊って事でしょうね。』

 

『……だったらどうすんだ!!このまま待ってたら凍死しちまうぞ!!!』

 

エドが怒りの言葉をぶつけると、大佐は呆れた声を出して

 

『………しょうがないな。』

 

と呟き、ジェイドはその呟きに興味を持つ

 

『何か手があるのですね?』

 

『ああ。ちょっと荒い方法だがな』

 

ロイがそう言うと、ポケットの中から手を取り出す

 

『……なんでも良いから早くしてくれ。早く帰りてぇ……』

 

エドがブツブツ呟くと、マスタングは右手の中指と親指を重ね、狙いを定める

 

『鋼の。構えておけ』

 

『え?』

 

瞬間、大きな爆発が雪の地に起こり 熱風と爆風がエド達を襲った

 

『うぎゃぁああああああああああああああああ!!!』

 

その唐突の練成に、エドとエミルはその場で腰を下ろす

 

爆風が終わったときには、その場所に雪はほとんど無かった

 

『お……お……お前は何をしてくれてんだぁああああああああああ!!!!』

 

エドがそう叫ぶと、マスタングは横目でエドを見る

 

『構えておけと言ったはずだが?』

 

『ふざけんな!!精霊の地をこんなにしやがって!どういうつもりだ!!!』

 

エドがそう言っている最中、ジェイドは納得をしていた

 

『成る程。ただ呼んで来ないのであれば、喧嘩を売る方法で行くのですね』

 

『そういう事だ。』

 

マスタングとジェイドのその言葉に、エミルは一瞬動揺する

 

『え……?喧嘩を売るって……。え?』

 

その言葉が、まだ信じられないようで、再びマスタングに目を向ける

 

すると、目の前で氷の風の竜巻が生まれた

 

『うわ!』

 

エドは、両手でその風を自分から守ったが、

 

その風は、まともに喰らえば、一瞬で凍ってしまいそうな風だった。

 

その竜巻の中から、女性の影が映った。

 

その影は、次第に鮮明になり、鮮明になる度に竜巻の風は消えていった。

 

風が完全に消えたときには、そこには一人の女が居た

 

青い肌で、さらに青い髪。さらに青い服をまとっている。

 

呆れるほど青ずくめの格好は、青い肌という所で、確信ではないが、

 

『精霊……?』

 

エドは、そいつが精霊だとなんとなく分かった。

 

それと同時に、そいつは敵を見る目で俺達を見ている。

 

嫌な予感がした

 

『人間、お前ら私を挑発するとはな。いい度胸だ』

 

精霊は、爛々とした目で、殺意のオーラを纏い、こちらに向かってくる

 

『あ……あの……僕達は…』

 

エミルが動揺して自分達の目的を言おうとしたが、それは認められなかった。

 

『喜べ。精霊に殺された人間になれる事にな。』

 

完全に、俺達の事を敵と見ていた。

 

おそらく、これを説得するなんて無理な話だろう。

 

『ほら、出てきただろう?』

 

『大佐ぁ……!!ふざけんなよ……!!』

 

エドは、マスタングを不穏と怒りの表情で睨みつける

 

もっとマシな考えを出さなかったマスタングを睨んだ。

 

だが、そんな暇も無い。

 

精霊は、何も無い所から氷を作り出し、その氷は槍の形に変わる

 

そして凍りは、マスタングの所へと投げられる

 

『!……マスタングさん!!』

 

その場で、マスタングの心配をしていたのはエミルだけだった。

 

マスタングは、飛んできた槍を指パッチンで起こる焔で焼き尽くし、

 

その焔は勢いを止めず、精霊の方へと飛んでいった。

 

『!!』

 

精霊は俊敏な動きでその焔を避け、一つの飛びで6メートルは離れた。

 

『なるほど、さすがは精霊。タダではやられませんね』

 

『………焔の技か。嫌な奴を思い出す』

 

さらに精霊の顔は、敵意に満ちる。

 

その様子を見て、マスタングは溜息を吐く

 

『……やれやれ。こんな美しい女性と知っていれば、こんな状況で無ければ食事に誘えたのに』

 

その言葉に、精霊は両腕に氷を作る

 

『……悪いが、お前は生理的に受けつけられそうに無い!』

 

精霊はそう言って、作った氷で小さなナイフのような物を多数作り、マスタング達に投げつける。

 

さすがに、これだけの量は防ぎきれないはずだ。そう踏んだ精霊は、それが計算違いだと気づくのは遅かった。

 

精霊が作り出された氷の弾は、地中からいきなり作り出された壁によって全て防がれた。

 

『なっ……?』

 

さすがにこれは予想外だったのか、精霊の表情が変わる

 

『精霊相手なら、4対1でも良いよなぁ?』

 

エドが、不適の笑みで精霊を睨みつける

 

『4対1って……僕も入ってるんですか?』

 

『当たり前だろうがぁ!!!』

 

エドが一喝すると、エミルは小さな悲鳴を上げて一歩退がった。

 

『……その技は見た事が無いな。何だ?その地面が回るような技は』

 

精霊がエドに質問をする。

 

エドは、堂々と簡潔に答えた

 

『錬金術だ!!』

 

『錬金術?そんな物がこれほどの効力を持つわけが無い。あれは金を作る為だけのクズ技術のはずだろう。』

 

精霊がそう言うと、マスタングは不気味な笑みを浮かべ、3発程精霊に向かって指パッチンをした

 

『ぐお!!』

 

いきなり起こる爆風に、精霊もさすがに全ては防ぎきれなかった。

 

多少喰らったダメージに対し、さらに敵意が増した。

 

『そうか。残念だったな。私のこれも錬金術だ。』

 

マスタングにそう言われ、精霊は歯軋りを立てる

 

『一体なんなんだ!お前らの使う術!!そしてそのわけの分からない術を使うお前らは!』

 

精霊がそう質問するが、エドとマスタングは何も言わない。いや、言う必要が無い。

 

『精霊でさえも、この方たちが不明なのですか。大した事ありませんね』

 

ただの人間であるジェイドにもそう言われ、精霊は舌打ちする。

 

これ程、集中力が失うことも珍しいのだろう。精霊がイラついているのが分かった。

 

『………力の読めない者と、力を持つ者…か。これでは一人では分が悪い』

 

精霊は、空に向かって腕を上げ、指パッチンをする

 

一体何事だろうか。とロイ達は疑問を思うが、

 

それはすぐに解消された。

 

空の向こうから、巨大な怪鳥が飛んできたのだ。

 

仲間を呼び出しやがった。

 

『そっちがその気なら、こっちも本気を出すぜ?』

 

エドが挑発的にそう言うと、精霊は微笑む

 

怪鳥はこちらの上を飛んだと共に、上から一人に人が落ちてきた

 

『わ!?』

 

エミルの近くに落ちてきたため、エミルはその場で腰を崩して地に座り込んでしまった。

 

その場に立っている、威圧感の高い男性は、じっとエミルの方を睨みつけていた

 

『リヒター!』

 

精霊は、叫ぶようにそいつの名前を呼ぶ

 

リヒターは、従事するように精霊の元へと歩み寄る

 

『4対2だ。やれるか?』

 

『……珍しいな。精霊ともなる者が、わざわざ俺に助けを求めるとは』

 

そう言って、リヒターはマスタング達に剣を向ける

 

『精霊とこの地を守る契約をした者だろう。お前は。それにこれは喧嘩ではない。制裁だ。この場所に傷を付けた、な!』

 

そう言うと、今度は精霊はエミルの方へと襲う

 

『ひぃ!』

 

いきなり精霊ともなる者が襲い掛かってきたとき、エミルは一瞬驚いてしまった。

 

だが、エドが精霊とエミルの間に割り込み、精霊の腕を斬りつける

 

『!!!』

 

精霊の腕は、裂けるチーズのように裂け、裂け目から青い汁が流れる

 

だが、それは少しの間で、しばらくすれば元の形へと戻っていった。

 

『ふぅん。やっぱ精霊ともなると、生命力はそこそこだな』

 

エドが、皮肉るようにそう言う。

 

『褒めてやるぞ。戦ってこれ程時間が掛かったのもお前らが最初。そして一番腹が立ったのもお前らが最初だ!』

 

精霊の腕が凍り、まるでエドの機械鎧のように、硬い物となっていた。

 

その腕でエドの右手を殴りつける。氷の腕だからか、感触は分からなかったようだ

 

『いい音だ。これで右腕は使えまい。』

 

そう言って、精霊はまた再び腕を振り上げる。

 

だが、エドは殴られた右腕で振り下ろされる精霊の腕を殴り受け止めた。

 

『!?』

 

一瞬わけが分からず、精霊は後ろへ退がる

 

瞬間、精霊の右腕に纏っていた氷がバラバラと崩れ落ちる

 

『やっぱ、氷って大した強度じゃねぇな』

 

エドはそう言うと、手をパンと叩き、地面から突起物を練成した。

 

その突起物は精霊の腹部に命中し、精霊は吹っ飛ばされた。

 

だが、その練成の反応によって、エドの右腕の部分は完全に露出してしまった

 

『……なるほど、義手か。それも相当な……』

 

精霊が納得すると、もう一度エドを睨みつける。

 

 

 

 

リヒターは、ジェイドの槍の攻撃と剣と、太刀を合わせ、戦っていた

 

『やれやれ、貴方には興味が無いのですがねぇ。』

 

『俺もお前らには興味は無い』

 

リヒターはそう言って、剣を振り下ろす。それと同時にジェイドは槍で剣を受け止める

 

『だが、有様を見る限り喧嘩を売ったのはお前らの方らしいな。悪いが制裁されてくれ』

 

『それは出来ない相談です。私達だってまだ死にたくない』

 

『ならば、何故このような行為をした』

 

ジェイドは、微笑みながら剣を受け止め、その微笑は戦いの最初から、変わっていない

 

『簡単ですよ。ただ精霊に会うためです。』

 

『そんな必要は無かったのではないか?』

 

そう言いながら、リヒターは剣を振り下ろす。

 

だが、同時にすぐ横に爆発が起こり、リヒターは少しだけ吹っ飛ばされる。

 

しかし、すぐに着地し、爆発を起こした相手を見る

 

『しかし、私達はどうしても精霊に聞かなければならない話がある。』

 

リヒターは、舌打ちをしながら、二人に視線を落とす

 

『………厄介な二人だ。』

 

 

 

 

 

 

エドは手を叩き、地を練成し、大きなゲンコツを作る

 

だが、今度は精霊は華麗にそれらを交わす

 

それを見て、エドは精霊が落ちる場所に突起物を作るが、

 

精霊はそれらを蹴り飛ばし、破壊してしまう

 

『ちっ!』

 

どうやら、さっきまでは本気では無かったのだろう。

 

攻撃が当たったのは最初だけで、これからは、ほとんど攻撃が当たらない

 

『同じ手は、二度も受けるつもりは無いからな』

 

精霊はそう微笑んだが、エドはその微笑を見て微笑み返した

 

『そうか……じゃぁこれならどうだ!!』

 

エドは、精霊の真下に巨大な落とし穴を作った。

 

精霊は案の定、落とし穴に落ちていった。

 

さらにエドは他の地面で巨大な石柱を作り、その石柱を落とし穴にピッタリとはめ、地の底へと落としていく

 

『喰らえぇええええええええええええ!!!!』

 

全てが落ちていったとき、手ごたえを感じた

 

ドン!と大きな音が辺りに響いたのだ

 

『へっ。後は大人しく……』

 

だが、それは世迷言だった。

 

エドの手足は、急に動かなくなった。

 

『なっ……!?』

 

地中から氷が伸びてきて、その氷がエドの手足を凍りつけていた。

 

それは、鎖で繋がれた奴隷のように

 

そして、地中から染み出るように精霊が現れ、エドの前に立った

 

『お痛が過ぎたな。』

 

精霊はそう言って、手に大きな氷の剣を持った

 

それを持って、歩けないエドの方へと向かって歩いた。

 

『……………』

 

エミルは、ただその光景を見ているしかできなかった

 

『ちっ』

 

だが、エドはただ舌打ちをしただけだった。

 

『余裕だな。だが、これまでだ』

 

精霊が、エドに向かって剣の刃を向けた

 

エドが、死んでしまう

 

エドが。

 

エミルは、頭の中が赤色に染まっていった。

 

『死ね』

 

精霊のその言葉に、とうとうエミルの頭の中が真っ赤に染まってしまった。

 

『………!!!』

 

エミルの目が真っ赤へと変色し、エミルの剣は精霊の剣を一瞬で粉々にした。

 

『……』

 

精霊は、そのエミルの行動に驚きを隠せなかった

 

『そうか、目覚めたか』

 

『ああ!?』

 

エミルは、荒い声で精霊に太刀を向けた

 

『記憶が……無くなっているな。』

 

精霊がそう言った瞬間に、エミルはエドを捕まえていた氷を壊した。

 

氷は消えて、エドは自由となった。

 

『おい、どういう事だ』

 

エドが、精霊に先ほどの言葉を問いかける。

 

だが、精霊はもうエドの方を見ていなかった

 

『おいブス。誰に向かって口聞いてんだ?とっとと攻撃しろよ』

 

エミルが挑発的にそう言うと、精霊は険しい表情になる

 

『変わってないな…!!』

 

精霊はそう言って、その場から氷を作り出し、弾としてエミルにぶつけた。

 

だが、その弾は全て当たらず、エミルは空中へと移動した。

 

『おらぁあ!!!』

 

空中で剣を振り、精霊の腕へと当たったが、氷で防がれる

 

防がれたと同時に、エミルはバック転をして、地に足を付ける

 

『精霊を殺すという感覚は、一体どんな物だろうなぁ!!』

 

エミルの顔は、楽しそうに見えた。

 

だが、前に見た物とは、何かが違っていた。

 

まさか

 

『貴様は……。何を考えている』

 

エンヴィーが、何か細工をしやがったのか、それとも

 

『エミル!!』

 

『なんだ豆粒!!』

 

エドは、エミルの言葉に頭に血が昇る。

 

前言撤回。やっぱりこいつは変わってない。

 

『二人で押さえ込むぞ!!こいつを!』

 

エドはそう言って、地を練成し突起物を作り出した。

 

精霊は、それを簡単に避けて地を蹴り宙を浮く

 

『そこだ!!』

 

さらにエドは、落ちる場所に突起物を作る

 

『同じ技は二度効かんと言ったはずだ!!』

 

そう言って、精霊はその突起物を蹴ろうと足を縮め、そして伸ばす。

 

その瞬間をエドは狙い、突起物の上からさらに突起物を作り出す。

 

『!!』

 

青い汁が、そこらに飛び散る。その突起物は精霊の足に刺さり、突起物の先はさらに練成で棘が増え、抜きにくくなる

 

『でかしたチビンコ!!』

 

エミルは、その精霊に剣を振り、両腕を斬りつける。

 

精霊の両腕は吹っ飛び、腕のあった場所の付け根から濃い青い汁が噴出す。

 

精霊は腕が無い状態になる。

 

『腕など、また再生される』

 

精霊はそう言ったが、エドはそれを許さぬように地から細いパイプを作り出し、

 

そのパイプは、意思を持っているかのように、精霊を巻きつける

 

『!!』

 

『悪いけどな…。それ程の生命力を持っている奴なんぞ、昨日も戦ったばかりだからな!!』

 

昨日の、人造人間との戦闘を応用し、再生前に精霊を縄で巻きつける。

 

『死ねぇええ!!!』

 

エミルは、渾身の力込めて剣を精霊の腹に刺す。それも縦に

 

刺さった剣は、地面を突き刺し、精霊を動けなくした

 

『………っ!!』

 

縄は、剣を裂けているかのように、見事に切れずに残っている。

 

このままでは、精霊は動けないだろう。

 

剣が、刺さったまま

 

『お見事だ。』

 

そう言って、エドは右手を立てる。

 

『ほとんど俺の力だけどな』

 

エミルはそう言って、エドの右手を叩く。

 

 

 

 

『おや?あちらはもう片がついたみたいですね』

 

ジェイドが、こちらに気づき、そして歩み寄っていった。

 

その光景を見たリヒターは、何も言わずに剣を戻した。

 

『おや?もう終わるのですか?』

 

『精霊でさえ片付けるお前らを、4対1で勝てると思うほど、俺は馬鹿じゃない。』

 

すると、ジェイドはクスクス笑い出し、負けた精霊の方を見つめた

 

『それにしても、精霊のあの無様な姿は初めて見ましたよ。』

 

『ああ。俺もセルシウスのあの姿は初めて見た』

 

二人がそう語ると、セルシウスは激昂して大声で叫ぶ

 

『うるさい!!!!!』

 

だが、それでもジェイドのクスクス笑う声は止まらない。

 

『本当に、芋虫みたいですね。あの姿……ふふふっ…』

 

笑われていることに屈辱を感じているセルシウスは、だんだん青い顔が赤く変色していく。

 

だが、負けは負けだ。完膚無きまで負けた。

 

セルシウスは、この無様な姿で溜息を吐いた

 

『分かった、私の負けだ。要望は何だ?出来る範囲までならやってやる』

 

セルシウスは、しれっとそう言った。

 

すると、エドとエミルは座りだし、その体制で質問をした。

 

『よし、じゃぁ知っている範囲まで、俺たちの質問を聞いてもらおうか』

 

『………たったそれだけの為に、私はこんな姿にされたのか』

 

『その通りだ。残念だったな』

 

セルシウスは、呆れの溜息を吐き、いじけるような表情をした

 

多分、セルシウスは自分の情けなさに溜息を吐いたのだろう。ガッカリした表情をしている

 

『………分かった。何が聞きたい?』

 

『ここ最近で、赤い煙が多発しているのを知っているか?さらにそこから生まれたラザリスという奴。そいつの存在を聞きたいんだけど』

 

エドがそう一気に言うと、セルシウスはまるで普通の状態のように、スラスラと答えた

 

『……創世に近い時、私たち精霊より前に存在した。星晶によって封じられていた、もう一つの世界。と言った方が言いかしらね』

 

『世界……?あの小娘がか?』

 

『ええ。ずっと星晶によって封じられていたのだけれど、近年に星晶が少なくなって、その存在が露出し始め、ついには姿を現し始めている。』

 

エミルは、考える仕草をして、呟いた

 

『……じゃぁ、やっぱり僕たちの責任なんだね………。』

 

いつの間にか、エミルは元に戻っていた。

 

ただの臆病で優しいエミルに。それを見たエドは、少しだけ安心をした。

 

『……それよりも、私は気になる存在が居るのだけどね。』

 

セルシウスがそう言った瞬間、エドはある存在が頭をよぎった。

 

『………人造人間の事か?』

 

『ホムンクルス?』

 

『俺たちの世界で、作られた人間だ。』

 

そう言った瞬間、ジェイドは関心する顔をする

 

『人間が作れるのですか?それは興味深い。きっと強大な軍隊が作れそうですね』

 

『……人としてまだ生きたいなら、止めた方が良いと思うぜ』

 

エドがそう言うと、セルシウスは、またスラスラと喋る

 

『そのホムンクルスという存在。それだけならまだ大丈夫。問題は、その中に居るディセンダー…らしき人物が居る事よ』

 

その事を言われ、エミルは驚く顔をする

 

『ええ!?あの……あの中にディセンダーが居たんですか!?』

 

『ディセンダー……。成る程。おとぎ話の中だけだと思っていましたが、実在したのですね。』

 

二人が驚いた顔をしたと同時に、エドが嫌な顔をする

 

『……そのディセンダーは、随分人を不幸にしやがるな……』

 

『だが、そのディセンダーは何かおかしい。ディセンダーなのだが、そうでないのだ。』

 

セルシウスが良く分からないことを口走り、エドは少し混乱する

 

『ああ?どういうことだよそれ』

 

『分かったら、私だって苦労はしない』

 

セルシウスはそう言って、エドの方を見る

 

『おい、いい加減これを外してくれないか?』

 

『まだだ。もう一つ聞きたい事がある』

 

エドはそう言って、エミルの方を親指で指した

 

『こいつは一体、何者なんだ?』

 

エミルは、その質問を聞いて、エドの方を見た。

 

ただ、少しだけエミルは恐怖していた。

 

『……………』

 

自分が何者なのか、知るのが怖かった。

 

どうせなら、ずっと人間で余生を暮らしたい。

 

だが、きっとそれは無理だろうとは。考えていた

 

『……そいつか。あまり馴れ馴れしくしない方が良いかもしれないぞ』

 

セルシウスがそう言って、反応したのはリヒターだった。

 

『……こいつが、一体なんだと言うのだ』

 

リヒターにそう言われ、セルシウスはフッと静かに微笑んだ

 

そして、エミルを睨みつけて、エミルの正体を言った

 

『こいつは……。私と同じ、精霊だ』

 

そう言われたエミルは、信じられないような物を見るように。セルシウスを見た

 

『え……?え?』

 

エミルは、言われたことが信じられなかった。

 

自分が、そんな、自分が

 

『僕が………。精霊?』

 

『ああ。少なくとも、私よりもランクは上の精霊だ。』

 

セルシウスのその発言に、エドは納得が出来なかった。

 

『………それは、本当のことなのか?』

 

『本当だ』

 

『だが……。こいつはマルタとずっと一緒に居たと言っているぞ』

 

『そのずっとはいつからだ?一年前とか2年前とかじゃないのか?』

 

セルシウスのその言葉に、エミルは言葉が詰まる。

 

『……エミル?』

 

エドが、エミルに問うように言う

 

エミルの声が、くぐもったように答える

 

『…………マルタと出会ったのは、1年前です…』

 

裁判所で証言を語るように、ギコチナイ言葉でそう答える。

 

これで、エドも納得をした。出来ればしたくは無かったが

 

『……じゃぁ、本当に……』

 

『………』

 

思えば、小さいときの記憶が無い

 

お母さんの顔や、お父さんの顔だって分からない

 

『ほう。エミル君は精霊だった。ですか。これは面白い』

 

ジェイドは、そう言ってエミルの頭に手を乗せた

 

『おい大佐。』

 

マスタングは、真実を聞いても反応は薄かった。

 

もしかしたら、そのような事を察していたのでは無いだろうか。

 

『…………。まぁ、確信はしていなかったが、疑問に思ったのは黒い石からだ』

 

マスタングはそう言った後、後は何も言わなかった。

 

『もう良いだろう?早くこの管と剣を外してくれ。ものすごく痛いんだ。』

 

『………はい』

 

エミルは、低いテンションでセルシウスに刺さっていた剣を抜き、そしてパイプを壊した。

 

それから程なく、セルシウスは元の姿に戻った。

 

『さて、これでもう精霊には興味はありませんね。』

 

ジェイドはそう言うと、その場から背を向けた。だが、歩き出さない。

 

まだ、何かを聞く気満々だ。

 

『そうだな、じゃぁ俺たちも帰るか。』

 

まさかの思わぬ真実を収穫に、エド達は帰ろうとしていた。

 

背を向け、その場から去ろうとした時。

 

『待て』

 

と、後ろから声がした。

 

声を出したのは、リヒターだった。

 

『エミル……と言ったな?』

 

エミルは、名前を呼ばれて、その場から振り返る

 

『セルシウス。精霊の契約は、限度は何人だ?』

 

『………器が大きければ、その分まで精霊は取り込めるわ』

 

セルシウスがそう言った時、リヒターはエミルの方へ歩み寄る。

 

『良いのだな?セルシウス』

 

『どの道、私もその者達に借りがある。無論、そいつらの拠点とやらにも行くつもりだ。』

 

エドは、何か嫌な予感が頭をよぎる。

 

本当に嫌な予感がする

 

リヒターは、エミルの手を奪うように握った。

 

その唐突さに、エミルは戸惑い、顔が少し赤くなる

 

『えっ!?あ……あの……』

 

リヒターの目は真剣になっていた。

 

そして、エミルに言葉を出した。

 

『エミル。俺と精霊契約をしろ』

説明
ここから、最新話です。氷の精霊が出てきます。
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