魔動少女ラジカルかがり SHOOTING -第四話-
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 特集第一夜

 

 魔導師運用で急成長を遂げた次元世界警備組織

 

 

 

 次元世界警備を中心に急成長をしているミッドチルダの機関をご存知でしょうか。

 ミッドチルダ首都クラナガンに支局を構える公的機関時空管理局です。

 

 創立当初は時空観測事業団の協力組織としてその名を連ねていましたが、

 組織編制の合理化、効率的な魔導師運用などの徹底により、

 次元世界警備関連業務を営む警察機関としては異例の速さで多数の次元世界からの公認を成し遂げました。

 

 その後、時空渡航事業、危険遺失物封印事業、新魔法開発製造事業など、

 その業務は多岐に渡り、その業務は140年の輝ける実績を残してきました。

 

 この業績の成功は、やはりかの有名な三提督の――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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テスト投稿二次創作SS 魔動少女ラジカルかがり SHOOTING

テスト内容:タグのテスト

原作:蒼穹紅蓮隊(プレイステーション版)

原作世界:魔法少女リリカルなのはアニメシリーズ

原作設定:日本製シューティングゲーム各種

ジャンル:STGプレイヤー以外置いてきぼり

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 新暦65年4月4日

      22時50分

 

  ミッドチルダ首都クラナガン

 

 作戦:「緊急発進後、地上本部上空所属不明機を迎撃せよ」

 

 

 

 

 

 

 ここはミッドチルダの首都クラナガン上空。時刻は夜の真っ只中。

 時空管理局の仕官達への挨拶回りの途中で、事件発生とのことで嘱託魔導師として呼び出されたのだ。

 ミッドチルダ内の魔法関連事件とのことでミッドチルダ内の警察権限を行使する地上本部からの要請だ。

 

 魔力炉を高速で回し、高度を上げる。

 

 先日空戦AA資格を取ったばかりの私は、高ランク魔導師不足の地上本部では貴重な空戦魔導師として大きな信頼を得ている。

 

 地上本部のオペレーターからの通信が入る。

 

 

『所属不明の巡洋艦が大気圏突入! 都市支部からの迎撃部隊はインターセプト失敗した模様です』

 

 

 失敗、か。

 地上本部は優秀な局員が多い。次元世界の中心地であるミッドチルダは、悪質な犯罪が日夜繰り広げられている。

 だが、優秀な人材が多いことと優秀な魔導師が多いことは同義ではない。

 

 時空管理局は複数の次元世界を舞台にした仕事があくまで主であり、魔導師達はそれに憧れて管理局に入り、発言権の強い魔導師を多く持つ((多次元世界担当部門|うみのひとたち))が優秀な魔導師を引き抜いていく。

 結果は、中心世界の戦力の空洞化だ。地上本部では捜査ができても武力鎮圧ができない。

 

 そんな中、純粋な魔導師ではなく((戦闘機乗り|パイロット))として集団戦を単機でこなせる戦力を持ち、あらゆる状況下からの生還を訓練している私は地上本部に降って沸いた宝物だったのだろう。

 

 監視指定の人種であり出国手続きが複雑なのと、魔動機械開発者を兼業としているためミッドチルダを長期間離れられないという理由があって、管理局では地上本部以外、私を使うことが困難である。

 

 そして戦闘機乗りである私には、戦場が必要だ。

 

 

『各武装局員、敵と思しき巡洋艦を迎撃してください』

 

 

 蘇った戦闘機達は、戦闘訓練などでは本当の性能を計りきることはできない。

 少なくとも空戦魔導師としての((任務|ミッション))。欲を言えば実弾の飛び交う戦場があればいい。

 

 シップの設計データは全て部族の元にあるため、実戦データさえ得られれば実機が破損しても問題はない。

 教育局と喪失文明復興局によって((教育された|つくられた))パイロットである私も同様だ。

 

 大きな挫折もなくわずか九歳で高位の魔導師の資格を得た私だが、その道は全てダライアスが用意したものだ。英雄機を駆る以上、空戦AAはとって当然、いや、とらなければならなかったのだ。

 一族の期待に応えられたことを私は誇らしく思う。

 

 

『最優先攻撃目標を((黒瞥|こくべつ))と命名。詳細を解析中です』

 

 

 都市上空を飛行する機械兵器の群れが見える。

 出撃時の通信によると魔法障壁の展開を可能とする魔動機械艦隊であるらしい。

 

 それに対する私の武装は、R-GRAY2とビックバイパーT301の二つ。

 ビックバイパーは背中の推進機械翼の上部に接続されて二本の角を突き出した状態で待機。

 

 R-GRAY2は本星から発掘された設計図を元に作られた新鋭機だ。

 パイロットスーツの両肩のジョイントに接続され、左右二本の砲塔を身体の前へ突き出している。

 その砲塔は中心で二つに割れており、間に私の腕が挟まっていて、手は割れた砲塔を繋ぐようにつけられた固定用のハンドルを縦に握っている。割れた砲塔は下部が短くそちらが機銃となっており、長い部分が特殊兵装の射出口となっている。

 その搭載兵装の補助のために、アンテナが両脇から後方へ突き出している。

 

 ((機動小型戦闘機|シップ))というものはパイロットスーツのジョイントに直接接続するものであり、身体の関節の動きを極力邪魔しないようパーツ分けされていたり、身体に接触しないようあえて大型されていたりする。

 有機生体機械である自分の身体とパイロットスーツを魔力の巡回路にすることで、正真正銘ダライアス一族にしか使えない魔動機械となっている。外付けの魔力炉でどうこうなるものではない。

 展開時の装甲形状が従来の戦闘機のデザインの一部を受け継いでいるのも、私の体の大きさに見合わない大型化の原因の一つだ。

 英雄機の再現を目的としている以上、機能だけではなくデザインの再現に拘ってしまうのも当然と言える。

 私の趣味も混ざっているが。

 

 今回わざわざ二つのシップを用意したのは、敵の所持兵力が判別しきっていないからであった。

 

 この事件は質量兵器を搭載した所属不明の魔法艦隊がミッドチルダの惑星上空に現れ、軍事人工衛星による防衛網を突破しミッドチルダを強襲しているというもの。何らかの組織によるテロと認定され地上本部の出動となった。

 

 質量兵器とは、魔法を使用せず弾丸や爆薬、薬品、細菌を利用した兵器の総称だ。魔法兵器との違いは戦場に質量物質が撒き散らされ土地が荒廃することと、非殺傷設定などという生易しい機能が存在しないこと。

 

 「スイッチ一つで誰でも簡単に扱える」などという識者もいる。最近の魔法機械兵器もプロテクトをクラッキングすれば同じようなものができあがるので私としてはその意見には納得していないのだが。

 

 管理世界では質量兵器の製造、運用が禁止されている。

 シップの開発もそれに則ってレールガンやマスドライバーは再現していない。

 

 その質量兵器を搭載した兵器による侵攻。なるほど、これは凶悪犯罪だ。

 相手は有人か無人か知らないが装甲の厚い駆逐艦。((非殺傷|まりょくげんていこうげき))設定の解除を地上本部に申請――承認。

 さあ、遠慮なく撃ち落そう。都市部には緊急防衛結界が張られている。攻性魔法も纏っていない駆逐艦が墜落したところで問題などありはしない。

 落として落として落とし尽くそう。それが唯一魔導師として行える私のお仕事なのだから。

 

 

 シップによって機能拡張されたバイザーで敵機を目視する。

 暗視機能によって昼のように明るく見える視界の中、CGで描写された枠線が敵機の装甲を囲む。

 

 R-GRAYシリーズの独自兵装であるロックオン機能が敵機の魔法障壁の隙間をサーチし照準固定しているのだ。

 

 ロックし終えた機体を無視し、視界に映る他の駆逐艦の装甲を次々とサーチし続ける。

 R-GRAY2のロックオンは最大十六箇所まで可能だ。

 

 ――MO-SYSTEM All Green

 

 ロックオン機能はある攻撃機能の補助機構である。

 本命はあくまで敵を撃ち落すための魔力の一撃だ。

 

「行け!」

 

 両肩から伸びた砲塔から、紫電が弾ける。

 まばゆい光と共に撃ち出された一筋の雷がうねりながら、照準固定された駆逐艦の群れを一瞬で打ち抜いていった。

 駆逐艦は爆裂四散しながら眼下の都市部へと墜落していく。

 

 これが追尾型ロックオンレーザーMO-SYSTEM。

 機械の力で破壊の象徴である雷撃を作り出す魔力変換武装。

 

 雷を生み出すには変換資質などという魔導師の才能など必要ない。

 世界を((情報|プログラム))で書き換えなくても魔力で動く機械がそれを再現してくれる。

 

 

 ((機械翼|アフターバーナー))から推進魔力の火を噴かせ、さらに敵機の群れへと向かっていく。

 武装局員の援護砲撃を受けながら、ロック、ロック、ロック、雷撃。

 

 ロックオン機能は的確に敵機を狙い周囲へ魔力弾を撒き散らさないため、都市部での運用に秀でている。

 都市上空に防衛結界が張られていても、魔法障壁と装甲を打ち抜くような魔力弾を何度も撃ちつけるのはさすがに拙い。

 それにこれならば乱戦時の味方への誤射の心配も無い。

 

 敵機が正面に来たとき、そして砲身をこちらに向けたときに機銃で狙い撃つ。

 ロックオン機能の欠点である発射までの遅さを即射性能に秀でた機銃でカバーする。

 R-GRAY2の搭載機銃は((魔力放射|レーザー))。

 一点に照射し続けることで魔法障壁を貫く兵装だ。

 

 上空から次々と降下してくる敵機を鎮圧していく。

 無論、無傷でとはいかない。

 

 直撃まではいかないまでも、銃撃で隅を削られていく魔法障壁。

 武装局員の中には、ミサイルの一撃にバリアジャケットをパージして緊急離脱をする姿も見える。

 

 質量兵器の弾速は速い。砲身角度からの弾道予測と((加圧処理|しょりおち))を駆使してなんとか回避していく。

 魔導師の使う魔法と違って、発動の兆候なく急に射撃されるのが機械兵器の恐ろしいところだ。

 シミュレーターで訓練を行っている私と違って、対魔導師戦が主である武装局員には辛いであろう。

 

 魔法の使えない私としては武装局員のサポートは受けておきたい。

 

 迎撃能力を上げるために開発したばかりの補助機能を発動させる。

 シップの側面の吸気口が開き、周囲に充満した魔力の残滓を回収していく。

 砲身から魔力の光が漏れ、首都の夜空に明かりが灯る。

 

 大気中の魔力残滓を使った((一時魔力補助|パワーアップ))システム。

 密度の高い魔力残滓を魔力エネルギーに濾過・圧縮し、機銃から撃ち出される魔法弾に付与させて武装を強化する裏技。

 

 高度魔法と多数の魔法機械の入り乱れる戦場でのみ運用が可能な秘密兵器だ。

 

 機銃からレーザーが魔力の残像をまとい、上空へ向かって撃ち出される。

 駆逐艦を吐き出していた空母級の機体の魔法障壁に突き刺さり((障壁破壊|バリアブレイク))した。

 破壊された障壁の隙間を多重ロックして、雷撃を放つ。

 振動が肌に伝わってくるような轟音と共に、空母が墜落していく。

 

 

「さあ、一気に突破しますよ!」

 

 

 奪還していない首都北部へ機体を走らせる。

 他の武装局員とは速度の違う私一人が突出する形になるが、これが私を使った地上本部の一点突破時の基本フォーメーションだ。

 

 前方から私と同じように突撃してきた駆逐艦が体当たりをしてくる。

 

 慣性制御で上へ急浮上して回避する。

 背後のカメラアイから敵ミサイルの発射を確認。これも上昇を続けて回避。

 

 後方で駆逐艦が武装局員に撃破されたのを確認し、高度を下に戻す。

 突撃してきた駆逐艦に追従して前進した機体の下に潜り、ロック。

 

 機体を左に傾けて遠方から狙ってきた銃弾をやりすごす。

 さらに右へ高速移動。敵の標準を合わせないように慣性を無視して動き続ける。

 

 動き続けて隙間のできた弾幕の間を縫って左方へ進む。散らしと呼ばれる回避技術だ。

 さらに右へ動き、敵の群れのロックを完了させる。

 

 上空から強襲してくる巡洋艦を冷静に機銃で撃ち落し、カメラアイで戦場全体を見渡す。

 ロック漏れなし、雷撃発射!

 

 十六の小型機が雷に貫かれて次々と落ちていく。

 

 さらに上空では武装局員が空母をバインドで絡めとり一斉砲撃で撃墜していた。

 

 敵組織は地上本部を侮っている。

 例え魔導師ランクが海の人たちより劣っていようとも、“自分達の故郷を守る”という信念から完全に統率された指揮系統を持っている。

 戦っているのは武装局員だけではない。

 本部では敵戦力の分析、兵装の把握、弱点の特定が解析班によって現在も進められており、遂次通信によって報告が入る。

 戦況を見渡せる優秀な指揮官が戦場全体を見渡し陣形を取り、私を一番槍として突破口とし包囲網を作る。

 地上本部の仕官が以前こんなことを言っていた。

 

「火力が足りないなら他の全てでそれを補おう」

 

 私はそんな地上本部をいとおしく思う。

 

 浮き世に絶対などというものは無く、理不尽な思いを胸にして途方にくれる時もある。

 それを乗り越える為には、確固たる信念と洞察、そして幾分かの行動力を持つ必要がある。

 

 斑鳩の物語に出てくる「信念」の一節だ。

 外の世界に優秀な人材を引き抜かれていくという理不尽にも耐え、自分達の家族の平和を守る。

 かっこいいじゃないか。

 私たち子供が憧れる正義の味方そのものだ。

 

 ならば私は、“他の全て”になれない私は、純粋火力として正義の味方の武器になろう。

 地上の都市では皆、強い自分達の管理局を信じているのだから。

 

 

 前方に新たに巡洋艦を三機確認したところでシップから未登録魔力警告が鳴り響く。

 巨大戦闘機械の反応だ。反応は前方上空。

 

 今まで撃ち落してきた機体の数倍の大きさと見える機影。

 これが通信で伝えられた最優先攻撃目標……。

 

 

『全翼型爆装機「黒瞥」の詳細を表示します』

 

 

 通信と共に地上本部がバイザーに文字情報を送ってくる。

 

 

 

全翼型爆装機「((黒瞥|コクベツ))」

 

推定武装:

熱光榴照射機 ×4

56mm砲 ×3

60mm貫甲弾射出口 ×10

 

 

 

 高速で飛行する機影が頭上を通り過ぎる。

 急いで回避すると、前方の巡洋艦が爆発し落ちていった。

 味方機ごと攻撃したの!?

 

 どうやら敵も私を最優先攻撃目標としたらしい。

 

 眼前に姿を現す黒瞥。

 全翼型という名の通り、その機体のほとんどが翼だ。

 航空機の一対の翼だけを取り出し繋げたようなブーメラン型のフォルム。

 機体の上には四門の巨大な砲門が載っている。熱光榴照射機だ。

 

 

 対する私は、R-GRAY2をパージし腰へ繋げて待機状態へ。

 背中のビックバイパーが自動で肩のジョイントへ繋がる。

 武装が縦に回転するようなこの切り替え動作には一秒もかからない。

 

 R-GRAY2のロックオンレーザーは多数の砲台を備えるこの黒瞥に使用するには難しいと判断してのことだ。

 ビックバイパーはヒットアンドアウェイを得意とする。

 

 

『((OPTION|オプション))』

 

 

 ((一時魔力補助|パワーアップ))システムの魔力を使ってビックバイパーの追加兵装を起動させる。

 オプション。ビックバイパーの機銃に連動して魔力弾を自動で撃ち出す魔力スフィアだ。

 

 生成した数は四つ。

 成長途中である私の小さな魔力炉の出力では三個同時の運用が限界だが、撃ち落されて爆砕した多数の魔法機械が撒き散らしたこの濃密な魔力残滓の中では最大数である四個を操作できる。

 

 ビックバイパーの独自防御機構の((強化魔力障壁|フォースフィールド))を展開して、黒瞥と対峙する。

 

 戦闘開始だ。狙い撃ちされないよう高速飛行で撹乱する。

 機銃とオプションの計五つの銃身から魔力弾を撃ちつける。

 

 対する黒瞥は熱光榴照射機を駆動させる。

 砲門に光が灯った。

 

 直感であれは危険だと予測弾道地点から大きく距離ととった瞬間。

 四基の砲門から同時に巨大な光の渦が吐き出された。

 Sランク魔導師の砲撃魔法にも匹敵する膨大な魔力。

 

 なんて代物だ。あんなものを都市部へ向けて放たれてしまったら、緊急防衛結界など簡単に貫かれてしまうだろう。

 攻撃目標を黒瞥本体からその上部の砲台へと切り替える。

 

 

『((MISSILE|みっそ))』

 

 

 シップの高機動性を生かし、巨体の上部へ回り込む。

 対地魔力弾頭を砲台へ向けて連続で叩き込む。

 

 だが簡単には破壊させてくれない。

 再度放射される熱光榴。光の帯を吐き出しながら砲台が回転する。狙いは私だ。

 機体の下に回りこむことで砲撃をかわす。

 

 あんな馬鹿魔力、かすりでもしたら衝撃で吹き飛んでしまう。

 オプションで翼を狙い撃ちしながら、砲撃がやむのを待つ。

 

 と、急に黒瞥が横転。スラスターで機体を回転させたのだ。

 光を灯らせた砲撃待機状態の砲門と目が合う。

 こんにちはー。

 

「なんじゃこりゃあああああああああ!」

 

 ひたすらに離脱離脱離脱。

 なんですかこのアクロバティックな動きは!

 搭乗員シェイク状態で嘔吐ものですよ!?

 

 間近で回避した砲撃の余波で((強化魔力障壁|フォースフィールド))が消し飛んでしまう。

 肌で感じたその威力に怖気が走る。こんなもの取り逃がしたら街など簡単に焦土と化してしまう。

 この馬鹿げた威力の攻撃には防御能力の低い武装局員も近づけずにいる。

 

 早急な破壊が必要。だが相手の機動力は高い。その状況下で私が取った作戦は……。

 

 零距離射撃だった。

 

「これだけ図体が大きければ接近戦には弱いでしょう!」

 

 無論そんなことは無かった。

 熱光榴こそ届かないが、砲門の下に搭載された56mm砲から質量弾が飛んでくる。

 足を止めれば狙い撃ちにされる。

 だが、その前にありったけの魔力弾を砲台へと叩き込む!

 

 機銃。オプション。対地魔力弾頭。

 全てを打ち込み自ら撒き散らした魔力残滓すら回収して魔力弾に変える。

 

 砲台の障壁を貫き、装甲を貫き、ついには爆砕した。

 こちらを狙い続ける質量弾に貫かれる前に急いで距離を取る。

 

 砲台の残骸が爆発を続けながら夜の空に落ちていく。

 

 零距離射撃は予備動作なく連続で魔力弾を叩き込めるため、下手な近代ベルカ式の接近攻撃よりも威力が高いと自負している。

 対巨大艦戦では最適解ではないのかもしれないが、速度戦となった以上は有効な選択肢だ。

 ((かわして撃つ|ヒットアンドアウェイ))が基本方針の私としては寿命が縮まる思いだが。

 

 砲台を失った黒瞥は、装甲をすべらせ変形を開始した。

 翼の角度が変わり、中心で折れ曲がっていた両翼が一直線になる。

 翼の後方から十門の60mm貫甲弾射出口が露出した。

 射出口は完全に固定されており、翼の角度を変えることでしか弾の軌道を変えられないだろう。

 なるほど、真っ直ぐ弾を撃つための変形か。

 狙う気が無いということは数で勝負ということだろう。

 

 

 だが、弾雨の中こそ私の主戦場。

 

 砲台の下にあった56mm砲が私を狙い撃ち、60mm貫甲弾射出口が一直線の弾幕を張ってくる。

 

 私は巡洋艦達を相手にしていたように砲門の向きを予測し、弾道を誘導し、切返して回避し、貫甲弾の隙間に入り込む。

 機銃とオプションは相手の弾幕に負けまいと、途切れることなく魔力弾を吐き出し続ける。

 

 後方から武装局員が追いついてくる。

 敵機の攻撃は激しいが、この程度の質量弾なら((>障壁魔法|プロテクション))で防ぎきれるのだ。

 援護砲撃に対艦捕縛魔法、バリアブレイクと次々に魔法が放たれる。

 

 例えSランク魔導師相当の機体であっても、たった一機では連携した地上本部の局員にかなうはずもない。

 射出口は潰され装甲のいたるところから黒煙があがっている。

 

 

『黒瞥、撃破確認! 後続援軍へ主導権を委託します』

 

 

 ついに黒瞥はその浮力を失い、都市郊外に落下していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【或門新聞 ARCADIA】

 

 クラナガン大空中戦!

 

 企業テログループ「中解同」の声明

 

 [少女魔導師] 敵機を撃退

 

 

 

 

 任務から一夜明けて朝早く。

 昨日は黒瞥の魔力砲撃のせいで身体が少しひりひりしていたが、一晩寝たら治ったようだ。

 

 新聞の朝刊では、一面トップは当然のように昨夜の事件を扱っていた。

 私が帰宅して爆睡した後に捜査に進展があったようだ。

 

 事件の主犯は企業テログループ「中小企業解放戦線」であったらしい。

 中小企業解放戦線といえば、多次元貿易によって割りを喰わされた中小企業が徒党を組んで多世界籍企業や大企業に対してテロ行為を行っているという過激派企業連合だ。

 一つの世界だけでも貿易摩擦など色々あるのに、今の時代は次元世界時代だ。不満を持つものも多数生まれる。

 

 クラナガンは次元世界の中心地で大企業の本社も密集していますからねぇ。

 

 いやしかし、新聞一面の片隅に私が写っているのはどうなんだろう。

 魔法学校卒業以来、パイロットスーツの色は浅緑に変えてもらえたから良いのだけれど。

 

 まあ活躍もあってか地上本部からはしばらく招集要請はしないからゆっくり休んでくれと言われている。

 賞与も支給されるらしいので生活に潤いが出そうだ。

 

 

 朝食を食べて一息入れる。

 考えるのはお仕事のこと。

 最近は時空管理局関連のお仕事が多かったから、ダライアスのほうにも手をつけないと。

 喪失文明復興局総出で開発が進められた斑鳩・銀鶏もようやくものになってきた。

 

 そうだ、スクライアの方に次期発掘の連絡を入れてくれって復興局からメールがきていたか。

 久しぶりにユーノくんに連絡をいれてみよう。

 

 部屋の隅に置いてある長距離念話用の魔法機械の前に座る。

 ミッド式の次元通話機能が搭載されている時空管理局製の一品だ。ちなみに管理局からの支給品。

 

 基本的に管理世界の住人は、現在の滞在世界を時空管理局のホストサーバに登録させている。

 一つの世界の中での国家間移動はその世界の法によって運営されるが、世界の移動はそうもいかない。

 人は居ないけど勝手に行ってはまずい世界もあるし、移民管理に厳しい世界だってある。

 まあそんなこんなで時空管理局が頑張ってその名前の通りに時空の移動を管理しているのだ。

 

 この念話機はその管理サーバにアクセスして世界を特定して遠距離念話魔法を発動。

 受信者は念話さえ使えれば、受信路に念話を流して簡単に異世界念話が行える。

 ちなみに私も念話くらいなら使える。擬似魔法チップを身体にしっかり埋め込んである。

 

 念話機を起動し、登録帳からユーノくんのコードを選択っと。

 三十秒ほど待つと、ディスプレイに通話世界が表示される。

 

 第97管理外世界? 何で干渉禁止世界にユーノくんが?

 97は独自の非魔法文化を構築しているので発掘なんかに関係がないはずなのに……。

 

 

「こんにちは、ユーノくん。こちらミッドチルダのカガリです。なんだか凄い場所にいるみたいですが今お時間宜しいですか?」

 

「え? あ、か、かがり? いや、今ちょっとすごい事態に巻き込まれちゃったというか巻き起こしちゃって……」

 

「それはまた何事ですか……」

 

 時間は問題ないということで、かつてのティータイムのごとくユーノくんから話を聞いてみる。

 話は第97管理外世界に行くことになった事情から始まった。

 

 何度かの発掘で功績を残したユーノくんは、とうとう発掘隊の隊長を任されることになったらしい。

 そして自ら指揮する発掘作業の途中、最初の私たちとの発掘のときのように、やばめのロストロギアを発掘してしまった。

 数は二十一個。才能があるのか運が悪いのか。

 出力が不安定で完全に暴走すると時空に干渉してという代物で、護送艦で急遽輸送してもらった。

 だが、護送艦は事故に巻き込まれてしまったのか、ロストロギアは時空を飛んでいる最中に外へ投げ出され、第97管理外世界へ散らばってしまった。

 

 そのことに責任を感じたユーノくんは、権限を駆使して単身第97管理外世界へ向かいロストロギアを回収しようとした。

 でも、相変わらず攻撃魔法が苦手なユーノくんは暴走したロストロギアとの戦いでずたずたのぼろぼろに。

 

「それで現地の人に手伝ってもらうことになっちゃって」

 

「ユーノくん」

 

「魔法なんて今まで知らなかったはずなのに凄い才能を持っている子なんだ。でも、僕が起こした事態にこれ以上巻き込むのはやっぱり嫌で……」

 

「ユーノくん! ……貴方相当テンパってますね?」

 

 聡明なはずのユーノくんとは思えない行動に驚いてしまう。

 きっと、初めて任されたという隊長職での事故で、冷静さを失ってしまっているんだろう。

 就業年齢の低い風潮で忘れがちだが、私たちは思春期も訪れていないような子供なのだ。

 一族という加護もあって、不意の事態にも弱い。

 

「こういうときは……素直に自首しましょう」

 

 じゃない。

 

「素直に通報しましょう。しかるべき専門機関に」

 

 ユーノくんの一族は日常的に自分達だけでロストロギアを取り扱っている。

 そのせいで、とっさに一般的な対処方法を思いつかなかったのだろう。

 手配は私がするのでユーノくんは手配が終わるまで現地での行動を続けて欲しい、と締めて念話を切る。

 

 

 次は通報だ。念話機からかつての戦友のコードを選択する。

 

「ヤマトさん、今お暇ですか? 暇じゃなくても聞いてください」

 

 ディスプレイには『次元空間航行中』と表示されている。

 こんな状態でも通じるのは、彼が時空管理局の戦艦に乗っているからだろう。艦の名前はアースラだったか。

 彼の今の立場は、時空管理局執務官補佐。

 お仕事は時空パトロールと事件現場への急行と言っていた。

 

 時空管理局のお仕事の一つに、危険なロストロギアの拡散防止というものがある。危険物の拡散防止はロストロギアに限ったものではないのだが、ロストロギアは使用方法が不明であったり不安定であったりして犯罪組織以外に渡っても危険な事態に発展することが多い。

 そして、拡散してしまった後の回収作業は、専ら海の人たちのお仕事だ。

 封印作業には強力な魔導師が必要なことも多くて、いつも地上本部は人を海にとられて泣きを見る。

 

 

 そんなミッドチルダ出身で海に行ったヤマトさんへ事情を伝える。

 第97管理外世界は割と近くにあり、早急に向かうとのことだ。

 ちなみに念話は途中から艦のお偉いさんへも中継されている。

 

「状況はかなり切迫しているようなので、とりあえず上官に働きかけて小型艇でもなんでも真っ先にユーノくんの保護をお願いします。今の彼には相談できる知り合いが必要です。執務官補佐ほどなら急行も可能でしょう」

 

 ああ、と返事が来る。無茶なお願いだが聞いてくれたようだ。

 

「私はこれから管理局の本局に向かいます。急いで手続きしてそちらにに合流できるか聞いてみます。単体暴走する類の第一級ロストロギアらしいので兵力は必要でしょう」

 

 一級のロストロギアの暴走。スクライア一族に恩を売るいいチャンスだ。足をつっこまさせてもらう。

 もし現地で私に何かあったとしても、それ以上のリターンが見込める。

 

 巻き込んだ形になるヤマトさんは、まあ管理局員のお仕事だからどうでもいいか。

 通信を切り、急いで荷物を用意する。

 ダライアスへはメール連絡。簡単に事情を書きスクライアへの連絡は少し待つのが良いと所見を添える。

 

 さてさて、ロストロギア人間の管理外世界行きははたして認められるだろうか。

 休養中に海の手伝いといったら地上本部の人たちも良い顔しなさそうだな。

 

 

 

――――――

あとがき:地上本部は軍隊じゃなくて市民を守る正義の味方に決まってるじゃないですか。

 

SHOOTING TIPS

■所属不明の巡洋艦が大気圏突入!

プレイステーション版蒼穹紅蓮隊でゲーム中に流れるオペレーターの音声。

アーケード版には無かったため賛否両論ですが私的には聞いていてわくわくします。

しかし、これだけの兵器どうやって隠れて製造したんでしょうね。

 

■ロックオン

STGの一味違ったプレイスタイルを提供するシステム。採用しているゲームは少ないですが。

R-GRAY2の出るレイストームだけではなく、今回の戦場の元となった蒼穹紅蓮隊にもロックオンシステムが登場します。

 

■パワーアップ

STGの伝統的なルール。アイテムを取ることによって自機が何らかのパワーアップをする。

さすがにSSで敵にアイテムを落とさせることはできないだろうと言うことで、アイテムの代わりに魔力残滓の回収に。

なのはさんのスターライトブレイカーはこれと似たようなことをしているそうです。

 

説明
■4/11
1:http://www.tinami.com/view/239480
2a:http://www.tinami.com/view/239538
2b:http://www.tinami.com/view/239550
3a:http://www.tinami.com/view/239558
3b:http://www.tinami.com/view/239565
4:http://www.tinami.com/view/239574
5a:http://www.tinami.com/view/239578
5b:http://www.tinami.com/view/239581
6:http://www.tinami.com/view/239592
7:http://www.tinami.com/view/239601
8a:http://www.tinami.com/view/239603
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